2023年1月14日土曜日

「日英同盟」復活! 岸田首相が〝安倍レガシー〟継承 共産中国の脅威が目前、協定署名にこぎつけた「グッドジョブ」―【私の論評】地政学的にもともと関係を強化することが運命づけられている日英(゚д゚)!

「日英同盟」復活! 岸田首相が〝安倍レガシー〟継承 共産中国の脅威が目前、協定署名にこぎつけた「グッドジョブ」

【有本香の以読制毒】

  戦争、疫病、隣国から迫りくる軍事的脅威…。年が改まっても悪いニュースばかりで気が滅入るという向きも少なくなかろう。そんななか、少しばかり意気上がるニュースが聞こえてきた。

「円滑化協定」の署名を終えて握手をする岸田首相とスナク英首相
 英国訪問した岸田文雄首相と、リシ・スナク英首相は11日(日本時間同)、防衛分野での協力強化に向け、自衛隊と英軍部隊の共同訓練を推進し、相互往来をスムーズにする「円滑化協定(RAA)」に署名した。 

 本件は昨年5月すでに、日英両政府が大枠で合意していた。当時は首相就任前だったスナク氏は、この協定を「両国にとって非常に重要であり、インド太平洋に対するわれわれのコミットメントを強固にするもの」と表現した。

  ちなみに2020年、当時の菅義偉首相と、オーストラリアのスコット・モリソン首相(同)が、同じ「円滑化協定」に合意した際には、オーストラリア最大の全国紙「「The Australian(オーストラリアン)」はこれを、「防衛協定(=安保条約と言い換えてもいい)」という単語を使って報じている。

  これに倣うなら、今回の日英首脳の署名はさしずめ「日英同盟の復活」ともいえる。だが、果たして、この一大事にふさわしい報じ方を、日本の大メディアがするかというと、甚だ心もとないのである。

 というのも、20年のオーストラリアとの合意の際、「オーストラリアン」の書きぶりと比べると、日本メディアがいずれも、抑制的過ぎる表現に終始したからだ。 

 具体例を挙げると、日豪の合意に中国が激しく反発したことを、オーストラリアンはこう書いた。

  「北京のプロパガンダ機関は、オーストラリアと日本は〝歴史的な防衛協定〟に署名したことで代償を払うことになる、と言い、両国は米国の『道具』だと非難している」 なかなか辛辣(しんらつ)だ。

 しかし、一方の日本メディアは、というと、おしなべて対照的に、まるで北京のご機嫌を損ねないよう忖度(そんたく)したかと思われるほどの控えめな表現だった。当時の各紙一報の見出しは次のとおりだ。

 「日豪首脳が会談 軍事訓練に関する協定合意、中国を牽制(けんせい)」(朝日新聞)

 「日豪首脳会談 『円滑化協定』に大枠合意 中国念頭『インド太平洋』推進」(産経新聞)

 「日豪、訓練円滑化で協定 首脳会談、大枠合意」(毎日新聞) 

 「『自由で開かれたインド太平洋』実現へ日豪で連携強化…首脳会談で一致」(読売新聞) 

 今回も、英国との円滑化協定署名を「日英同盟復活」と表現するのは筆者と夕刊フジのみだろうが、これは実際、それほどの重みを持つ。日本の未来に多大な影響を与えるだろう。

 かつて、非白人国家の日本が、「無敵」といわれたロシアのバルチック艦隊を打ち破って勝利し、世界を驚かせた日露戦争。その戦果も、日英同盟によるところが大きかった。100年以上の時を経て、共産中国の脅威を目前にするいま、再びこの「同盟」を力とする私たちでありたい。

2017年日本を訪問したテリサ・メイ首相(当時)と安倍首相(当時)

 今般、協定署名にこぎつけた岸田首相のグッドジョブを大いに評価し、さらに、この日英同盟復活への路線を敷いた故・安倍晋三元首相の功績に改めて感謝を申し上げたい。 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

【私の論評】地政学的にもともと関係を強化することが運命づけられている日英(゚д゚)!


英国との円滑化協定署名は事実上の「日英同盟復活」です。そもそも、日英は同盟すべき理由があります。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 ―【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!
この記事は、2021年2月のものです。
東西冷戦時代から今日に至るまで、アジア太平洋地域では、米国を中心に、日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアがそれぞれ別個に同盟を結んでいました。それは「ハブ・アンド・スポークの同盟」と呼ばれ、米国が常にハブであり、スポークがその相手国でした。これに対して、欧州のNATOのように複数の国が互いに同盟を結び、協力し合う関係を、「ネットワーク型の同盟」と呼びます。

ハブ・アンド・スポーク同盟の最大の問題は、協力し合う相手が常に一国しかないために、国同士の利害が一致しない場合、機能不全に陥ることです。また、二国間の力のバランスに大きな差があると、弱い側が常に強い側に寄り添う追従主義に陥りがちであり、スポークの国は戦略的に自律するのが難しいです。そのため、2000年代以降、スポークの国同士の協力が急速に進展してきています。

