2022年9月24日土曜日

マスコミ大騒ぎも...円買い介入の効果は「限定的」 本当に切り込むべき仕組み―【私の論評】この秋の補正でみすぼらしい予算しか組まないのなら、岸田首相には来年5月のG7広島サミット後にご勇退いただくべき(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
マスコミ大騒ぎも...円買い介入の効果は「限定的」 本当に切り込むべき仕組み



政府は2022年9月22日、為替介入を行った。同日、日本銀行は金融政策決定会合を開いて、大規模緩和の継続を発表した。

22日の動きを時間を追ってみてみよう。12時少し前に、日銀の金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持というニュースが流れた。為替は二国間の金融政策の差でほとんど決まるので、この日銀の決定は事前の予想通りとしても、円安要因だ。1ドル144円前半で推移していたが、17時少し前には145円後半まで円安にふれた。

そこで、政府(財務省)による為替介入が行われた。一挙に円高方向に動き、一時140円後半まで円高になった。その後、すこしずつ円安に戻り、日付が変わるころには142円前半になっている。要するに、日銀の金融政策決定会合で1円円安になり、介入で3円円高になったわけだ。

フローの為替売買のごく一部でしかない為替介入

もっとも、この介入の効果は、これまでの事例では数日するとなくなるともいわれている。今回の介入は、日本単独で世界各国との協調でもないので、効果はそのうち消えるだろう。というのは、今の為替相場は、大量の資金取引が行われており、フローの為替売買のごく一部でしかない為替介入では効果は自ずと限定的だ。

このような介入に、マスコミは24年ぶりと大騒ぎだ。そもそも介入といっても、具体的には外国為替資金特別会計(外為特会)における外貨証券の売買である。円安是正には保有している外貨証券を売却する。

筆者は、為替介入で大騒ぎするより、この外為特会の仕組みそのものに切り込むべきだと思う。

政府は外為特会で外貨証券を120兆円ほど保有しているが、2021年3月末でのその円貨換算レートは1ドル104円程度だ。となると、単純計算では今の為替レートでは4割程度の数十兆円程度となる評価益がでている。

為替介入が為替相場に与える影響は一時的であるが、円安是正介入による外貨証券売却で巨額の売却益が期待できるので、その財源化には大きな意味がある。

為替市場への影響を避けるために、市中への売却ではなく、対日銀や他の特別会計などの広義の政府内へ売却する方法もあり得る。

外貨証券を売却し、名実ともに正々堂々と変動相場制の国になったほうがいい

そもそも、先進国つまり変動相場制国で日本ほど外貨証券を保有している国はない。恒常的に外貨証券を保有していることで、常に外貨証券購入との「為替操作」をしているとみなされても反論出来ず仕方がない。

あらぬ誤解を招かないように、この際、外貨証券を売却し、名実ともに正々堂々と変動相場制の国になったほうがいい。そして、二国間の金融政策の差で自ずと為替が決まるようにしたほうがいい。

そもそも円安は国全体としてはGDP増加要因だ。これは古今東西、自国通貨安は近隣窮乏化政策として知られて事実だ。その一方、輸入業者等にはマイナスである。しかし、政府が一番利益を享受しているのは知られていない。であれば、政府の利益を困った人に還元するのは当然だ。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

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上の記事で、高橋洋一氏は「その一方、輸入業者等にはマイナスである。しかし、政府が一番利益を享受しているのは知られていない。であれば、政府の利益を困った人に還元するのは当然だ」としています。

これは、どういうことかといえば、現状では中小企業が多い輸入業者が大変であり、さらには日本にはデフレ・ギャップが存在しており、これにも対処しなければならないという2つの側面があります。

1つ目の方は理解しやすいのですが、2つ目については理解しにくいとこもあるのでこれについて説明します。

8月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比2・8%の上昇、総合指数は3・0%上昇となりました。一方、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は1・6%上昇にとどまっています。


生鮮食品を除く指数2・8%は、消費増税の影響を除くと1991年9月(2・8%)以来、30年11カ月ぶりの水準です。資源高や円安が、エネルギー関連や食料品の価格に響いているのが要因です。

総合3・0%は91年11月以来だ。ただし、現状8~9%台の米欧に比べれば低いし、インフレ率の基調を示す生鮮食品とエネルギーを除く指数の1・6%も欧米と比べるとかなり低いです。

エネルギー関連、資材関連などの値上がりは世界情勢を受けたものなので、日本に限らず世界各国共通のインフレ要因ですが、海外依存度の高い日本のインフレ率が低いのは、日本ではマクロ的なGDPギャップ(需給ギャップ)があるからです。

