2023年1月10日火曜日

ロシア軍、ウクライナ東部ソレダルの大半を制圧の公算=英国防省―【私の論評】戦況の変化は、露宇両軍とも弾薬不足で本格的塹壕戦に突入したせいか(゚д゚)!

ロシア軍、ウクライナ東部ソレダルの大半を制圧の公算=英国防省


英国防省は10日、ロシア軍と民間軍事会社「ワグネル」の部隊は過去4日間の戦術的な前進の結果、ウクライナ東部ソレダルの大半を制圧した公算が大きいとの見方を示した。

ウクライナ当局によると、ロシア軍はこのところ要衝バフムトの近くに位置するソレダルへの攻撃を強化している。

英国防省はロシア軍がバフムトを北から包囲し、ウクライナ軍の補給路を混乱させることが狙いと分析した。

【私の論評】戦況の変化は、露宇両軍とも弾薬不足で本格的塹壕戦に突入したせいか(゚д゚)!

複数のメディアにより、バフムトで大変厳しい戦闘が行われていることが報道されています。戦線が動きにくい塹壕戦になっており、それは第一次世界大戦という、人間史上初めての大量殺戮が起こった戦争の暗い歴史を思い起こさせるものです。

このバフムトの隣町が、ソレダルです。北東わずか10キロの所にあります。5月中旬からワグネルの民兵(傭兵)が激しい戦闘を繰り広げていました。

ウクライナ軍は塹壕戦に埋もれながら抵抗し、ほとんど譲ってこなかったが、ここ数日、ワグネル民兵とチェチェン連隊の支援を受けたロシア軍が、バフムトとソレダルで進撃しているとされました。

ハンナ・マリアー国防副大臣は、1月9日、ロシア軍は、バフムト攻勢のために長年の目標であったソレダルの町の攻略を再び試みたと報告したました。

「ワグネル・グループの最高の予備軍で編成された多数の突撃隊」を投入して損失を回復したとも述べています。

『キーウ・インディペンデント』ウクライナ側は、ロシア軍が戦術を変更して、部隊を再編成して追加移送したために、ソレダルへの新たな攻撃は強力なものになると予想していると報じました。

米国のシンクタンク・戦争研究所も、ワグネルのトップ・プリゴジン氏が、1月9日、ワグネルグループの部隊がソレダルで地盤を固めていると強調していること、ワグネルの戦闘員が現在「市行政の建物のために激しい戦い」を繰り広げていると指摘したと報告しています。

ソレダルという町名は、文字通り「塩を与える」という意味だそうです。国営企業アルテムソルが年間約700万トンの塩を採掘しています。

バフムトやソレダルを含むこの地域全体は、塩だけではなく、石膏、粘土、チョークなどの豊富な鉱床もあります。

米国のシンクタンク・戦争研究所は、傭兵集団ワグネルのボスであるエフゲニー・プリゴジンが、この地域の鉱山から塩や石膏を採取して、財政目的にしようとしていると推定しています。

これは、ワグネルの民兵がアフリカでやり慣れている方法だといいます。ホワイトハウス関係者の話として伝えています。

1月8日、ゼレンスキー大統領は、当面の間、バフムートとソレダルは「どんなことがあっても持ちこたえる」ことができると宣言、さらなる部隊派遣を約束しました。

この地域での戦闘の重要性を証明するように、ウクライナ地上軍司令官イヴァン・シルスキーは同日にバフムトとソレダルを訪れ、この戦線に従事する戦闘員たちを激励しました。

同日、東部ウクライナ軍のセルヒィ・チェレヴァティ報道官は、ロシア軍はソレダルを支配していないと断言しました。

戦争研究所が引用したウクライナの公式情報では、自国軍がバフムト付近のロシア軍陣地をいくつか奪還したとも伝えています。

しかし、上の記事にもあるように、残念ながらウクライナ軍が苦戦しているのは事実であるようです。

この急激な戦況の意味するところは、何なのでしょう。一つには、気温の変化があるかもしれません。つい最近まで、比較的暖冬で霜がおりないために、地面がぬかるんで戦況は進みにくいと言われていました。

ただ、クリスマス(旧暦を使うので1月7日に祝う)の頃、寒波が襲ってきて、とても寒いクリスマスを過ごしているとのニュースがありました。東部でもマイナス10-12度くらいまで下がるとの天気予報がありましたから、道路のぬかるみが収まり、これが何か戦況に与えた可能性はあります。

