世界最大の関心事の中心人物の利益相反、なぜメディアは報道しない?
<引用元:デイリー・コーラー 2021.2.13>
COVID-19の起源を調査する世界保健機関(WHO)調査団の重要メンバーの1人は、ウイルスが研究所から流出したものではないと判定することに既得権益を持つ可能性があることを示す長い経歴を持っている―そしてメディアはそのことにほとんど触れていない。
WHOが最近武漢を訪れたことは多く報道されたが、調査団で唯一の米国市民であるピーター・ダスザック博士とその素性を明らかにするにはほとんど役に立たない。ダスザックは武漢ウイルス研究所(WIV)と長期の財務上の経歴を持っていることが、過去の報道で明らかだ。彼は2020年初めに、研究所と北京が厳しい目を向けられるのを和らげるために、研究所流出の仮説は「陰謀」だとするPR活動も組織していた。
ビーター・ダズザック博士 |
WHOの調査団は最近任務を終え、ウイルスの起源が研究所である可能性は低いと宣言したが、数時間後には主張を急転換させた。それまでには、北京の主張に同調する何十もの親中国的な見出しがすでに公開されていた。
報道関係者は広くWHOの調査結果を報じ、ニューヨーク・タイムズのようなメディアは「武漢へのWHO派遣後、中国が広報活動の勝利を飾る」と宣言した。
NBCもニュースを報じ、「研究所で働いていた中国人研究者」をウイルスが研究所から漏れたという説を打ち消した中の一部として言及した。ビジネス・インサイダーは、WHOの専門家は調査後の研究所の説を非常に確信しているため完全に「仮説を議論から外す」ことができると書いた。
BBCニュースやAP通信社のような他のメディアは、報道でダスザックを引用さえしたが、彼が研究所とその研究に直接的な資金のつながりを持っていることは伝えなかった。AP通信社は、ダスザックが調査団は「期待していたよりも高いレベルのオープン性を享受し、要求した全ての場所と人物に完全に接触することを許可された」と述べたと書いた。
ダスザックがひけらかした「オープン性」のレベルは実際には正反対だったことが後に判明した。ウォールストリート・ジャーナルによると、中国はWHO調査団に重要な情報を差し控えた。
CNNのベッキー・アンダーソンも調査についてダスザックと話した。約5分の中で、アンダーソンはダスザックに武漢研究所との経歴や、パンデミック当初から研究所説を公然と非難していたことについては何も質問しなかった。
仮説では、COVID-19が中国武漢の研究所から漏れた可能性があると主張している。メディアのメンバーは、ツイッター上の中国工作員と共に、1年近くその説を「根拠の無い」陰謀として退けてきた。
10日、WHO調査団の発表が研究所流出説について反論した後、ダスザックは国務省と米国情報機関がやみくもに同団体を信頼しなかったことを批判した。国務省のネッド・プライス報道官は9日、同省がWHOの報告書を検証するまでは調査結果に関して結論は出さないと述べた。
ダスザックはプライスのコメントに対してツイートし、人々に「米国のインテリジェンスに過度に依存」しないよう提案した。また彼は、ホワイトハウスはまず調査団を「信頼」してその後で情報を「確認」すべきだと書いた。
ジョー・バイデンの国家安全保障担当補佐官であるジェイク・サリバンは13日、歯に衣着せぬ言葉で異議を唱えた。
国家安全保障担当補佐官ジェイク・サリバン氏 |
「我々はCOVID-19の早期調査結果が伝えられた方法に大きな懸念を持っており、そこに至るのに使用された手続きに疑問を持っている」とサリバンはホワイトハウスが発表した声明で述べた。
ダスザックの10日のコメントは、彼がCOVID-19の起源に対する真実を解明しようと努める調査団の一員であるという事実にもかかわらず、まさにウイルスが研究所から漏れたというとても現実的な可能性を除外しようという彼の最新の取り組みとなっている。ダスザックは本紙からの質問に回答しなかった。
まずダスザックは、EcoHealth Allianceという非営利団体を率いており、2021年1月にニューヨーク・マガジンが出した長い記事によると、その団体は武漢ウイルス研究所(WIV)に対して「米国立衛生研究所から資金を送金」してきた。
