2022年12月15日木曜日

経済成長続けるインドネシア 日本のGDPを抜く可能性も―【私の論評】防衛増税し、来年4月から日銀総裁が金融引締派になれば、いずれ日本の賃金は、韓国・台湾・インドネシア以下に(゚д゚)!

経済成長続けるインドネシア 日本のGDPを抜く可能性も

岡崎研究所


 11月17日付Economist誌は「なぜインドネシアは重要なのか」との社説を掲げ、G20で存在感を示したインドネシアの将来性の高さを、その理由とリスクと共に論じている。要旨は以下の通り。

 G20が行われたインドネシアはスハルト政権崩壊から四半世紀後に再び注目された。同国は、米中の戦略的競争に巻き込まれているが、新世界秩序に適応しつつあり、次の四半世紀で影響力が大きく伸びる可能性がある。

 その理由の第一は経済である。GDPは新興国中第6位。1兆ドル超GDP国では、中印以外で過去10年最速で成長。その源泉はデジタルサービスである。電気自動車(EV)サプライチェーンに必須なバッテリー用ニッケルの世界埋蔵量1/5を占めるという特有の事情もある。

 第二の理由は民主化と経済改革両立の成功だ。完璧ではないが妥協と社会調和を強調する多元的政治システムを創設。ジョコ大統領は政敵を含む大連立を形成しているが、財政は健全。国営企業改革、労働法規等で漸進的改善を実施。汚職は問題だが経済は10年前よりオープンだ。

 次に、権力承継がリスクだとの主張は、過度に深刻視する必要は無いだろう。3選を禁じる憲法の改正でジョコ大統領が続投するという可能性は、とうの昔になくなっている。伸び盛りの国に相応しく、後継者の能力があると評価される人物は相当多い。一方、立候補には国会の20%以上の議席を持つ政党の支持が必要なので、現実的な候補は既に片手以内に絞られている。

 更に重要なのは、大統領候補の出身母体の多様化だ。軍が唯一のエリート養成機関であったのは、遠い過去の話である。今や、州知事を含む地方の首長(いくつかの州は数千万の人口で、中小国より大きい)が登竜門の一つになっている。ジョコ自身もジャカルタ特別州知事出身だし、今の候補者中、軍出身は70歳代の一人に限られる。これは、「ビジネスと政治閥が権力を得て寡頭政治に回帰する可能性」は最早それほど高くないことを意味している。

歴史も絡む中国との難しい関係

 第三に「中国の影響下に入る可能性」だが、これも高くない。そもそも中国の対インドネシア投資は入れるのも早いが出すのも早く、過去10年間のストックは未だ日本の1/5以下であり、ジャカルタ・バンドン高速鉄道に象徴されるように失敗例も多い。ここ数年間連続でナツナ諸島に現れる海警に守られた中国漁船の存在は、安全保障面でもインドネシアの対中姿勢を硬化させている。

 更に留意すべきは、対中関係は国内問題という歴史的事情だ。オランダ統治時代に中間管理職として厳しく当たりオランダ撤退後にその富を寡占した中華系インドネシア人は、いまだにデモ・騒乱の際の主な攻撃対象だ。これらを考えると、平時には日、米、中、欧ほかと全方位で付き合うインドネシアだが、危機に当たり中国を頼る可能性はあまり高くないと考えるべきだと思う。

 最後は、台湾危機のインドネシアへの影響である。上記社説は重要な論点を挙げているが、実際の危機に際しては、インドネシアはマラッカ海峡の唯一の代替航路を提供する立場にあることも忘れてはならない。日米は引き続きインドネシア沿岸警備隊の能力強化に努めていく必要がある。
 第三の理由は地政学である。インドネシアは超大国競争の重要な舞台だ。非同盟の歴史を反映し中立を希望する同国は、米中デジタル企業と投資家が直接競争する舞台となっている。

 もしインドネシアが今後10年今の道を歩めば、世界トップ10の経済になり得る。

 他方、主なリスクは次の3つである。

 一つは権力承継である。ジョコの任期は2024年だが明確な後継者は不在だ。支持者の中には(3選を禁じる)憲法改正で留任を求める向きもある。権力承継は有権者へのイスラム的政策アピール競争になる可能性がある。ジョコ連合の一部のビジネスと政治閥が権力を得て寡頭政治に回帰する可能性もある。

