台湾統一地方選の投開票が26日行われ、注目された中心都市・台北市長選で最大野党・国民党が勝利した。与党・民進党は首長ポストを減らし、蔡英文総統は選挙結果を受けて民進党主席(党首)の辞任を表明。台湾メディアは「民進党が大敗」と報じた。
蔡氏は総統職を続けるが、2024年総統選や今後の対中政策への影響は避けられそうにない。蔡総統は記者会見し「全て私の責任だ」と陳謝した。次期総統選を見据えた後任選びが今後の焦点となる。
統一地方選は4年に1度実施され、22県市の首長選が焦点。今回は、候補者の死去に伴い12月に延期された嘉義市を除く21県市で投票が行われた。中でも台北市など行政院(内閣)が直轄する6市には合計で人口の約7割が集中し、勝敗が党勢に与える影響は大きい。
民進党は改選前に7県市の首長ポストを有していたが、台湾メディアの開票速報によると、直轄市の桃園市を国民党に奪われるなど、2ポストを減らした。国民党の朱立倫主席(党首)は、記者会見で「台湾の人々の勝利だ」と語った。
民進党は18年の前回統一選で、首長ポストを半減させ大敗。その際も蔡氏が党首を一時、引責辞任した。選挙前の勢力は民進党7、国民党14、民衆党1。民進党は現有ポストを維持し国民党の党勢拡大を防ぐとともに、台北市を民衆党から奪いたい考えだった。
台湾では、3月に中銀が市場予想に反して利上げを実施しましたが、その後も台湾ドル安圧力が強まるなか、中銀は6月16日の定例会合で2会合連続の利上げに加え、預金準備率の引き上げを決定しました。
最近、第二次大戦後、台湾に渡り、蔣介石の軍事顧問団になった旧日本軍将校糸賀公一氏が、中国大陸への反攻作戦を描いた冊子が見つかっています。フランス在住の親族が所有していました。冊子は台湾で軍の指導教材として執筆され、中国の核実験にも言及しています。秘密裏に組織された日本人顧問団「白団」が、大陸奪回を目指す蔣政権で果たした役割が浮き彫りになりました。
ただ、38年間も台湾で続いた戒厳令下における白色テロは、台湾に今でも暗い影を落としています。政治活動や言論の自由は厳しく制限され、「白色テロ」と呼ばれた市民の逮捕・投獄が横行しました。台湾社会は今、中国や香港の人権抑圧を横目に自由と民主主義を謳歌しています。しかし、苦難の時代の真相解明は緒に就いたばかりなのです。
こうしてみていくと、今回の選挙結果は台湾の内的要因が大きく、米中関係や中台関係などから影響を受けたような文脈で読み解くことは難しいということがわかります。習近平氏の強硬路線に台湾社会が屈した、といった分析を加えることは完全に無理があり、注意したいところです。
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蔡氏は総統職を続けるが、2024年総統選や今後の対中政策への影響は避けられそうにない。蔡総統は記者会見し「全て私の責任だ」と陳謝した。次期総統選を見据えた後任選びが今後の焦点となる。
統一地方選は4年に1度実施され、22県市の首長選が焦点。今回は、候補者の死去に伴い12月に延期された嘉義市を除く21県市で投票が行われた。中でも台北市など行政院(内閣)が直轄する6市には合計で人口の約7割が集中し、勝敗が党勢に与える影響は大きい。
民進党は改選前に7県市の首長ポストを有していたが、台湾メディアの開票速報によると、直轄市の桃園市を国民党に奪われるなど、2ポストを減らした。国民党の朱立倫主席(党首)は、記者会見で「台湾の人々の勝利だ」と語った。
民進党は18年の前回統一選で、首長ポストを半減させ大敗。その際も蔡氏が党首を一時、引責辞任した。選挙前の勢力は民進党7、国民党14、民衆党1。民進党は現有ポストを維持し国民党の党勢拡大を防ぐとともに、台北市を民衆党から奪いたい考えだった。
台北市では、蒋介石・元総統のひ孫に当たる国民党の蒋万安・前立法委員(国会議員)が勝利。新型コロナウイルス対応を指揮した民進党の陳時中・前衛生福利部長(厚生労働相)、現職の柯文哲市長が擁立した無所属の黄珊珊・前副市長は、激しい選挙戦を繰り広げたが及ばなかった。
【私の論評】今回の選挙結果は台湾の内的要因が大きく、次の選挙で親中派総統が誕生する可能性は低い(゚д゚)!
