国際協調の象徴とされるISS |
ロシアの国営宇宙開発企業、ロスコスモスのボリソフ新社長は26日、2024年で国際宇宙ステーション(ISS)の計画から離脱することを決めたとプーチン大統領に報告した。欧米の制裁や民間企業の成長でロシアの宇宙ビジネスは斜陽化が指摘されており、プーチン氏が掲げた「宇宙大国」の地位は崩壊しようとしている。
15日に社長に任命されたボリソフ氏はモスクワのクレムリンでプーチン氏と会談し、共同運用期間が終わる24年での離脱が「決定された」と説明。地球の軌道を周回するロシア独自のステーション建設が当面の最優先課題になると述べた。
日米欧露など各国の飛行士が滞在するISSは国際協調の象徴とされ、ロシアが14年にクリミア半島を強制編入した際も関係は保たれてきた。
ISSの運用期限は24年で、米航空宇宙局(NASA)は30年まで延長する方針を示していたが、2月のロシアによるウクライナ侵攻で延長の交渉は事実上中断した。
ISSへの有人輸送は、長年ロシアの宇宙船ソユーズが担ってきた。昨年12月、ISSに滞在したZOZO(ゾゾ)創業者、前澤友作氏を運んだのもソユーズだった。
だが、イーロン・マスク氏が立ち上げた米スペースXなど民間企業が相次いで宇宙事業参入している。21年のロケットの打ち上げ回数でロシアは中国と米国に大きく水をあけられた3位だ。
ロシアの宇宙開発企業、エネルギヤのソロビヨフ主任設計士は26日、ロシアが独自の宇宙ステーションを開発する場合、最初のモジュール打ち上げは早くても28年になるとの見方を示した。ステーション建設とISSへの参加を並行しないと、ロシアは数年間、有人宇宙飛行を中断することになり「新たに再開するのは、かなりの困難が伴う」と危機感をあらわにしている。
筑波大名誉教授の中村逸郎氏は「ロシアにとって宇宙ビジネスは、米国に負けない技術力を持っていると誇示するプーチン氏の愛国主義と国威発揚の手段だった。重要な資金源でもあったが、ISSを放棄せざるをえないのは西側の制裁が相当効いているのだろう。技術力を欧米や中国にどんどん水を開けられ、ロシアの本格的な衰退が見えてきた形だ」と語った。
ただ、本当の理由は、ソ連崩壊し、ロシア連邦がソ連の核兵器、軍事技術、宇宙技術などを継承したのですが、経済が極度に低迷し、宇宙ステーションどころではなくなったというのが実情でしょう。
実際、核兵器のメンテナンスなどでも、膨大な資金が必要です。実際、ソ連が崩壊に伴い独立した、ウクライナは、国内にソ連邦時代の核兵器が多数残っており、当時一時的に米露に続く世界第三位の核保有国になったくらいです。
ロシア連邦と同じく経済が低迷していたウクライナは、核兵器の破棄を決めました。そうして、ロシアも西側諸国もこの決定を歓迎し、核兵器の廃棄が進められることになりました。
ただ、ロシア連邦にはウクライナの核兵器を廃棄する余力すらなく、実際にウクライナの核兵器を無力化して廃棄したのは、米国をはじめとする西側諸国でした。
これだけ、経済が低迷していたロシア連邦が、宇宙開発に回せる資金はほとんどなく、ミールをしばらく放置せざるを得なかったのでしょう。
クリカレフは、現在ロスコスモス所属の宇宙飛行士です。1958年8月生まれの彼は現在63 歳、健在です。
さて今回、ロシアの宇宙開発の本格的衰退がみえてきた形ですが、今回はそれがはっきりしたということで、ロシアの宇宙開発は随分前から衰退傾向にありました。
米スペースシャトルが2011年に退役して以降、地球と国際宇宙ステーション(ISS)を往復する手段は露宇宙船「ソユーズ」だけとなりました。安定感を誇ってきたソユーズでしたが、その信頼は揺らぎました。
2018年8月にはISSに接続していたソユーズの穴が原因でISSの気圧低下が発生。同年10月に行われたソユーズ打ち上げも組み立てミスが原因で失敗し、米露の飛行士2人が緊急カプセルで脱出しました。米スペースX社は有人型ドラゴン宇宙船の実用化に成功した現在、ソユーズの独壇場は終わりました。
1950年~60年代、旧ソ連は世界に先駆けて人工衛星「スプートニク」の打ち上げやガガーリンによる有人宇宙飛行に成功。初の有人月面着陸(69年)では米国の後塵(こうじん)を拝しjましたが、71年には世界初の宇宙ステーション「サリュート1」の打ち上げを実現しました。
