治安部隊に拘束された抗議デモ参加者(21日、モスクワ) |
プーチン氏が21日の演説で部分動員を発表してから間もなく、SNS(交流サイト)上には、兵役義務者に届いたという出頭命令書の写真が相次ぎ投稿された。
ロシアは18~27歳の男性に通常1年間の兵役義務を課している。学生や健康状態によっては免除される。今回の部分動員は侵攻するウクライナで不足する兵員を補うためで、特別な軍事技術・経験などを持つ予備役が対象となる見通し。
ロシアの有力紙RBKによると、トルコやアゼルバイジャン、アルメニアなど近隣諸国に向かう21日と22日発の航空便のチケットが瞬く間に売り切れた。23日以降の価格も急上昇しているという。
プーチン氏は21日の演説で、ウクライナの占領地域のロシア編入の是非を問う住民投票実施への支持も表明した。
主要7カ国(G7)は21日、国連総会開催中の米ニューヨークで外相会合を開き、「いかさまの住民投票」と糾弾した。各国に対して住民投票を非難し、結果を承認しないよう呼びかけた。ロシアに対する追加制裁も検討する。
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、国連総会の一般討論演説で対ロ制裁強化と国連安全保障理事会でのロシアの拒否権剝奪を求めた。
【私の論評】ロシアは第2の「ロシア革命」前夜か(゚д゚)!
下の写真は、モスクワの男性に届いた予備役招集の「赤紙」と思われる召喚状。9月23日午前10時までにモスクワ市内の徴兵司令部に来るように指示されています。ジャーナリストのパルハメンコ氏が公表したものです。不思議ですが、一昨日届いてたとのことです。さらにロシア各地で反対集会が開かれ、次々にデモ隊メンバーが拘束されています。
下は、今回の予備役徴集に反対する人々のデモです。
In #Moscow, #Russia, there is a #protest rally taking place tonight against the mobilisation, announced by Putin earlier today. Protesters chant “No to War!”.
— Alex Kokcharov (@AlexKokcharov) September 21, 2022
pic.twitter.com/I0ug4D77DM
予備役招集にまで至り、とうとう反戦活動が本格化してきたようです。
ただ、「2500万人の予備役」というと、下の人口ビラミッドをご覧いただければわかりますが、これはロシアの20-45歳の男性人口とほぼ同等なので、これを順次動員した場合、ロシアの社会機能をどんどん削っていくに等しいです。補給能力その他を考慮すれば「30万人は第1波」というよりそれ以上を同時動員するのは困難とみるのが妥当だと思います。
ロシア軍がいま直面しているのはマンパワーの問題かもしれないですが、そもそもロシア軍がマンパワーで問題を抱えるに至った原因は別にあって、それはいくら予備役を追加招集したとしてみも簡単に解決するようなものではないので、30万人動員したところで、すぐに戦局がひっくり返せるとは考えられません。
ソ連時代と違って現在のロシア軍には素人を兵隊に仕立てることを含めた戦時総動員システムと呼べるものが整備されていないですから、短期的には予備役動員しかできないし、規模も限定的です。しかも、悪いことには、予備役を訓練するはずだった、職業軍人、しかも経験を積んだ将兵がすでに、戦死したか、負傷しています。
それに、そもそも30万人の動員計画がどのようなものかわからないです。どのくらいの期間で人員を投入する予定なのかも示されていません。
おそらく、今回の予備役招集の人数が多すぎると批判が出ますが、少なすぎると役に立たず、反発が出ないギリギリの数にしたのではないかと考えられます。
今後、これら予備役をロシアに編入した地域の防衛に使うのか、未制圧市域に使うのか、予備役の使い方で今後の“戦闘の出口”の考え方がみえてくることになりそうです。
今後部分動員による予備役招集・再訓練・戦力化のサイクルが回るようになれば、段階的に規模を拡大して事実上の総動員への道を開き、30万人徴集して1年程度戦わせ、それが終了すれば、次の30万を戦わせるというなサイクルを考えているのかもしれません。先の30万人の一部は、新兵の訓練にあたるなどのことを考えているのかもしれません。
そのサイクルが出来上がれば、理屈の上では、 計算上は、2500万÷30万=83年戦争ができることにはなり、今回のウクライナ侵略には、十分とも考えられますが、そのようなことは不可能ではないかもしれないですが、ロシアの経済と社会インフラがそこまで持つかはかなり疑わしいです。
そもそも、この30万人は戦争にだけ従事するわけで、これらに人々一人ひとりに日々3千カロリーの食料を提供し、その他水や、武器・弾薬を提供し、一時的な住居を提供し、車両のガソリンや、冬季の暖房なども提供しなければなりません。しかもこれらをウクライナに運ばなければなりません。このような、兵站をロシア軍はまともに考えてるのでしようか。過去の戦いを見る限りそうではないようです。
兵站というと、以前にもこのブログで解説したように、ロシア軍の兵站はほぼ鉄道に頼っています。そうして、ロシアの鉄道はモスクワを中心として路線が走っています。すべての乗客や、物資はモスクワに集まり、それが全国に運ばれることになります。
ウクライナに送る兵隊や物資かなり大きな部分が全国からモスクワに集められ、そこから運ばれるわけです。そうなると、予備役の多くは、一度モスクワに集まり、そこで訓練を受け、ウクライナに送られるというのが、最も効率的ということになります。
モスクワに多数の予備役が、集まればどういうことになるでしょうか。過去にも同じようなことがありました。ロシアでは過去においても、予備役を多数集めた時期がありました。それはロシア革命の頃です。
当時も、不満を持った予備役が多数モスクワに結集し、しかも武器・弾薬までがモスクワに結集していたわけですから、それが多くの革命家に焚きつけられれば、どういうことになるか。言わずと知れた「ロシア革命」です。実際、ロシア革命には多くの予備役が参加したとされています。
現状のロシアは、そのような状況になりつつあります。
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