エリザベス・トラス氏 |
英国の与党保守党の新党首に選出されたエリザベス・トラス外相(47)は6日、エリザベス女王(96)の任命を受け新首相に就任する。マーガレット・サッチャー元首相、テリーザ・メイ前首相に続き、英国史上3人目の女性首相となる。日本政府は、外交・安全保障、経済面などで英国との関係強化を進めており、「日英同盟の絆」の復活が注目される。航空自衛隊の次期戦闘機の共同開発も加速しそうだ。
「この厳しい時代を乗り越え、経済を成長させ、英国の潜在能力を発揮させるため、大胆な行動を起こす」
トラス氏は党首選出後、ツイッターでこう決意表明した。
首相への任命は、エリザベス女王が滞在する北部スコットランドのバルモラル城で行われる。任命後はロンドンに戻り、首相として初の演説に臨む。
トラス氏は、「小さな政府」を志向して「英国病」と呼ばれた経済を新自由主義的な政策で立て直した「サッチャリズム」を信奉。党首選討論会でも、「最も尊敬する政治家はサッチャー氏」と明言するなど、「新・鉄の女」と評されている。
岸田文雄首相は5日、自身のツイッターに「心から祝意を表します。トラス党首が強いリーダーシップの下、英国を導いていくことを期待しています」と投稿した。
日英関係は近年、安全保障や経済分野での連携を強めている。
昨年8月には、英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群と海上自衛隊が沖縄南方で共同訓練を行い、同9月に、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に入港した。空自のF2戦闘機の後継機も、日英で共同開発する方針。英国は今年6月、東京電力福島第1原発事故後に導入した日本産食品の輸入規制を撤廃した。
『日本が感謝された日英同盟』(産経新聞出版)という著書がある軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「トラス氏が選ばれた背景には、欧州連合(EU)離脱以来、英国のリーダーには外交力が求められている側面がある。こうしたなか、安全保障上、最も重要な戦闘機を日英で共同開発するメリットは大きい。今後、共同開発する装備品が広がる可能性もある。これらを世界に販売して経済的利益も得られる。日英両国とも『日英同盟の時代』は絶頂期だった。利害が一致こそすれ、衝突することがなかった。『第2次日英同盟』が期待される」と語った。
「この厳しい時代を乗り越え、経済を成長させ、英国の潜在能力を発揮させるため、大胆な行動を起こす」
トラス氏は党首選出後、ツイッターでこう決意表明した。
首相への任命は、エリザベス女王が滞在する北部スコットランドのバルモラル城で行われる。任命後はロンドンに戻り、首相として初の演説に臨む。
トラス氏は、「小さな政府」を志向して「英国病」と呼ばれた経済を新自由主義的な政策で立て直した「サッチャリズム」を信奉。党首選討論会でも、「最も尊敬する政治家はサッチャー氏」と明言するなど、「新・鉄の女」と評されている。
岸田文雄首相は5日、自身のツイッターに「心から祝意を表します。トラス党首が強いリーダーシップの下、英国を導いていくことを期待しています」と投稿した。
日英関係は近年、安全保障や経済分野での連携を強めている。
昨年8月には、英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群と海上自衛隊が沖縄南方で共同訓練を行い、同9月に、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に入港した。空自のF2戦闘機の後継機も、日英で共同開発する方針。英国は今年6月、東京電力福島第1原発事故後に導入した日本産食品の輸入規制を撤廃した。
『日本が感謝された日英同盟』(産経新聞出版)という著書がある軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「トラス氏が選ばれた背景には、欧州連合(EU)離脱以来、英国のリーダーには外交力が求められている側面がある。こうしたなか、安全保障上、最も重要な戦闘機を日英で共同開発するメリットは大きい。今後、共同開発する装備品が広がる可能性もある。これらを世界に販売して経済的利益も得られる。日英両国とも『日英同盟の時代』は絶頂期だった。利害が一致こそすれ、衝突することがなかった。『第2次日英同盟』が期待される」と語った。
【私の論評】トラス首相は前首相と同じか、それ以上に中露に厳しく対峙する(゚д゚)!
