2022年3月14日月曜日

「6月にロシアがなくなる?」木村太郎と4人の専門家が読み解く ウクライナ侵攻“結末のシナリオ”―【私の論評】ロシアのウクライナ侵攻は、全く分不相応な無謀な作戦としか言いようがない(゚д゚)!

「6月にロシアがなくなる?」木村太郎と4人の専門家が読み解く ウクライナ侵攻“結末のシナリオ”

ロシア軍に包囲されつつあるキエフ…停戦は

じりじりとロシア軍が迫るウクライナの首都・キエフ。首都攻防の行方とウクライナ侵攻の結末について、今後どのようなシナリオが考えられるのか。4人の専門家に話を聞くと、いずれも「すぐに停戦には落ち着かないだろう」という予測だった。

【防衛省 防衛研究所 高橋杉雄氏】
・キエフ包囲が阻止され、膠着状態が続けば“ワイルドカード”として、ロシア軍は生物化学兵器使用の可能性
・戦争に勝ったとしても、経済制裁は終わらずロシアは厳しい

【元産経新聞モスクワ支局長・大和大学 社会学部 佐々木正明教授】
・キエフが陥落したら280万人都市が火の海になり、21世紀最大の悲劇に。キエフ陥落は絶対にあってはならないシナリオ
・ポイントは停戦交渉。国際社会が一致団結してプーチンの戦争をやめさせるしかない

【日本大学 危機管理学部 小谷賢教授】
・キエフが陥落する可能性は高い
・ポイントは陥落後のゼレンスキー大統領の行動。国内にとどまってウクライナ軍の士気を上げ続けるしかない。国外脱出すればロシア側に「国を捨てた」とプロパガンダとして利用される

【防衛省 防衛研究所 兵頭慎治氏】
・中東の志願兵投入は、キエフ攻防の「長期化の覚悟」を意味する。プーチンはゼレンスキーが降伏しない限り諦めない
・ポイントはロシア国内の世論。制裁をはじめとする“違和感”に国民が気付けば事態が変わる可能性

そんな中、ジャーナリストの木村太郎氏が挙げたのが「6月にロシアがなくなる」というキーワードだ。

木村太郎氏:
これは僕が言ってるのではなくて、ロシアにFSB(露連邦保安局)という組織があって、そこの分析官が今後の戦争について匿名で分析を書いてるんです。今回の侵攻はまったく完全な失敗だったと。ロシアはいくら頑張ってもウクライナに勝つことはできないだろうと。なぜかというと、補給戦が延びてる。20万人を投入したが、例えば首都を制圧して大統領を殺したとしても、民衆を全部おさえるとすると50万人くらいの兵隊がいないといけない。それがいないうちに制裁が効いてきて、ロシアの経済は6月までに壊滅してしまう。それでロシアがなくなる。そういうことを言っている。


6月にロシア経済が破綻するということになれば、プーチン大統領の失脚もあり得るのか?

木村太郎氏:
それはまた別のシナリオがあるんですけど、プーチンはもしかしたら可能性として、クーデターでどこかに連れて行かれてしまうかもしれない。そういう可能性っていうのも考えておいた方がいいということを言ってる。これは可能性として高いかどうかは別にして、そういうオプションもあるんじゃないかと思うん

アメリカがウクライナの“目と耳”に デジタル情報戦で優位の理由

もう一つの戦争、デジタル情報戦についてはウクライナが圧倒的に優位だという見方もある。その理由について木村氏は「アメリカがウクライナの“目と耳”になっている」という。

木村太郎氏:
アメリカは情報戦でロシアを圧倒してるんですね。一つは大筋の情報を的確に、しかも先に出している。今度の戦争で「偽旗作戦」という言葉が出てきた。これは誰かに見せかける作戦。最近でもベラルーシで爆撃があって「ウクライナが爆撃したから、ベラルーシはウクライナに参戦しろよ」と。「こういうことを(ロシアが)言うぞ」とアメリカが言うわけですよね。すると、ベラルーシは参戦できなくなってしまう。そういうことをアメリカはうまくやった。

木村太郎氏:
もう一つ、目と耳になってるっていうのは、ウクライナの国境ギリギリのところを今、アメリカのスパイ機が飛んでるんですよ。それでロシア軍の通信とか、あるいは動きなんかをそのままウクライナ軍に伝えて、しかも命令まで出してるんですね。そういうことをやっているので、今のアメリカ軍はウクライナ軍にとって貴重な存在。ウクライナが頑張っているのはこの情報があってのことだと言われていますね。

このようにしてアメリカがウクライナの“目と耳”になることで、ウクライナ政府はいろいろな情報を得ることができているという。

狙わなくても当たるミサイル 米からウクライナへの武器提供も?

