2022年7月16日土曜日

財務省と日銀の巨大組織 アベノミクス継承しなければ金融と財政の引き締め復活、日本は新たに失われた時代に―【私の論評】真の安倍晋三の後継者が成し遂げるべき困難な仕事とは(゚д゚)!


安倍晋三元首相

 安倍晋三元首相の大きな功績の一つがアベノミクスだ。

 (1)金融政策(2)財政政策(3)成長戦略という構成で、(1)と(2)がマクロ経済政策、(3)はミクロ経済政策といずれも世界標準である。特に、(1)を筆頭に掲げたのは日本史上初めてで、世界からも認知された。日本のマスコミではあまり報じられなかったが、ノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマン氏らも高く評価していた。

 その実績も、国民にとって最も重要な雇用の確保において、歴代政権の中でも断トツの成績だ。マクロ経済は雇用の確保のためにあると言ってもいい。

 雇用の確保は、失業率の低下と就業者数の増加で見ることができる。戦後の統計でみると、歴代政権の中で、安倍政権は失業率の低下が1・5%で第1位、就業者数の増加が400万人で第2位の実績だ。

 雇用については就業者数、正規・非正規雇用の増加、名目賃金で、民主党政権とは段違いに実績がいい。実質賃金では多少見劣りがするが、これは雇用回復期に見られる現象であり、もう少し時間があれば、雇用回復のペースから考えてもいい成績になっただろう。政策の方向性は正しかったと評価できる。

 外交・安全保障でも安倍政策は傑出していた。1次政権のころから温めていた日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による戦略的枠組み「クアッド」や「自由で開かれたインド太平洋」という言葉は、これからも国際政治で色あせることはないだろう。

 筆者は、財務省が財政データに基づかずに財政危機をあおってきたことを長年主張してきたが、最近これに賛同する政治家が増えつつある。いつかは、安倍元首相のように財務省をも説得できる政治家が出てくることを期待したい。

 現下の経済情勢で、円安是正のために金融引き締めすべきだとの意見も出始めている。出所の多くは市場変動でひと山当てたい市場関係者で、日本経済を考えたものとはいえない。

 もし金融引き締めすれば、たしかに円高になるだろう。しかし、円安で日本の国内総生産(GDP)が増大するというメリットが失われる。それは、GDPを減少させ、いま30兆円程度あるGDPギャップ(総需要と総供給の差)をさらに拡大させ、雇用を失わせるだろう。いまデフレから脱却しつつあるが、再びデフレに逆戻りしかねない。

 さらに、財務省がひそかにたくらむ「コロナ増税」もGDP減少要因となる。コロナ対策は、安倍元首相のいう「政府・日銀の連合軍」で実行された。発行された100兆円は最終的には日銀が保有しているので、償還負担も利払い負担もない。これを安倍元首相は、「日銀は子会社のようなもの」と比喩したが、その部分だけがマスコミで批判され、安倍元首相が言いたかった肝心要の「債務負担も利払い負担もない」はすり替えられた。安倍元首相の発言を否定したのは財務省であり、コロナ増税の思惑が見え隠れしている。

 1990年代以降、日本のGDP(および給料)が増えなかったのは、日本全体のマネー不足だ。これは、世界の中でも日本のマネー伸び率は極端に低いためで、マネー伸び率と経済成長率との間に一定の相関があることからもわかる。

 その原因は、日銀の金融引き締めすぎと財務省の財政引き締めすぎである。アベノミクスを継承しないと、金融と財政の引き締めが復活して、日本は新たに失われた時代になるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】真の安倍晋三の後継者が成し遂げるべき困難な仕事とは(゚д゚)!

上の髙橋洋一氏のアベノミックスは、(1)金融政策(2)財政政策(3)成長戦略という構成で、(1)と(2)がマクロ経済政策、(3)はミクロ経済政策といずれも世界標準であるという指摘は全く正しいです。

そうして経済対策としては、景気が悪ければ、金融緩和と積極財政を行い、景気が加熱すれば、金融引締と、緊縮財政を行うというのは世界標準である上に、すでに原理原則と言って良いです。これ以外のことを実行して成功した国は古今東西にありません。高校の政治経済の教科書にもこの原理原則は述べらています。

また、世界中の標準的なマクロ経済の教科書にも、私が知る限りではそう書かれています。そうではない教科書があるのをご存知の方は是非教えて下さい。

それについては、以前このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
金融緩和への奇妙な反対論 マスコミではいまだ「日銀理論」の信奉者、デフレの責任回避の背景も―【私の論評】財政・金融政策は意見ではなく、原理原則を実体経済に適用することで実行されるべきもの(゚д゚)!