下の図をみていただければ、おわかりになるように、GDPギャップにはインフレギャップと、デフレギャップがありますが、現在の日本の状況は、デフレギャップです。


本来の供給能力が、総需要を超えた状況にあります。政府としては、補正予算を組み、それを実行して、GDPギャップを埋める必要があります。

物価高なのに、そこでさらに経済対策をすれば、さらに物価があがり大変なことになるという議論もあるかもしれませんが、現在の物価高は、海外のコストプッシュが要因なので、誰かが負担せざるを得ないです。

 これを実行すれば、コアコアCPIも上昇するようになりますが、これが上昇しても失業率が上がらないというところで、経済対策をやめれば、インフレによる悪影響を防ぐことができます。

今は円安であり、その利益を享受している組織や機関も存在するので、そこから財源を捻出するのが理にかなっていえるでしょう。

民間輸出企業などは、利益を享受していますが、これらに負担させるようなことはできません。それに、これらは税金を収めますし、いずれ設備投資などもするでしょうから、無理に負担させるなどのことをすれば、自由経済を毀損するだけになります。

円安の利益享受者といえば、外国為替資金特別会計(外為特会)で外債投資をしている政府もが筆頭にあげられます。その為替差益から財源を捻出するのが最優先でしょう。

外為特会の為替差益はかなりあるので、GDPギャップを埋めるために活用すべきです。そもそも政府が儲かっていて、円安で多くの国民が窮するというのは許されないはずです。

ちなみに、為替介入は、すべて財務省所管の「外国為替資金特別会計(外為特会)」の資金を用いて行われ、「ドル買い・円売り介入」の場合、「政府短期証券(FB)」の発行で調達した円を売却し、ドルを買い入れます。

一方、「ドル売り・円買い介入」の場合、外為特会の保有するドルを売却して、円を買い入れます。 後者の場合、外為特会のドル残高が為替介入の限度額となります。参考までに、財務省が公表している外為特会の貸借対照表をみると、資産の部の「外貨預け金」に11.5兆円、「有価証券」に117.9兆円が計上されています(2021年3月31日時点、図表2)。


そうした対策が行われると、インフレ率は数%にまでなるかもしれないですが、一般国民の負担は少ないです。それでも、一次産品の価格は既に低下傾向になっていて、来年以降はインフレ率は収まっていく確率が高いです。

もし政府が適切な対策をしなければ、インフレ率は今より多少上がりつつも、価格転嫁が十分にできずに、コストプッシュによる打撃が企業に悪影響を及ぼすことになります。その場合、雇用への悪影響も避けられないでしょう。

政府が適切な対策を打たないと、目先のインフレは回避できたとしても、その後再びデフレになりかねないです。適切な対策を打てば、一時的にインフレ率は高まるでしょうが、その後の順調な経済回復で、デフレ脱却の絶好の好機となります。

どちらが良いかといえば、後者のほうが良いに決まっています。政府は、今秋に補正予算をくむべきでしょう。

自民党若手有志の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は  7月20日、国による直接の財政支出である「真水」で50兆円規模の2022年度第2次補正予算案の編成を求める提言を、高市早苗(当時)政調会長に手渡ししました。出席者によると、高市氏は「今後の党内議論で議連の努力を期待する」と応じたそうです。 このくらいの補正予算を組めば、日本はデフレから完全脱却することができるでしょう。

一方高橋洋一氏は、デフレ・ギャップを30兆円台であるとしています。これくらいの補正予算を組んで実行すれば、デフレでない状況にはできるでしょう。

一方、内閣府は20兆円超と試算しています。これに対して、高橋洋一氏は低めに見積もっていると指摘しています。

しかし、内閣府が20兆円超と試算しているのですから、岸田政権は少なくとも20兆円を超える補正予算を組むべきです。そうでないと矛盾します。

私として、今秋に岸田政権はすくなくとも20兆円を超える補正予算を組むべきだと思います。これは、少ないですが、それでも来春になってまだ少ないということであれば、また三次補正を組めば何とかなります。

しかし、今秋に数兆円未満のみすぼらしい補正予算を組むようであれば、岸田政権には見切りをつけたほうが良いと思います。来年の5 月のG7広島サミットで岸田総理には勇退していただき、総裁選を行い、新たな首相のもとで、まともな補正予算を組むべきと思います。

そうしないと、経済は悪化し、防衛費もケチり、安保も危ぶまれ、今後ますます支持率が下がり、自民党そのものを毀損しかねません。私自身は、岸田政権は嫌ですが、野党の政権交代はもっと嫌です。そのようなことだけは、避けるべきです。

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