2022年3月11日金曜日

今後5年、ロシアの破綻確率「6割」に 軍の撤退、楽観視できないが…強力な金融制裁は厭戦ムード高めるのに望ましい―【私の論評】ウクライナ侵攻をプーチンの誤算まま終わらせる努力と覚悟が国際社会に求められている(゚д゚)!

日本の解き方

独立広場。これまで何度も革命やデモの舞台となってきた場所だ

 ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。4日、ロシアがウクライナ南東部のザポロジエ原子力発電所を攻撃した。これには、さすがに中国を含む世界各国が非難した。

 筆者は直感的に、ウクライナをエネルギーで締め上げるとともに、ウクライナが核兵器を保有しているとのデマをでっち上げるためと思ったが、どうやら的外れでもなかったようだ。

 この後の最悪の展開は核兵器使用、またはウクライナ国内の原発を破壊してウクライナ全土を「チェルノブイリ化」、誰も住めなくし、非武装中立地帯を作るというものだが、プーチン大統領ならやりかねない。そもそも原発やダムなどへの攻撃は、ジュネーブ条約違反である。

 ロシアへの経済制裁では、国際銀行間通信協会(SWIFT)から一定のロシアの銀行を除外する措置が2月末にとられた。これは「金融核兵器」ともいわれ、一部銀行を除外したとはいえ、ロシア経済にはかなり効く。ロシア中央銀行への資産凍結も同時に実施され、両者の威力はかなり強力だ。

 暗号通貨による抜け穴、SWIFTに代わるロシア製決済ネットワークや中国人民元などによる決済もあるが、まだ実力不足で、金融制裁の効果を完全に相殺するまではいかない。

 これらの金融制裁が決まった2月27日以降、ロシアの通貨は1ドル=80ルーブルから一時、150ルーブル前後へと大きく下落した。ロシア政府の今後5年の破綻確率は、同28日時点で2割程度だったが、先週末には6割程度まで高まった。

 こうした金融制裁は今後じわじわ効いてくるが、その兆候もある。アップルやディズニーなど米国企業が相次いでロシアビジネスからの撤退を言い出した。サハリン開発においても、英石油大手シェル、英BP、米石油大手エクソンモービルなどが撤退の動きを示している。各社の経営判断であるが、決済代金をドルで入手できそうにないというのも大きな判断材料だろう。クレジットカードのビザとマスターも業務を停止する。

 ロシア国内の政策金利は20%とそれ以前から2倍強になった。各種の制裁の結果、インフレ率は20%以上になるかもしれない。ロシア国民にとってはいいことはなにもない。

 こうした動きは、ロシア国内での厭戦(えんせん)ムードを高める方向になるだろう。しかし、だからといって、金融制裁がプーチン大統領にウクライナからの撤退を決断させるようになると楽観視はできない。

 第二次世界大戦以降、軍事力を伴わない制裁措置が成功したケースは5%くらいという実証研究もある。ただし、バイデン米政権関係者は、今回の措置は史上最も大きな打撃を伴う制裁であり、過去の事例とは異なるとしている。

 英エコノミスト誌による2021年のロシア民主主義指数は3・24で、世界167カ国中124位の非民主主義国家であり、こうした制裁への耐性は強いともいわれる。

それでも何もしないよりは、制裁措置を発動する方が、政治的な交渉をするためにも望ましいのはいうまでもない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ウクライナ侵攻をプーチンの誤算まま終わらせる努力と覚悟が国際社会に求められている(゚д゚)!

ロシアはもはや世界のマーケットから切り離されたといって良い状況です。ソ連崩壊の90年代のはじめのようにサプライチェーンが一気に崩壊し、その結果、大規模な企業倒産が起きるでしょう。これは非常に深刻な変化でしょう。

また、経済が悪化することで国民の所得は減り、国が住宅や公共事業などに多額の補助金を出すことになるでしょう。そうなれば、完全な経済の国有化であり、事実上の社会主義体制に回帰することになるでしょう。今やロシアは世界から閉ざされ、中国にだけ開かれた全体主義的な独裁国家になりつつあります。

ルーブルが大幅に値下がりするなか、プーチン大統領が対外債務を外貨ではなく、自国の通貨ルーブルで返済することを一時的に認める大統領令に署名していますが、これはデフォルト=債務不履行はすでに起きているとみるべきでしょう。ルーブルで支払うと決定したことがそれを意味しています。すでにロシアの債務支払い能力に深刻な懸念があるといえます。

