国連によると、2022年の人口は中国が14億2600万人、インドが14億1200万人で、23年中にインドが追い抜くと予測される。50年にはインドが16億人を超える一方、中国は13億人強に減る見込み。中国は長年の一人っ子政策の影響もあって少子化が進み、23年にも人口減少に転じるとみられている。
【私の論評】今更中国幻想に浸っていては、世界の構造変化から取り残される(゚д゚)!
中国とインドは人口大国で、過去70年にわたり、その人口の総和が世界人口の3分の1を占めてきました。
インドの人口が中国を超えるのは、主に、両国の出生率の差が理由です。
報道によると、20世紀後半、インドの人口は急増の一途をたどり、増加率は年間平均2%に達しました。1947年の独立後、インドの人口は10億人を超え、この先40年間にわたっても増加し続けると予測されています。
一方、中国を見ると、第7回国勢調査では、人口は14億1178万人だった。2010年の第6回国勢調査と比べると、5.38%増で、増加率は年間平均0.53%にとどまっています。
インドの人口は2060年代に17億人近くまで増える一方、中国は早ければ23年から人口減少が始まります。長く中国が人口世界一だった常識が大きく変わることになります。
国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(22年10月下表)によれば、インド経済は23~27年、5年間平均で6.5%の成長が見込まれ、一定の経済規模を持つ国では最も高い部類に入ります。その結果、21年のGDPで世界5位のインドは、25年には4位のドイツ、27年には3位の日本を抜く見込みです。対照的に、中国は27年までの5年間平均で4.6%成長へと減速が予測されています。
クリックすると拡大します |
新型コロナウイルス禍前の19年まで、10年間平均で6.9%の成長を続けていたインド。成長をけん引した産業の一つがITです。GAFAなどにもインド人の人材が多く活躍しています。
インドはなぜIT分野に強いのかといえば、インド古来の階級制度カーストの影響から逃れられたことが要因の一つと考えられます。カースト制度では「ジャーティ」と呼ばれる細かな社会集団に分類され、職業が各集団に付随して維持されてきました。しかし、「ITは新しい産業だからカーストの制約はない。将来のビジネスになる」と気付いた優秀な人たちがIT業界に一斉に集まってきたのです。
もう一つの要因としては、インドの公用語でもあるヒンディー語(母語とするのは4億人)は、もともと抽象的概念を扱いやすい言語であり、たとえば「お使いに行く」という日本語の表現を「使者性を帯びて赴く」というような表現をします。子供の頃からこのような抽象的な概念を表現できる言葉を用いている人は、システム設計などの概念も受け入れやすいようです。
インドは1991年、それまでの社会主義的政策から経済自由化政策に切り替え、発展の基礎を築きました。そして今、モディ現政権が注力する領域が製造業、特に半導体分野です。コロナ禍によって中国などに依存していた電子部品やハイテク製品が供給制約に直面。また、20年5月には中印国境で中国との戦闘も発生し、中国依存は危ないと考え、「インドの自立」を唱え始めたのです。
インド政府は今後、半導体産業育成に5年間で7600億ルピー(約1.4兆円)の補助金を拠出するといいます。すでに、電子機器受託製造世界最大手の台湾・鴻海精密工業がインドの資源関連複合企業ヴェダンタと組んで、グジャラート州に半導体の新工場の建設をインド政府に申請しています。総投資額は1.54兆ルピー(約2兆6000億円)にものぼる見込みです。
また、ベルギーの世界最先端の半導体研究機関imec(アイメック)は22年10月、インド政府とインドにおける技術支援を行うことで合意しました。imecが供与する微細加工技術のレベルは、回路線幅28ナノメートル(ナノは10億分の1)かそれ以下と、最先端の半導体製品とは開きがあります。しかし、インドで半導体を国産化するうえで、産業のエコシステム(経済的な生態系)を作る基礎固めとみられます。
インドは今後、消費市場としても大きな注目を集めそうです。インドの1人当たりGDPは現在、2000ドル台ですが、25年には家電製品や家具など耐久消費財の売れ行きが加速するとされる3000ドルを超すと見込まれます。今後特に、生活の質を改善するための需要が期待でき、電力、道路、鉄道、通信、上下水道などインフラ整備も引き続き必要になるでしょう。