台湾の統一地方選は、4年に一度、22の県と市の首長や議員などが改選されます。これは次期総統選(2024年)の「前哨戦」に位置付けられる重要な選挙です。
激しい選挙戦を繰り広げた2大政党ですが、「対中政策」では違いが際立ちます。与党・民進党は蔡英文総統が主席を務め、日本の国会にあたる立法院で、単独過半数を獲得しています。「中華民国と中華人民共和国は、互いに隷属しない」などの方針を掲げ、中国に対して対決姿勢をとっています。
一方、野党・国民党は、1949年に中国から逃れてきた蔣介石氏が率い、長年政権を担っていました。「一国二制度」には反対するも、「台湾独立」にも反対。中国への融和路線を取り“親中国”とされています。
今回の選挙戦で、蔡英文総統は、「地方選の結果は、台湾の未来の進路に大きな影響を与える。私たちは『台湾人民は、自由と民主主義を支持している』というメッセージを全世界に伝えねばならない」と訴えていました。
一方、国民党の朱立倫主席は、「選挙のたびに、民進党は、中傷的な手紙や汚い手段をとるか、外部要因を利用して焦点をそらし、台湾の人々を威嚇し、自らのガバナンス(統治)の欠陥を決して見直すことはない」と主張するとともに、「より若く、より稼げる台湾に変える!」と主張してもいました。
“親中国”の国民党が勝利した要因としては、地方選挙では中国問題が争点にならず、候補者の好き嫌いや経済問題が中心の議題になっていたとみられます。
野党・国民党がいわゆる「争点隠し」というか、中国問題が争点にならないよう巧みに、問題を現政権与党の政策的な失敗や、コロナ対策への不満などに上手く逸らしていたと考えられます。
国民党や中国のことは台湾では決してプラスのイメージではないの現状があるのですが、国民党の候補者が自分たちが国民党であることをあまりアピールしなかったり、中国政策についてはっきり物を言わなかったりすることによって批判が集まらないよう工夫していたようです。
民進党政権は6年以上続いているので、やはりある程度不満も積もっているところもあったかもしれません。ただ、政権交代を望むほどではないというのは確かなので、有権者としては、そこで一つ批判をしておこうということもあったとみられます。
台湾では、3月に中銀が市場予想に反して利上げを実施しましたが、その後も台湾ドル安圧力が強まるなか、中銀は6月16日の定例会合で2会合連続の利上げに加え、預金準備率の引き上げを決定しました。
中銀は成長率見通しを引き下げる一方で物価見通しを引き上げており、景気下振れが懸念されるなかで難しい対応を迫られています。他方、先行きについては緊急利上げに含みを持たせるなど物価対応は難しさが増す展開が続いていました。
ただ、物価高は他国と比較すれば、さほどではなく、また台湾ドル安は輸出には有利に働くはずであり、金融引締に走る前に、エネルギーや輸入資源に関わる減税などを実施するなどの方法を考慮すべきだったかもしれません。ただ、それが今回の選挙にどの程度影響したかまでは、残念ながら情報不足でわかりません。
統一地方選の中でも“総統への登竜門”とされ、一目置かれるのが台北市長選です。注目候補は3人いて、1人目は、国民党の蔣万安氏、43歳。日本の国会議員にあたる元・立法委員で、台湾の初代総統・蔣介石氏のひ孫です。2人目は、無所属の黄珊珊氏。元台北市議かつ、2022年8月まで台北の副市長を務めていた人物です。3人目は、民進党の陳時中氏。“新型コロナ”対策を担う、中央感染症指揮センターの元指揮官です。
市長選で勝利した、蔣万安氏は、台北生まれ台北育ち。米・ペンシルベニア大で法学修士・博士号を取得。カリフォルニア州の弁護士資格を保有し、“将来の総統”などと称されています。
親日家ともいわれ、2022年9月に台北で開かれた、建築家・安藤忠雄氏の展覧会を訪問し、「大阪にある『こども本の森 中之島』が好きだ」とSNSに投稿しています。また、10月には、「小さい頃、ドラゴンボールが好きだったので、今年は悟空に扮してハロウィーンを迎える」とSNSに投稿しています。