しかし、91年のソ連崩壊を境にロシアの宇宙開発は大きく停滞しました。90年代には国家資金が宇宙分野に回らず、人材も大量に流出。2000年発足のプーチン政権は宇宙大国再興を掲げましたが、明るい展望はありませんでした。
米科学者団体によると、19年3月末時点で稼働中の人工衛星は米国901基、中国299基に対し、ロシアは153基。昨年1月~12月中旬のロケット発射成功回数も中国の35回、米国の30回に対し、ロシアは15回にとどまりました。
ロシアは現在、ソ連崩壊後で初の純国産ロケット「アンガラ」の開発を進めています。汎用(はんよう)ロケットモジュール(URM)を組み合わせ、軽量級から重量級まで各種のロケットを造る構想です。ただ、技術不足から試験発射が2度行われたのみで、23年までの有人飛行という目標にはほど遠いです。
極東アムール州では12年から、アンガラの射場設備も備えたボストーチヌイ宇宙基地の建設が進んでいます。ところが、給与未払いや建設費の横領、作業員のストライキと醜聞続きで、やはり計画は大幅に遅れています。
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15日に社長に任命されたボリソフ氏はモスクワのクレムリンでプーチン氏と会談し、共同運用期間が終わる24年での離脱が「決定された」と説明。地球の軌道を周回するロシア独自のステーション建設が当面の最優先課題になると述べた。
日米欧露など各国の飛行士が滞在するISSは国際協調の象徴とされ、ロシアが14年にクリミア半島を強制編入した際も関係は保たれてきた。
ISSの運用期限は24年で、米航空宇宙局(NASA)は30年まで延長する方針を示していたが、2月のロシアによるウクライナ侵攻で延長の交渉は事実上中断した。
ISSへの有人輸送は、長年ロシアの宇宙船ソユーズが担ってきた。昨年12月、ISSに滞在したZOZO(ゾゾ)創業者、前澤友作氏を運んだのもソユーズだった。
だが、イーロン・マスク氏が立ち上げた米スペースXなど民間企業が相次いで宇宙事業参入している。21年のロケットの打ち上げ回数でロシアは中国と米国に大きく水をあけられた3位だ。
ロシアの宇宙開発企業、エネルギヤのソロビヨフ主任設計士は26日、ロシアが独自の宇宙ステーションを開発する場合、最初のモジュール打ち上げは早くても28年になるとの見方を示した。ステーション建設とISSへの参加を並行しないと、ロシアは数年間、有人宇宙飛行を中断することになり「新たに再開するのは、かなりの困難が伴う」と危機感をあらわにしている。
筑波大名誉教授の中村逸郎氏は「ロシアにとって宇宙ビジネスは、米国に負けない技術力を持っていると誇示するプーチン氏の愛国主義と国威発揚の手段だった。重要な資金源でもあったが、ISSを放棄せざるをえないのは西側の制裁が相当効いているのだろう。技術力を欧米や中国にどんどん水を開けられ、ロシアの本格的な衰退が見えてきた形だ」と語った。
【私の論評】ソ連崩壊時のように現在のロシア連邦は、宇宙開発どころではなくなった(゚д゚)!
ロシアの宇宙開発というと、どうしても思い出すのは、ソ連崩壊時に宇宙飛行士が宇宙ステーションに、しばらくの間放置されことです。
1991年5月18日にミール宇宙ステーションに搭乗したセルゲイ・クリカレフが帰還したのは1992年3月でした。表向きの理由は、1991年12月26日、ソビエト連邦が解体され、クリカレフは国を持たない宇宙飛行士となったからだとされています。彼は、今でも最後のソビエト連邦市民とロシアでは呼ばれています。
セルゲイ・クリカレフ氏 |
実際、核兵器のメンテナンスなどでも、膨大な資金が必要です。実際、ソ連が崩壊に伴い独立した、ウクライナは、国内にソ連邦時代の核兵器が多数残っており、当時一時的に米露に続く世界第三位の核保有国になったくらいです。
ロシア連邦と同じく経済が低迷していたウクライナは、核兵器の破棄を決めました。そうして、ロシアも西側諸国もこの決定を歓迎し、核兵器の廃棄が進められることになりました。
ただ、ロシア連邦にはウクライナの核兵器を廃棄する余力すらなく、実際にウクライナの核兵器を無力化して廃棄したのは、米国をはじめとする西側諸国でした。
これだけ、経済が低迷していたロシア連邦が、宇宙開発に回せる資金はほとんどなく、ミールをしばらく放置せざるを得なかったのでしょう。
クリカレフは、現在ロスコスモス所属の宇宙飛行士です。1958年8月生まれの彼は現在63 歳、健在です。
