2021年2月4日木曜日

日英「2+2」で対中包囲網強化! 武器使用可能の海警法を警戒 識者「英の太平洋進出は大きなプレッシャーになる」―【私の論評】クアッド+英国で八方塞がりになる中国海軍(゚д゚)!

 日英「2+2」で対中包囲網強化! 武器使用可能の海警法を警戒 識者「英の太平洋進出は大きなプレッシャーになる」


 日英両政府は3日、外務・防衛閣僚会議(2プラス2)をテレビ会議方式で開催した。日米で推進する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現に向けた連携強化や、安全保障協力の深化で一致した。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、米国ではジョー・バイデン新政権が誕生し、中国の軍事的覇権拡大が進んでいる。国際情勢の激変を受けて、英国の役割に大きな期待がかかっている。

 「英国の能力を示し、さらに防衛協力を深めたい」

 ベン・ウォレス英国防相は閣僚会議で、こう語った

 会議では、南シナ海で軍事拠点をつくり、東シナ海でも軍事力を増大させる中国に対し、日英が協力して対応する姿勢を示した。中国海警局に武器使用を認めた海警法や、中国政府による少数民族ウイグル族や香港民主派弾圧についても懸念を共有した。

 茂木敏充外相は、海警法について「国際法に反する形で運用されてはならない」と発言。ドミニク・ラーブ英外相は、国際法に基づく海洋秩序維持と「航行の自由」の重要性を強調した。

 ウォレス氏は、英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に東アジア地域に派遣すると表明した。自衛隊や米軍と共同訓練を行う予定だ。

 岸信夫防衛相は、沖縄県・尖閣諸島防衛への強い決意を英国側に伝達。海洋国である日英の防衛協力の必要性を訴えた。

 英紙デーリー・テレグラフなどは1月末、英国が、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国による事実上の中国包囲網「QUAD(クアッド=日米豪印戦略対話)」に参加する可能性を伝えた。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「英国のクアッド参加は賛成だ。英国は、中国の香港弾圧に立腹している。中国の覇権拡大に対抗するため、『自由民主』『人権』『法の支配』といった価値観を共有する英国が太平洋に進出する新たな時代になりつつある。今後は、カナダなどがクアッドに参加する可能性も考えられる。英国が軍事面で東アジアに進出すれば、中国にとって、大きなプレッシャーになる。日英間では過去に戦闘機共同開発の話も持ち上がっており、技術協力の面でもメリットもある」と語った。

【私の論評】クアッド+英国で八方塞がりになる中国海軍(゚д゚)!

クアッド+英国(ペンタ?)については、すでにこのブログでも掲載したことがあり、無論日本としては大歓迎です。

「2+2」において、ウォレス氏は、英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群を年内に東アジア地域に派遣すると表明しています。

ただ、海洋戦においては、従来は空母が重視されていましたが、現在においてはこれは政治的には大きな意味を持ちますが、実戦においては、空母や去就揚陸艦など自体はあまり意味をもたなくなりました。

なぜなら、現在は対艦ミサイルなどが発達したため、空母は単なる大きな標的となってしまい、すぐに撃沈される可能性が大きいからです。

現代の海洋戦では、やはり潜水艦隊と対潜哨戒能力が鍵です。

では、英国の潜水艦はどうかといえば、予算削減によりすでに随分前から、通常型潜水艦は開発されておらず、就役しているのは米国と同じく原潜のみです。

攻撃型原潜については、攻撃力は優れているものの、静寂性(ステルス性)には劣ります。日本の通常型潜水艦と比較すれば、静寂性は格段に劣ります。

そのため、実戦ということになれば、英国の原潜も米国の原潜と同じく、中国軍からは比較的発見されやすいので、やはり日本の潜水艦が偵察活動をして、米英の潜水艦は、その情報を活用して、攻撃に徹するという役割になるでしょう。

何しろ、日本の潜水艦の静寂性は非常に高く、中国海軍のお粗末な対潜哨戒能力ではこれを発見することは不可能だからです。原潜は構造上どうしても騒音がある程度出るので、米英の原潜も中国軍に発見される可能性があります。

ただし、予め水中に潜んでいて、必要があれば突然攻撃を加えるという戦法をとれば、これは中国軍には対処不能です。それを実現するためにも、日本の潜水艦による情報収集は欠かせなくなります。

ただし、日本の潜水艦隊は22隻であり、これは日本全体を守備するために存在するわけですから、尖閣付近や南シナ海にばかり航行させるわけにもいかず、そのような場合は米英の原潜が要所要所に潜み偵察ならびに攻撃に転じることができるというのは、心強いです。

対潜哨戒能力については、英国は、日本と同じようにかつては、P3Cを導入していましたから、中国よりは、はるかに哨戒能力が高いですから、これは中国に対してかなりの抑止力になります。

2019年9月26日(木)から10月4日(金)までの9日間、長崎県の佐世保から関東南方に至る海域と空域で、海上自衛隊とアメリカ海軍、インド海軍による日米印共同訓練「マラバール2019」が実施されました。

この訓練には海上自衛隊とアメリカ、インド両海軍から艦艇に加えて、対潜水艦戦や洋上のパトロールを任務とする哨戒機も参加しており、海上自衛隊からはP-1哨戒機、アメリカ海軍とインド海軍からはボーイングがP-3C哨戒機の後継機として開発した哨戒機「P-8」が、それぞれ参加しています。