安倍日本首相(当時)とモディインド首相 |
一方の中国は、そもそも民主主義国家ではなく全体主義国家です。このブログでも何度か解説したように、開発経済におては「中進国の罠」という用語があり、民主化が進んでいない国では、政府か掛け声をかけて多大な資金を投入すれば、最初は経済発展するのですが、一人あたりのGDPが1万ドル前後あたりから、伸びなくなるというものです。
中国GDPはすでに1万ドルを若干超えています。今後伸びない可能性が高いです。インドは、現在はかなり低いですが、それは逆に言えば、伸びしろがあるということであり、さらにインドの場合は、1万ドルの壁も突破できる可能性があります。
中国では、2015年に「一人っ子政策」の廃止を決定し、21年には3人目の出産も認めたのですが、教育費の高さなどから少子化に歯止めがかかりません。すでに生産年齢人口(15~64歳)は13年、約10億600万人とピークに達し、今後も減少が見込まれます。やはり、一人っ子政策が2世代(約40年)と長期にわたったことが大きく影響しているようです。
中国とインドといえば、最大の違いは、先に述べたように、中国は全体主義国家であり、インドは未だ古い風習などが色濃く残る社会ではあるものの、民主主義的な体裁を整えた国であり、世界最大の民主主義国家です。
インドでは、不十分なところもありながら、民主主義化、政治と経済の分離、法治国家化がなされています。これが中国との大きな違いです。
日本の場合は、速報値はもっと早いにしても、確報値を発表するのに1年近い時間を費やします。そのうえ、GDPの統計は内閣府、失業率は総務省統計局、貿易統計は財務省というように、集計の担当が分かれており、それぞれのチェック作用が働きます。もちろん、これらの政府機関は、統計の対象となる業界との間に利害関係はありません。
他方、中国では各地の地方政府と国家統計局が統計の集計を担っており、これらの機関は所轄地域のGDPと密接な利害関係を持っています。なぜなら中国では、経済成長の目標とは達成しなくてはならないノルマだからです。
水増し粉飾分を取り除くと、実際の中国のGDP規模は未だに日本を超えていないといわれています。そうして、現代の中国は、過大な投資による過剰な生産能力が、企業業績の悪化を引き起こし、経済低迷の原因となっています。
中国が経済発展を続けるには、すでに国内では一巡して目ぼしい案件がない現在、投資主導の経済から消費主導の経済への転換が欠かせないです。しかし、中国国民の貯蓄性向は高く、転換はうまく進んでいません。その最大の要因は、民主化がされていないことと、セーフティー・ネットが整備されていないことです。
中共は、過去の成功体験が忘れられず、海外投資で巻き返しを図ろうとして、一帯一路をはじめたのですが、海外投資の経験に乏しい中共は、投資の基本を理解しておらず、法治国家におけるビジネスの進め方も熟知しておらず、結局投資先を混乱に陥れるだけに終わりそうです。非法治国家においては、成功するかもしれませんが、そのような国は貧乏国が多く、債務の罠にはまるだけになりそうです。
数カ月で人口の6割感染との予測も、中国のコロナ流行に世界から懸念の声―【私の論評】中共は、「ゼロコロナ」政策をやめ中国人が多数が死亡しても集団免疫を獲得すれば良いと考えたか(゚д゚)!
27年までの5年間では、インドのように人口が増えるベトナムやバングラデシュなどで年平均6%以上の成長となるほか、エジプトやインドネシアなどは5%以上の成長が見込まれます。ナイジェリアやバングラデシュ、ベトナムは27年、アルゼンチンなどに代わってGDPの上位30位にも顔を出すとみられます。その中でも、民主化が進んでいる国においては、中進国の罠を突破して成長し続ける国もでてくるでしょう。世界の構造変化の大きなうねりは、従来から予想されていたように、目前まで押し寄せています。
最早中国の経済の停滞は一時的なものであり、また中国の経済発展が始まるなどの中国幻想に浸っている時ではありません。考えを変えていない人や組織は、世界の構造変化から取り残されることになります。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