 二つ目は保護主義だ。ダウンストリーム化(精製部門など天然資源の下流産業の振興)は市場支配力を持つニッケルでは成功しても、他の産業では逆効果かもしれない。

 最大のリスクは地政学で躓くことである。同国が中国の影響圏に入る可能性もある。2020年以降中国企業投資は米国企業の4倍だ。台湾危機の際は、依存するシーレーンが閉鎖され、西側制裁は同国が頼る中国企業に打撃を与え得る。

 インドネシアは資源と保護主義、大連立政治、中立主義に依拠して、自国民を満足させ、かつ、成長する道を見つけようとしている。成功すれば、自国民の生活を改善し、成長を望む世界を励ますことになる。これは世界の力のバランスを変えさえするかもしれない。

*   *   *

 G20で首脳宣言をまとめたインドネシアが注目を集めている。Economistのようなメディアがこのような記事を載せる影響力は大きい。上記社説の大きな論旨には賛成だが、細かい点で若干の異論がある。

 まず、「今後10年今の道を歩めば世界トップ10の経済になり得る」ことに異存はないが、既に世界の第17位である同国がトップ10に「なり得る」との記述は、インドネシアのインパクトを十分捉えていない。コロナ禍の下、中進国の中で最も早く年5%台の成長に回復した国の一つであるインドネシアは、2040年代に世界第5位のGDPになる勢いを持っており、更に、インドと共に日本のGDPを抜く可能性のある数少ない国の一つなのだ。

【私の論評】防衛増税し、来年4月から日銀総裁が金融引締派になれば、いずれ日本の賃金は、韓国・台湾・インドネシア以下に(゚д゚)!

日本のGDPを抜く可能性があるのは、インドネシアだけではなく、韓国、台湾にもその可能性ば十分にあります。その中でも、インドネシアは、人口が2.764億人であり、日本の2倍以上もありますから、一人あたりのGDPが人口が1億2千万人日本の半分にもなれば、日本のGDPを追い越すことになります。

韓国も、台湾も人口が数千万人で1億人には、達していませんから、実際には日本のGDPを越すのは難しいでしょう。

日本経済研究センターは昨年、個人の豊かさを示す日本の1人あたり名目国内総生産(GDP)が2027年に韓国、28年に台湾を下回るとの試算をまとめました。この推計自体は、ありそうですが、ただしその原因を行政などのデジタル化が遅れ、労働生産性が伸び悩むことが主因としたのは明らかに間違いです。


それよりも、最大の要因は、平成年間にマクロ経済政策を間違えたことが大きな要因です。仮にこの期間に、デジタル化を推進し、労働生産性を高めることが実施されたとしても、マクロ経済政策を間違えていれば、ほぼ同じようなことになっていたでしょう。

マクロ経済政策の間違いとは、金融緩和すべきときに、金融引締を行い、積極財政をすべきときに緊縮財政をしてしまったということにつきます。

平成年間といえば、日本は深刻なデフレにみまわれていましたが、こういうときには、どのようなマクロ経済政策をとるべきかは、高校の政治経済など標準的で初歩的なテキストに書いてあるとおり、積極財政策、金融緩和策をすることです。

にもかかわらず、平成年間のほとんどの期間を日本は、緊縮財政、金融引き締めをして、デフレを深化させてしまったのです。

この期間に、デジタル化を推進して、労働生産性を高めた場合どうなったでしょうか。その結果は明らかです。デフレを深化させるだけです。

それは、当然のことです。デフレで需要が足りないときに、生産性を上げればどうなるかといえば、供給能力が上がっても需要は増えないわけですから、さらに物価はさがり、デフレが深化するだけです。

このようなことは、少し考えれば、誰でも理解できます。難しい経済理論など必要ありません。多くの民間企業が数々のイノベーションを成し遂げ、生産性が飛躍的に上がったとします。そのときに、日銀が金融緩和をしてこの生産性の向上に見合うように市場での貨幣量を増やさなければ、デフレになってしまいます。

