米欧州郡ウォルターズ司令官 |
米欧州軍のウォルターズ司令官は29日、米国の情報収集に穴があり、それが侵攻開始前にロシアの能力を過大評価する一方、ウクライナの防衛能力を過小評価することにつながった可能性があるとの見解を示した。
ロシアが先月ウクライナ侵攻を開始したとき、米情報機関はキエフが数日で陥落する可能性があると分析していた。だが、戦争が2カ月目に入るなか、ロシア軍はキエフ周辺で停滞。維持可能性や兵たんの問題に悩まされ、ウクライナ人戦闘員の予想外に強固な抵抗にも遭っている。
上院軍事委員会で証言したウォルターズ氏は共和党のウィッカー議員から、米国がロシアの強さを過大評価し、ウクライナの防衛力を過小評価した原因として、情報収集の穴があったのではないかと質問された。
ウォルターズ氏は「その可能性はある」と返答。これまでと同様、危機が終わった段階で全領域・部門の包括的な事後検証を行い、自分たちの弱点を突き止め、改善方法を発見できるようにすると表明した。
米情報機関はロシアがウクライナ侵攻を計画していることを的確に予想していたが、ロシア軍のつたない戦いぶりに関しては分析できていなかった。
開戦当初、ロシア軍がキエフに迫るなか、米当局者はウクライナのゼレンスキー大統領に国外退避の支援を打診。ゼレンスキー氏はこれを拒否し、防衛の助けとなる兵器を要求した。
米国や北大西洋条約機構(NATO)はこれまで、ウクライナ軍に対するジャベリン対戦車ミサイルやスティンガー対空ミサイルなどの供与を支援してきた。ロシア軍の死者数に関する推計には大きなばらつきがあるものの、事情に詳しい情報筋は数千人が死亡したと指摘している。
ロシアが先月ウクライナ侵攻を開始したとき、米情報機関はキエフが数日で陥落する可能性があると分析していた。だが、戦争が2カ月目に入るなか、ロシア軍はキエフ周辺で停滞。維持可能性や兵たんの問題に悩まされ、ウクライナ人戦闘員の予想外に強固な抵抗にも遭っている。
上院軍事委員会で証言したウォルターズ氏は共和党のウィッカー議員から、米国がロシアの強さを過大評価し、ウクライナの防衛力を過小評価した原因として、情報収集の穴があったのではないかと質問された。
ウォルターズ氏は「その可能性はある」と返答。これまでと同様、危機が終わった段階で全領域・部門の包括的な事後検証を行い、自分たちの弱点を突き止め、改善方法を発見できるようにすると表明した。
米情報機関はロシアがウクライナ侵攻を計画していることを的確に予想していたが、ロシア軍のつたない戦いぶりに関しては分析できていなかった。
開戦当初、ロシア軍がキエフに迫るなか、米当局者はウクライナのゼレンスキー大統領に国外退避の支援を打診。ゼレンスキー氏はこれを拒否し、防衛の助けとなる兵器を要求した。
米国や北大西洋条約機構(NATO)はこれまで、ウクライナ軍に対するジャベリン対戦車ミサイルやスティンガー対空ミサイルなどの供与を支援してきた。ロシア軍の死者数に関する推計には大きなばらつきがあるものの、事情に詳しい情報筋は数千人が死亡したと指摘している。
【私の論評】ロシア軍の弱さは、兵站を著しく軽視し、戦闘能力が著しく低下したことが原因(゚д゚)!
