2023年1月7日土曜日

立法院、台湾版CHIPS法案可決 半導体などの先端産業の法人税を6年間優遇―【私の論評】日本でも、腐敗の温床となる補助金制度を少なくし台湾のように産業支援は減税を多用すべき(゚д゚)!

 立法院、台湾版CHIPS法案可決 半導体などの先端産業の法人税を6年間優遇


立法院院会(国会本会議)は7日、「台湾版CHIPS法」と呼ばれる先端産業を支援する関連法の改正案を可決した。半導体や高速通信規格(5G)、電気自動車(EV)などの次世代産業の法人税が優遇される。施行期間は今月1日から2029年12月31日までの6年間。

可決されたのは産業創新条例第10条の2と第72条の改正案。法案は産業を問わず、国内で技術革新を進め、かつ国際サプライチェーン(供給網)において重要な地位を占める企業が対象。その研究開発費や有効税率が一定の規模・割合に達することなどを条件に、先端技術研究開発費の25%と、先進プロセスに用いる自社用の新規機器や設備の支出額の5%に相当する金額を当該年度の営利事業所得税(法人税)から控除できると明記されている。控除総額の合計が当該年度に納めるべき法人税の50%を超えてはならないことも規定された。

同法案を巡り5日、立法院で与野党協議が開かれた。出席した王美花(おうびか)経済部長(経済相)は、先端産業が台湾の国防と経済の安全保障における強力な後ろ盾になればとその効果に期待を寄せた。

【私の論評】日本でも、腐敗の温床となる補助金制度を少なくし、台湾のように産業支援は減税を多用すべき(゚д゚)!

台湾版CHIPS法というくらいですから、他に手本があります、それは米国のCHIPS法です。

米国のCHIPS法とは、米国内の半導体産業に関する政策で、米国商務省の標準技術局や国防省の元、米国の半導体エコシステムを再構築しつつ、国内に高給職を創出し、国家安全の強化を目指す政策です。

米国内の半導体に対して500億ドル(約7兆2,500億円(1ドル145円換算、以降同様)の補助金を投じるというものです。 さらに米国時間2022年9月6日、米国商務省は同省やその他の政府機関がどのようにこの補助金を半導体関連企業に割り振るか、概要を示しました。より詳しい内容については2023年上旬に公開される見通しです。

おおよその内訳としては、500億ドルのうち約3分の2にあたる280億ドル(約4兆円(1ドル145円換算、以下同様))はIntelなどの最先端のロジックチップや、メモリチップを製造する企業の支援に使用。100億米ドル(約1兆4,000億円)は既存チップの新たな製造能力、炭化ケイ素、カーボンナノチューブ材料関連の投資に用いられます。また残りの110億米ドル(約1兆5,000億円)は、製造機関創設などに割り当てられる予定です。

米国でCHIPS法が導入されたのは、半導体をめぐる深刻な問題が背景にあります。そもそも半導体は1959年に米国人によって発明され、1990年には米国製が37%と大きなシェアを占めていました。

ところが現在では、日本や韓国、台湾といったアジア勢が、米国の生産量を大きく上回るようになっています。

そうしたなか、新型コロナウイルス禍からの経済が急速に回復し、自動車を筆頭に多くの業種で半導体の供給不足が生じるようになりました。新型コロナウイルス後の供給制約を経験し、米国では半導体製造を海外依存していることの危険性が高まりつつあります。

CHIPS法は2022年8月9日にバイデン大統領の署名をもって成立し、8月25日にはCHIPS法の実施を加速させる大統領令に署名をするなど、アメリカ政府急ピッチで進めている政策であることがうかがえます。

実は、CHIPS法のような政策は、前身であるSEMATECH(セマテック)の時期から実は議論が始まっていました。なぜCHIPS法成立を急いだのでしょうか。

それは、米国同様に半導体投資に巨額の投資をしている中国の存在です。中国の習近平国家主席は、後10年で1兆米ドルの投資を行なうと宣言するなど、半導体事業に強い取り組み姿勢を見せていました。

CHIPS法では、半導体企業が国から支援を受けるためには、向こう10年間中国国内で最先端半導体の増産や、生産能力の増強を行なわないなどの条件があります。これは実質対象企業に、中国から手を引くように求めている意図もあり、明らかに中国に対抗するための政策を言えるでしょう。CHIPS法は、世界でも最も重要な産業とも言える半導体産業を米国に取り戻すための法案というだけではなく、中国権威主義との戦いという側面もあります。

