2022年3月6日日曜日

米国務長官が中国外相に「世界は見ている」と迫る―【私の論評】ロシアへの厳しい制裁と、ベトナム戦争後最大数のインド太平洋地域への米空母派遣と日米演習におののく中共(゚д゚)!

米国務長官が中国外相に「世界は見ている」と迫る

米ブリケン国務大臣(左)と中国王毅外相外相

 アメリカのブリンケン国務長官は中国の王毅外相と電話で会談し、ロシアの侵攻を止めるため、中国に対し欧米と足並みをそろえるよう訴えました。

  アメリカ国務省の発表によりますと、5日に行われた会談でブリンケン長官は「世界はどの国が自由や主権のために立ち上がるか見ている」と迫りました。

  さらに、「世界はロシアの侵攻を否定するため結束して行動している」と指摘しました。  中国外務省の発表によりますと、これに対し王毅外相は「大規模な人道的危機が避けられることを望む」と危機感を示し、アメリカとNATO=北大西洋条約機構、EU、ロシアによる「平等な話し合い」を求めました。

【私の論評】ロシアへの厳しい制裁と、ベトナム戦争後最大数のインド太平洋地域への米空母派遣と日米演習におののく中共(゚д゚)!

このブログでも何度か掲載してきたように、現在のロシアにはウクライナに侵攻して、全土を制圧するだけの力はありません。にもかかわらず、バイデン政権がロシアのウクライナ侵攻の可能性を非難し、侵攻後にはさらに徹底して非難してきた背後には、ロシアがウクライナに侵攻すれば、米国は経済制裁の大義を得て、ロシアを孤立させ経済的に弱らせることができるということがあるのでしょう。

「ノルドストリーム2」を葬り去り、自国産のシェールオイル・ガス、小型原発などのエネルギーをドイツへと輸出する道も開けるかもしれないです。なぜか、これにはバイデン自身は消極的なのですが、少なくとも共和党はこちらのほうに舵をきるべきと考えていることでしょう。

それにロシアの関心を西方に縛り付け、インド太平洋地域で中露両国と向き合うというリスクを避けながら、問題を長期化させロシアの力をじわじわと削ぐこともできます。

そうした考えは、先日もこのブログで紹介したばかりの、バイデン政権による初の「インド太平洋戦略」にも透けて見えます。

先にも指摘したとおりに、何とこの戦略には「ロシア」という言葉は一つも出てこないのです。極東ロシアは、オホーツク海を隔てつつも、インド太平洋地域につながっているし、ロシアには太平洋艦隊という名称の艦隊があるにもかかわらずです。

米国の対峙の最優先は、やはり中国なのです。評論家の石平氏は、米国務長官が中国外相に「世界は見ている」と迫った背景には、プーチンの失敗と沈没に怯えてロシアと距離を置き始めた中国の「二股外交」があるとしています。

詳しくは以下の動画をご覧になって下さい。


インド太平洋戦略に「ロシア」の文字が一字もないことは、中国も当然のことながら、気づいているでしょう。そうして、こうした米国の行動に関して、不気味さとともに、恐怖も感じていることでしょう。

米国がなぜここまで、中国に対して強い猜疑心をもっているかといえば、それははっきりしています。それは2018年に遡ります。

それについては、このブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国がこれまでの国際秩序を塗り替えると表明―【私の論評】中華思想に突き動かされる中国に先進国は振り回されるべきではない(゚д゚)!
トランプ前米大統領と習近平中国国家主席

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
 中国の習近平国家主席が、グローバルな統治体制を主導して、中国中心の新たな国際秩序を構築していくことを宣言した。この宣言は、米国のトランプ政権の「中国の野望阻止」の政策と正面衝突することになる。米中両国の理念の対立がついにグローバルな規模にまで高まり、明確な衝突の形をとってきたといえる。