日銀

原理原則とは誰もが単純に理解できるものでなければ、原理原則になり得ません。ただし、原理原則が成立するまでには、科学的検証はもとより、様々な経験や失敗があり、その上に原理原則が成立し、高校や大学の教科書などにも記載されているのです。

そうして、財政政策の原理原則も簡単です。景気が悪ければ、積極財政と金融緩和を、景気が良ければ、緊縮財政と金融引締をするというものです。

そうして、景気の状況を見分ける原理原則も簡単です。一番重要なのは、失業率です。たとえば、景気が悪い時には失業率があがります。そうなれば、積極財政や金融緩和を行います。それで失業率が下がり始めますが、ある時点になれば、積極財政や金融緩和をしても、物価は上がるものの、失業率は下がらなくなります。その時点になったことが、はっきりすれば、積極財政や金融緩和をやめれば良いのです。

反対に景気が過熱してはっきりとしたインフレ状況の場合は、緊縮財政、金融引締を行います。そうすると、物価が下がり始めます、しかしこれも継続していると、やかで物価は下がらず、失業率が上がっていく状況になります。そうなれば、緊縮財政、金融引締をやめます。
現在では、これは誰にでも理解できると思います。 ただ世界恐慌(1929年に始まり、1930年代後半まで)の時にはこれが理解されていなかったようです。1990年代の研究で、世界恐慌の原因はデフレであったことが明らかになっています。

その後世界では、ケインズをはじめ様々な経済学者により、先程述べたような経済対策の原理原則を樹立して今日に至っています。

その意味では、アベノミックスは原理原則に基づいた経済政策であり、何も新しいことはありません。ただし、失われた30年のさなかにあった日本でそれを実行したことが素晴らしいと評価されているのです。


そうして、安倍元総理があげた(2)財政政策は、当然のことなが積極財政を貫くつもりであったでしょう。しかし、実際には総理在籍中に2度の消費税増税見送りはしたものの、結局2度も消費税増税をして、現在消費税率は10%です。これは、計算が楽で、計算が得意な日本人なら、100円のものを買うなら消費税は10円であるとすぐに計算できてしまいます。

このような消費増税を安倍元総理は決してしたくはなかったでしょう。1回目の消費増税のときも、大勢のエコノミストと呼ばれるような人たちは「増税しても大丈夫だ、影響は軽微だ」と言っていました。

上の記事を書いた高橋洋一氏が、当時の安倍総理に「あれは嘘だったでしょう」と言ったら、「そうだったね」と語っていたそうです。それでも2回目の消費税増税を実施したわけですが。「三党合意があってどうしようもないのだ」ということを言っていたそうです。それと、「自民党のなかには増税派がたくさんいるので大変なのだ」ということも言っていたそうです。

この2回の増税は、安倍総理の最大の心残りだったと思います。

岸田首相

岸田首相は(自民党総裁)は10日夜の報道番組で以下のような発言をしています。

 安倍元首相に改めて哀悼の誠をささげたい。民主主義の基盤である選挙の有りようが問われている。多くの皆さんに協力をいただき、選挙を完結できたことは、大きな意味がある。民主主義を守るためにも引き続き努力を続けていきたい。

 新型コロナウイルス、価格高騰対策など大きな課題に取り組んだ上で、経済再生に向けて努力をしていく。

 新規感染者の数は増えているが、病床使用率は低水準で推移している。医療提供体制は維持したまま、一歩一歩、経済・社会活動を動かしていく。平時への移行を進めていく。新たな行動制限は今、考えていない。

 多くの国民が物価高騰に大きな関心を持っている。政府が責任を持って、エネルギー価格と食料価格の高騰に対してピンポイントで政策を用意する。賃金の引き上げも進めていく。この二つをセットで行う。

 憲法改正について、自民党が提案するたたき台素案は、現代的な喫緊の課題だ。国民の理解を得るため、国会で議論を深め、発議できる案をまとめる努力に集中したい。(憲法改正の国会発議に必要な)3分の2を集約できるよう努力したい。