米国では、CHIPS法案成立の後、さらにダメ押しをするような政策も実行しています。それについては、以前このブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
この記事では、米商務省が10月7日、米国の技術が含まれている半導体や製造装置の新たな対中輸出規制強化策を発表したことを掲載しました。最先端半導体を扱う中国企業の工場への製造装置販売を原則禁止し、スーパーコンピューターなどに使われる関連製品の輸出も制限しました。

これがどのくらい厳しい措置なのか、ピンと来ない人もいるかもしれないので、この記事から一部を引用します。
バイデンの新しい制裁はおそらく中国半導体産業の終焉を意味していると考えられます。

多くの人は7日に何が起きたか本当には、理解していないかもしれません。

簡単にいえばバイデンは中国で働く全ての米国人(半導体産業)に即刻ビジネスを止めるか、米国籍を失うかという選択を迫ったのです。

すると中国にある全ての半導体製造企業の米国人幹部やエンジニアはほぼ全員辞職し、中国の半導体製造は一夜にして麻痺状態になったのです。

バイデンの今回の制裁は、トランプ4年間の12回の制裁を合わせたよりも致命的です。

トランプ時代の制裁では半導体供給にはライセンス申請が必要だったものの申請すれば1か月以内に通過していました。

一方バイデンは米国の全てのIPプロバイダー、部品サプライヤー、サービスプロバイダーをほぼ一晩で全て撤退させ、あらゆるサービスを断ち切りました。

大惨事とはまさにこのことです。中国の半導体産業の半分が価値ゼロになって完全に崩壊します。

米国は国内半導体産業を支援するとともに、中国に対しては厳しい措置をとったのです。 

米国の中国に対する制裁はこれだけに収まりません。日本、オランダを巻き込み、さらに厳しい措置を実施しています。

これについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

日米蘭3国で「対中包囲網」強化 WTO提訴も単なるパフォーマンスに 中国の野心に大打撃与える先端半導体装置の輸出規制―【私の論評】中国が「半導体技術の対禁輸」措置を日米蘭から喰らうのは致し方ないことであり、自業自得(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、世界の半導体装置のシェアは、ほとんど日米蘭によって占められています。台湾の半導体大手も無論日米蘭の製造装置を用いて製造しています。

日米蘭が半導体製造装置を売らないというのなら、今後中国の最先端の半導体製造はできなくなります。ただ、一世代前の半導体であれば、購入できますから、民生用ではそれを使うことになるでしょう。ただ、軍事用の最先端のものは入手困難となり、中国の軍事技術は一世代遅れたものになります。

台湾では、上の記事にあげたように、半導体産業支援のために「台湾版CHIPS法」と呼ばれる先端産業を支援する関連法の改正案を可決し、減税措置を講じます。

日本も「日本版CHIPS法」と呼ばれる法律は制定はしませんが、半導体産業に支援をします。

政府は、2022年度第2次補正予算案に半導体支援策を計上しました。

日米が連携する次世代研究拠点の整備に約3500億円、先端品の生産拠点の支援に約4500億円を盛る。製造に欠かせない部素材の確保にも3700億円を充て、計1.3兆円を投じる。政府は、半導体や蓄電池、医薬品などを「特定重要物資」に指定して、海外に拠点を置く工場などの「脱・中国依存」を進めたい考えとしています。

経済産業省が半導体支援を拡充するのは経済安保上の重要性からだけでなく、歴史的な円安が投資を呼び込む好機とみていまい。大規模投資をきっかけに地域の雇用、賃金増加といった経済の好循環を生み出す狙いがあります。

第2次補正予算案は蓄電池、永久磁石、レアアースなどの供給網の多様化にも1兆円規模を計上する。いずれも経済安全保障推進法上の「特定重要物資」に指定する見通しだ。岸田文雄首相は半導体を含む次世代分野に3兆円を投資すると表明。電池やロボットにも1兆円弱を投じる見通しです。

詳細は、以下のサイトを御覧ください。
EXPACT
ここで、問題なのは日本の産業支援策は、台湾では減税でも行われるにもかかわらず、ほとんどが補助金によるものということです。

しかし、米国でも補助金で実行するではないかと、言われるかたもいると思います。確かにそうですが、日本では、経済対策や産業支援政策のほとんどが、補助金で行われています。

米国でも、経済対策の大部分は減税政策で行われています。ただ、半導体産業支援事業に関しては、特別に補助金で行うという形です。減税ではできない手厚い支援を考えているからこそ、補助金にするのでしょう。

