ショルツ首相 |
■北欧諸国など“同盟国”も連携 供与する計画
ウクライナが求める“主力戦車”の供与が大きく動き出した。
ドイツのショルツ首相が、自国製戦車「レオパルト2」をウクライナに供与することを決めたと、現地メディアが報じた。
ドイツからは、少なくとも「レオパルト2」を1台供与し、ポーランドなどからの供与も、許可することを決定したという。
また、北欧諸国など、他の同盟国もドイツと連携し、ウクライナに「レオパルト2」を供与する計画だと伝えている。
■米国が一転…主力戦車「エイブラムス」供与へ
一方、アメリカにも新たな動きがあった。
主力戦車である「エイブラムス」を供与する方向で、最終調整に入ったと複数のアメリカメディアが報じている。
「エイブラムス」を巡っては、これまでアメリカ国防総省が、ウクライナでの運用はメンテナンスやコストの点で理にかなわないとして、供与しない方針を示してきた。
しかし、ここにきて一転、供与に向け動き出したアメリカ。そして、慎重姿勢から、ついに転換したドイツ。侵攻から11カ月、ウクライナ情勢が大きく動いている。
【私の論評】戦車を戦地に配備するまでは数カ月を要する。ウクライナ戦争はこれから1年は続く(゚д゚)!
なぜレオパルト2が重要視されるのでしょうか。シンクタンク「欧州外交評議会」によると、ポーランドやフィンランドを含む欧州13カ国は既に、近代的なドイツ製レオパルト2を保有しています。レオパルト2は1979年に導入された後、数回にわたって改修が行われてきました。
レオパルト2 |
保有国の多くはウクライナへの再輸出に同意したものの、ドイツの承認が必要な状況だ。ポルトガル国防省によると、ドイツのラムシュタイン空軍基地で開かれた会合では、こうしたレオパルト保有国の関係者が協議する場面がありました。
合計では約2000両のレオパルト2が欧州各地に散らばっており、準備状態にはばらつきがあります。
レオパルド2は120ミリ滑腔砲や7.62ミリ機関銃を搭載。オフロードで時速70キロを出せる高い機動性が特徴です。製造元であるドイツのクラウス・マッファイ・ベクマンによると、即席爆発装置(IED)や地雷、対戦車砲などの脅威に対する全周防御機能も持ちます。
多数の車両が既にウクライナの近くに配備されていること、他のモデルに比べ整備の必要性が少ないことから、専門家はレオパルト2が供与されればすぐさまウクライナの追い風になる可能性があると見ています。
米大手兵器メーカー、ゼネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)は2022年10月9日、次世代主力戦車のコンセプトモデル「エイブラムスX(AbramsX)」を公開 |
一方、第二次世界大戦(WW2)後の最強戦車と称されるのが、米軍のM1エイブラムスです。無論単純比較、特にレオパルト2と単純比較はできませんが、第二次世界大戦後の冷戦期、朝鮮戦争やベトナム戦争に本格的な戦車戦はありませんでした。中東紛争でも、当事国に武器供与はあったのですが、逆に東西双方の兵器が混在し、米国のM46/47〜60パットンや、旧ソ連のT-54/55〜62、そして独・仏・英の主力戦車も大戦車戦を経験していませんでした。
こうした中、本格戦車戦となったのが、1991年に勃発した湾岸戦争で、1981年に採用された主力戦車M1が初めて、ソ連製のT-62や72と真っ向から対峙しました。それまで西側諸国の戦車は常に、ソ連のT-54/55・62・72を「脅威」として追従してきた経緯がありました。
M1エイブラムスは半ば伝説化されていたT-62や72を、圧倒的な火力と装甲で一方的に撃破し、地上戦勝利の立役者となりました。その後のイラク戦争やアフガニスタン紛争でも、イスラム側のT-55〜72に対しても一方的な戦いをし、WW2後の実戦における最強戦車として評価されました。
