2023年1月5日木曜日

世界10大リスク 「危険なならず者」ロシアが首位―【私の論評】台湾侵攻は「リスクもどき」、中国最大の危機は習近平(゚д゚)!

世界10大リスク 「危険なならず者」ロシアが首位


 国際政治経済のリスク分析を行う米調査会社ユーラシア・グループは3日、2023年の10大リスクを選定した報告書を公表した。ウクライナへの侵略を続けるロシアを米欧やそれ以外の地域に「安全保障上の深刻な脅威」を突きつけていると指摘し世界最大のリスクに挙げた。また、昨年10月の中国共産党大会で掌握した習近平総書記(国家主席)の長期的な権力を第2のリスクに選んだ。

 報告書はロシアについて「勝利のための良い軍事選択肢は残されていない」としつつ「引き下がらない」と予測。制裁で孤立を深めながらも「最も危険なならず者国家」となると指摘した。

 その上でイランとの軍事的な連携や核兵器による威嚇の強化を予測。核使用の可能性は低いとしつつ、事故や判断ミスで核戦争に発展する危険は1962年のキューバ危機以来最も高まると予想した。ゼレンスキー大統領暗殺を含むウクライナ指導層の排除に一段と懸命になるとも指摘した。

 2番目のリスクとした中国の習国家主席について、「あらゆる中国の政策は全権を有するひとりの指導者から流れ出る」と指摘。新型コロナウイルス対策を巡る混乱を挙げつつ、不透明な意思決定や政策の軌道修正の難しさなど権力集中の弊害が世界に及ぼす悪影響に警鐘を鳴らした。

 3番目には人工知能(AI)など米国発の技術発展を挙げ、世界の強権指導者に偽情報拡散などの能力を提供し、民主主義を弱体化させる危険を指摘した。

【私の論評】台湾侵攻は「リスクもどき」、中国最大の危機は習近平(゚д゚)!

ユーラシア・グループの地政学的リスクに関しては、昨年も当ブログに掲載しました。昨年の予測では、中国のゼロコロナ政策の失敗が最大のリスクとなっていましたが、これは時期をずらしたものの、予測は的中した形になりました。今後、春にかけて感染は拡大し、世界経済などに大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

中国のリスクはここ数年必ず掲載されるようになりましたが、昨年より前の時点では、中国の外国に対する干渉や脅威がリスクとされ、昨年は「ゼロコロナ政策の失敗」という中国の国内事情が最大のリスクとなり、今年は習近平のリスクというように、リスクの範囲が狭まってきています。

今年の、予測も妥当なものと思います。やはり、なんと言っても、ロシアの危機が最大のものと考えられます。

戦闘長期化に伴って余裕を失うロシアが、核兵器使用の威嚇を含め国際社会への揺さぶりを強化する可能性を指摘しました。報告書はロシアが「世界で最も危険なならず者国家になる」と予想しました。

第2のリスクの習氏については、昨年10月の中国共産党大会で長期支配を確立し権力の一極集中が進んだことで政策の不安定さや不透明さが増すと分析しました。

今年は、習近平が最大の地政学的リスクに

それと、中国による台湾侵攻リスクに関しては、昨年も今年も掲載されていません。報告書では、米国はインフレ、中国は経済成長鈍化などそれぞれの国内経済問題を挙げた上で、実際に軍事衝突が起きれば相互に耐え難いリスクとなると指摘しました。

貿易などを通じ米中経済は深く絡み合っており、軍事衝突は両国の経済を破壊すると分析。また中国は半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)へのアクセスを失うリスクを負うことも強調しました。

その上で、中国は力のバランスが決定的に自国に有利になるか、台湾を擁護しない米大統領が就任するまで台湾への軍事介入を延期するだろうと予測。いずれも23年中には起こり得ないとしました。

米ニューヨークに本拠を置くユーラシア・グループは毎年、その年の十大リスクを発表している。その他の「リスクもどき」はウクライナ支援を巡る課題などを挙げました。台湾有事は昨年も「リスクもどき」とされていました。

中国の台湾侵攻が「リスクもどき」という指摘はもっともだと思います。何しろ、現在中共はゼロコロナ政策をやめて、感染拡大を放置して、なるべく早い時期に、国民が集団免疫を得ることを狙っていとみられます。中共としては、23年3月5日開幕の人民大会開催の直前までには、そうなることを目指しているとみられます。

これにより、集団免疫が得られたにしても、相当数の死者がでたり、コロナ感染から回復したにしても、後遺症に悩まされる人が大勢出たりして、23年中にはその対策に追われることになるでしょう。

さらに、このブログでも解説したように、中国が台湾を破壊することは簡単ですが、侵攻して占拠して統治するということになれば、これは全く別の次元の企てであり、かなり難しいです。

そもそも、兵員の海上輸送能力が足りず、一回に数万の兵士しか台湾に送り込めず、そうなると、武力的にウクライナよりはるかに現代化されていて、強力な地対地ミサイル、対艦ミサイル、対空ミサイルならびに長距離ミサイルを多数自前で開発し配備する台湾軍に個別撃破され、艦艇は撃沈され、航空機は撃墜され、中国本土も脅威にさらされます。

また、台湾は島嶼であるにもかかわらず、最高峰の玉山は、4000m近くもあり、富士山よりも高いです。東海岸は、急峻であり、とても大部隊が上陸できるような地形ではありません。西海岸は地図上では平地が広がっていますが、それでも上陸できる地点は限られているため、台湾軍が待ち構えているところに上陸して密集した陣形をとらざるをえず、高地に陣取る台湾軍から撃破されやすいです。

台湾の地形をみれば、中国の台湾侵攻は難しい

さらに、これに日米などが加勢して、特に米軍がこの地域に大型の攻撃型原潜を派遣すれば、中国軍は太刀打ちできません。中国海軍は、台湾侵攻どころか、崩壊の危機に瀕することになります。

この点に関しては、このブログの過去記事でまとめています。下の【関連記事】のところに掲載しておきますので、関心のある方は是非ご覧になってください。

3位に関しては、すでに言葉をいくつか入力することによって、AIが写真を合成するというものも存在しており、これは確かに脅威になり得ると思います。

様々なものがありますが、たとえば、英Stability AIが発表した画像生成AI「Stable Diffusion」が、にわかに注目を集めています。基本的にローカルに実行環境を整え、インストールして使用するツールだが、デモサイトで手軽に試すことも可能です。

以下に、Putin(プーチン),rogue(ならず者),demon(悪魔)とキーワードを入力して得られた画像を以下に示しておきます。


このような合成写真が短時間にできてしまうのですから、これによって、ショッキングなものや人々の憎悪を掻き立てるような画像も簡単にできてしまいますから、確かにかなり危険です。

4位以下も十分にありそうです。本ブログでは、こうした危機が顕在化しそうになれば、昨年同様レポートしていきます。皆さん、今年もよろくお願い申し上げます。

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