ニューヨーク・マガジンの記事によると、EcoHealth Allianceが提供した資金は、武漢研究所が人間とコウモリの疾病に関する研究の実施を継続するのに役立ったという。ダスザックは自身の非営利団体によって「新たなパンデミックの脅威」を研究する別のプログラムからの資金も利用して武漢ウイルス研究所へ提供した、と同紙の記事は報じた。
この資金は国立衛生研究所(NIH)と国防脅威削減局からの資金援助と混合されたが、ダスザックの非営利団体は最終的に、世界的パンデミックが始まって数カ月後の2020年4月に「武漢ウイルス研究所に対する資金提供を停止するよう指示」された。
ダスザックはNIHに反発し、要求を非難する書簡に77人のノーベル賞受賞者から署名を得るのを支援した。書簡は資金提供を停止すれば「現代の歴史で最大の衛生上の危機の1つと、将来起こる可能性のある危機を制御するのを助ける可能性のある高い評価を受ける科学を持つ国と世界」を損なうと主張していた。
NIHはその後ダスザックに武漢ウイルス研究所に外部査察を受けさせるよう求めた―ニューヨーク・マガジンによれば「今後の資金援助の条件として」―が、彼は再び反発した。
「私は私立探偵としての訓練は受けていない」とダスザックは宣言した。
その後彼は、FOIAの取り組みを「陰謀論発信者であり政治的な動機に基づく機関」という言葉で公然と非難した。
またダスザックがWIVを支援するために提供したのは資金だけではない。COVID-19が発生し研究所が容疑者として注目を集めた際、ダスザックは即座にイメージを払拭するための取り組みを行使した。
ダスザックは1つには2月にランセット(週刊で刊行される査読制の医学雑誌)で発表された反論を主導し、27人の科学者の署名を集めて「COVID-19が自然の発生源を持たないと示唆する陰謀論」を「強く非難」した。
書簡では、科学者らが「ゲノムを公開して解析し・・・このコロナウイルスの起源が野生生物であると圧倒的に結論付けた」と宣言していた。
「我々には、陰謀論者に毎日攻撃を受け脅迫されている同僚のために立ち上がり支援するか、それとも見て見ぬふりをするかという選択肢がある」とダスザックは2月にサイエンス誌に語った。
ダスザックの広報担当者はその後ウォールストリート・ジャーナルに、ダスザックの書簡が中国の科学者を保護することを意図していたことを認めた。
(以下略)
新型コロナウイルスの発生源を探るため中国湖北省の武漢入りした世界保健機関(WHO)調査団の調査で、2019年12月に確認された武漢での感染は、これまで考えられていたよりはるかに広範に及んでいた兆候があることが分かっています。調査団は、中国政府がまだ許可していない数十万件の血液サンプルを緊急調査したい意向です。
武漢からスイスに戻った調査団長のピーター・ベン・エンバレク氏がCNNのインタビューで語ったところによると、調査団は今回初めて、武漢では2019年12月の時点で既に12種類以上のウイルス株が存在していたことを突き止めた。
調査団長 ピーター・ペン・エンバレク氏 |
これで、新型コロナウイルスが12月中旬に初めて公式に確認されるずっと前から中国国内で拡散していた可能性があるという懸念が一層強まりました。エンバレク氏は、「このウイルスは12月に武漢で広く出回っていた。これは新しい発見だ」と指摘します。
調査団はまた、中国当局が最初の感染者だとしている40代の男性とも面会しました。男性は民間企業に勤務するオフィスワーカーで、特筆するような渡航歴はなく、12月8日に感染が報告されていました。
エンバレク氏によると、調査団は武漢や周辺地域で2019年12月に確認された174の症例について、中国の専門家チームから情報提供を受けて調査しました。このうち100例は検査で感染が確認され、残る74例は患者の臨床症状から診断された症例でした。
174人は重症だった可能性が高く、この数の多さから判断すると、武漢では12月の時点で1000人以上が感染していた可能性があると調査団は推定しています。エンバレク氏はモデルはまだ作成していないとしつつ、「感染者のうち約15%が重症化し、大多数は軽症であることが大まかな試算で分かっている」と述べました。
WHO調査団が武漢ウイルス研究所を訪問する間、建物の前で警戒に当たる警備員 |