新首相がまず直面する課題は、ウクライナ侵攻への対処となります。ジョンソン政権は8月下旬、最新型無人機2千機を含む5400万ポンド(約87億円)相当の追加支援を発表。英国の軍事援助は米国に次ぐ2位の累計約23億ポンドに上り、英国は米国とともにウクライナ支援を牽引してきました。
トラス氏は党首選で「露軍をウクライナ全土から押し出さなければならない」と述べ、支援を拡大すると強調。「民主主義国家を弱体化させようとするロシアの企てを明らかにする」として、露内部の情報収集も強化する姿勢も示しました。
ウクライナ侵攻の影響は国民生活を直撃していま。エネルギーを中心に物価高騰が収まらず、7月のインフレ率は10%に達し、1982年以来約40年ぶりの高水準を記録。2022年後半にも景気後退入りする恐れが強まりました。
「経済がさらに悪化すれば、ウクライナ支援の勢いが鈍る」(保守党党員)との懸念もくすぶりだしています。トラス氏は対策として年間300億ポンド規模の減税を公約に掲げました。法人税率引き上げを凍結する方針も示していますが、減税で消費が刺激されれば逆にインフレを招く恐れがあります。
サッチャー誕生のきっかけとなった1970年代のインフレは25%に達し、4つの政権と4人の首相が交代した。光熱費、食費は300%近く上昇した。金利が17%に達した時、インフレは初めて終焉したが、その代償として大量の失業者が街にあふれました。
トラス氏がインフレ退治を怠って慢性化させれば、英国経済は大ダメージを受けます。トラス氏はかつて核軍縮運動に参加し、オックスフォード大学では弁論団体オックスフォード・ユニオンで自由民主党のリーダーを務めたこともある。リベラルから保守への変節と首相就任を一番嘆いているのは左翼でリーズ大学名誉教授の父ジョン・トラス氏なのかもしれないです。
ジョンソン政権は昨春発表した新たな外交・安全保障政策指針に、中国の影響力拡大をにらんで、インド太平洋地域への関与強化を明記。日本との連携も重視してきました。ところが、ウクライナ侵攻や経済低迷が長引けば、「インド太平洋に関与しようという英国の野心が抑制される可能性がある」(英王立国際問題研究所のデビッド・ローレンス特別研究員)とも分析されまています。
国内では中国に対する経済的依存からの脱却の可否も注目されています。通信機器や衣料品などの対中依存は高まっており、物品・サービスの中国からの年間輸入額(21年)はジョンソン氏が首相に就任した19年から150億ポンド以上増えました。
英メディアによると、トラス氏は中国を国家安全保障に対する「脅威」と定義し、対中依存脱却に注力する方針です。中国を含めた権威主義国家への技術輸出を制限するほか、中国当局への利用者情報の流出が懸念される動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」など、中国系IT企業の取り締まりを強化する考えも示しています。
サッチャー氏(左)とトラス氏 |
旧ソ連から「鉄の女」と恐れられた故マーガレット・サッチャー首相を意識するトラス氏は昨年12月、権威主義国家の中国とロシアを念頭に「今こそ自由世界は反撃し、経済とテクノロジーの力を使って恐怖ではなく自由を促進する時だ」と呼びかけました。
トラス氏は中露の冒険主義を抑える方法として西側が安全保障だけでなく、経済、テクノロジーで団結する「自由のフロンティア」を築き、「同じ考えを持つ」世界中の国々が協力する必要性を強調する。保守党下院議員には、首相になった暁には中国新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧を「ジェノサイド(民族浄化)」と公式に認めると約束したとされます。
対中国抑止のために日米と連携したインド太平洋戦略の継承も焦点となっています。世界で影響力の拡大を目指す「グローバル・ブリテン」戦略を発展させられるかが問われます。
トラス氏の外相時代の発言など、【私の論評】にその内容を含む記事をいくつか掲載しましたが、中露に対しては「地政学的」な立場からその危険性を主張しています。
トラス首相はジョンソン前首相と同じく、あるいはそれ以上に中露に厳しく対峙するのは間違いなさそうです。
【私の論評】
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