2022年9月9日金曜日

マネタリーベースが減少傾向、日本経済を良くするためは コロナ対応がなくなっても国債購入増で金融緩和維持を―【私の論評】政府は国債を大量発行し、防衛費増額、需給ギャップを埋める政策を速やかに実行し国民の不安を解消せよ(゚д゚)!

日本の解き方





 日銀が発表した8月のマネタリーベース(日銀が供給するお金の量)残高が前年同月比2・5%減と10年5カ月ぶりに前年同月の水準を下回った。

 マネタリーベースには、月中平均残高と月末残高があり、8月の平残は前年同月比0・4%増の659兆7138億円、末残は同2・5%減の644兆9826億円だった。末残の前年同月比がマイナスだったのは2012年3月以来だ。

 黒田東彦(はるひこ)氏が日銀総裁に就任した13年3月以降、1年ごとに、マネタリーベース平残の前年同月比の推移を見てみよう。13年が40・8%増、14年が41・3%増、15年が32・8%増、16年が24・0%増、17年が15・2%増、18年が6・5%増、19年が3・3%増、20年が11・7%増、21年が14・3%増、22年が4・4%増となっている。

 伸びが鈍ったのは、16年9月からイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を行って以降だ。その後、20年5月から安倍晋三元首相のいう「政府と日銀の連合軍」で、政府が国債発行、日銀は市場でそれを購入するとともに、コロナ対応の日銀貸出により盛り返したが、最近また伸びを欠いている。末残は今年4月の683兆4030億円をピークとして、それ以降は減少している。

 マネタリーベースは日銀のバランスシート(貸借対照表)の負債であり、資産の国債と貸付金にほぼ対応している。日銀が金融機関から国債を購入すれば、金融機関の日銀当座預金増となる。また、日銀が金融機関に貸出をすれば、それも日銀当座預金増になるからだ。

 20年のコロナ禍以前には、マネタリーベース増は日銀の国債購入増にほぼ対応していた。しかし、コロナ禍以降、日銀貸出が増加し、マネタリーベース増は国債購入増と貸出増に対応している。ちなみに、日銀貸出残高は、20年3月末に54兆3286億円だったが、22年3月末に151兆5328億円まで増加した。その後は、コロナ禍が収まりつつあるので、8月末で102兆4236億円まで急減している。

 日銀の国債残高は、20年3月末に485兆9181億円、22年3月末に526兆1736億円、同8月末で547兆6088億円だ。マネタリーベースは20年3月末に509兆8069億円、22年3月末に688兆327億円、同8月末で644兆9826億円となっている。

 要するに、最近におけるマネタリーベースの減少は、コロナ禍での日銀貸出がコロナの落ち着きとともに減少したためだ。

 コロナが経済に与える影響が少なくなっているのは朗報であるが、コロナ対応のための金融緩和要因はなくなりつつある。

 ウクライナへのロシア侵攻により世界では物価高になっているが、日銀はその日本への波及を恐れて、金融緩和に積極的でないようにみえる。コロナ対応がなくなっても、国債購入増で金融緩和を維持したほうが、日本経済にとってはいいだろう。日銀も、長期国債買入オペについて入札回数を増やすなど微修正して買入増を狙っているが、それでも力不足である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】政府は国債を大量発行し、防衛費増額、需給ギャップを埋める政策を速やかに実行し国民の不安を解消せよ(゚д゚)!

マネタリーベースとは、日本銀行が供給する資金量を示す指標です。「資金供給量」ともいい、紙幣と貨幣の発行高(現金)と、金融機関が決済などのために日銀に預けている当座預金残高の合計です。

マネタリーベース

国・金融機関以外の企業や家計など民間部門が保有する通貨の総量を示すマネーストック(旧マネーサプライ=通貨供給量)とは異なります。日銀は新たな量的緩和策で、金融政策の操作目標を従来の無担保コール翌日物の金利から、マネタリーベースに改めました。