そうして、デフレであっても、金融緩和、緊縮財政を続ければ、需要不足がさらに続くだけであり、生産性を上げる必要性などなく、寧ろデフレが深化した最中に、生産性を高めれば、失業率が増えるだけです。なぜなら、生産性が高まった分の労働力は必要がないからです。

それでも、輸出企業や海外に拠点を持つ企業であれば、デジタル化を推進して、生産性を高めれば、海外で有利な事業展開ができたでしょう。

しかし、輸入企業や、国内の顧客を相手に事業を展開する企業などは、需要不足なのですから、こうしたインセンティブは働きません。そうして、日本は内需大国であり、輸出がGDPに占める割合は12%に過ぎません。多くの企業に生産性向上のインセンティブはなかったのです。さらに、役所などもそうです。ただ、役所の場合は、コロナ禍等により、デジタル化が推進されていないことが目立ってしまったということです。

このような特殊な環境下にあったので、日本では、デジタル化を推進し、労働生産性を高める機運が高まらなかったのです。当たり前といえば、当たり前すぎます。

平成年間に日本がまとなマクロ経済政策を継続していれば、需要は増え、その需要を満たすために、生産性の向上も当たり前に行われたでしょう。

原因と結果の取り違えはよくあることだが・・・・・

よって上の記事は、原因と結果をはき違えているといえます。それにしても、このような簡単な理屈がわからない人があまりに多すぎます。

このような理屈、20年前、10年前までは、理解してない政治家も多かったのですが、多くのまともなエコノミストらが啓蒙活動を継続し続けたおかげで、最近では最初に安倍元総理が理解し、他の議員たちも理解する人が増えました。

日本で最初にマクロ経済政策を理解した安倍元首相

最近の、防衛増税反対運動は、マクロ経済政策を理解した議員たちと、そうではない議員たちの戦いです。理解した議員たちに是非とも勝利していただきたいですが、理解していない議員たちにもこれを理解してほしいものです。

そうでないと、日本はデフレから抜けきっていないにも関わらず防衛増税し、さらに日銀が金融引締に転じることがあれば、またデフレスパイラルのどん底に沈むことになり、そうなれば、また失われた30年、いや50年、100年を繰り返すことになりかねません。マクロ経済政策を理解しない議員たちが多ければ、日本はいつまでもこのリスクに晒されることになります。

実際に、そうなれば、いずれ一人あたりの名目賃金は、台湾、韓国、インドネシアに追い抜かれることにもなりかねません。そうなれば、無論賃金もそうなります。

防衛増税は、それを進める強力な第一歩となります。来年の4月には、日銀の黒田総裁の任期が終わり、日銀新総裁が選出されます。このときに、金融引締派が日銀総裁になり、日銀の金融政策が変わり、金融引締に転ずれば、日本は失われた100年に突入することになりそうです。

そのようなことは、絶対に避けるべきです。

私自身は、今回の増税騒ぎは、結局先延ばしにされるのではないかと思っています。今一番危険なのは、日銀の黒田総裁の後任が誰になるかです。

もし、岸田首相が日銀の後任を明らかに金融引締派の人物を就けるようであれば、本格的な政局になるでしょう。ポスト岸田といわれているのは、今は茂木氏、河野氏、林氏といわれています。この三人はマクロ経済政策の理解度は相当低いです。

そのため、自民党の安倍派などは他の人物をかつぐことになるかもしれません。ただ、誰が総裁になったとしても、安倍派は、総裁や周りの派閥に対しても、増税・金融引締は絶対にするなと因果を含めた上で、それを認めるでしょう。

ただ、安倍派にも様々な考えの議員がいますから、安倍元首相の政策を引き継ぎ、まともなマクロ経済政策を実行し、中国と対峙しようとする議員がそうではない議員から分裂し、他の保守派議員を取り込むという動きもみられるかもしれません。そのようにして、まともな議員で大派閥が作られれば良いと思います。

自民党内では、復興増税の一部を恒久的な所得増税に付け替えようするという、あまりにも国民や被災地の人たちをを馬鹿にしきったぶったるみ増税案を審議しています。岸田首相には、歴代政権で公約せずに増税しようとした政権の末路を思い出して欲しいものです。財務真理教の教義を信じ込んでいる盲目的な信者の岸田首相には無理な話かもしれません。

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