さて今回、ロシアの宇宙開発の本格的衰退がみえてきた形ですが、今回はそれがはっきりしたということで、ロシアの宇宙開発は随分前から衰退傾向にありました。
米スペースシャトルが2011年に退役して以降、地球と国際宇宙ステーション(ISS)を往復する手段は露宇宙船「ソユーズ」だけとなりました。安定感を誇ってきたソユーズでしたが、その信頼は揺らぎました。
2018年8月にはISSに接続していたソユーズの穴が原因でISSの気圧低下が発生。同年10月に行われたソユーズ打ち上げも組み立てミスが原因で失敗し、米露の飛行士2人が緊急カプセルで脱出しました。米スペースX社は有人型ドラゴン宇宙船の実用化に成功した現在、ソユーズの独壇場は終わりました。
1950年~60年代、旧ソ連は世界に先駆けて人工衛星「スプートニク」の打ち上げやガガーリンによる有人宇宙飛行に成功。初の有人月面着陸(69年)では米国の後塵(こうじん)を拝しjましたが、71年には世界初の宇宙ステーション「サリュート1」の打ち上げを実現しました。
しかし、91年のソ連崩壊を境にロシアの宇宙開発は大きく停滞しました。90年代には国家資金が宇宙分野に回らず、人材も大量に流出。2000年発足のプーチン政権は宇宙大国再興を掲げましたが、明るい展望はありませんでした。
米科学者団体によると、19年3月末時点で稼働中の人工衛星は米国901基、中国299基に対し、ロシアは153基。昨年1月~12月中旬のロケット発射成功回数も中国の35回、米国の30回に対し、ロシアは15回にとどまりました。
ロシアは現在、ソ連崩壊後で初の純国産ロケット「アンガラ」の開発を進めています。汎用(はんよう)ロケットモジュール(URM)を組み合わせ、軽量級から重量級まで各種のロケットを造る構想です。ただ、技術不足から試験発射が2度行われたのみで、23年までの有人飛行という目標にはほど遠いです。
極東アムール州では12年から、アンガラの射場設備も備えたボストーチヌイ宇宙基地の建設が進んでいます。ところが、給与未払いや建設費の横領、作業員のストライキと醜聞続きで、やはり計画は大幅に遅れています。
ボストーチヌイ宇宙基地の建設現場 |
ちなみに、基地建設に関連して総額約110億ルーブルを超える規模の不正支出事件が摘発されて2019年に58人が有罪判決を受けました。
そもそも、現在のロシア連邦のGDPは、韓国を若干下回る程度あり、東京都と同規模です。一人あたりのGDP は10000ドルを若干超える程度であり、このような国が宇宙開発するのは、そもそも最初から無理筋というものです。中国の一人あたりのGDPもロシアを若干上回る程度ですが、人口がロシアの10倍ですから、国あたりのGDPでは、10倍あります。
しかし、中国ですら宇宙開発は難しいと思います。ソ連は、米国と宇宙開発競争と、軍拡競争を繰り広げた結果、国力が衰退し、結局崩壊しました。実際、このブログでも、中国が米国と宇宙開発競争と軍拡競争を繰り広げれば、旧ソ連のように経済が衰退し、旧ソ連のように崩壊する可能性があることを主張したことがあります。
中露がこのようになってしまうのには、もう一つ理由があります。それは、非常に非効率な官僚主義です。米国の宇宙開発でも、この官僚主義がはびこっています。特にNASAのそれは、非常に評判が悪いです。
実際ISSの運用管理は、NASAが管理すると、非常に非効率であり、採算を度外視した管理をするため、現在では、民間企業が行っています。民間企業が行うと利益が出るのですが、NASAが直接管理すると、信じがたいほど低効率で、利益が出るどころか、大赤字になるそうです。
中露とも、宇宙開発には民間企業を関わらせていますが、それでも官僚主義による弊害は免れないでしょう。
米国が、米スペースXなど民間企業などに委託するのも、官僚主義による弊害を避けるためです。
スペースX Crew-2 ISSへ接近するエンデバー |
現在のロシアは、ウクライナ侵攻と、西側諸国による制裁で、宇宙開発どころではありません。ロシアは今後宇宙開発から脱落する可能性が高いでしょう。
ただし、ソ連崩壊後でも宇宙開発を完璧に捨て去らずに、何とか温存し、復活させたロシアです。何かの形で、将来復活してくる可能性は、わずからながら残されていると思います。ただ、しばらくの間表舞台から姿を消すのは間違いないでしょう。
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