アメリカはウクライナに対して、情報の提供だけではなく武器の供給も行っているという報道もあった。それが「ジャベリン・ミサイル」という対戦車ミサイル。

木村太郎氏:
狙って撃つんじゃなくて、とりあえず適当に撃つと当たるというミサイルなんです。すごく恐ろしい対戦車砲。これを含めて1万7000の対戦車砲が、1週間以内にウクライナに送られた。エストニアでウクライナの輸送機に積み替えて、これからウクライナに飛ぶんだって言ってるんですが、ロシア側がまだこれに気がついてないからここまで手が回らないだろうな、ということまで記事に書かれてしまった。

この「ジャベリン・ミサイル」の報道によって、リビウの軍事関連施設が狙われてしまったという見方もある。また、木村氏は今回のロシアの作戦についてこう述べた。

木村太郎氏:
今回、戦車の補給部隊を連れていくのも少なかったし、食料も少なかった。もう一つは、まっすぐ道路に列をつくって戦車が走ることなんて、軍事専門家に言わせたらありえないって言うんですね。木の間に隠れるのが当たり前だと。そういう意味で非常に初歩的な戦車作戦っていうのも、ロシアはできてなかったんじゃないかと言われています。

ウクライナ侵攻の結末は…。日々変わり続ける情勢に注目したい。

(「Mr.サンデー」3月13日放送分より)

【私の論評】ロシアのウクライナ侵攻は、全く分不相応な無謀な作戦としか言いようがない(゚д゚)!

6月にロシアがなくなるというのは、どういう意味なのか、はっきりしないところもありますが、ロシア経済は6月にはとんでもない次元にまで、窮乏するということでしょう。そうして、無論ウクライナ侵略戦争も継続不能になるということだと思います。そうして、もしかすると、ロシアの現体制が崩壊するかもしれません。

このブログでは、以前からロシアのGDPは韓国を若干下回る程度であり、一人あたりのGDPでは韓国をはるかに下回るということを言ってきました。


韓国が、仮にロシア並の核や軍事力を持っていたとして、あの広大なロシアを守り、なおかつウクライナに侵攻したとして、早晩限界がくることは、目に見ています。

今日は、さらにロシア経済を他の視点からみてみます。以下に3つのグラフを掲載します。以下のグラフいずれもクリックすると拡大します。

ロシアの国内総生産(GDP)は20年で1.5兆ドルにすぎない(100掛けて150兆円と考えればだいたいの規模感が分かる)です。図1に主要国のGDPを示していますが、ロシアはイタリアの1.9兆ドル、韓国の1.6兆ドルよりも小さいです(グラフの国の順番は次の図2の軍事費の多い順である。選んだ国は21位の台湾までとロシアとヨーロッパで国境を接している国)。


ドイツ、フランス、イタリアのGDPを足すと8.4兆ドルとなってロシアの5倍以上となります。英国も足せば11.1兆ドルとなって、ロシアの7倍以上にもなります。

日本は5兆ドルでロシアの3.4倍であり、米国は20.9兆ドルでロシアの13.9倍です。太平洋戦争開戦時、日本の経済力は米国の10分の1以下と言われていました。ロシアは、もちろん、直接米国を攻撃した訳ではないですが、当時の日本以上に無謀な戦争に突き進んでいるのではないでしょうか。

中国に関しては、そもそも中国の出すGDP統計は李克強首相が自ら認めるように出鱈目であり、学者によっては、実際はドイツ以下であると指摘する人もいますが、ここでは詳細については触れません。

ロシアは、この小さな経済力ですべての西側諸国を敵に回しました。もちろん、貧しくても軍事力で圧倒することはある程度は可能ではあります。


図2は主要国の軍事費を見たものです。しかし、軍事費で見ても米国が圧倒的で7800憶ドル、ロシアは620憶ドルで米国の12.5分の1にすぎないです。ロシアにとって、GDPで見たときより多少はマシになりますが、それでも圧倒的に劣勢であることは変わらないです。

軍事費に関しては、誤解している人も多いのではないでしょうか、世界の軍事力ランキングとうものが、公表されますが、それによるとロシアは二位となっているものがほとんどで、ここから軍事費も当然二位であると思い込んでしまう人も多いのではないでしょうか。

軍事力ランキングはあくまで、軍隊の総合的な強さですから、軍事費とは直接は関係ありません。無論、ランキングには軍事費も大きな部分を占めますが、それだけが判断基準ではありません。ウクライナに侵攻した以降は、ロシアの軍事力ランキングは下がるのではないかと思います。