一方で、蔣万安氏が所属するのは“親中国”の国民党です。11月5日に開かれた討論会で、台北市長選の候補者らに対し、メディアが“中国との統一の賛否”について質問しました。民進党の陳時中氏は「答えはもちろん『否定』だ」と述べましたが、蔣万安氏は「中華民国憲法を順守し、中華民国主権を守り、台湾の民主主義や自由、法の支配、人権の価値観を守る事こそが私のDNAだ」と返答。これに地元メディアは「正面からの回答を避けた」と指摘しています。
ただ、国民側からすると蔣万安氏の祖父蒋介石は「中華民国を建国した人物」であり、中国大陸反抗を目指した人物でもあり、そのひ孫が「中国と統一することはないだろう」という読みもあったかもしれません。
元々、国民党は反中的であったのですが、長い間政権与党であったため、腐敗がはびこり、その腐敗の一環としての中共の工作もあり、国民党は親中的になってしまい、今日のようになってしまったという現実があります。
台湾、民主化の父といわれる李登輝総統も、元々は蒋介石氏につかえていました。そのため、私自身は、国民党が原点回帰すれば、反中的になる可能性もまったくないとは言い切れないと思っています。そもそも、李登輝氏による民主化の産物が、今日の台湾民進党であることも忘れるべきではありません。台湾の民主化がなければ、今日台湾民進党も存在すらしていなかったのです。
蔣万安氏は、こうした蒋介石のひ孫であるため、中華民国は中華人民共和国とは違うので、中華民国をまもるということで中国とは一緒にならないというような意思表示をすることは十分可能だと考えられます。
この時代の国民党の負のイメージはなかなか拭いさいることは難しいでしょう。
凄惨を極めた2.28事件 |
現在の民進党が、親米・親日・反中と位置づけされているわけですが、今後国民党が政権を取った場合、彼は親米・親日・親中と全方位でありたいと、そういうことで台湾の安全を守っていくとそんなプランを思い描いているのではないと思います。ただ、そのようなことは当然不可能であり、蔣万安氏がはっきりと中国と対峙する旨を公表しない限り、私は、彼が総統になる芽はないと思います。
蔡英文総統は、現在2期目で、任期の規定で次回、2024年の総統選には出馬できません。今回の敗北で、蔡英文総統の指導力の低下は間違いないと考えられます。しかし、次回総統選について“親中国”政権誕生の可能性については、可能性はほとんどないでしょう。
地方選で台湾の有権者が民進党への牽制的な投票行動をとったことは、逆説的に民進党が国政で優位にあると台湾人が感じている表れといえます。国政選挙になれば民進党が有利です。しかし地方選で大勝となれば国民党は勢いはつくので、接戦に持ち込める機会は出てくる可能性もあります。
中国の次の一手として、今回の結果を受け総統選を視野に圧力を強めるでしょう。習近平国家主席のやり方を台湾社会も受け入れる方向に傾いたと国際宣伝を行う可能性もあります。
中国としては、今回国民党に勝利を収めたので、2年後の総統選に水面下で様々な影響を及ぼすことができると期待しているでしょう。習近平国家主席の強硬路線はずっと裏目に出てきましたから、国民党が勝つことによって、「我々がやることは間違っていない」という宣伝をする可能性もあります。
今回選挙で中国があまり争点になっていないにも関わらず、中国側に利用されるのは望ましくないです。
中国側は武力で台湾を統一したいというわけではなく、政策・政治・ビジネスで統一することが習近平国家主席にとって理想的なことです。武力行使はコストもかかるし不確定要素が大きいからです。
中国にとっては、台湾の中で中国と統一したいという政党が勝利して、台湾の民主的なプロセスの中で中国との統一を選ぶというのが最高のシナリオです。それができるかどうか、中国側が武力行使を踏みとどまるポイントにもなるので、逆に国民党が今回勝つことで武力行使のオプションはやや後ろに下がるという可能性も非ずだと思います。
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