2022年10月16日日曜日

米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者―【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者


 ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」が波紋を広げている。米国で製造された半導体や製造装置だけでなく、米国の技術で第三国で製造された半導体も規制の対象で、「中国の半導体製造業の壊滅」につながりかねない厳格さだという。民生用から軍事用まで幅広く使われている半導体は、今や国家の命運を左右する「戦略物資」となっている。米国は「安全保障」や「人権弾圧」を理由としているが、日本を含む同盟・友好国も対策が急務となりそうだ。

 バイデン米大統領は、中国への半導体規制を強化した(AP)


 「米国の規制強化は、『中国の覇権拡大や先端技術力の向上、人権弾圧を許さない』という明確な意思表示だ。中国の工業生産は半導体に依存しており、『焦土化』される衝撃は極めて大きい」

 経済評論家の渡邉哲也氏は、新規制の重大性について、こう指摘した。

 米商務省は7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表した。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限した。

 米国は以前から、先端の半導体分野で中国包囲網を強化してきた。

 半導体の小ささや精密性は、「プロセス(製造工程)」という指標で優秀性が示される。米国はこれまで、「10ナノメートル」レベルのプロセスで半導体を製造する中国企業への装置輸出を原則禁じていた。新規制では、現行の主力世代である「14ナノメートル」未満のプロセスを用いる先端半導体を製造する中国企業まで装置輸出が原則禁じられる。

 一連の措置が正式適用されれば、中国の半導体製造業がストップするだけでなく、米国の半導体技術を使って中国で生産をしてきた世界各国の企業の事業継続が不可能となる。影響は幅広い商品に及びそうだ。

 米国内では、半導体関連企業などの株価が下落している。日本の業界関係者からも「過去最大級の強烈な規制となる」との観測が浮上している。

 前出の渡邉氏は「半導体関連で、米国技術を含まない製品は皆無だ。AI(人工知能)による自動運転技術を用いた自動車、スマホ、パソコンなど、さまざまな製品に活用されている」と話す。

 新規制の対象は、最先端技術だけでなく、現行技術も含まれており、生活に密着した製品の製造・流通が途絶し得るのだ。半導体枯渇で、電子製品が前世代に「先祖返り」すれば、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの利用や、クラウド構築も不可能となる。

 渡邉氏は「米国の〝ブラックリスト〟にも注目すべきだ」と強調する。米当局は、自国技術や製品を最終的に手にする組織・個人の目的、用途がはっきり確認できないケースを「未検証エンドユーザーリスト(EL)」として集約しており、ここにもメスを入れる構えだ。

 リスト対象に製品を送る場合、対象を調査して許可を得る必要がある。新規制では、対象が「米国の国家安全保障または外交政策に反する重大なリスクがある者」に拡大された。調査に協力しないと、ELに追加されることになる。

 米商務省は、措置を強化した理由として「中国の脅威」を挙げる。中国はIT技術などを急速に発展させ、情報網を世界に急拡大させているが、最先端技術が中国の軍事力増強に直結する懸念があるのだ。さらに、新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧が深刻化するなか、ITが監視や追跡に悪用されているとも主張した。

 米国の対応に、中国外務省の毛寧副報道局長は8日の記者会見で、「科学技術をめぐる典型的な覇権主義的やり方。断固反対する」「中国企業への悪意ある封じ込めと抑圧」と猛抗議したが、米国は断行する構えだ。

日本は供給網内製化の好機

 日本はどう対応すべきなのか。

 岸田文雄政権は「経済安全保障」を最重要政策に掲げ、サプライチェーン(供給網)の内製化を重視している。米中対立による供給途絶リスクも想定し、工場や営業拠点を日本国内に回帰させる動きは加速している。半導体事業で世界基準に水をあけられていたが、世界的な大手の「台湾積体電路製造(TSMC)」の工場誘致にも成功した。米国の対中規制は、日本の政策に合致しているともいえる。

 渡邉氏は「米国は、半導体に限らず、バイオ技術や、特殊素材など、他の先端分野でも同じように対中規制を広げていく可能性がある。中国が絡む生産活動は今後、極めて困難になる。米国は『台湾有事』を強く懸念し、その備えと、中国への警告を込めて規制を打ち出したのではないか。日本も対応を急ぐべきだ」と分析している。

【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

米政府による半導体関連製品の対中輸出規制の影響を評価するため、米国の複数の半導体製造装置メーカーは中国の半導体大手に派遣している人員を引き揚げ、事業活動を一時停止している。事情に詳しい関係者らが明らかにしました。

米国の半導体製造装置メーカーが長江存儲科技の工場に派遣している数十人の従業員は、同工場の運営や生産能力の拡大で重要な役割を果たしています。事業活動の停止が長引けば、長江存儲科技をはじめとする中国の半導体メーカーは設備のアップグレードやメンテナンスに関する専門知識に加え、チップ開発に必要な次世代技術から切り離されることとなります。