ドイツ、フランス、イタリア、英国の軍事費を合計すると1940億ドルですから、米国を入れなくてもロシアの3倍以上となります。なぜロシアはこれほど強気なのでしょうか。

これまで述べた数字は、為替レートで換算した各国のドルの値を示したものですが、為替レート換算の数字は必ずしも本当の軍事力を表さないということがあります。軍事力は軍装備の質×兵の数となる(もちろん、作戦の質や士気も重要ですが、これについては議論しません)。

軍装備のような財は自由に輸出入できるものですから、その価格は全世界であまり変わらないはずです。一方、兵士のコストはその国の一般的な賃金で決まります。賃金が安い国なら兵士のコストは安くつきます。だから、所得の低い国の軍事力は為替レートで換算した軍事費より高いはずです。

そう考えると、軍事力を支える経済力は所得の低い国では賃金で決まるサービス価格が安いことを考慮した購買力平価で見るべきだということになります。購買力平価で評価した各国GDPは図3のようになります。



これを見ると、ロシアのGDPは米国の5分の1,ドイツの9割、フランス、ドイツ、イタリア、英国合計の3分の1となります。プーチンは米国が前面に出て来なくて、逡巡するヨーロッパが相手なら、経済力が3倍でも恐れることはないと思ったかもしれないです。

覚悟があれば敵を恐れることはないというのは正しいかもしれないですが、そのための犠牲は大きいです。また、ロシアがドイツ並みの経済力を持つというのは人口が大きいからです。

それはすなわち、1人当たりで考えれば貧しいということです。生活水準を表す一人当たり購買力平価GDPは図4のようになります。


20年の一人当たり購買力平価GDPは、ロシアは2.8万ドル、ドイツは5.5万ドル、フランスは4.6万ドル、イタリアは4.1万ドルであり、ロシアはこれらの国の2分の1から7割の水準でしかありません。貧しい中で過大な軍備を保有し、なおさら貧しくなっています。

1990年代初め、ロシアもウクライナもポーランドも同じように貧しい国でした。しかし西欧に向いたポーランドは発展し、現在1人当たり購買力平価GDPは3.4万ドルとなって先進国の水準に到達しました。ウクライナは1.3万ドルです。西に向くことは自由と民主主義の国になることと同時に、豊かな国になることでもあります。

ロシアのような強権国家は、自国の数倍の経済力の国を脅し、自分の欲しいものを得ることはできるでしょう。しかし、ウクライナが降伏し、ロシアのものになるとして、それでロシアは何を得られるのでしょうか。

恐怖と敵意にみちたウクライナ人、破壊された都市、不発弾があるかもしれない肥沃な土地しか得られないです。それどころか、ウクライナの一部でも占拠するというのなら、そこに軍を駐留させなければなりません。

駐留軍には物資を補給しなければなりません。戦禍で疲弊したウクライナ人を放置するわけにもいかず、彼らにも復興するまで物資を補給しなければなりません。ロシアと国境を接する国々も恐怖と敵意を持ち、軍備と相互の軍事同盟関係を強化するでしょう。

ドイツ、フランスなども、ウクライナへの軍事援助をためらったことを後悔しているでしょうう。ロシアへの経済制裁は続き、海外投資は来なくなります。石油と天然ガスは中国に買いたたかれ、ハイテク製品は中国に高値で買わされることになります。現在も貧しいロシアは永久に貧しいままの国となります。

17世紀末、ピョートル大帝が夢見た近代化されたロシアは、皇帝プーチンの下では永遠に果たせない夢となりました。

ロシア経済は6月にはとんでもない次元にまで、窮乏しウクライナ侵略戦争も継続不能になるという読みは正しいと思います。そうして、ロシアは本当に消えてしまうかもしれません。

防衛省統合幕僚監部は14日、ロシア海軍の潜水艦3隻など艦艇計6隻が同日、北海道とロシア・サハリンの間の宗谷海峡を西向きに通過したと発表しました。2月に大規模演習のため日本海やオホーツク海南部に滞在した24隻の一部といいます。

こういう活動ができるのも今のうちだけかもしれません。6月以降には、このようなことすらできなくなる可能性もあります。

ソ連が崩壊した直後のロシアでは、空軍が定期パトロールをすることも不可能になったといいます。あまりの悲惨さに、米軍が支援してようやっと定期パトロールができたという逸話も残っているくらいです。

そもそも、今回のロシアのウクライナ侵攻は、全く分不相応な無謀な作戦としか言いようがないです。

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