日銀は不景気のときは金融機関が持つ国債を買い上げ、マネタリーベースを増やして経済を刺激しようとする。一方、景気が過熱しているときは、日銀が持つ国債を金融機関に売り払って資金を吸い上げる。マネタリーベースを減らすことで過度のインフレやバブルの発生を防ぎ、安定的な経済成長に誘導する。

日銀は国債の売り買いによって当座預金残高を直接動かせるので、マネタリーベースは金融政策の姿勢を示す一つの指標になります。2013 年3月のマネタリーベース(月中平均)は前年同月比19.8%増の134兆円で過去最高を記録しました。うち現金は87兆円で、当座預金は47兆円。従来の金融緩和でも既に大量の資金が供給されたことを示すものでした。

マネタリーベースを増やす背景には、利子が低い日銀の当座預金が積み上がれば、金融機関がもっと金利水準の高い企業への貸し出しや、収益率の高い株式や不動産投資信託(REIT)などに資金を回すようになり、経済が活性化するという考え方がありました。

さて今年8月のマネタリーベースの内訳は日銀当預が0.1%減の534兆4467億円、紙幣は3.0%増の120兆3622億円。貨幣は2.6%減の4兆9049億円と、現金両替時の手数料徴収が広がる中、上の記事にもあるように、過去最大の減少率が続いています。

8月末のマネタリーベース残高は644兆9826億円で、前月の665兆9614億円を大幅に下回りました。前年比2.5%減で12年3月以来のマイナス転換。日銀当座預金は519兆6523億円。

8月はコロナオペによる新規貸し出し1兆1713億円に対して、期落ちは約20兆5000億円に上りました。今後も期落ちが続き、マネタリーベースの平残は9月にも前年比マイナスに転じるとみられています。

日銀はマネタリーベースについて、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を掲げています。

その下でマネタリーベースは増加基調をたどり、コロナオペ導入後は、金融機関の積極的な利用で増加ペースが高まり、2020年8月から21年9月まで伸び率は10%を超えました。

コロナオペの制度縮小でマネタリーベースが減少しても、日銀はオーバーシュート型コミットメントには矛盾しないとの立場です。黒田東彦総裁は今年1月の記者会見で、オーバーシュート型コミットメントは「あくまでも(マネタリーベースの)拡大方針」と述べ、「短期的には振れたり一時的にマイナスになったりすることがあったとしても、基本的にマネタリーベースの拡大方針を続けることのコミットメントの意味は大きい」としました。

日銀黒田総裁

この言葉通りに、マネタリーベースの拡大を続けていただきたいものです。これを実行するために、政府は補正予算を組んで、防衛費増額やこのブログにも何度か掲載してきたように、需給ギャップ30兆円の解消などにあてるべきです。

そうして、財源は政府が国債を大量に発行して、日銀は国債購入増で金融緩和を維持すべきです。日本経済にとっては良いに決まっています。

ただ、そのような気配が全くみえず、「国葬」や「旧統一教会」などの問題といえるかも良くわからない問題に拘泥している政局に多くの人が不安を感じているようです。

これは、企業経営者は無論のこと、一般の人にも及んでいるようです。たとえば、結婚する意思があるかどうかを、独身の男女(18~34歳)に聞いたところ「一生結婚するつもりはない」と答えた男性は17・3%、女性は14・6%で、ともに過去最高だったことが2021年の「出生動向基本調査」で明らかになりました。国立社会保障・人口問題研究所が9日発表しました。男女とも、少子化の要因になっている未婚化・非婚化志向が一層加速していることをうかがわせました。


このことが、現在の政局の反映であるのかは、わかりませんが、それにしても現状のように、テレビをつければ、政府や野党は「国葬」、「旧統一教会」一色で、それに中露北の危険性についても煽られ、これでは不安を感じるなと言う方が無理だと思います。

政府は、国民の不安を払拭するためにも、エネルギー問題の解消、防衛費の増額、経済対策の実行などで、国民を安心させる政策を実行すべきです。これを実現するには、お金は必要不可欠であり、それを得るために、国債を大量に発行して、日銀は国債購入増で金融緩和を維持すべきです。

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