P1哨戒機 |
2022年12月、中国とロシアの軍艦・戦闘機が合同で軍事演習を行った。2023年1月には中国の偵察無人機が東シナ海と太平洋を往復。自衛隊は2日連続での飛行にスクランブル発進で対応した。
海上自衛隊のP-1哨戒機は哨戒(パトロール)が主任務ながらも、多くの武装を搭載でき万一の場合には攻撃もできる航空機です。その特徴は旧海軍が運用した、九六式陸上攻撃機や一式陸上攻撃機などに通ずるものがあります。
毎年1度、防衛省によって発行される「防衛白書」によれば、2020年現在、海上自衛隊は新型で配備が進む国産のP-1を19機、退役が進んでいるP-3Cを55機の、合計74機の「哨戒機」を保有しているとされています。哨戒機は艦艇の10倍にも及ぶスピードを有し、広大な洋上を監視する上で欠かせない航空機です。
航空自衛隊のF-2戦闘機は、P-1とほぼ同等の空対艦ミサイルを4発、携行できます。戦闘機には戦闘機の利点もあるので単純に比較はできないにせよ、P-1はF-2の、2機分以上の攻撃力を有しているといえます。
そのため、敵国からしてみれば「大量の空対艦ミサイルを持っているかもしれないP-1がどこかで滞空している(飛んでいる)かもしれない」という脅威を受け続けることになり、平時においては抑止力となりえます。
P-1が搭載できるもうひとつの空対艦ミサイルに、AGM-65「マーベリック」があります。こちらは画像認識誘導型で射程と威力は比較的低く、本格的な水上艦以外の目標への攻撃に適しています。
AGM-65は、実戦での戦果において右に出るものがない傑作ミサイルです。これまで他国軍において様々なタイプが合計5000発以上発射され、おもに対戦車ミサイルとして使われました。ターゲットが船舶でも戦車でも射撃前に映像で捕捉し射撃する手順は変わらないので、ある意味ではP-1は地上攻撃能力もあるといえます。
九六式、一式陸攻は爆弾や魚雷も搭載可能でした。これらはおもに水上艦艇への対処に使用されましたが、P-1も対潜(対潜水艦)用途ではありますがどちらも装備可能です。
1999(平成11)年の能登半島沖不審船事件では「海上警備行動」が発令され、警告のためP-3Cから「150kg対潜爆弾」が投下されています。対潜爆弾は無誘導なので、やはり主力は誘導装置を持った「短魚雷」です。
P-1が搭載する「短魚雷」にも種類があり、アメリカ製のMk46、太平洋など深海における能力を改善した97式魚雷、東シナ海など比較的浅い海での能力を改善した12式魚雷があります。
これらの短魚雷は、敵潜水艦の発する音を探知するパッシブソナー、または音波を発信し物体に跳ね返ってきた信号を探知するアクティブソナーを持ち、たとえば潜水艦上空から発射され着水すると、円を描くように潜っていき敵潜水艦を探します。
中国船は東シナ海のみならず、太平洋上にも進出。それが常態化していて、近年ますます活動が活発化している。
鹿屋基地は海洋進出を強める中国などを念頭に警戒監視部隊が配備されている国防の要所だ。
鹿屋基地P1哨戒機部隊の津田怜男2佐は中国などと日々対峙する国防の最前線での訓練について、「当然相手がミサイルを発射してくる可能性もありますので、緊張感があります。ミスが許されない」と語り、他の隊員も「任務をやっている中でも身に感じて海洋進出が多くなっているというのは日々感じ取っています」「テレビで見ていた尖閣諸島に近い基地ということで業務量は多いですが、日々やりがいを感じています」などと話した。
自衛隊は脅かされている日本の海上を守れるのか? テレビ朝日政治部の安西陽太記者は旧帝国海軍の特攻隊でも知られる鹿児島県鹿屋基地を密着取材。防衛の鍵を握るP1哨戒機の訓練を撮影した。
鹿屋基地は海洋進出を強める中国などを念頭に警戒監視部隊が配備されている国防の要所だ。
P1哨戒機は、海上自衛隊の最新鋭国産機で、主な任務は日本周辺の不審船や外国艦船、さらに海中の潜水艦を発見することである。
機内には11人が乗員。パイロット2人と機上整備員、戦術・捜索を指揮する戦術航空士と補佐、レーダー・センサー担当のミッションクルー4人、魚雷などの装備品やシステム管理をする隊員2人がその任についている。
海上における警戒監視訓練に続いて高まる緊張感のなか行われたのは潜水艦捜索訓練。この訓練にテレビカメラが入るのは前例がないという。 訓練では、海に潜った潜水艦をレーダーやセンサーを使って発見し位置を細かく特定。P1哨戒機に搭載された魚雷で潜水艦への攻撃も行う。
鹿屋基地P1哨戒機部隊の津田怜男2佐は中国などと日々対峙する国防の最前線での訓練について、「当然相手がミサイルを発射してくる可能性もありますので、緊張感があります。ミスが許されない」と語り、他の隊員も「任務をやっている中でも身に感じて海洋進出が多くなっているというのは日々感じ取っています」「テレビで見ていた尖閣諸島に近い基地ということで業務量は多いですが、日々やりがいを感じています」などと話した。
鹿屋基地P1哨戒部隊を指揮する岩政秀委1佐は緊張が高まる中国などの動向について、「脅威というのはいきなり起きるわけではありません。少しずつ何かしらの兆候が見えてきます。それは毎日の哨戒活動によって一つひとつ見ていかないと変化に気づけないと思います」と力強く語った。 (ABEMA NEWSより)
【私の論評】実はかなり強力な日本のASW(対潜水艦戦)能力(゚д゚)!
