2021年2月21日日曜日

30年前の水準に戻った日本株、アベノミクスでバブルの後遺症を脱却 コロナ収束と景気回復反映か ―【私の論評】今後さらなる増税・緊縮財政がなく、日銀が金融引締に転じない限り、半年以内に実体経済も間違いなく良くなる(゚д゚)!

30年前の水準に戻った日本株、アベノミクスでバブルの後遺症を脱却 コロナ収束と景気回復反映か 

高橋洋一 日本の解き方



 日経平均株価が約30年半ぶりに3万円を回復したが、なぜこの水準に戻るのに30年もかかったのか。経済的な背景はどうだろうか。

 株価は、半年後の経済を映し出すといわれる。世界経済の落ち込みは、新型コロナ禍に伴う経済活動の抑制によるところが大きい。昨年末からワクチン接種が世界各国で行われた始めたのとともに、既存の薬も効果の高いものが判明しつつある。

 感染症の一般論であるが、季節が暖かくなると流行らなくなる。となると新型コロナ禍は今年後半には、かなり波が静かになるだろう。そして景気回復が予想されることが今の株価に反映しているとみていいだろう。

 たしかに今の株価については金融緩和が後押ししている側面があるものの、将来の先行きが悪いのであれば、そもそも株価が上がるはずないだろう。

 ここ30年間の日本の株価を米国と比較してみると、1990年代は日本が下がり続けたが、米国は堅調に上昇した。この時期の日本の金融政策は猛烈に引き締めを継続したので、当然ながら株価は上がらなかった。

 2000年代になると、日本でもデフレが意識され始め、金融政策は若干緩和基調だったが、インフレ目標が導入されていなかったので、金融政策は不徹底だった。その結果、日本の株価は徐々に上がりだしたが、08年のリーマン・ショックで日米ともに沈んだ。

 10年代は、日米ともに上昇し、特に、インフレ目標が導入されたアベノミクスの13年以降、日本のほうが値上がりスピードが若干速くなった。

 こうしてみると、金融政策がインフレ目標で運営されていると為替が大きく変動しづらくなり、日本の株価は米国とほぼ連動してくる。

 アベノミクスは、マクロ経済からみれば、金融政策についてはインフレ目標を中央銀行に課し、財政政策と金融政策を協調させ、GDPギャップ(完全雇用を達成する潜在GDP水準と現実のGDP水準の差)を少なくするように運営するものだ。これは、失業率を最小化させる効果を持ち、そうした意味では世界標準である。

     マクロ経済政策を理解するにはこのグラフを理解していないと困難
     だがこれ理解していれば、直感的に理解できる

 これが、良好なマクロ経済環境を招き、実体経済を回復させ、13年以降、株価は日本で2・5倍程度になっている。なお、同期間の米国の株価は2・2倍程度だった。

 以上をまとめると、30年間のはじめの10年間、次の10年間、最後の10年間で、だんだんとマクロ経済政策、特に金融政策が世界標準に近づいてきたので、株価も先進国並みになってきた。こうした意味において、日本でのバブルの後遺症は、13年以降のアベノミクスでやっと脱却できたともいえる。その象徴が30年半ぶりの3万円台だ。

 米国の株価は、00年ごろのITバブルの崩壊、08年のリーマン・ショックなどで一時落ち込むことはあっても、その後は回復して、結果として右肩上がりになっている。おそらくきちんとしたマクロ経済政策をとれば、長期にわたる落ち込みはなく、それは日本でも同じであろう。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今後さらなる増税・緊縮財政がなく、日銀が金融引締に転じない限り、半年以内に実体経済も間違いなく良くなる(゚д゚)!

米国の株価について、きちんとしたマクロ経済政策をとれば、長期にわたる落ち込みはないとしていますが、それには裏付けがあります。

バイデン氏の大統領選における経済政策の公約は、増税によって様々な政策を賄うというものであり、コロナ禍の現在それは明らかに間違いであり、私自身はバイデン政権になれば、米国の景気は低迷し、日本も悪影響を受けることになるのではないかと危惧していました。

しかし、それは杞憂に終わりました。なぜなら、バイデン氏はイエレン氏を財務長官に任命したからです。彼女であれば、きちんとしたマクロ経済政策をとることは明らかだからです。

それを裏付けるように、イエレン米財務長官は12日、オンライン形式で開いた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、新型コロナウイルス危機からの脱却へ「今こそ大胆な財政出動に踏み切るときだ」などと主張しました。バイデン米政権は1.9兆ドル(約200兆円)の追加対策を検討するとしています。米国と同様世界屈指の財政出動をしている日本は別にして、特に欧州は景気回復がもたついており、各国にも協調的な追加策を促しました。

イエレン米財務長官

米連邦準備理事会(FRB)前議長のイエレン氏は中銀トップとして繰り返しG7会議に出席してきましたが、今回は財務長官としては初めて参加しました。欧州は新型コロナで再び経済活動の制限を余儀なくされ、景気に停滞感があります。イエレン氏は米国が大型の追加財政出動に踏み切る考えを強調し、各国にも「G7として、現時点でできうる追加的な経済支援策に注力すべきだ」などと訴えました。

イエレン氏は間違いなく、きちんとした財政政策をこれからも展開してくことでしょう。その意味では、日本国内でも、きちんとしたマクロ経済政策を実行すべきと考えている人達の中には、イエレン氏の提言に勇気をもらった人も多いでしょう。

 物価目標に達するには、日銀はさらに金融緩和を実行し政府は積極財政を
 継続すれば良いだけ、そうすれば日本はデフレから完全脱却できる

そうした中で、もし日本が今後景気が低迷することになれば、イエレン氏の提言を実行せずに、異様な経済政策をした場合のみです。たとえば、復興税制のような、コロナ税制を導入し、緊縮財政を実施し、日銀が金融引締政策をするという、まともではない政策を実行した場合です。

ちなみに、もしコロナ税制を導入することになれば、市場は将来を悲観して、日本の株価は確実に下がることになるでしょう。

そのようなことをせずに、物価目標が2%を超えるまで、政府は積極財政を行い、日銀はさらなる金融緩和を実行すれば良いのです。そうすれば、日本は確実にデフレから脱却できます。これを続けるとインフレになりますが、2%を超えてさらにインフレになり、特に物価が上がっても、失業率が下がるようなことがなくなれば、政府は緊縮財政に転じ、日銀は金融引締に転ずれば良いのです。

これ以外のことをすれば、確実に日本はデフレに舞い戻り、デフレスパイラルと円高に悩まされることになります。

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