2022年3月3日木曜日

蔡総統、ポンペオ米前国務長官に勲章授与 台米関係への貢献たたえる/台湾―【私の論評】台湾大規模停電とも関係?ポンペオ氏を未だに恐れる中国(゚д゚)!

蔡総統、ポンペオ米前国務長官に勲章授与 台米関係への貢献たたえる/台湾

台湾総統府で会談したポンペオ前米国務長官(左)と蔡英文総統=3日、台北

蔡英文(さいえいぶん)総統は3日、総統府で、台湾を訪問しているポンペオ米前国務長官に特種大綬景星勲章を授与し、台米関係向上への貢献をたたえた。ポンペオ氏が在任中、米外交・軍事当局者と台湾間の交流制限撤廃や台湾への武器売却の常態化など台米関係に大きな進展をもたらしたことにも触れ、台湾の人々を代表して「最も深い感謝」を表明した。

ポンペオ氏の訪台は台湾のシンクタンク、遠景基金会の招きに応じたもので、2日から5日まで滞在する。滞在中は政財界や学術界の関係者と交流するほか、4日には講演を行う。

勲章を受け取ったポンペオ氏はあいさつで「光栄」だと述べ、蔡総統らと対面できたことに喜びを示した。また、ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に、今、欧州で起こっていることを見れば、自由が当たり前のものではないことが分かると言及。蔡氏の総統在任中、自由への渇望を踏みにじる行為が許されることはないと信じていると述べ、米国もずっと台湾と共にあると語った。

ポンペオ氏ら一行は、米国と中華民国(台湾)それぞれの国旗のデザインとともに中国語で「堅若盤石」(大きい岩のように固い)の文字をあしらったマスクを着用して授与式に臨んだ。

【私の論評】台湾大規模停電とも関係?ポンペオ氏を未だに恐れる中国(゚д゚)!

ポンペオ全国務長官の訪問に先立つ2日午前には、米国のマイケル・マレン元統合参謀本部議長率いる代表団が台湾を訪問しています。

蔡英文総統は2日午前、同代表団の表敬訪問を受けました。代表団はマレン氏のほか、ミシェル・フロノイ元国防次官、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(国家安全保障担当)、国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏とエバン・メデイロス氏で、米国の超党派で実績のある人物で組織されています。

米国のジョー・バイデン大統領が台湾に派遣した事実上特使団が「台湾との約束」を固く守っていくと明らかにした。台湾は今回の米国代表団訪台を通じてアジア太平洋地域の対中牽制(けんせい)体である日米豪印戦略対話(QUAD=クアッド)に参加し、外交的突破口を用意したいとの希望も正式に伝達しました。

蔡総統はあいさつの中で、全世界がウクライナ情勢を注視する今、バイデン大統領が代表団を台湾に派遣したことは台米のパートナーシップに対する重視のみならず、双方の関係が「岩のように」固いことを示していると歓迎、地域の安全保障における台湾の役割は際立っており、世界の民主コミュニティはより緊密に団結しなければならないと語りました。

バイデン米大統領の指示を受け、米国のマイケル・マレン元統合参謀本部議長率いる代表団が台湾を訪問。蔡英文総統は2日午前、同代表団の表敬訪問を受けた。写真は蔡総統(左から7人目)を囲む代表団のメンバーら。(総統府)

バイデン大統領の指示に伴う今回の代表団訪台は、昨年4月にクリス・ドッド元上院議員ほか、、国務副長官を務めたリチャード・アーミテージ、ジェームズ・スタインバーグら3人で構成された非公式代表団訪問以降、二度目となる。

さて、これらとは別に台湾では、ある大きな事件が起こっています。

3日午前9時7分ごろ、台湾各地で大規模な停電が発生しました。台湾電力(台電)は、南部・高雄市にある興達発電所の設備が故障したことが原因としており、ただ、詳細は明らかにされていません。蔡総統は原因究明と早期復旧を指示しました。総統府は停電していません。

また行政院(内閣)原子能委員会(原子力委員会)によると、外部電力の影響で、屏東県の第3原子力発電所の発電ユニット2基が運転を停止したといいます。安全性に問題はないとしています。