 習近平氏のこの宣言は、中国共産党機関紙の人民日報(6月24日付)で報道された。同報道によると、習近平氏は6月22日、23日の両日、北京で開かれた外交政策に関する重要会議「中央外事工作会議」で演説して、この構想を発表したという。
・・・・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・・・・
 米国政府は中国に対してここまでの警戒や懸念を表明してきたのである。これまで習近平政権はその米国の態度に対して、正面から答えることがなかったが、今回の対外戦略の総括は、その初めての回答とも呼べそうだ。つまり、米国による「中国は年来の国際秩序に挑戦し、米国側とは異なる価値観に基づく、新たな国際秩序を築こうとしている」という指摘に対し、まさにその通りだと応じたのである。米国と中国はますます対立を険しくしてきた。

このときに、習近平は世界秩序の変更に挑戦することを公表したのであり、これは第二次世界大戦後世界秩序の頂点にたち、旧ソ連との冷戦にも勝利し、現在の世界秩序の頂点の地位を不動のものとした米国としては、 絶対に許容することはできないわけです。

米国としては、現在の世界秩序を前提として、そのなかで中国覇権をできるだけ強化したいというのなら、まだ理解できるところもあるかもしれませんが、そうではなくて新しい世界秩序を中国が築こうとしていることは、絶対に許容できないです。

無論、ロシアも世界秩序の変更を企図してはいるのでしょうが、今やロシアのDGPは韓国を若干下回る程度であり、一人あたりのGDPでは韓国をはるかに下回ります。

このロシアは、中国と一人あたりのGDPでは、中国と同程度ですが、ロシアの人口は1億4千万人、中国の人口は14億人であり、中国の人口はロシアの10倍です。

国全体のGDPでは、中国はロシアの10倍です。ただ、中国のGDP統計は全くのデタラメという説もありますが、それでも国全体のGDPでは中国がロシアをはるかに上回るのは確かでしょう。

世界秩序の変更とはいっても現在のロシアにできるのは、せいぜいウクライナに侵攻して、ウクライナをNATOに加入させないことぐらいで精一杯でしょう。現在の戦況をみているとそれすら覚束ない可能性も大きいです。

実際、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は4日、BBCのジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員に対して、ウクライナが「時間をかければ、もちろん」ロシアに勝てると確信していると話しました。戦争がいつまで続くか分からないが、ウクライナの敗北は決して避けがたいものではないとも述べました。

ブリケン国務長官

今後、ロシア軍は都市部の制圧に入る予定でしょうか、都市部においては、制空権すら掌握していないロシア軍が苦戦するのは目に見えています。米軍の経験から、現代戦ではホテルのような建物一つを制圧するにも、数百人の兵隊が釘付けにされるといいます。

それに、現状のようにロシアの制裁が強まったので、このままの状態が続けば、ロシアのGDPは現在の韓国なみから、北朝鮮なみに落ち込むことも予想できます。

しかし、中国は違います。軍事的にも経済的にも、ロシアをはるかに上回っています。だからこそ、ロシアに対して厳しい制裁を加えつつも、米国の最優先は中国の対峙なのです。

そのため、ロシアのウクライナ侵略が実施されているさなかであっても、米軍は地中海には一つの空母打撃群しか派遣していませんが、インド太平洋地域には3つの空母打撃群を派遣しているのです。ただし、地中海はフランス、イタリアの空母を演習に参加させるなどして、空母打撃群の力を補っています。

地中海を並走する米仏伊3カ国の空母。手前から仏空母「シャルル・ド・ゴール」、伊空母「カブール」、米空母「ハリー・S・トルーマン

そうして、冷戦後初めて米海軍空母打撃群がNATO軍の指揮下に入りました。 空母ハリーSトルーマン以下連合艦隊は地中海に展開中です。

インド太平洋地域には、米海軍は空母打撃群を3つ派遣する他にも、F35を搭載した強襲揚陸艦も2隻派遣しており、これはベトナム戦争以降最大の配置です。

さらに、米海軍と日本海自との共同演習も昨年暮れから2月までという短期間に三回も実施しています。

ロシアに対する厳しい制裁を目の当たりにした中国がそれに加えて、ベトナム戦争以降最大の米空母の配置と、日米共同軍事演習に脅威を感じるのは当然です。中国としては数少ない理解者であるロシアを無下にするわけにもいかず、かといって米国は恐ろしいわで、二股外交に舵を切るのも無理からぬところだと思います。

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