具体的には、日本では安倍政権発足以来、政府の首脳陣がほとんど毎月のように東南アジア、南アジア、さらに欧州諸国に足を伸ばし、安全保障協力を拡大しようとしていますし、自衛隊も、オーストラリア、インドなどと定期的に共同の演習を実施しています。また、日米とオーストラリアとインド(クアッド)、日米と韓国、日米とインドといった三国間での安全保障協力も進んでいます。米国との同盟関係を共有する国同士が個別に同盟関係を築き、米国との同盟を支えようとしているのです。
ただし、このようなネットワーク型の同盟には、NATOにとっての米英がそうであるように、コアとなる二国間関係が必要です。日英同盟はまさにそのコアになりえます。

日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っています。
ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本
日本は中国の海洋進出を警戒しているし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙(たいじ)しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

その両国が、TPPとクアッド+英国で、協力しあうのは、まさに理にかなっているといえます。さらには、ファイブアイスとの関係を強化していくこともそうだと思います。
日英は100年前には、日英同盟を組んでいました。日露戦争の勝利や第一次世界大戦後、「(戦勝)五大国」に列せられるまでになったのは、日英同盟の存在が大きいです。

この同盟が破棄された背景は、以下の記事をご覧になってください。
日本の命運を暗転させた日英同盟廃棄の教訓| 「新・日英同盟」の行方(5)
同盟関係の解消と、日本の国際連盟の脱退、日独伊三国同盟締結、太平洋戦争開戦、そして敗戦と日本の命運が180度暗転したこととは、決して無関係ではありません。

英国にとっても、この解消は決して良い結果を招きませんでした。第二次世界大戦において、最も得をした国と、損をした国はどこかとえば、多くの日本人は米英と答えるかもしれません。

しかし、それは真実とはいえません。損をした国は、はっきりしています。それは、無論日独です。これは、論を待たないでしょう。

では、最大に得をした国は、どこかといえば、それは米英とはいえないでしょう。それは、当時のソ連です。ソ連は、日本の北方領土を含む、領土を増やすとともに、東ヨーロッパ諸国を衛星国とし、覇権を強化し、国連では常任理事国の地位を得ました。

米国は、ソ連と比較すれば、損も得もしなかったといえます。英国はどうかといえば、領土は失い、基軸通貨を失い、覇権も弱まり、どちらかといえば、損をした国ということができます。

中国はといえば、終戦直後は国民党による中華民国は、大陸から追い出され、新たな共産党国家にとって変わられたということから、中華民国からみれば、この戦争で大損したといえます。中共にとっては、戦後中華人民共和国を設立できたということで、得したといえます。

このように、多くの日本人が、第二次世界大戦に勝った国と思っている英国は、あまり得られるところがなかったといえます。

もし、先の日英同盟が破棄されていなかったら、英国は朝鮮半島ならびに中国において、当時ソ連と対峙していた日本の立場を理解して、欧米諸国を説得、日本も説得し、互いに歩み寄れるところは、歩み寄り、第二次世界大戦において、最もソ連が得するようなことは、回避できたかもしれません。

しかし、ご承知のとおり歴史には「もし・・・」という言葉は成り立ちません。ただ、歴史から学ぶことはできます。

やはり、日英というシーパワー国が、ランドパワー国のロシア、中国を間に挟んで、両側から対峙しているという構図のほうが英国にとっても良かったし、これかもそうだといえると思います。

先の日英同盟を結んでいた100年前と、時代は変わりましたが、この構図は変わらないどころか、中国の海洋進出、ロシアのウクライナな侵攻等により、増々顕著になってきたといえます。

ユーラシア大陸があり、そこにランドバワー国が存在し、シーパワー国日英が、それを挟む形になっていることから、日英は、地政学的にもともと関係を強化することが運命づけられているともいえます。

とはいえ、100年間も途切れた日英同盟を復活されることに貢献された、安倍元総理と、実際に「円滑化協定(RAA)」に署名し事実上の同盟関係を築いた岸田総理には敬意を表したいです。


それにしても、岸田総理は安保では、安倍路線を引き継ぐ行動をするのに、経済面ではそうではありません。両方とも引き継いだ上で、それ以外のところで、岸田色を出せば、今日のような事態を招くことなく、政権は安定したとみられるので、この点は、残念でなりません。

それに、将来日本の経済が落ち込めば、安保にも悪い影響を及ぼすことにもなりかねません。そうなれば、日本と安全保障で関係のある米英豪等の国々にも悪影響を及ぼすことになりかねません。

これは、安保に関しては、今や日本国内だけを考えていれば良いということはなく、米英をはじめとする西側諸国との関係の中で考えなければならず、他国との関係で行動しなければならないからかもしれません。

日本国経済に関しては、無論貿易関係にあることから、他国のことも考慮しなければならないところもありますが、現状では安保ほどではないということがあるのかもしれません。

さらに、日本国経済に他国が口を挟むということなれば、内政干渉と受け取られることになりかねず、他国も日本経済に対して、口を挟むようなことしずらいということがあるのでしょう。しかし、これは何とかして逆手に取るということもできるかもしれません。

これは、現在思案中です。


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