以下にどのようなテレビ報道がなされたのか、以下にその動画を掲載します。
毎年1度、防衛省によって発行される「防衛白書」によれば、2020年現在、海上自衛隊は新型で配備が進む国産のP-1を19機、退役が進んでいるP-3Cを55機の、合計74機の「哨戒機」を保有しているとされています。哨戒機は艦艇の10倍にも及ぶスピードを有し、広大な洋上を監視する上で欠かせない航空機です。
哨戒機の名称の頭文字「P」は「Patrol(パトロール)」から取られていますが、攻撃機でもあります。特に対水上戦(潜水艦ではない艦艇との戦闘)におけるその役割は、旧日本海軍が保有した九六式陸上攻撃機、一式陸上攻撃機の両「陸攻」と非常によく似ています。
マレー沖海戦に出撃する一式陸攻 |
九六式、一式は極めて長大な航続距離を有し、兵装を搭載しない状態であれば最大で6000kmを飛行可能でした。この航続距離を活かして洋上を長時間、遠方まで敵艦を索敵し、発見した場合は兵装を搭載した機体が長駆進出し対艦攻撃を加えます。最も有名な成功例は1941(昭和16)年12月10日のマレー沖海戦であり、両陸攻は当時不沈艦といわれは、英軍の戦艦2隻を撃沈しました。
P-1は機体外部のハードポイント(兵装類を吊り下げ搭載する部分)8か所と、さらに胴体部の爆弾倉(ボムベイ)に、レーダー誘導型空対艦ミサイルAGM-84「ハープーン」または国産の91式空対艦誘導弾(ASM-1C)を搭載できます。2020年に入り陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾を原型とした新型対艦ミサイルの搭載試験と思われるP-1の姿が目撃されており、近い将来実用化されるでしょう。
現代の水上艦およびこれが搭載する艦対空ミサイルは非常に優れているため、航空機が接近するとまず撃ち落とされてしまい、また単に水上艦へ対しミサイルを発射しても迎撃されてしまいます。
したがって水上艦を攻撃するには、たくさん対艦ミサイルを搭載する能力が大きな利点となります。つまり目標の艦はもちろん、周囲の護衛艦や戦闘機などと共同で迎撃できないほどの大量の空対艦ミサイルを、同時かつ長距離から撃ち込むのです。
P-1は機体外部のハードポイント(兵装類を吊り下げ搭載する部分)8か所と、さらに胴体部の爆弾倉(ボムベイ)に、レーダー誘導型空対艦ミサイルAGM-84「ハープーン」または国産の91式空対艦誘導弾(ASM-1C)を搭載できます。2020年に入り陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾を原型とした新型対艦ミサイルの搭載試験と思われるP-1の姿が目撃されており、近い将来実用化されるでしょう。
現代の水上艦およびこれが搭載する艦対空ミサイルは非常に優れているため、航空機が接近するとまず撃ち落とされてしまい、また単に水上艦へ対しミサイルを発射しても迎撃されてしまいます。
したがって水上艦を攻撃するには、たくさん対艦ミサイルを搭載する能力が大きな利点となります。つまり目標の艦はもちろん、周囲の護衛艦や戦闘機などと共同で迎撃できないほどの大量の空対艦ミサイルを、同時かつ長距離から撃ち込むのです。
航空自衛隊のF-2戦闘機は、P-1とほぼ同等の空対艦ミサイルを4発、携行できます。戦闘機には戦闘機の利点もあるので単純に比較はできないにせよ、P-1はF-2の、2機分以上の攻撃力を有しているといえます。
そのため、敵国からしてみれば「大量の空対艦ミサイルを持っているかもしれないP-1がどこかで滞空している(飛んでいる)かもしれない」という脅威を受け続けることになり、平時においては抑止力となりえます。
P-1が搭載できるもうひとつの空対艦ミサイルに、AGM-65「マーベリック」があります。こちらは画像認識誘導型で射程と威力は比較的低く、本格的な水上艦以外の目標への攻撃に適しています。