ウクライナ領内に遺棄されたロシア軍のTOS-1多連装ロケットランチャー

ただ、これはロシア軍にとって良いことですが、同時にウクライナ軍にとっても、良いことといえ、戦況の変化を説明する決定的な要因とは言い難いです。

決定的な要因になるかもしれない事柄については、以前このブログにも掲載したことがあります。それは、両軍とも弾薬がつきつつあるため、主要な戦い方が塹壕戦になったという可能性です。その記事のリンクを以下に掲載します。
ロシア空軍基地爆発相次ぐ プーチン政権 事態深刻に受け止めか―【私の論評】ウクライナ戦争は、双方の弾薬不足等で塹壕戦になりかねない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を以下に掲載します。
それよりも、何よりももっと私が最も恐れているのは、ウクライナ、ロシアともに高精度のミサイルなどが枯渇して、従来のあまり精度の高くないミサイルや火力が中心となり、それこそ、第二次世界大戦どころか、第一次世界大戦のような塹壕戦のような戦いになってしまう可能性があることです。

第一次世界大戦の塹壕戦

両軍とも、銃や機関銃、大砲の弾丸も不足気味になり、銃剣や刀剣を用いた戦いも交えられるようになるかもしれません。

そうなると、第一次世界大戦がそうだったように、なかなか戦争の決着がつかないうちに、多くの兵の命が失われることになりかねません。

ウクライナ戦争がこのような戦争になる可能性はあると思います。そうなれば、戦争は長引くことになります。

第一次世界大戦では、ロシアでは革命が起こったため、ロシアは戦線から離脱せざるを得なくなりました。

そのようなことでもおこらない限り、戦争は長引く可能性があります。
昔ながらの、塹壕戦になれぱ、一時はロシア軍が有利になる可能性もあります。 英国防省は4日に公表した戦況分析で、ロシア軍が「督戦隊(とくせんたい)」と呼ばれる部隊をウクライナ国内に展開し始めたとの見方を明らかにしていました。逃亡を図る自軍の兵士を「射殺する」と脅し、無理やり戦闘を続行させるのが役割だといいます。

督戦隊は旧ソ連にも存在したとされ、英国防省によると、過去にもロシア軍が軍事紛争の際に使ったことがあります。ウクライナ侵攻でも、ロシアの将軍たちは兵士に陣地を死守させるため、自軍の逃亡兵を攻撃できるようにすることを希望していたようだというのです。

こうした部隊の展開について、英国防省は「逃亡兵を撃つ戦術は、ロシア軍の質や士気の低さ、規律の不十分さを証明するものであろう」と分析しています。

ワグネルなどが、督戦隊の役割をにない、徴収兵ら経験のない兵隊たちを無理やり敵塹壕に向けて突進させた可能もあります。

督戦隊は、古くはオスマントルコ帝国で存在しましたが、やはり最も有名なのは第2次世界大戦におけるスターリングラード攻防戦など、ロシアの対独戦における督戦隊の存在です。

第2次世界大戦当時、自分の名称を冠したスターリングラードをドイツから死守したい独裁者スターリンは、スターリングラード攻防戦で、督戦隊を配置し、ドイツの猛攻撃に対して、自軍兵士の退却を防ぎました。

督戦隊で有名なのは日本と戦う国民党軍でした。南京攻略戦の際に敗退して潰走する国民党軍の兵士を、挹江門(ゆうこうもん)において督戦隊が自軍兵士を射殺したことが知られています。

復刻版『督戦隊』キンドル版も発売されています。

このような戦法をとれば、塹壕戦においては一時的には、ロシア軍が優勢になる可能性はあります。それが、今回のロシア軍、ウクライナ東部ソレダルの大半を制圧した要因かもしれません。

しかし、もしこれが真相であれば、弾薬は不足しがちながらも、やがてウクライナ軍は塹壕戦でも、ドローンを多用するなどの現代的な戦術を用いつつ、古い戦術をとるロシア軍を圧倒し、挽回していく可能性はあります。

ただ、主要な戦い方が塹壕戦になってしまっていて、それが継続されるというなら、第一次世界大戦がそうであったように、戦況は一進一退の様相を呈し、長引くことが予想されます。

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