日本のように経済対策や、産業支援策の大部分を補助金で行うとどのような弊害があるかは、昨日のブログで述べたばかりです。この記事のリンクを以下に掲載します。
ネットで大騒ぎ「Colabo問題」めぐる税金の不適切な使われ方 国は〝弱者ビジネス〟助長させる「困難女性支援法」を見直せ―【私の論評】Colabo問題の本質は、日本の経済・支援政策のほとんどが減税ではなく、補助金で実行されること(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして。この記事より補助金等の弊害を示す部分を引用します。
結局、日本の経済政策や支援政策などの多くが、減税ではなく、補助金等で実行されることが、Colabo問題のような数々の問題を助長しているのです。

補助金等にばかり頼っていれば、補助金等のための審査は際限なく増え必然的に甘くなるというか、事実上できなくなり、Colabo問題のような問題を生み出し、さらに執行漏れが多数出るのは最初から判りきったことで、余った大量の補助金等は財務省が特別会計等として溜め込み、「死に金」となるのです。

このような不合理なことは、一刻もはやくやめて、日本でも減税を多用すべきです。減税であれば、補助金等と異なり、税金をとらないだけですから、簡単に実施できますし、それに不正の温床となることもあまりありません。それでいて、確実にしかも素早く効果があります。
さて、日本の経済・支援政策補助金・助成金がほとんどであり、減税が用いられないことの弊害はまだあります。特に補助金は問題となります。

補助金と助成金の違いは、補助金は予算が決まっていて最大何件という決まりがあります。 そのため、公募方法によっては抽選や早い者勝ちになるなど、申請してももらえない可能性もあります。 一方助成金は受けとるための要件が決まっているので、それを満たしていればほぼ支給されます。

こうした補助金の性質から、腐敗を生みやすいのです。それは、補助金等を受ける企業と、官僚との癒着です。補助金を受けるためには、審査書類などがパスする必要がありますが、これについては、官僚の対応の裁量により、スムーズにもできますし、そうではなくなることもありえます。

スムーズにできなけば、補助金を受けられない場合もあります。官僚が補助金の申請をする特定の企業に対してスムーズな対応をすれば、企業としてこれに恩義を感じるわけで、これは不正の温床になります。

官僚が特定の企業に対してスムーズな対応をすれば、退官後その企業に対して、スムーズに天下りできるということもあり得ます。さらに、天下りしたあとは、出身官庁とパイプを築き、補助金などの情報や、手続きの迅速化などで貢献することもできるでしょう。

こうしたこと等が積み重ねられた結果、日本には他国にはあまり見られない、鉄のトライアングルと呼ばれるものが出来上がっています。

日本には得体の知れない様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。


それは、様々な産業界にも、厳然として存在します。企業団体、族議員、経産官僚による三角形(産業ムラ)は厳然として存在してるいるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

これについては、農協の事例や、債権ムラ原子力ムラ、コロナ禍でワクチン接種はスムーズに進めることができたにも関わらず、医療ムラの抵抗にあってコロナ病床の確保に失敗した菅政権などの状況をみてもおわかりいただけると思います。日本には、あらゆる産業にこうしたムラの人にしか通じない、理屈や思想を持った村社会が存在するのです。

ただし、この村社会は公式なものではなく、病院でいえば医局のような存在であり、その実像ははっきりしていませんし、それぞれの病院によってかなり機能が異なります。

colabo問題においては、今後の調査を待つ必要がありますが、官僚の中にはたとえば、元文部次官の前川喜平氏のように、左翼リベラル的思想に親和性を持つものもいますから、補助金を受けさせるために、審査書類などのパスを恣意的にスムーズにしているということも考えられます。

昨日も指摘したように、男女参画事業などで、かなりの補助金が投入されています。すでに、リベラル左翼の鉄のトライアングルは出来上っているのかもしれません。

右左とか、上下など問わずこのようなことは、補助金行政が続く限りなくならないでしょう。

昨日も指摘したように、補助金制度の多用は、弊害を生み出すのは目に見えています。日本でも、台湾のように産業支援策に減税政策を用いるようにすべきです。ただ、このようなことを主張する人は、かなり官僚や産業団体、族議員から攻撃を受けることでしょう。

そのためか、この問題を掘り下げる人は少ないですが、いずれ日本でも取り組まなければならない重要な課題だと思います。

岸田政権の経済対策はほとんどが、補助金方式です。さらには、増税も打ち出しました。これでは、財務省をはじめとする各省庁や族議員、業界団体は大喜びでしょう。彼らにとっては、今年の正月はまさに幸先の良いスタートと感じられたでしよう。

これでは、彼らは勇んで、鉄のトライアングルをますます強化し、自分たちに不利益が被りそうなれば、鉄のトライアングルでこれをさらに強力に全力で排除するでしょう。補助金制度の間隙をついて、新たな利権を生み出す打ち出の小槌である新たなな「鉄のトライアングル」づくりに励む、官僚、業界団体、新たな族議員も出てくるかもしれません。

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