 防衛費に関しては、対GDP(国内総生産)比2%という数字を念頭に置きながら、5年間で充実していく。まずは国民の命や暮らしを守るために何が必要なのかを明らかにし、積み上げていく。年末にかけて必要な予算を確保する。
岸田首相は14日の記者会見で、原発の再稼働について、萩生田光一経済産業相に対し、最大9基の稼働を進め、国内の電力消費量の約1割に相当する分を確保するよう指示したことを明らかにした。また、今夏の節電については「全国で10以上の火力発電所の運転が次々と再開し、電力の安定供給を確保する見通しが立った。熱中症も懸念されるこの夏は、無理な節電をせず、クーラーを上手に使いながら、乗り越えていただきたい」と呼びかけました。

演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍元総理大臣について、岸田総理大臣は、歴代最長の期間、総理大臣の重責を担い、内政・外交で大きな実績を残したなどとして、ことしの秋に国葬を行う方針を表明しました。

さらに、外交や安全保障については、宏池会が親中派が多いということで、心配する方も多いですが、台湾の地元メディア「聯合新聞網」によると、岸田氏の曽祖父・岸田幾太郎氏は1895年から1899年にかけて基隆市を開発。「信二路義二路口で『岸田呉服店』と『岸田喫茶部』を経営し、ビクトリア調の優雅な外観が幸いにも保存され、基隆の発展の一端を担った」といいます。また当時の地図には「岸田呉服店」「岸田喫茶部」と掲載されていました。

このような岸田家と台湾の関係や、外交では米英豪印やEU等相手があることから、いくら出身派閥に親中派が多いからといって岸田政権が大きく親中にふれることはないでしょう。

ただ、岸田家は財務省との関係も深いです。

検討使と揶揄されていた、岸田首相なのですが、覚醒しつつあるのでしょうか。岸田総理も安倍総理のように財務省の意向を跳ね返すことは難しいでしょう。

安倍元総理の最大の心残りを解消するためには、財務省と対峙するだけではなく、財務省の力を削ぐしかありません。それには妙案があります。それは以前このブログにも掲載したことがあります。これは髙橋洋一氏が提唱していた方式です。それを以下に再掲します。
海外には政府の各省庁の分掌を設置法で決めているところはなく、概ね束ね政令方式が普通です。財務省(官僚全般)の大弱点は、いまやってる仕事をほかの役所に割り振られることです。そうなると、省益の追求はかなりしにくくなります。

たとえば税部門の仕事を歳入庁をつくって、歳入庁は内閣府の下にするとか。主計局の仕事でも、それを内閣府の下にするという方式です。

ただ、それで固定するというのではなく、その時々で、政令でそれを実行する方式です。

これは、非常に良い考え方だと思います。ただ、財務省はこれに当然反対し、恐ろしい勢いで、政治家を殺す(もちろん本当に殺すわけではなく実質的に政治生命を絶つなどのこと)勢いで挑んでくるのは間違いないので、すぐにできることではないですが、髙橋洋一氏は、今ではないもののいずれ政治家が挑んでも良いのではないかと語っています。
これに誰か挑戦していただきたいものです。そうして、それが本当の安倍氏への弔い合戦になると思います。参院選を安倍氏の弔い合戦とした人たちもいますが、これは弔い合戦とはいえないと思います。

故人がなそうとしてもできなかったことを実施することこそが、本当の弔い合戦になると思います。

そうして、これは壮絶な戦いになるはずです。財務省はありとあらゆるやり方で、妨害してくるでしょう。これをやりはじめた政治家の政治生命を絶つように動くでしょう。あの前川喜平が文部次官だったときの抵抗よりも、100倍、1000倍の抵抗にあうでしょう。多くの自民党の政治家も、マスコミも、識者をも敵にまわすことになるかもしれません。防衛費を、対GDP(国内総生産)比2%にすることがその前哨戦になるかもしれません。

私は、この最も難しい仕事にチャレンジし、やり遂げる人こそ、真の安倍晋三の後継者になるだろうと思います。ただ、これをいずれ誰かがやり遂げなければ、いずれ日本経済はかなり低迷し、日本人の賃金はいずれ名目賃金でも韓国・台湾以下になり、安全保障、外交どころではなくなりますし、憲法を改正したとしても無意味になると思います。

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