ポーランドのグダニスクから見たバルト海 |
ポーランドは17日、バルト海(Baltic Sea)から同国北部のエルブロンク(Elblag)港まで、ロシアの領海を迂回(うかい)して入港できる運河を開通させた。
エルブロンクは、地峡と呼ばれる細長い陸地によってバルト海と隔てられている。これまではロシアのカリーニングラード湾(Kaliningrad Bay)にあるバルティスク(Baltiisk)の近くを航行するほかなく、ロシア当局の許可を要した。新たな運河は、ポーランドの町クリニツァモルスカ(Krynica Morska)の西方約5キロの同国領内を通っている。
17日の開通式に出席したアンジェイ・ドゥダ(Andrzej Duda)大統領は「わが国に対して友好的でない国の認可をこれ以上求めずに済むよう、このルートを開通させたかった」と述べた。
当面、新運河を航行できるのは小型船のみだが、ポーランド当局によると来年9月までに全長100メートル、幅20メートルまでの船舶の航行を可能にするため引き続き、総額20億ズロチ(約610億円)規模の工事が行われている。
一方、環境保護活動家などからは、運河の建設によってビスラニー湾(Wislany Bay)の塩分濃度が変化し、生態系が脅かされるとの批判が上がっている。
【私の論評】NATO艦隊がヴィスワ潟湖を利用できれば、ロシアとしては心穏やかではない(゚д゚)!
上の記事では、地図がないので、何を言っているのかよくわからない人も多かったのではないかと思います。下に掲載した地図をご覧いただければ、良くご理解いただけるのではないかと思います。従来の航路では、ポーランドの船は、ロシアの飛び地であるカリーニングラードの領海および内水の通過航行許可を取得してポーランドのエルブ ロング港まで航行しなければならなかったが、ヴィスワ砂州横断運河が完成し、ロシア領海および内水の通 過航行許可は必要なくなるということです。
下は、ヴィスワ砂州横断運河の予想図です。予想図の奥がバルト海、手前がヴィスワ潟湖。2つの旋回橋で交通が制御、水門で水位が調整さ
れます。
バルト海からポーランド領域内でのヴィスワ潟湖へのアクセスを実現するプランは、第二次世界大戦後の早い時期から存在していました。1945年には、戦前に商工省大臣、副首相兼財務大臣を歴任しグディニャ港の建設を主導したエウゲニウシュ・クファトコフスキがヴィスワ砂州横断運河建設を計画したが、実現には至りませんでした。
現在でも、この計画には、バルト海からヴィスワ潟湖への唯一の海峡を有しその航行の既得権を持つロシア側からの強い反発があります。また、ヴィスワ潟湖の生態系を破壊し、自然環境が悪化するという内外の反発も強いです。
世界で唯一のエロブロンク運河の水陸両用挺 |
しかしながら、ポーランド政府は、2022年頃の完成を目指して、着々と準備を進めてきました。ヴィスワ砂州横断運河が完成し、エルブロンク港が整備されたとして、それが経済的にどのくらい波及効果を持つかという問題もありますが、少なくとも、ポーランドとロシア(カリーニングラード)をまたぐ潟湖へのバルト海からの進入のコントロール権は、ロシアの独占が崩れることになります。特に、NATOの艦隊がここを利用できることになれば、ロシアとしては心穏やかでなないでしょう。
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