〝岸田増税〟に財界からも批判続出 賃上げや設備投資に水を差す…首相「国民が自らの責任として対応すべき」発言で炎上 高市早苗氏も厳しく指摘
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記者会見する高市早苗経済安全保障担当相=13日午前、東京・永田町 |
岸田文雄首相が「防衛力強化」「防衛費増額」の財源に、国債発行などを排除して「増税」を打ち出したことへの批判が止まらない。景気に冷や水を浴びせる増税論への異論は、閣内や自民党内、財界にも広がっている。岸田首相が「国民が自らの責任として対応すべき」などと発言したことにも、ネット上で「責任転嫁」「国民に責任を擦り付ける、最低の宰相」などと炎上している。このまま「岸田増税」を強行すれば、内閣支持率はさらに下落しそうだ。
「間違ったことを申し上げている考えはない。罷免されるなら、それはそれで仕方ない」「再来年度以降の財源の問題なら、賃上げや景況を見極めてからの指示でも良かったのでないか」
高市早苗経済安全保障相は13日の記者会見で、岸田首相を重ねて批判した。高市氏は増税方針が発表された直後にも、「閣僚も国家安全保障戦略の全文は見せてもらえず。内容不明のまま総理の財源論を聞いたので、唐突に感じた」などと厳しく指摘していた。
自民党の世耕弘成参院幹事長も13日の党役員会で、「国民が納得、理解の上に、協力してくれるものにしなければならない」と、岸田首相を前にクギを刺した。さらに、自民党が今年7月の参院選公約に増税方針を示さなかったことを念頭に、「公約と整合的なものにしないといけない」とも指摘した。
城内実衆院議員ら自民保守系議員らは同日、国会内で会合を開き、出席者からは「内閣不信任案に値する」「財務省の陰謀」との声があがった。
増税への批判は財界にも広がった。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事は13日の記者会見で、「何に使うのかという議論がないまま財源の議論が先走るのはバランスが取れていない」「(政府が検討している法人税増税となれば)企業の賃上げや設備投資に水を差すことはほぼ間違いない」「消費税的なもので国民全体があまねく負担すべきだ」などと述べた。
こうしたなか、岸田首相は13日の自民党役員会で、「防衛力の抜本強化は安全保障政策の大転換で時代を画するもの。責任ある財源を考えるべきで、今を生きる国民が自らの責任としてその重みを背負って対応すべきものだ」と述べ、冒頭のような炎上をまねいている。
夕刊フジは先週9、10日、防衛費増額の財源を「増税」で賄うことの是非について緊急アンケートを行った。「絶対反対」と「まず税収増や防衛国債の発行などを検討すべきだ」を合わせて93・4%が反発する結果だった。「聞く力」を信条とする岸田首相の判断が注目される。
【私の論評】緊縮命のかつての「ぶったるみドイツ」ですら、国債で防衛費増をするのに、増税する岸田総理は、ぶったるみ切ったか(゚д゚)!
今回の防衛増税、なせやってはいけないのかに関しては、もうあまりにも分かりきっていることなので、高橋洋一氏や田中秀臣氏などの記事が掲載されている、他のメディアに当たってください。特に以下の記事は参考になると思います。
私自身も、防衛増税に関して過去に何度か書いていますので、その記事のリンクを【関連記事】に経済しますので、興味のある方は是非ご覧ください。
さて、とはいいながら、防衛費の増税に関しては、他の国ではどうしているのかは非常に参考になると思います。そのため、ドイツの例をあげておきます。
2022年2月27日。この日、ドイツのオラフ・ショルツ首相が連邦議会で行った演説は「同国を変えた」演説として歴史に残るでしょう。同首相は1990年代の東西冷戦終結以来ドイツが続けてきた「防衛軽視」の姿勢を180度変えて、ロシアの脅威に対抗するため軍備増強の方針を打ち出したのです。同首相は「ドイツ連邦軍を、確実に祖国を守ることができる近代的な軍隊に作り替える」と宣言しました。
具体的には、連邦軍のために1000億ユーロ(約13兆円)の特別基金を今年創設して、兵員数の増加、兵器の近代化、装備の調達、同盟国との新兵器の共同開発などに充てます。基金の財源は、長期国債を発行して賄います。
ロシア軍のウクライナ侵攻前に決められていた今年の防衛予算は、503億ユーロ(約6兆5390億円)でした。この503億ユーロに特別基金の一部を加えて約1000億ユーロとします。つまり独政府は、2022年に連邦軍に投じる予算をほぼ2倍に増やすことになります。