この愚策ともいえる行動。これはこのブログでも何回か述べてきたように、ロシアはウクライナをすぐに掌握することができると考え、勢いでなんとかしようとしたのでしょう。
東部だけではなく、キエフ、ハリコフにも進撃し、南のほうでも攻勢を加えるという大胆な作戦で、ウクライナは浮足立ち、ほとんど戦うこともなく、ゼレンスキー政権は崩壊し、首脳陣は海外に脱出し、ロシア軍は各地で、ほとんど戦うこともなく、要衝をすぐにおさえることができると踏んでいたに違いありません。
そのため、長期の戦闘を考慮しない“短期決戦”計画を立てたと思われるのですが、案の定、そこには大きな落とし穴がありました。
ロシア軍の正規軍人はウクライナ軍の約8倍となる約90万人います。そのうち、約15万人がウクライナに侵攻したと考えられていますが、この15万人という数字、実は陸上自衛隊の定員数と同じです。その後19万〜20万という数字もありますが、これは後から増派したものと考えられます。
これだけの大規模な部隊を一度に投入できることはロシア軍の強みとも見られるようですが、ただ、ウクライナを制圧するつもりなら、最初から少なすぎる兵力でした。ウクライナを制圧するつもりなら、最低50万は必要だろうということは以前にもこのブログで述べました。
そのため、長期の戦闘を考慮しない“短期決戦”計画を立てたと思われるのですが、案の定、そこには大きな落とし穴がありました。
ロシア軍の正規軍人はウクライナ軍の約8倍となる約90万人います。そのうち、約15万人がウクライナに侵攻したと考えられていますが、この15万人という数字、実は陸上自衛隊の定員数と同じです。その後19万〜20万という数字もありますが、これは後から増派したものと考えられます。
これだけの大規模な部隊を一度に投入できることはロシア軍の強みとも見られるようですが、ただ、ウクライナを制圧するつもりなら、最初から少なすぎる兵力でした。ウクライナを制圧するつもりなら、最低50万は必要だろうということは以前にもこのブログで述べました。
ただ、軍事費やロシアの経済力からいってそれは全く無理なので、電撃作戦で脅して、ゼレンスキー政権をすぐに崩壊させることが、この作戦の目標だったのでしょう。
その一方で、ロシア軍が「兵站」を軽視したことは致命的ともいえます。15万の兵力なら、いかに経済力が衰えたロシアといえどもなんとかなりそうですが、やはり電撃戦を意識したためか、「兵站」をあまり重要と考えていなかったようです。
ウクライナ領内に乗り捨てられていたロシア軍の燃料タンク車(画像:ウクライナ軍参謀本部)。 |
「兵站」とは、英語では「logistics(ロジスティクス)」といい、食料、燃料、弾薬、通信、整備、医療などの各機能を集約した言葉です。ゆえに、陸上自衛隊では後方支援と呼ばれるもので、活動するうえで欠かすことのできない分野としてそれぞれを担当する専任の部隊を用意しているほどです。
自衛隊に限らず世界中の軍隊で、この兵站能力は部隊の行動を維持するために必要不可欠なものとみなしており、特に作戦行動が長期化すればするほど、この兵站能力の差がモノをいうようになってきます。
逆に、兵站能力をある程度無視できる場合もあります。ただ、それは長くても1週間程度の短期決戦に限られます。つまり、それ以上の長期に渡る行動には兵站の充実が部隊を円滑に動かす秘訣になるといえます。
なお、この兵站は前線に進出する部隊との距離感も大切になります。世界の軍隊でひとつの目安として語られているのは、兵站拠点から300km程度離れると十分なサービスを供給しにくくなるといわれています。
理由は単純、補給線が伸びれば伸びるほど、輸送部隊や衛生部隊が前線へたどり着くまで時間がかかるからです。たとえ高速道路などがあったとしても、高速道路は遠くからでも視認しやすいことから常に狙われているといっても過言ではありません。そのため、輸送部隊は高い緊張を強いられながら移動しなければならないのです。
さらに、移動速度も平素の高速道路のように素早く走れるわけではありません。道路には瓦礫などの障害物があったり、場合によっては寸断されていたり、狙撃や地雷など含めた敵の攻撃による脅威もあったりするでしょう。こうした危険から部隊を守るため、補給線の安全を確保しなければならないのですが、補給線が延伸すればするだけ安全確保は難しくなります。
こうした点を考えると、十分なサービスを行きわたらせるためには、前線から兵站拠点までの距離は、概ね100km以内が理想だといえるでしょう。
弾薬を積載したまま遺棄されていたロシア軍のトラック(画像:ウクライナ軍参謀本部)。 |
実際には、大規模な兵站拠点を300km先に設けたとしたら、中継地点となる中規模な拠点を100kmごとに設置して、さらに末端の部隊にサービスするための小規模な兵站拠点を前線から50km以内に設けることが理想です。こうすれば、部隊は効率的に動き続けることができると考えられます。
ただ、このブログにも掲載したように、ロシア軍は兵站を鉄道に頼るところが大きいです。トラック輸送は十分ではありません。鉄道から近いところでは、このようなことはロシア軍にとってもやりやすいのでしょうが、鉄道から離れた地域が前線であれば、これは難しいです。
