防衛費を増額するために、果たして増税は必要か。
11月9日、「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の第3回会合が開催され、これまでの議論をまとめた結果、防衛費の大幅増額のために増税が必要であることで意見が一致したことを明らかにした。
この第3回会合で財務省も、長期にわたる防衛費増額のためには《恒久的な財源確保》が必要であり、《国を守るのは国全体の課題であるので、防衛費の増額には幅広い税目による国民負担が必要》とする文書を提出した。
このままだと、年末の来年度予算編成と税制改正までに、防衛費増額のための新規増税が打ち出されることになるだろう。
確かに今後、最低でも10年以上、防衛費増額を続ける必要があり、そのための財源を確保しなければならない。ただし、その財源確保がなぜ新たな増税になるのか。大事なのは、財源であって増税ではないはずだ。
バブルの崩壊以降、日本はデフレが続き、税収も低迷した。しかし、第二次安倍晋三政権が「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の3つを柱とするアベノミクスを始めるや、日本は再び経済成長を始めた。
中でも、景気回復において効果があったとされるのが日本銀行による「大胆な金融緩和」で、リフレ政策とも呼ばれる。実際に、このリフレ政策の導入によって日本は再び経済成長を始め、税収も増えていく。
民主党政権であった2011年度の一般会計税収は42・8兆円(所得税13・5、法人税9・4、消費税10・2)だったが、第二次安倍政権になると税収も急増し、18年度には60・4兆円(所得税19・9、法人税12・3、消費税17・7)になった。そして、22年度の税収総額は68兆3590億円(所得税20・4、法人税13・3、消費税21・6)と、3年連続で過去最大を更新する見通しだ。
要は、日本銀行による金融緩和を続けて設備投資を促していけば、景気は上向き、税収はおのずと増えていく。現に、この10年で税収は43兆円から68兆円と、実に25兆円も増えている。防衛費をGDP(国内総生産)比2%に倍増するために必要な追加予算は毎年約5兆円。このまま景気回復を続ければ、増税などしなくとも「防衛国債」などで十分に対応できる。
防衛費増額のために新たな増税が必要だと主張する人たちは、アベノミクス以後のこの10年間の急激な税収増の現実が全く見えていない。繰り返すが重要なのは、税収増であって増税ではないはずだ。
いま日本がすべきは、金融緩和を含むアベノミクスを引き継いで何としても景気を回復し、税収増によって防衛費増額分を確保しようとすることだ。「防衛費を増やすためには増税もやむなし」などという、愛国心をくすぐる増税論には騙されないようにしたいものだ。
■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書・共著に『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(扶桑社)、『インテリジェンスで読む日中戦争』(ワニブックス)など多数。
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一般会計税収がいかに増えているかは、このブログに掲載した2つのグラフで一目瞭然です。そのグラフを以下に掲載します。
2021年の一般会計税収は、見通しではありますが、過去最大の68兆円です。これだけだと、どれだけすごいのか理解しにくいところがあるので、以下にさらにこの記事より付け加えます。
2018年の段階で、もうすでに、税収はバブル期を超えていたのです。2018年というと、このブログでも以前掲載したように、統合政府ベース(政府+日銀)の財政再建は2018年には確実にプラスに転じていました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。
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詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事に掲載してある2016年の計算と、試算では統合政府の債務残高は2017年にはマイナスに転じることを予想しています。
債務残高がマイナスに転じるということは、債務がなくなり、黒字に転じたということです。高橋洋一氏等マクロ経済に関しての発言が信頼できる人たちも統合政府ベースでは、2018年(平成30年)には確実に財政再建は終了したと語っています。
2018年に財政再建が終了していたのですから、2019年(平成31年/令和元年)の消費税の8%から10%への引き上げなど必要なかったのです。
統合政府で財政をみることについては、日本では、これにおかしげな理由をつけて、反対する愚か者が大勢いますが、これは明らかな間違いです。
EUをはじめ、米国なども統合制ベースでみるのが、世界標準です。企業が、子会社と本社との連結財務諸表を出すのと同じ理屈でこちらのほうが政府の正しい姿をみることができます。
ある程度規模以上の企業が連結決算も公表するようになったのは、簡単に言ってしまうと、連結をしなければ、全体では赤字なのに、子会社にその赤字を転嫁して、本社は大黒字のように見せかけることができるからです。
財務省などは、この逆をしているようなものです。政府単体でみて、大赤字と騒いでいるわけですが、統合政府ベースでみれば、2018年には財政再建は終了しています。そうして、上のグラフでもわかるように、2018年には、一般会計税収はバブル期を超えていたのです。
私自身も、統合政府ベースでの債務残高の概算をしたことがあります。それについては、以下の記事を参照してください。
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