2022年12月20日火曜日

日米蘭3国で「対中包囲網」強化 WTO提訴も単なるパフォーマンスに 中国の野心に大打撃与える先端半導体装置の輸出規制―【私の論評】中国が「半導体技術の対禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは致し方ないことであり、自業自得(゚д゚)!

 日本の解き方

日米蘭3国で「対中包囲網」強化 WTO提訴も単なるパフォーマンスに 中国の野心に大打撃与える先端半導体装置の輸出規制


半導体工場を視察する習近平

 米国による先端半導体製造装置の対中輸出規制に、日本とオランダも参加すると報じられている。

 背景にあるのが、米中における半導体紛争だ。米国には先端半導体の対中輸出規制がある。これについて中国は世界貿易機構(WTO)に提訴した。

 国際社会から見て中国に分がありそうだが、米国はそっけない。米国の輸出規制は安全保障に関連するもので、WTOは議論するのに適切な場ではないとしている。バイデン政権は対中輸出規制措置について、中国軍が先端半導体を入手できないようにすることが目的だと説明している。

 そもそも、WTOは現在、機能不全になっている。その象徴はWTOが担う最も重要な機能の一つである、裁判に似た「紛争解決制度」だ。その「最高裁」に相当する上級委員会の裁定に不満を募らせた米国が、裁判官に当たる委員の選任を拒否し、2019年末から機能していないのだ。

 これでは、中国のWTO提訴も単なるパフォーマンスといわれても仕方ないだろう。WTOは、中国からの提訴を処理する前に、自身の組織改革が求められているのだ。そうなると、米国の輸出規制は有効のまま推移する公算が大きい。

 ここにきて、日本とオランダは、先端半導体製造装置を対象とした米国の対中輸出規制への参加に基本合意したという。これで対中国包囲網がより強固になり、中国の野心に大きな打撃を与えるだろう。

 日本、米国とオランダの3カ国が協調すれば、先端半導体製造装置を中国が入手することはほぼ完全にできなくなる。先端半導体製造装置では、米系のアプライド・マテリアルズ(21年世界シェア22・5%)、ラムリサーチ(14・2%)とKLA(6・7%)、日系の東京エレクトロン(17・0%)とオランダ系のASMLホールディング(20・5%)の5社が、それぞれ持ち味は異なるものの、事実上ビッグ5で、世界シェアの80%を超える寡占業者だ。

 かつて、米系のアプライド・マテリアルズと日系の東京エレクトロンは持ち株会社をオランダに設立して経営統合する話もあったが、あまりに強大になりすぎることを米司法省が嫌ったためにご破算になったこともあった。

 いずれにしても、日本、米国とオランダの3カ国が協調すれば、中国が先端産業を独自に構築できる方法はほとんど見込めなくなる。

 もっとも、米国がやろうとしている輸出規制はあくまで先端技術に関するものだ。成熟技術は規制対象ではない。このため、ビッグ5でも成熟技術での半導体製造装置は中国への販売はできる。

 それにしても、中国があわててWTO提訴に駆け込んだのは、日米蘭から先端技術がもらえなくなると、中国が技術大国を装ってもすぐに化けの皮が剥がれるからだろう。これからの社会では、先端半導体製造装置が必要になるが、中国ではできないだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】中国が「半導体技術の対禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは致し方ないことであり、自業自得(゚д゚)!

半導体製造装置市場では、技術進化によるシェア争いが厳しさを増しています。日本メーカーの装置販売額は市場の活況を受けて2024年まで拡大を続ける見通しですが、一方で世界シェアは低下傾向にあり、2020年に3割を下回ったとの調査もあります。世界シェアの巻き返しには、半導体の性能を高める「微細化」や「3次元実装」といった次世代技術の開発で海外競合との差別化を図る必要があります。


とはいいながら、上のグラフを御覧いただいても、ご理解いただけるように、世界の半導体製造装置のメーカー別シェアでは、日米蘭がほとんどを占めています。その他の部分にもしかすると、中国や韓国も含まれているのかもしれませんが、これにはいくつかの他の国々も含まれているのでしょう。いずれにせよ、中国や韓国などは、半導体製造装置においては、特筆することはないといえます。

そうしたなか、米国は「半導体技術の対中国禁輸」をはじめました。それについては、このブログにも掲載したとがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術仕様した第三国製も規制対象に 「中国の覇権拡大人権弾圧許さない意思表示」識者―【私の論評】最新型半導体を入手できない中国のスマホは、かつての日本のショルダーホンのようになるか(゚д゚)!