ショルツ首相はさらに「防衛予算が国内総生産(GDP)に占める比率を2%超に引き上げ、これを維持する」と明言しました。2%は、NATO(北大西洋条約機構)が加盟国に順守を求めてきた最低比率です。ところがドイツの2022年の防衛予算(当初額)のGDP比率は1.4%にとどまっていました。
前任のメルケル政権は、NATOに対して「2024年に2%目標を達成する」と伝えていました。米国のトランプ政権は「ドイツは2%目標をなかなか達成せず、防衛努力が不十分だ。防衛に金をかけず、国防について米国に依存する裏で、ロシアからガスを買って金を払っている」と厳しく批判していました。そのドイツが、2%目標を一挙に達成するどころか、それを上回る水準を維持すると宣言したのです。
防衛予算を今年、約2倍に増やした後、毎年の防衛予算はどの程度になるのでしょうか。ドイツの直近(2021年)のGDP(3兆5710億ユーロ)の2%は714億2000万ユーロです。つまり2023年以降、ドイツの毎年の防衛予算は、2022年の当初予算額(503億ユーロ)に比べて少なくとも約42%増えることになります。
第2次世界大戦の後、ドイツが防衛予算をこれほど急激に引き上げたことは一度もありません。ドイツは東西冷戦の終結後「外国軍による侵略の可能性は低くなった」と認識して防衛を軽視してきたため、装備の近代化が遅れていました。
ドイツ空軍の主力戦闘機「トルナード」は1979年に生産されたもの。それから約45年がたつのですが、後継機種すらが決まっていませんでした。2017年末の時点で連邦軍は93機のトルナードを持っていました。このうち実際に飛べるのは26機にすぎませんでした。
陸軍の弾薬や銃器、装甲兵員輸送車も不足しており、連邦軍がNATOの要請でバルト3国(ラトビア、エストニア、リトアニア)に部隊を派遣する際には、他の同盟国から装備の一部を借りることもあります。
すでに50年近く使われている装甲兵員戦闘車「マルダー」に代えて2019年に配備を始めた「プーマ」280両は、交換部品が不足しており、実戦に投入できるのは全体の30%にすぎない。しかも開発費用は、当初予定の約3倍、7億2350万ユーロに膨れ上がってしまいました。
軍関係者からは、政府の「防衛軽視」に対する不満の声が、ウクライナ危機がエスカレートする前から高まっていました。連邦軍のうち、陸軍を率いるアルフォンス・マイス総監はロシアによるウクライナ侵攻が始まった日、ツイッターに「連邦軍、特に陸軍の装備はほぼ白紙状態。NATOを支援するための能力は極めて限られている」と暴露しました。
連邦軍を退役したエゴン・ラムス元将軍は同日、ドイツ第2テレビ(ZDF)が放映したインタビューの中で「連邦軍は、外国軍による侵略の危険が迫った場合、ドイツを守れるでしょうか」という記者の問いに「守れない」と断言しました。
このドイツの体たらくや、従来の中国に接近する姿勢の両方に対してこのブログでは、「ぶったるみドイツ」と何度か揶揄したことがあります。その記事の代表的なものを以下に掲載します。これは、2018年の記事です。
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ドイツのメルケル首相(当時) |
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事から一部を引用します。ドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)の主力戦闘機「ユーロ・ファイター」のほぼ全機に“深刻な問題”が発生し、戦闘任務に投入できない事態となっています。現地メディアによれば全128機のうち戦闘行動が可能なのはわずか4機とも。原因は絶望的な予算不足にあり、独メルケル政権は防衛費の増額を約束したのですが、その有効性は疑問視されるばかりです。
ドイツは“緊縮予算”を続けており、その煽りを受けてドイツの防衛費不足は切迫しています。空軍だけではなくドイツ陸軍においても244輌あるレオパルト2戦車のうち、戦闘行動可能なのは95輌などといった実態も報告されています。
こうした状況に追い込まれた原因の一つとして、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。
ドイツの主力戦車「レオパルド2」
昨年10月15日、ドイツ潜水艦U-35がノルウェー沖で潜航しようとしたところ、x字形の潜航舵が岩礁とぶつかり、損傷が甚大で単独帰港できなくなったのです。