調査団はWHOの専門家17人と中国人17人で構成。今回の調査では対象とする遺伝物質の種類を増やし、遺伝子の完全な検体だけでなく部分的な検体も調査したことで、この時点で存在していた新型コロナウイルスの13の異なる遺伝子配列を初めて収集できたとエンバレク氏は説明しています。この情報を、中国で2019年に確認された患者のデータと照らし合わせれば、12月以前に流行が起きていた地域や時期の解明につながる貴重な手がかりとなり得ます。
国際調査団の一員でオーストラリア人研究者のドワイヤー氏は、12日までに豪テレビ局「9ニュース」の取材に応じ、「新型コロナは中国から始まったと思う」と指摘しました。輸入冷凍食品を通じたウイルス流入の可能性も含めて調査する方針を示した国際調査団の見解に異論を投げかけた発言とみられています。
国際調査団は9日、現地での活動を終えるのに際して記者会見し、起源について、中国以外の国を含めて宿主となったコウモリなどの調査を続ける考えを主張。輸入冷凍食品を通じたウイルス流入という中国側の見方も否定しませんでした。
これに対してドワイヤー氏は「9ニュース」に、新型コロナはコウモリを介して感染した可能性が最も高いと指摘。コウモリは中国以外の国にも存在すると指摘しつつも、「(新型コロナが)中国以外の地域から始まったとする証拠は実際にはきわめて限られている」との見解を示しました。
同氏は武漢市での調査について「(起源解明につながる)いくつかの証拠があったが、あまり良いものでない」とし、起源解明には「何年もかかる」と予想。その半面、「(中国側と)明確な見解の相違や激しい応酬はあったが、誰もが正しいことをしようと努めた」「WHOはこれまでにないほど多くのデータを手に入れた」とも語りました。
調査団はドワイヤー氏を含め各国の専門家ら約10人で構成。1月14日に武漢入りし、29日から対面での調査を行いました。調査は中国ペースで進められ、2月9日の活動報告では「武漢起源」説を否定したい中国の主張におおむね沿った見解が目立ったため、欧米などから疑問の声が出ていました。
確かに、中国側による隠蔽は危惧されますが、一つ確かなのは、様々なサンプルの遺伝子(RNA)解析をしてウイルスの系統樹を精緻にすれば、中国側が様々な手を使って隠蔽したとしても、必ず矛盾が発生します。その矛盾を付きながら、世界の学者らが協同で研究をすすめていけば、いすれ核心に迫ることができるでしょう。
ウィルスの系統樹を分析すれば、中国の隠蔽を立証できますし、それどころか、それぞれの国で行った対策が有効だったのかどうかまで、分析できます。今回のコロナ感染に関しては、そこまで実施して、後世のために役立てるべきです。
確かに、重大な感染病の発生にはいつも似たような陰謀論がつきまとっています。例えば、2003年にSARSが蔓延していた時期、「SARSは人工的に製造された兵器だ」というデマが一時期盛んに取り沙汰されました。2014年、エボラが西アフリカのギニア共和国などで爆発的に感染を拡大したときにも、米国人がエボラウイルスを製造したというデマがありました。
マサチューセッツ工科大学政治学部の教授であるヴィピン・ナラン(Vipin Narang)は、最近Twitterで次のような意見を表明しました。今回の感染拡大が生物兵器によるものであることを示す証拠はない、故意にこの種のデマを拡散するのは「まったくもって無責任」なことだ、と。
「実際のところ、(もし仮にこれが生物兵器だったとしたら)本当にお粗末な生物兵器です。なぜなら、自分も害を被るリスクがあるからです。いい生物兵器は致死率が高く、感染力が低いものでなければなりません」と、彼は述べています。
無論、生物兵器をつくることはかなり難しい面があることは否めません。そもそも、ウィルスは生物とはいえません。ウイルスは細菌のように培養することはできません。ただし、私自身は、生物兵器そのものはデマだと思うのですが、だからといって、武漢のウィルス研究所で研究をしていたウイルスが、外に漏れた可能性までは否定できないと思います。
その可能性も含めて、今後も研究をすすめて何が原因だったのかを突き止めていただきたいものです。
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