この記事の元記事より以下に一部を引用します。

ジョー・バイデン米政権が打ち出した、「半導体技術の対中国禁輸」が波紋を広げている。米国で製造された半導体や製造装置だけでなく、米国の技術で第三国で製造された半導体も規制の対象で、「中国の半導体製造業の壊滅」につながりかねない厳格さだという。民生用から軍事用まで幅広く使われている半導体は、今や国家の命運を左右する「戦略物資」となっている。米国は「安全保障」や「人権弾圧」を理由としているが、日本を含む同盟・友好国も対策が急務となりそうだ。 

とにかく、米国の最新の技術を含む、半導体や製造装置の輸出を禁じるというものであり、半導体関連で、米国の技術を含まないものなどないので、これはかなり厳しい措置です。

この措置に関して、多くの人はあまり理解していなかったかもしれませんが、【私の論評】のところで、その厳しさを以下のように説明しました。
多くの人は米商務省が10月 7日、半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表した際にに何が起きたか本当には、理解していかったかもかもしれません。
簡単にいえばバイデンは中国で働く全ての米国人(半導体産業)に即刻ビジネスを止めるか、米国籍を失うかという選択を迫ったのです。

すると中国にある全ての半導体製造企業の米国人幹部やエンジニアはほぼ全員辞職し、中国の半導体製造は一夜にして麻痺状態になったのです。

バイデンの今回の制裁は、トランプ4年間の12回の制裁を合わせたよりも致命的です。

トランプ時代の制裁では半導体供給にはライセンス申請が必要だったものの申請すれば1か月以内に通過していました。

一方バイデンは米国の全てのIPプロバイダー、部品サプライヤー、サービスプロバイダーをほぼ一晩で全て撤退させ、あらゆるサービスを断ち切りました。

大惨事とはまさにこのことです。中国の半導体産業の半分が価値ゼロになって完全に崩壊します。

実は、中国は近年最新の半導体製造装置を大量に買い込んでいました。ただし、中国の半導体製造はあまり伸びてはいませんでした。なぜかといえば、せっかく買い込んだ半導体製造装置が、これを運用できるノウハウを持つ人材が育っておらず、中国にとってはこうした人材を育てることが喫緊の課題でした。

ところが、バイデンの 「半導体技術の対中国禁輸」により、半導体製造装置を運用できるノウハウを持つ人材を育てる米国人は、中国を離れざるをえなくなったのです。

ただ、中国にとっては、こうした措置の抜け道はありました。たとえば、日蘭の半導体製造装置の中で米国性の半導体を用いていなくてかつ、米国の技術を用いていないものに関しては、米国の規制の対象とならない可能性がありました。

しかし、先端半導体製造装置の対中輸出規制に、日蘭も参加するというのですから、これは中国にとっては絶対絶命です。日蘭の技術者も、中国を離れることになります。

中国は自ら最先端の半導体を製造できなくても、それを外国から輸入すれば良かったのですが、それができなくなったのです。

台湾のtsmcの半導体工場

中国は5G技術で様々な特許をとっているということが言われてきましたが、それは海外製の最先端の半導体を前提としています。多くの特許を取得していたにしても、入手できることを前提とした半導体が手に入らなければ、それを実現することはできません。

ただ、通信でいえば、5G以上を実現するための半導体は手にできませんが、4Gなら入手できます。であれば、一般のスマホなどは、それを用いたものが使われていくことになるしょう。しかし、軍で用いる最新のものは、4G向けの半導体を用いざるを得ず、それこそ、一昔前のショルダーフォンのように大きくなる可能性はあります。

AIでも同じようなことが起こりえるでしょう。理論的には可能であっても、そのAIを製造するためには、古い技術では、原子力発電所をつくるように大掛かりで、時間も要するものになり、事実上不可能ということになるかもしれません。

データーセンターも、スーパーコンピュータも同じようなことになるかもしれません。新たなな技術であれば、大きな電力もスペースも必要ないのに、何倍もの電力、面積体積が必要となり事実上不可能となるかもしれません。

現在稼働しているコンピュータ、スマホなどの理論的な背景はすべて英国のエリザベス朝時代にすべて存在したといわれています。

にもかかわらず、なぜ今日のコンピュータやスマホのようなものが製造できなかったといえば、それを実現するための、素材や技術、今日にみられるような安定した電源が存在しなかったからです。

これからの中国はこれに近い状態になります。仮に新たな技術開発の理論ができたにしても、それを実現するための半導体がなければ、それを実現することはできないのです。

「半導体は産業のコメ」といわれます。しかし今やコメよりも重要度は高いです。中国が、半導体で外国から「兵糧攻め」に遭えば死活問題です。これから、中国の産業の冬の時代が続きそうです。

このようなことは、中国に対してかなりきついのではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、過去を振り返れば、先進国の「経済的に豊かになれば共産主義中国も『普通の国』として仲間入りができる」という誤った妄想が、中国の肥大化を招き傲慢な「人類の敵」にしてしまったという現実があります。

その代表例が、2001年の中国のWTO加盟です。1978年の改革・解放以来、鄧小平の活躍によって、1997年の香港再譲渡・返還にこぎつけた共産主義中国が、「繁栄への切符」を手に入れたのです。 

この時にも、共産主義中国は「WTOの公正なルール」に合致するような状態ではありませんでした。 ところがが、米国を始めとする先進国は「今は基準を満たしていないが、貿易によって豊かになれば『公正なルール』を守るようになるだろう」と考え、共産主義中国も「将来はルールを守る」という「約束」をしたことで加盟が認められたのです。 

ところが、加盟後20年以上経っても、共産主義中国は自国の(国営)企業を優遇し、外資系いじめを連発するだけではなく、貿易の基本的ルールさえまともに守る気があるのかどうか不明です。しかも、先進国の技術を平気で剽窃してきました。

中国がWTO提訴に駆け込むなど、片腹痛いとはこのことです。

これを考えれば、現在中国が「半導体技術の対中国禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは、致し方ないことであり、自業自得ということができます。

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