AGM-65は、実戦での戦果において右に出るものがない傑作ミサイルです。これまで他国軍において様々なタイプが合計5000発以上発射され、おもに対戦車ミサイルとして使われました。ターゲットが船舶でも戦車でも射撃前に映像で捕捉し射撃する手順は変わらないので、ある意味ではP-1は地上攻撃能力もあるといえます。
九六式、一式陸攻は爆弾や魚雷も搭載可能でした。これらはおもに水上艦艇への対処に使用されましたが、P-1も対潜(対潜水艦)用途ではありますがどちらも装備可能です。
1999(平成11)年の能登半島沖不審船事件では「海上警備行動」が発令され、警告のためP-3Cから「150kg対潜爆弾」が投下されています。対潜爆弾は無誘導なので、やはり主力は誘導装置を持った「短魚雷」です。
P-1が搭載する「短魚雷」にも種類があり、アメリカ製のMk46、太平洋など深海における能力を改善した97式魚雷、東シナ海など比較的浅い海での能力を改善した12式魚雷があります。
これらの短魚雷は、敵潜水艦の発する音を探知するパッシブソナー、または音波を発信し物体に跳ね返ってきた信号を探知するアクティブソナーを持ち、たとえば潜水艦上空から発射され着水すると、円を描くように潜っていき敵潜水艦を探します。
P-1のコクピット |
2013年のP-1の就役により、海上自衛隊の対潜・対海巡視能力が大幅に引き上げられました。中国は潜水艦の実力強化を急いでおり、総規模が70隻に達しています。
P-1はP-3C(米国制の哨戒機)が捕捉できない音響を捕捉できます。例えば魚雷発射管を開く音、舵を切る音などを捕捉でき、さらにより広範囲な周波数の雑音を処理できます。P-1哨戒機等により、日本は中国の多くの艦艇の音紋を把握しているといわれます。
P-1を含め、日本の対潜水艦戦争(ASW:Anti Submarine Warfare)の能力は、中国を圧倒しており、海戦能力においては、日本のほうが中国を圧倒しています。
日米ともに、ASWは中国を圧倒しており、現代海戦においては、ASWの強いほうが、有利です。今回、その一端でもある、P1哨戒機の訓練の様子が、テレビ初撮影されたのですから、日本のASWに関する情報公開もようやっと進みつつあるようです。
全く公表しなければ、日本のASWは全く脆弱で、中国で海で戦えば、あっという間にやられてしまうと、考える人も多いようです。それは、間違いであり、中国海軍が日本に対して攻撃を加えれば、中国海軍は甚大な被害を被ることになります。
もし、中国のASWが日米を上回っていたら、中国はもっと大胆な行動をしているでしょう。台湾などとっくに侵攻しているでしょう。尖閣諸島もとうの昔に占領されて、前哨基地を設置され、今頃は沖縄侵攻作戦を企図していることでしょう。
中国にそれだけの能力があれば、今頃ハワイ侵攻作戦も企図していたかもしれません。
ただ、あまりにも公開しすぎると、秘密を公開するようなものなので、公開しすぎは禁物です。バランスをとることが欠かせません。しかし、今回はじめてP1哨戒機訓練をテレビ初公開したことは、評価できます。これで、日本でも多くの国民に、日本のASWの一端を知ってもらうことができると思います。
海上自衛隊厚木航空基地(神奈川県大和市、綾瀬市)で11日、第4航空群による今年初の訓練飛行が行われました。
訓練では、P1哨戒機が同基地を出発し、富士山を周回。約1時間半飛行して同基地へ戻ってきました。普段は海上での訓練や任務が主で陸の上を飛ぶことはほとんどないのですが、毎年の初訓練飛行では富士山周辺を飛ぶのが恒例になっているといいます。
今年の初訓練に臨む海自のP1哨戒機(11日午前10時33分、海自機から) |
飛行の前には、第4航空群司令の金山哲治海将補が約200人の隊員に対して年頭訓示を行いました。金山海将補はロシアによるウクライナ侵略や周辺国の軍備増強、頻発する自然災害などを挙げ、「いつでも国民の負託に応えられるよう、日々精進し備えなければならない」と呼びかけました。
このような訓練も、国民に自衛隊の守備能力を示すものともなり、良いことだと思います。
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