2022年9月5日月曜日

ロシア軍、給与未払いで士気低下 英国防省分析―【私の論評】ロシアの実態を探るには、ソ連崩壊を予想したエマニュエル・トッドのように出生率に注目せよ(゚д゚)!

ロシア軍、給与未払いで士気低下 英国防省分析

ウクライナ南東部マリウポリで、警備に当たるロシア軍兵士=2022年5月18日

 英国防省は4日、ウクライナに侵攻するロシア軍兵士に十分な給与が支払われておらず、不満を持つ兵士の士気が低下しているとの分析を明らかにした。

 ロシア軍の兵士には本給に加え、さまざまなボーナスや手当が支給されることになっているが、ウクライナでは多額の戦闘ボーナスが支払われていない可能性が高いという。英国防省は、非効率な軍の官僚機構や司令官の間にはびこる腐敗などが原因だと指摘した。

 また、ロシア軍はこれまでも、給与のほか制服や武器、食料など基本物資の供給が恒常的に不足しており、これらが間違いなく多くの部隊の士気に影響していると強調した。

【私の論評】ロシアの実態を探るには、ソ連崩壊を予想したエマニュエル・トッドのように出生率に注目せよ(゚д゚)!

ウクライナに侵攻しているロシア兵は、給料未払いどころか、もっと深刻な事態に見舞われているようです。すでに6月の時点で以下のようなことが報道されていました。

ウクライナの情報機関によれば、ウクライナに配備されたロシア軍の兵士たちは、物資不足で食べるものがなく、犬を食べて飢えをしのいでいるというのです。ウクライナ保安庁(SBU)は声明の中で、ロシアの占領下にある南部ヘルソンに駐留しているロシア兵が、友人へのテキストメッセージの中で犬を食べたと明かしたと述べたとされています。

この兵士は、SBUが傍受した友人とのやり取りの中で、「最悪だよ。ウクライナ人たちにボコボコに殴られているし、食べ物がなくて犬を食べている。今日はヨーキーを食べた。ヨークシャー・テリアだ」と愚痴っていたといいます。またこの兵士は友人に、ロシア軍には兵站能力がなくて「単純に食料を運ぶことができず」、それが食料不足を招いているのだと説明していました。

ロシアは2月24日にウクライナ侵攻を開始したが、戦闘開始当初から、軍は物資不足の状態にあったと報じられていました。

SBUによれば、ロシア軍の兵士たちが「携行保存食(MRE)」ではなく犬を食べるようになったのは、MREにはもう「うんざり」だからだといいます。

侵攻当初には、「腹を空かせた」ロシア軍の兵士たちが(ウクライナの)食料品店で略奪をする様子がカメラに捉えられました。食料の「国有化」を主張して、ウクライナの農場から食料を奪った者もいました。またウクライナの複数の村で、ロシア兵が住民に食べ物をくれと懇願したとも報じられていました。

給料未払いというと、ロシア軍により一時的被占領下にあるウクライナ東部マリウポリにて、給与未払いを受けて、市の水道局職員が抗議を行っていたということもありました。

ロシアがウクライナに侵攻するとまもなく、米国や欧州各国は矢継ぎ早にロシアに経済制裁を科しました。

これを受け、ロシア国家統計局をはじめとする政府機関は、さまざまな経済統計の公表を停止しました。輸出入、債務、原油生産量、銀行、航空会社や空港の利用者数など、それまで定期的に報告されていたデータが次々に姿を消しました。

ところが戦争が長引くにつれ、不可解なことが起きました。ロシア経済は予想以上に堅調だとメディアが報じ始めたのです。4-6月期の国内総生産(GDP)が前年同期比4%減にとどまったことや、失業率が3.9%と過去最低を更新したことなどがそれを裏付けているといいます。

このデータの出どころは、米政府や欧州連合(EU)が制裁の効果を測れないよう、わずか6カ月前に経済データの公表をやめたロシア国家統計局です。

しかし、これを額面通りに受け取るのは全くの間違いです。そのようなことより、上のような記事を集めて、仔細に分析するほうが、より正確にロシア経済を分析することができると思います。