WW2から米陸軍は、M4中戦車、M26重戦車とも二流品であることを承知していました。戦後第1世代戦車のM46〜48パットン シリーズが、ソ連のT54/55と何とか互角に戦えれば良いという状況でした。これは、米軍にとって本土が戦場と化すことはないという前提があり、戦車の出番は主に同盟国の支援に過ぎなかったためです。
第2世代のM60パットンが旧式化する頃、西ドイツと共同開発を行っていた第3世代戦車/MBT-70計画が頓挫。ここから生まれたのが、M1エイブラムス(1981年採用)と、ドイツのレオパルド2(1979年配備。M1と並び現代最強とされる)でした。
火力と装甲に関しては他のメディアでごらんいただくものとして、M1の最大の特徴は機関にガスタービンエンジンを採用したことです。ガスタービンはジェットエンジンの派生形。航空機ではお馴染みの機関で、吸気タービンの前にシャフトを出しプロペラを装着すればターボプロップ。排気タービンの後方にシャフトを出せば、ターボシャフトエンジンとなります。
吸気-圧縮-燃焼-排気を行程ではなくブロックで行う構造があり、次の特長があります。
しかし、常時タービンを回す(駐車待機時は、補助の小型ガスタービンエンジンを作動して車内電力を確保している)ため、毎時約45Lもの燃料を消費し、小型軽量化されても燃料をバカ食いする燃費のため、第3世代ディーゼル戦車の2倍もある巨大な燃料タンクが搭載されています。
ガスタービンは、加減速のレスポンスこそレシプロエンジンに劣りますが、一度パワーに乗ると爆発的で、非常時は約2万2500rpmのタービン軸から3500rpmを出力し、100km/h走行も可能とされています。無論駆動系がもてばの話です。
こうした中、本格戦車戦となったのが、1991年に勃発した湾岸戦争で、1981年に採用された主力戦車M1が初めて、ソ連製のT-62や72と真っ向から対峙しました。それまで西側諸国の戦車は常に、ソ連のT-54/55・62・72を「脅威」として追従してきた経緯がありました。
M1エイブラムスは半ば伝説化されていたT-62や72を、圧倒的な火力と装甲で一方的に撃破し、地上戦勝利の立役者となりました。その後のイラク戦争やアフガニスタン紛争でも、イスラム側のT-55〜72に対しても一方的な戦いをし、WW2後の実戦における最強戦車として評価されました。
WW2から米陸軍は、M4中戦車、M26重戦車とも二流品であることを承知していました。戦後第1世代戦車のM46〜48パットン シリーズが、ソ連のT54/55と何とか互角に戦えれば良いという状況でした。これは、米軍にとって本土が戦場と化すことはないという前提があり、戦車の出番は主に同盟国の支援に過ぎなかったためです。
第2世代のM60パットンが旧式化する頃、西ドイツと共同開発を行っていた第3世代戦車/MBT-70計画が頓挫。ここから生まれたのが、M1エイブラムス(1981年採用)と、ドイツのレオパルド2(1979年配備。M1と並び現代最強とされる)でした。
火力と装甲に関しては他のメディアでごらんいただくものとして、M1の最大の特徴は機関にガスタービンエンジンを採用したことです。ガスタービンはジェットエンジンの派生形。航空機ではお馴染みの機関で、吸気タービンの前にシャフトを出しプロペラを装着すればターボプロップ。排気タービンの後方にシャフトを出せば、ターボシャフトエンジンとなります。
吸気-圧縮-燃焼-排気を行程ではなくブロックで行う構造があり、次の特長があります。
■小型軽量・高出力。このように航空機や船舶に最適な理由で、レシプロエンジンにとって代わったわけです。また、米軍は伝統的に武器装備や燃料の共有化と互換性を重視しており、M60の前期型まで戦車もガソリンエンジンでした。航空機や艦船でガスタービンエンジンが一般化すれば、同じ燃料が戦車にも供給できる理屈になります。
■高品質の燃料を必要としない。ジェット燃料・軽油・ガソリンとも使用可能。
■振動・低周波騒音が少ない。
■過給機・冷却補器類が不要。
■オーバーホール期間が長い。