バイデンの新しい制裁はおそらく中国半導体産業の終焉を意味していると考えられます。

多くの人は7日に何が起きたか本当には、理解していないかもしれません。

簡単にいえばバイデンは中国で働く全ての米国人(半導体産業)に即刻ビジネスを止めるか、米国籍を失うかという選択を迫ったのです。

すると中国にある全ての半導体製造企業の米国人幹部やエンジニアはほぼ全員辞職し、中国の半導体製造は一夜にして麻痺状態になったのです。

バイデンの今回の制裁は、トランプ4年間の12回の制裁を合わせたよりも致命的です。

トランプ時代の制裁では半導体供給にはライセンス申請が必要だったものの申請すれば1か月以内に通過していました。

一方バイデンは米国の全てのIPプロバイダー、部品サプライヤー、サービスプロバイダーをほぼ一晩で全て撤退させ、あらゆるサービスを断ち切りました。

大惨事とはまさにこのことです。中国の半導体産業の半分が価値ゼロになって完全に崩壊します。

制裁の対象となる中国の半導体企業は上から下まで生産を全て拒否されることになります。

制裁の出発点は完全に遡及されあらゆる米国製品・技術の使用を排除することを保証しています。

制裁に違反した企業や個人は米国司法省によって直接逮捕です。

中国は2020年以降、韓国や台湾よりも多くの半導体製造装置を購入しています。ところが、2021年の中国の生産キャパシティは154万枚/月で、1位の韓国の221万枚/月、および、2位の台湾の202万枚/月に大きく及んでいません。

なぜこのようなことになっていたのでしょうか。論理的に考えれば、その答えは明らかです。おそらく、中国の半導体工場においては、半導体製造装置の多くが稼働していないか、または稼働していてもその稼働率が極めて低いということです。

要するに、中国の半導体メーカーは、「中国IC産業ファンド」をなどからの手厚い助成金を受け、手当たり次第に半導体製造装置を購入したのですが、それらを有効に活用することができていないのでしょう。

その結果、地域別の生産キャパシティで韓国や台湾に劣り、半導体の自給率も向上しないと思われます。カネだけあっても半導体はできないということである。

そこで、中国は米国人技術者などを雇い、半導体製造装置の稼働率を高めようとしていたのでしょうが、そこにきて、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したのです。

この意味するところをもう一度強調します。

今回の制裁は中国半導体産業の終焉であり、トランプ政権下の恫喝的ながらも、致命傷ではなかったようなやり方とは違う致命的なものです。

生き残る中国企業がいるとすれば最後まで制裁を受けなかった企業だけであり、最後まで制裁を受けた企業は死亡率100%です。

今回の制裁の是非について、中国の半導体製造に関与していた米国人やグリーンカードを保持者のほとんどは米国に戻るか移住して、11月8日の米中間選挙には、自分たちの足で投票所に出向き投票することになるでしょう。これが民主党にとって有利に働くかどうかは、未知数です。今後の推移を見極める必要があるでしょう。 

中国はもはや29nm以下の半導体製造能力を持たず、リソグラフィ(写真の現像技術を応用して作られた微細パターン作成技術のこと)に関する全ての技術を完全に失いました。

中国の次のトレンドは 大型化、重量化です。これからの中国の最新型スマホは、A4サイズの4Gスマホ 重さ3kとなるでしょう。

これだと、何のことかわからないかもしれませんが、日本にも過去に参考になるものがありました。

『ショルダーホン』です。これは重量が約3kgで、文字どおり、肩から下げて持ち運ぶことができ、自動車から離れても利用できる車外兼用型自動車電話でした。

ショルダーホンを背負って会話する女性

これは、昭和60年(1985年)にNTTから発売されたものです。昭和40年代、50年代と比べると技術面の進歩などは目ざましいものがありました。パソコンやワープロなども、パーソナルユースを意識した比較的低価格の製品などが普及しはじめ、あの登美丘高校ダンス部の「バブリーダンス」にも登場します。

NTTの「ショルダーホン」が発売されたのもこの年でした。4月に電電公社から民営化され、新会社となったNTTは技術面でもその先進性を打ち出していました。

もともと車外兼用型自動車電話という位置づけなので、「車載電話だけど、持って歩くこともできます」というような感覚でした。本体価格は2万6,000円と安価ですが、保証金が20万円と高いうえに、当時は通話料もかなり高かったので、まだ誰もが持てるというものではありませんでした。

無論この「ショルダーホン」は会話しかできませんでしたが、今後中国で販売される「ショルダーフォン」は、4G対応のスマートフォンと同程度のことができるものとなるでしょう。

そのため、本体部分にはiPadのような液晶のパネルがつくことになるでしょう。これは、一つの例ですが、今後航空機、船舶、いやありとあらゆる製品が大型化することになるでしょう。

中国海軍などは、文字通り「大艦巨砲の大艦隊」となるかもしれません。ただ、すぐに沈められてしまいそうです。

イギリス戦艦「ロドネイ」の主砲(1940年)

これでは、中国の台湾統一の夢は、ますます遠のきそうです。

宇宙開発は十分できると思います。なにしろ、1970年の技術で米国は人類を月に送り込んだわけですから、中国だって十分できるはずです。ただ、最先端の半導体が手に入らないので、半導体が大きくなる部分のペイロードは少なくなることになります。

それと、もうひとつ朗報があります。今後5GやAIによる監視体制などが進展すれば、さらにデーターセンターがいくつも必要になり、電力が逼迫することも予想されたのですが、そんな心配をする必要もなくなりそうです。

中国はロシアから天然ガスなども輸入できるようなので、今後中国国民は冬の燃料代高騰にも悩まされることなく、AI技術の進歩も止まるどころか後退するかもしれず、監視社会が今以上に強化されることもなく、軍事技術も急速に進歩することもなく、戦争の不安にも怯えることなく、安寧な生活を享受できるかもしれません。国民にとっては過去よりは、良いかもしれません。

ただ、全体主義への不満はさらに高まることになるかもしれません。

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