台湾南部、屏東県の第3原子力発電所

停電は南部だけでなく、台北など北部にも及びました。

台湾総統府によると、台北を訪問中のポンペオ前米国務長官と蔡英文総統の会談はライブ配信が中止されましたた。

半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などが拠点を置く新竹サイエンスパークは、停電していないといいます。

また、TSMCが工場を持つ南部の台南サイエンスパークは、午前中に電圧低下に見舞われたが、生産には影響がなかったとしました。

TSMCは複数の工場で、最長1秒以上続く「電力低下」が見られたとし、「現在、実際の影響があるかどうか確認している」と発表した。

運輸当局によると、北部と南部を結ぶ高速鉄道にも影響が出たが、通常運行が再開しています。

前日には事実上の米国特使団が訪問し、蔡英文総統とポンペオ元国務長官が米台関係強化を話し合っていたタイミングでの台湾の大規模停電です。

中国のサイバー攻撃を煽るつもりはありませんが、ただ「リスク管理」的な観点からしても、これは相当危険です。意図的に南部・高雄市にある興達発電所の設備を攻撃すれば、大規模停電が発生するということです。

今回の件、仮に中国のサイバー攻撃が関係していたとして、これを中国による台湾侵攻の前兆とする人もいますが、私はこのブログで主張してきたように、中国軍の海軍輸送力の脆弱性から、一度に数万の海上兵力しか送り込めないので、これは台湾軍によって個別撃破されてしまう規模であることから、軍事的にはすぐにはあり得ないです。

あるとすれば、やはりポンペオ全国務長官訪台に対する牽制だと思います。実際、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は3日の記者会見で、ポンペオ前米国務長官が台湾を訪問して蔡英文総統と会談したことに対し、「恥ずべき行為だ」と反発しました。その上で「徒労に終わることは避けられない」と主張しました。

中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官

中国がわざわざこのような発言をするということは、台湾の大規模停電に中国が関与していないとしてもやはりポンペオ長官のことを、かなり脅威に感じているということです。本当にわかりやすいです。

マイク・ポンペオ氏は米国務長官であった2020年7月23日、カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館で「共産主義の中国と自由世界の未来」と題した演説を行い、中国との対決姿勢を鮮明にしました。当時のトランプ政権としては、2019年10月にマイク・ペンス副大統領が行った演説以降で最も高いレベルでの対中政策に関する演説となりました。

2019年10月のペンス氏の演説では、中国に対して現実的な関係構築を呼び掛ける内容でしたが、今回のポンペオ氏の演説は、中国共産党と自由・民主主義国家を明確に対比させ、「自由主義の世界は独裁体制に勝利しなければならない」と強硬姿勢を前面に出した内容となっていました。

ポンペオ氏は、中国が繁栄すれば民主主義に転換するとの期待の下で続けていた従来の関与政策は失敗だったとしました。その上で、演説の冒頭と最後で、1970年代の米中国交正常化を主導したリチャード・ニクソン元大統領の「中国が変わらない限り、世界は安全にはならない」との言葉を引用し、自由主義の同盟・有志国が立ち上がって中国の姿勢を変えるときだとしました。

これにより、政権や党派の枠組みを超えて、米国の中国に対峙する姿勢ははっきりし、その姿勢は現在のバイデン政権にも受け継がれています。実際、先日もこのブログで述べたように、ロシアがウクライナに侵攻している最中でも、米国は決して台湾海峡から目を逸らさないです。そういう意味では欧州の戦争に派兵しない米国の方針は大局的には、正しいかもしれないです。ロシア以上に世界の平和に対する脅威はまさに中国です。

中国としては、現状でもポンペオ氏は影響力があるし、秋の米国の中間選挙の結果いかんでは、2024年にはトランプが大統領に返り咲くかもしれず、たとえ返り咲かなくても、中国に対してはさらに厳しい大統領になる可能性も高く、またポンペオ氏が表舞台にでてくることを恐れているのだと思います。


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