エマニュエル・トッド氏

参考になるのは、ソ連崩壊を予想した、エマニエル・トッドの推論方法です。1976年に出版(邦訳は2012年)された『最後の転落』の中で、当時25歳のトッドはミハイル・ゴルバチョフの辞任に伴って1991年に生じることになるソ連の崩壊を予言しました。

ちなみに、エマニュエル・トッドは、この著書を書いたときには、一度もソ連を訪問したことはありません。

そもそも、押さえておきたい事実が2つあります。

ひとつは、当時のソ連は前年終結したベトナム戦争でアメリカが敗北を喫し、また軍拡を続けるブレジネフ政権下という状況でまだまだ安定したシステムを構築しているという主張も根強かったこと。もうひとつは、当時ソ連から西側へ渡ってくる情報は隠ぺいや改ざんの含まれる不確かなものであったということです。

しかし、トッドはソビエト社会主義システム崩壊の兆しをはっきりと感じ取りました。そのきっかけは「乳児死亡率」です。食料供給や暖房・輸送システム、医療・保健条件などを直接に反映する乳児死亡率は、ソ連においても順調に低下していたにもかかわらず、1971年~1974年までの間上昇を続け、そしてとうとうそれ以降は発表されなくなったのです。

食物の生産高や実質所得といった経済的な指標に比べ、シンプルで他国と比較しやすい人口統計。だからこそ、変造は難しく、またそれを見破ることは相対的に容易だと考えられるようです。


ソ連崩壊後の1990年代にロシアを苦しめた出生率の低下と人口減少が、再び深刻化する様相を見せています。新型コロナウイルス禍でロシアの人口は昨年、ソ連崩壊後で最悪の年間100万人以上が減少。さらにウクライナ侵略が長期化するなか、ロシアはプーチン政権発足後で最大の経済の落ち込みが見込まれており、社会不安の高まりが女性の出産を抑制すると予想されているためのようです。

プーチン大統領は10人以上の子供を育てた母親を「英雄」として表彰しているが、その効果は大きくなさそうだ

ただ、人口減少は移民を除いた人数であり、移民を含めればロシアの人口は必ずしも減少傾向にはありません。ただ、ロシアに流入する移民の大半は単純労働を目的とした旧ソ連の中央アジアからとみられ、ロシアからの頭脳流出を補う動きとはいえません。欧米やほかの先進国の多くはウクライナ侵略を受け、ロシアとの対立を深めており、これらの国々からは移民どころかロシアに入国することすらままならない状況です。

そのようななか、ロシア当局が不気味ともいえる動きを見せているのがウクライナにおけるロシア軍の占領地域でのパスポート付与や、住民拉致の動きです。

街を完全に破壊し、占領下においた南東部マリウポリでは、攻撃で行き場を失った市民らが露軍の誘導で親ロシア派武装勢力の支配地域に連れていかれ、さらにそこからロシア各地に送られている実態が明るみに出ています。

プーチンはさらに、占領地域の保護施設にいる子供へのロシア国籍付与を簡素化する大統領令に署名したとも報じられています。戦争で親を失った子供たちが、何も知らないままにロシア人になることを強要するもので、取り返しのつかない人権侵害につながるのは必至です。

ウクライナの戦線に駆り出される兵士の多くは地方都市や少数民族出身者である実態が明るみに出ており、モスクワなど大都市は一見、平穏が保たれているといいます。ただ、幼い子供を育てる親たちは社会の変化を敏感に感じ取り、無理な出産を避けるなど家庭を守る行動に出るのは確実です。プーチン政権がソ連時代さながらの手法で出産をあおっても、若い親たちの心を動かすことは容易ではないようです。

今後、ロシアの現状を知るには、出生率などに注目すべきと思います。ロシア政府の出す、GDPなどの資料を真に受けていては、みすみすロシアのプロパガンダに手を貸すようなものです。

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