ドイツ国防軍広報官ヨハネス・ドゥムレセ大佐 Capt. Johannes Dumrese はドイツ国内誌でU-35事故で異例の結果が生まれたと語っています。
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ドイツ海軍の通常動力型潜水艦212型。ドイツが設計 建造しドイツの優れた造艦技術と 最先端科学の集大成であり、世界で初めて燃料電池を採用したAIP搭載潜水艦である。 |
紙の上ではドイツ海軍に高性能大気非依存型推進式212A型潜水艦6隻が在籍し、各艦は二週間以上超静粛潜航を継続できることになっています。ところがドイツ海軍には、この事故で作戦投入可能な潜水艦が一隻もなくなってしまったというのです。
Uボートの大量投入による潜水艦作戦を初めて実用化したのがドイツ海軍で、連合国を二回の大戦で苦しめました。今日のUボート部隊はバルト海の防衛任務が主で規模的にもに小さいです。
212A型は水素燃料電池で二週間潜航でき、ディーゼル艦の数日間から飛躍的に伸びました。理論上はドイツ潜水艦はステルス短距離制海任務や情報収集に最適な装備で、コストは米原子力潜水艦の四分の一程度です。
ただし、同型初号艦U-31は2014年から稼働不能のままで修理は2017年12月に完了予定ですかが再配備に公試が数か月が必要だとされています。
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当時のドイツの「ぶったるみ」ぶりが良く理解できると思います。
さて、ドイツではメルケル氏が所属するキリスト教民主同盟から政権交替があったわけですが、ショルツ現首相が属する社会民主党(SPD)は伝統的に軍備拡張に慎重でした。
ところがショルツ首相は「ロシア軍のウクライナ侵攻によってドイツを取り巻く状況が大きく変わった」として、2月27日に軍備増強の方針を宣言しました。主要閣僚など限られた人々に自分の決意を伝えただけで、連邦議会の各党の院内総務に対する十分な根回しもしない独自の判断だったといいます。ところが演説後、大半の議員は席から立ち上がって、首相の決断に賛意を表したのです。
ドイツは、第2次世界大戦中にナチスが欧州諸国に与えた被害への反省から平和主義が強く、軍や国防について否定的な見解を持つ人が多かったのです。ドイツ人がこれほど急激に防衛政策を変えるのは、戦後始めてのことです。この劇的な変化は、プーチン大統領のウクライナ侵攻が多くの市民に強い不安を抱かせ、プーチン政権の危険性について政府を覚醒させる強い警告となったみえます。
上の記事にもあるように、ドイツを含む欧州連合(EU)には、財政赤字が対GDP比で3%、債務残高が対GDPで60%を超えないこととする「マーストリヒト基準」があり、財政健全化を重視しすぎるとの声が経済専門家の間にはあります。
そのドイツですら、コロナ禍の時は一時的に減税しましたし、上の記事にもあるように、連邦軍のために1000億ユーロ(約13兆円)の特別基金を今年創設して、兵員数の増加、兵器の近代化、装備の調達、同盟国との新兵器の共同開発などに充て、基金の財源は、長期国債を発行して賄うのです。
日本は、安倍・両政権においては、両政権であわせて、100兆円の国債を発行して、補正予算を組み、雇用調整助成金の制度も用いて、経済対策を行ったため、他国がコロナ禍のときには、失業率がかなりあがったにもかかわらず、日本では2%台で推移し、特に失業率が上がるといこともありませんでした。
菅政権は、コロナ病床の確保に関しては、医療村の執拗な抵抗にあい、失敗しましたが、安倍・菅両政権により、驚異的なスピードでコロナワクチンの接種をすすめ、結果として、医療崩壊を起こすことなく、相対的にみれば、大成功だったといえます。このような快挙ですら、マクロ経済オンチの岸田首相や少数派自民党議員には理解できないようです。
そうして、このような実績を持つ安倍元総理は、防衛費増には、長期国債を財源にすべきと主張していたにもかかわらず、岸田首相は増税で賄うと発言したのです。
緊縮が命ともみられる、かつての「ぶったるみ」ドイツですら、覚醒し、長期国債で基金を創設し、それをもとに防衛力の強化を図ろうとしているにも関わらず、日本では増税ですと?
これでは、岸田総理は「ぶったるみ総理」と謗られてもしかたないと思います。はやくこの状態から覚醒していただきたいものです。
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