アメリカ海軍のP-8A哨戒機は、2013(平成25)年から沖縄県の嘉手納飛行場に配備されており、2019年4月に航空自衛隊のF-35A戦闘機が墜落事故を起こした際には、捜索活動に加わっています。

日米印共同訓練「マラバール2019」にて。左から米海軍P-8A、海自P-1、印P-8I

またオーストラリア空軍も2018年4月から2019年9月までの約1年半のあいだに5回、P-8哨戒機を日本に派遣して嘉手納飛行場を拠点とし、北朝鮮による、公海上で船舶を横付けして物資の取引を行う、いわゆる「瀬取り」を含めた違法な海上活動の監視を実施しており、P-8は日本にとって馴染みの深い航空機になりつつあります。

アメリカ海軍やオーストラリア空軍などが採用したP-8Aは、潜水艦が発する磁気による磁場の乱れを探知する「MAD(磁気探知装置)」を備えていませんが、インド海軍が導入したP-8Iは、P-3C哨戒機や海上自衛隊のP-1哨戒機と同様、MADを尾部に装備しています。

日本では、MADを装備していないP-8Aは潜水艦の探知能力において、P-3CやP-1に比べ劣るのではないか、という見方もあります。ただし、MADの価値は依然として低下しておらず、哨戒機を運用する海軍や空軍がどのような対潜水艦作戦を構想しているかで、MADが必要であるか否かが決まります。

さらに、水中で潜水艦の発する音波を受信して航空機に送信する潜水艦探知装置「ソノブイ」の進化などにより、MADを装備していなくてもP-3Cと同様以上の対潜水艦作戦が遂行できると判断して、米豪海軍はP-8AにMADの装備しなかったようです。

P-8AはMADを装備していないだけではなく、最初から無人機との連携を想定して開発されている点もP-3CやP-1とは異なっています。

米豪海軍は、P-8Aとコンビを組む無人航空機として、ノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」を採用しています。両海軍は、有人哨戒機に比べて連続作戦時間が長い「トライトン」で洋上を監視し、「トライトン」が不審な目標を発見したらP-8Aが急行して対処するという運用方法を構想しています。ちなみに、英海軍もP-8Aを装備しています。

哨戒活動演習をするノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」

「トライトン」は日本も導入するRQ-4「グローバルホーク」の派生型で、外見もよく似ていますが、「グローバルホーク」が成層圏を長時間飛行して監視を行なう航空機であるのに対し、「トライトン」は低高度を飛行して洋上を監視する航空機であることから、機体構造が強化されているほか、センサーもAESAレーダーなど、洋上監視に最適化されたものが搭載されています。

P-8Aはボーイングが開発を進めている無人潜水艇「エコーボイジャー」との連携も検討されています。「エコーボイジャー」は約1万2000kmの連続航行と約3000mまでの潜航が可能で、船体には様々なセンサーを搭載できます。アメリカ海軍はエコーボイジャーの採用を決めていませんが、採用されればP-8Aの潜水艦への対処能力はさらに向上すると考えられます。

無人潜水艇「エコーボイジャー」

P-8Aは海上自衛隊のP-1とは異なるコンセプトの哨戒機ですが、同盟国の米国と事実上の準同盟国である豪に加え、近年、日本との防衛協力の強化が著しい印度と英国にも採用されており、海中を含めた海洋の自由を重んじる日本にとって、心強いパートナーとなる哨戒機です。

日本としても、クアッド+英国で、これらドローンの運用も視野にいれることもできます。なお、中国のドローンを過大評価するむきもありますが、中国がいくら種々様々なドローンを開発して、対潜哨戒能力そのものが優れていなければ、無意味です。そもそも、発見できない敵は攻撃できません。その他超音速ミサイルなども同じことです。

いずれにしても、現時点では日米が対潜哨戒能力では、世界トップクラスであり、英・豪もそれに続く状況にあります。そうして、中国海軍よりはいずれも対潜哨戒能力が優れています。

中国海軍の対潜哨戒能力は、現状では日米英豪に比較するとかなり劣っています。この状況だと、クアッド+英と中国が海洋戦になった場合、対潜哨戒能力が優れたクアッド+英が、中国の潜水艦をすぐに探知し、これを破壊することになります。そうなれば、中国海軍は空母やその他艦艇を守備することはできません。そうなると、中国側には全く勝ち目はありません。

私が以前からこのブログでも主張してきたように、クアッド+英は、南シナ海と尖閣諸島を守るために、わざわざ空母打撃群を派遣する必要はありません。大規模な潜水艦隊を派遣して、南シナ海や尖閣を包囲するだけで良いです。

包囲して、南シナ海の軍事基地や、尖閣の上陸部隊への補給を絶てば良いのです。場合によっては、機雷封鎖をすれば、より効果的です。補給を絶てば、上陸部隊はお手上げになってしまいます。その後は、お手上げになった上陸部隊を拘束すれば良いのです。そのために、必要とあれば、空母打撃群を派遣すれば良いのです。このような戦い方をすれば、犠牲はほとんど出ません。

このブログでは、以前から中国海軍のロードマップでは、昨年までに第二列島線を確保することになっていましたが、それどころ台湾、尖閣を含む第一列島線すら確保できていません。

かといつて、尖閣や台湾を強襲しても、負けることは最初からはっきりしています。クアッド+英国で、中国海軍の八方塞がり状況がしばらく続くことになるでしょう。

それどころか、台湾、尖閣諸島で何らかの軍事行動を起こせば、惨敗して、中国の海洋戦略は大きく後退することになります。

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