ガスタービンは、加減速のレスポンスこそレシプロエンジンに劣りますが、一度パワーに乗ると爆発的で、非常時は約2万2500rpmのタービン軸から3500rpmを出力し、100km/h走行も可能とされています。無論駆動系がもてばの話です。
M1エイブラムス戦車はシステムとして世界最高品質の戦車です。レオパルド2より防御力などが優秀です。しかしながら、それは、いわばスイス製の高級腕時計のようなもので、実に繊細で、手のかかる戦車だ。米軍というゆりかごの中でこそ実力を発揮する戦車といえます。ウクライナ軍が運用できるようになるまでは、ある程度の期間が必要ですし、米軍のサポートは欠かせないでしょう。
一方、ドイツのレオパルド2の最新型は、レオパルト2A7Vです。これは、2021年9月15日に実戦部隊に配備されたばかりです。運用を開始したことを明らかにしました。
レオパルト2A7Vは、ドイツが40年ほど前に開発したレオパルト2シリーズの最新型で、「V」とは改善を意味する略語とのことです。従来型と比べて防御力、機動力、火力などが大幅に向上しているのが特徴で、加えてエアコンや補助電源装置、新型のNBC(核兵器・生物兵器・化学兵器)防護装置、最新のネットワーク通信システム(C4I)なども搭載されています。
また、エンジンとトランスミッションが一体化したパワーパックは新型に換装されており、これにより装備が増えても機動力は向上しているといいます。そうして、何と言っても運用面では、M1エイブラハムより簡単です。ウクライナ軍も運用しやすいでしょう。
ドイツは第1弾として14台を供与。これとは別にポーランドが、自国保有の14台をウクライナへ引き渡す手続きに入っています。フィンランドやオランダなども追随する姿勢。製造国ドイツが供与を認めたことで、こうした動きがさらに広がりそうです。
米国からはエイブラムス数十台が送られる可能性があります。英国は既に戦車「チャレンジャー2」14台の供与を決め、フランスでも戦車「ルクレール」供与の可能性が取り沙汰されています。いずれもウクライナ兵の習熟訓練や整備に時間が必要で、実際に戦地へ配備されるまでは数カ月を要する見込みです。
領土奪還を目指すウクライナは、ロシアによる大規模な攻勢に警戒感を強め、欧米諸国に戦車供与を強く要望してきました。AFP通信によると、イェルマーク大統領府長官はドイツの決定を歓迎するとともに「次は『戦車連合』形成だ。多数のレオパルトが必要になる」と主張しました。
欧米製の主力戦車は地上戦で敵陣を突破する破壊力を持ち、こう着が続く前線で大きな威力を発揮すると期待されています。とりわけレオパルト2は「最も成功したモデル」(英シンクタンク)と評され、欧州諸国が計約2000台を保有。部品の調達も容易で、ウクライナ軍には最適と見なされてきました。
ドイツのレオパルト2が、ウクライナに提供されることになれば、20、30両では戦況を変えることはできませんが、少なくとも100両あれば、重要な作戦で正面に配置し、かなり戦況は有利になると考えられます。
ただし、実際に戦地へ配備されるまでは数カ月を要することから、それまでの間ロシアの反攻が続く可能性があります。これをどれくらい持ちこたえるか、あるいは反攻されて後退したとしても、なるべく多くの損害をロシア軍に与えることが鍵となりそうです。
軍の制服組トップ・ミリー統合参謀本部議長は20日、このように述べたほか、戦闘によるロシア側の死傷者は10万人をはるかに上回るとの見方を示しました。
米軍制服組トップがこのような発言をするのは、無論レオポルト2のような戦車を投入したとしても、その戦場への配置には数ヶ月はかかることから、そのくらいはかかるとみているからでしょう。
兵器一つを導入するにしても、それを操作する乗員の訓練、弾丸、部品などの消耗品のロジスティクス、メンテナンスの体制を整えなければならず、わたしたちが新車を購入して、運転するのとは全く違い、多大な時間と労力を必要とするのです。
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