ロシア軍は自らの領域外への作戦行動が不得意であるといわれています。その理由のひとつは、ロシアの鉄道の線路幅がいわゆる標準軌(1435mm)よりも幅の広い独自の広軌(1520mmまたは1524mm)であり、旧ソ連圏とフィンランドでしか使われていないからです。例えば、ポーランドには、ロシアからウクライナのキエフを経由して南部のクラクフまで、1本だけ広軌の鉄道が通っているが、ほかは標準軌であり兵站線を接続できないのです。
線路幅規格の共通性が旧ソ連圏に限られているのは、帝政ロシア時代の鉄道規格を引き継いだためです。敷設が始まった1830年代当時は広軌優位論が盛んであり、他国との連結はあまり考慮されておらず、広大なロシアでは標準軌より広軌の方が、輸送力が大きく有利と当時、考えられたのが理由のようです。
今回のロシア軍のウクライナ侵攻に関しては、短期決戦による全土制圧を前提とした多方面からの侵攻を行ったのに、ウクライナ側からの予想外に強い反攻を受け、十分な制空権も得られず戦況が膠着。そんななかで、食料や燃料、弾薬の補給といった兵站に問題が生じていると言われています。
これは推測ですが、当初予定していた鉄路でつながれているウクライナ国内への鉄道輸送による兵站が困難となったためなのではないでしょうか。道路輸送が不得意なロシア軍の体質が弱点となっている可能性があります。
ただ、鉄道を巡っては、一つ不思議なことがあります。ウクライナ側も、ロシア側も大規模な鉄道の破壊をしているという報道がないことです。日本でも、大東亜戦争のときに米軍は日本中の鉄道網を破壊しました。これは、軍事的には当然といえば当然です。ドイツでもかなり鉄道の被害がありました。
ベラルーシの反乱軍が、同国とウクライナを結ぶ鉄道の一部を破壊したことは報道されていますが、ウクライナ国内の鉄道網や、列車が破壊されたことは未だ報道されていません。
これは、私の推測ですが、ロシア軍もウクライナ軍も兵站は鉄道に頼るところが多く、ウクライナは民生用の物資も鉄道輸送の割合が高いので、これを破壊したり、破壊されてしまうと、双方とも物資輸送や、兵站に支障をきたすので、両方とも攻撃することを控えているのかもしれません。ただ、橋が破壊されたなどのことは一部報道されていますが、ウクライナ、ロシアの双方とも大規模な鉄道攻撃をしたというニユースはありません。
このあたりのところ、ご存知の方はぜひ教えて下さい。私の考えが正しかったとすると、現在ウクライナの鉄道は、全部とはいいませんが、一部は、ある時はウクライナの物資を運び、あるときはロシアの物資を運ぶというようなことをしているのかもしれません。
しかし、今回のロシア軍は鉄道以外の輸送なども考慮した十分な兵站機能を設けずに部隊をウクライナへと送り込んだようです。そのためでしょうか、前線の兵士らはまともな食事を摂ることもできず、戦車などは燃料切れで立ち往生しています。
しかし、今回のロシア軍は鉄道以外の輸送なども考慮した十分な兵站機能を設けずに部隊をウクライナへと送り込んだようです。そのためでしょうか、前線の兵士らはまともな食事を摂ることもできず、戦車などは燃料切れで立ち往生しています。
以前も述べたように、プーチンはウクライナに侵攻することにより世界秩序に挑戦したといえますが、同時にいかに精強な軍隊であろうと、兵站にみあった戦闘しかできないという、軍事上の常識も捨て去ったとみられます。標準的な兵士は、多数の弾丸と、一日3000Kカロリーの食事を必要とするのです。残念ながら、人間は食いだめができません。日々、相当数のカロリーと栄養素を必要とするのです。
ウクライナ軍の戦闘糧食(一日分) |
ウクライナとロシアは、依然として一進一退の攻防を繰り広げていますが、このままロシア軍の部隊再編がうまくいかなければ、軍事弱小国家ともいえるウクライナにも勝機が見えてきます。広大な領土を持つロシアは、ウクライナ正面だけに部隊を集中させることができません。そのため、ロシア軍が現状以上の部隊をウクライナに投入することは非常に難しいと考えられます。
また、ロシアが受けている世界規模の経済制裁に、ロシア国民がいつまでも我慢できるとも考えられません。両国ともにこれ以上の犠牲や損害を増やす前に、プーチン大統領は自身の独断で始めたであろう“短期(短気)決戦”を終結させるべきです。
また、ロシアが受けている世界規模の経済制裁に、ロシア国民がいつまでも我慢できるとも考えられません。両国ともにこれ以上の犠牲や損害を増やす前に、プーチン大統領は自身の独断で始めたであろう“短期(短気)決戦”を終結させるべきです。
そうして、米軍はロシア軍の兵站を研究すべきです。私自身は、米軍がロシア軍の兵站の脆弱さを認識していなかったからこそ、ロシア軍を過大評価してしまったのだと思います。
米軍の軍事常識からすれば、戦略などの前に、兵站を考えるのが当たり前で、それなしに戦争はできないというのが軍事上常識中の常識ですから、少なくともロシア軍はウクライナ侵攻前に、半年から1年もかけて、兵站の準備を行ってから、戦争を開始するだろうと見ていたと思います。
ただ、経済が低迷するロシア側とすれば、そのような贅沢な作戦はできないのかもしれません。これ以上戦争が長引き、餓死するロシア兵がてできたり、武器不足、弾薬不足で、自分の身も守れないロシア兵が犠牲になるようなことだけは避けてもらいたいものです。プーチンはすぐに戦争を終了させるべきです。
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