露中央銀行は制裁で外貨準備6300億ドル(約73兆円)の約6割を凍結され、為替介入によるルーブルの買い支えは困難です。通貨安を食い止めるため、露中銀は9日、国内でルーブルから外貨への両替を禁じたほか、外貨建て銀行口座からの引き出しを9月まで最大1万ドルに制限する措置を発表しました。1万ドルを超えた場合、顧客はルーブルでの引き出ししか認められません。

ロシアはこれ以前にも、出国者が持ち出せる外貨を最大1万ドルに制限、輸出企業の外貨収益の80%を強制的にルーブルに転換、外貨建て債務のルーブルでの返済の容認など、なりふり構わない経済防衛策を導入してきました。しかし、ルーブルの信用低下という根本問題は手付かずで、通貨安は今後も進むとみられます

首都モスクワでは現時点で、目立つほどの商品の品薄や物価上昇は起きていないです。しかし、一部店舗は既に砂糖や植物油、缶詰などの購入制限を実施。今後、原料や在庫の減少でインフレが加速する見通しです。

ロシアのウクライナ侵攻に対抗する米欧の制裁で通貨ルーブルが急落したのは2月末のため、2月の物価への影響は限定的だったとみられますが、ロイター通信によると上昇率は7年ぶりの高水準。2月26日~3月4日の消費者物価指数は、前週に比べ2・22%上昇しました。国産車が17・1%、テレビが15・0%の上昇で、足元では急速にインフレが進んでいます。

経済制裁でルーブルは急落しており、輸入物価の上昇で3月はインフレが一段と加速する可能性があります。市場では、年内にインフレ率が20%近くまで上昇するとの見方が広まっています。経済制裁で輸入が滞り、物資が不足すれば、国民生活への打撃が大きくなりでしょう。


先行き不安と侵攻への非難を背景に、外国企業が続々とロシアからの撤退や事業停止を表明。その数は200社以上とされるとされていますが。これは、ロシアで今後ビジネスを展開したとしても、ドルで収益を得られなることがはっきりしていることが要因です。ルーブルで得たとしても、それは紙切れになる可能性が高いからです。

撤退企業の業種も資源や小売り、飲食、自動車、金融、IT、娯楽など多岐にわたり、失業者が多数出るとの指摘が出ています。


ロシアのウクライナ侵攻にともなう、戦費負担は一日あたり百数十億円ともいわれています。

ロシアの年間の予算約37.5兆円規模であり、名目GDP約200兆円でありこれは、韓国を若干下回る程度です。ただ、人口が韓国より多いので、一人あたりのGDPは韓国をはるかにしたまわります。大雑把にいうと、100万円程度です。

ちなみにロシアの一人当たりGDPは日本の4分の1で、マレーシアと同じくらいです。経済的には先進国ではありません。

ロシアの軍隊がウクライナに攻め込んで一部を占領したとします。すると治安維持や人心の掌握が必要となります。それから人々の生活も安定させないといけません。同時に、進駐している軍隊のためにいろいろな物資を調達する必要もあります。 それで何が最も必要かというと経済の安定です。まずお金がないといけません。

ロシアはとてもそのような状況ではありません。これでは、早晩ウクライナでの戦争は継続できなくなるとみるのが普通です。ウクライナ側は、10日で戦費が底をつくと試算していましたが、これは楽観的に過ぎます、実際すでに10日を過ぎています。ただ、数年ではなくおそらく、数ヶ月と考えます。

プーチン政権はウクライナ侵攻に対する国内の批判をかわすため、国営メディアによる宣伝やインターネットを規制して情報を統制している。市民たちが批判の声を上げることは難しくなっているが、ルーブル急落などによる混乱は市民の暮らしを直撃しており、政権への不信感は静かに高まっている。


ロシア経済への影響を軽減するのは、簡単なことです。停戦し、軍を撤退させ、ウクライナと何らかの合意に至るだけです。停戦することのほかに解決策はないでしょう。

中長期的に見れば、ロシアに対する経済制裁は、ロシアだけではなく国際社会に深刻な影響を与えるでしょう。ただ、ロシアのウクライナ侵攻を成功裏に終わらせることは絶対に避けなければならないです。プーチンの核の恫喝に妥協し、融和的解決を模索することは、将来の国際秩序に大きな禍根を残すことになります。まさに、ウクライナ侵攻をプーチンの誤算まま終わらせる努力と覚悟が国際社会に求められているといえます。

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