2022年7月16日土曜日

「安倍路線」継承期待か 際立つ駐日米大使の最大級弔意 私邸や自民党本部、通夜に参列…ツイッター発信も―【私の論評】岸田政権には、米国の強力な報復に抗って親中派路線を貫く意思も胆力も覚悟もない(゚д゚)!

「安倍路線」継承期待か 際立つ駐日米大使の最大級弔意 私邸や自民党本部、通夜に参列…ツイッター発信も

記帳するエマニュエル駐日大使

 安倍晋三元首相を悼む動きが広がるなか、ラーム・エマニュエル駐日米国大使の姿勢が際立っている。弔意を示すため、安倍氏の私邸や自民党本部を訪れたうえ、東京・芝公園の増上寺で行われた通夜にも参列し、ツイッターでの発信も繰り返している。日米同盟を基軸に国際社会の安定を目指した「安倍路線」を評価し、岸田文雄政権にも継承を求めているのか。

 《日本を率いる卓越した政治家、世界的なリーダー、そして米国の友人。安倍氏が語る明解な見解は、永遠に惜しまれることでしょう》《日米が共有する理念の強力な擁護者を失ってしまいました。さようなら、友よ。寂しい思いで胸がいっぱいです》

 エマニュエル氏は、安倍氏が凶弾に倒れた8日、ツイッターでこう発信した。

 10日には、都内の安倍邸を訪れ、昭恵夫人らにお悔やみの言葉を伝えた。11日には、日米財務相会談のため来日したジャネット・イエレン財務長官と増上寺での通夜に参列した。14日は自民党本部を訪れて記帳し、記者団に「見識と実行力があるリーダーだった。悲しい」と思いを語った。

 連日のように続く、弔意表明をどう見るか。

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「米国はアントニー・ブリンケン国務長官も急遽(きゅうきょ)訪日させるなど、最大級の弔意を示した。安倍氏は、共和党と民主党、それぞれの米政権を経験した。特に安全保障法制の整備で日米連携を強め、地域の安定に貢献したとして、米国内の超党派が極めて高く評価している。岸田首相にも安全保障面で、安倍氏の築いた礎を継承、発展させることが求められるのではないか」と語った。

【私の論評】岸田政権には、米国の強力な報復に抗って親中派路線を貫く意思も胆力も覚悟もない(゚д゚)!

ラーム・エマニュエル駐日大使が弔意を示すため、安倍氏の私邸や自民党本部を訪れたうえ、東京・芝公園の増上寺で行われた通夜にも参列という行動も際立っていますしアントニー・ブリンケン国務長官の急遽訪日も際立っています。


これらの行動を、安倍総理が偉大だったとか、善意によるものだけと考えることは、私にはできません。無論そういう側面はあります。しかし、元総理大臣の暗殺に対してここまでするにはそれなりの理由があると思います。

それはやはり、上の記事にもある通り、安倍元総理大臣の対米外交姿勢や、安全保障面など、安倍元総理の姿勢を継承してもらいたいという強い意思を示すためでしょう。

米国は岸田総理が所属する宏池会が、親中的であることを当然のことながら知っているでしょう。だから、日本が親中的にならないように牽制したという面は否めないでしょう。米国国務長官がわざわざ来日するということはそういうことです。そうでなければ、代理の人を派遣したと思います。

こうしたことからも、すでに昨日のブログで、「岸田家の台湾との古くからの関係や、外交では米英豪印やEU等相手があることから、いくら出身派閥に親中派が多いからといって岸田政権が大きく親中にふれることはないでしょう」と述べたように、岸田政権が極端に中国側に振れる心配はないといえるでしゃう。

そのような行動をさせないためにこそ、エマニュエル大使やブリンケン国務長官が先に述べたような行動をしたのです。

このブログではしばしば述べているように、米国と中国の真の戦場は、軍事力ではなく、経済とテクノロジーの領域であり地政学的な戦いになるのです。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎(とが)め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

そうして、トランプ氏にそれをしっかりと認識させたのは安倍元総理なのです。

中国は、以前は日本を見下していました。実際に、1994 年中国の当時の李鵬首相が、オーストラリアを訪問した時に、当時の オーストラリアのジョン・ハワード首相に向かって 「い まの日本の繁栄は一時的なものであだ花です。 その繁栄を創ってきた世代の日本人がもう すぐこの世からいなくなりますから、20 年もしたら国として存在していないのではないで しょうか。 中国か韓国、 あるいは朝鮮の属国にでもなっているかもしれません」 という 発言をしました。

李鵬首相のオーストラリアでの発言

自民党がその頃のままであれば、本当にそうなったかもしれません。ところが安倍政権が誕生して以降、気がつけば日本が中国包囲網の中心になっていたのです。 安倍総理大臣が「自由で開かれたインド太平洋戦略」を2016年8月の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)の場で提唱してから5年以上が経過し、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域において、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を実現することの重要性が、国際社会で広く共有されてきています。

トランプ大統領の任期は2017年から始まっています。トランプ大統領は選挙選の最中から中国に対峙すべきことを主張してきましたが、安倍総理と会ってからは、中国の卑劣な行いが、「地経学的戦争」だとはっきりと認識したとみられます。

日本では安倍・トランプというとゴルフぎかりが強調されるが、それだけではなかった・・・・

当時の安倍首相がこの構想を出したとき、中国はほとんど気にしていませんでした。しかし、その枠組みが目の前にでき上がってしまったということが、彼らの誤算でした。しかも「AUKUS(オーカス)」、「ファイブ・アイズ」という2つ枠組みがあり、アジアのなかでは日本だけが枠組みの一部に入るような事態も招いたともいえます。

安倍元総理は、いわば今日の対中国の世界の枠組みを構築したのであり、現在の日米英印豪、EUもその枠組の中で対中国戦略を考え実行しているのであり、その本家本元の日本が親中に傾けば、世界の枠組みが毀損されかねないわけです。それは、米国としてはとても許容できないのです。

今後も、バイデン政権は、岸田政権に対して親中に振れないように、牽制してくるでしょう。また、日本の国民も、自民党内の多くの政治家も、牽制することでしょう。こうした牽制に抗い、親中派路線を貫く意思も胆力も覚悟も、岸田政権にはありません。林外務大臣にもないでしょう。

そもそも、なぜ親中派なのかと問われても、安倍元総理のようなビジョンがあるわけでもなく、ただ宏池会の先輩がそうだったからとか、財界からの要望があるからくらいしか答えようがないし、自分が儲かるからなどとは口が裂けても言えないというのが実情だと思います。

もし、宏池会の方々に親中派としてのビジョンがあるなら公表すべきです。ただ、岸田総理が現在の世界の枠組みを崩そうとすれば、米国の強力な報復にあうことになることを肝に銘じるべきです。

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