2020年12月21日月曜日

「コロナ研究」に国債を発行できない財務省の「間抜けっぷり」を示した、ある文章―【私の論評】鈍感財務省こそ日本の危機を生み出し、若者の未来を破壊する最悪の組織(゚д゚)!

 「コロナ研究」に国債を発行できない財務省の「間抜けっぷり」を示した、ある文章

根本的な考え方をわかっていない

財務省

早ければ2月下旬にワクチン摂取


新型コロナの感染が世界的な広がりを見せている。日本でも、欧米に比べると段違いに少ないが、とうとう国内に累積感染者数が20万人を超えた。

その一方、ワクチン開発は進んでいる。既に、臨床試験に入っているワクチンは50種類を超えているが、欧米では一部のもので既に接種が始まっている。

現時点で、当局から承認・申請されたものは、米2社、ロシア1社。最終段階の臨床第3相(P3)試験に入っているものは、英1社、米2社、中国4社、インド1社、カナダ1社。日本は、1社が臨床第2相(P2)段階だ。

ただし、日本は、米2社、英1社とワクチン供給契約を結んでおり、早ければ2月下旬から接種できるようになる。

できれば日本国産ワクチンが望まれるが、ワクチン開発では日本は遅れざるを得ない。というのは、ワクチン開発は軍事と密接に関係しているからだ。兵器には通常兵器以外に、ABCがある。

A=Atomic B=Biological C=Chemicalだ。このうちウイルスはB兵器にもなる。当然のことながら、防御も研究するので、どのようなワクチンタイプであれば、早く開発できるかの研究もこれまで行われてきた。

今回のコロナ対応ワクチンは、従来からの不活性化方法に加えて、mRNA、DNA、組換えタンパクなど様々なタイプがある。これらの多くは、軍事からの基礎研究によって研究されてきたものだ。

ほとんどの国債を買い上げる日銀


というわけで、軍事大国のほうが基礎研究が盛んなので、こうした「有事」のときには、開発競争で有利になるので、日本は出遅れてしまう。

日本としては、平和的に基礎研究を進めていかなければならない。そこで、ものを言うのは、ズバリ研究予算だ。

12月8日に決定された経済対策では、今が将来投資を行うには絶好のチャンスなので、政府による研究開発基金、環境関連グリーン基金、デジタル関連基金などの将来投資が盛り込まれた。

本コラムの読者であれば、筆者が、研究開発を税財源で行うのではなく、国債で賄うという考えをもっていることをご承知だろう。

2016年10月10日付け「日本がノーベル賞常連国であり続けるには、この秘策を使うしかない! ポチ学者も淘汰できて一石二鳥」では、研究開発・教育は、将来の所得を増やすという実証分析結果が数多いことに触れ、国債発行で研究開発・教育を賄うことの重要性を訴えている。

さらに、今回のコロナ禍では、需要が蒸発したので、インフレ率は上がるどころか下がっている。日銀のインフレ目標も当分の間達成出来ない。であれば、政府が発行した国債を日銀が買い受けることもできる。

実際、今年の補正予算での国債発行額は80兆円程度あるが、それはほとんど日銀が買い受ける。それでもインフレ率は2%にまで達しないだろう。つまり、発行された国債は日銀が保有する限り、実質的に利払負担や償還負担がないので、将来世代のつけにもならない。

「国債発行」の有効性は財務省もわかっている


そして、この考え方が財務省にも一応残っていることもわかっている。上記の本コラムで、紹介したのは、たまたま手元にあった小村武・元大蔵事務次官の「予算と財政法」(三訂版)の101ページであったが、実は、同書は2016年8月に改訂され、五訂版の99ページでも同じ記述になっている。

そこでは、

すなわち、出資金が投融資の原資や有形固定資産の取得に充てられる場合にはその資産性が明白であり、他方、研究開発費に充てられるような場合においても、技術の進歩等を通じて後世代がその利益を享受でき、その意味で無形の資産と観念し得るものについては、後世代に相応の負担を求めるという観点から公債対象経費とすることについて妥当性があるものと考えられる

と書かれており、投資の対象が、通常のインフラストラクチャーのような有形固定資産であれば当然のこととし、研究開発費を例示して、基礎研究や教育のような無形固定資産の場合も、建設国債の対象経費としうるとしているのだ。

基礎研究や教育を投資と考え、国債発行で賄うというやり方は、財務省としても反論できないほど、まともであることを示している。

ちなみに、形式的には、「予算と財政法」(五訂版)は個人の著作物であるが、もともと主計局法規課にあった行政文書であり、財政法コンメンタールとして財務省の意見そのものといっても差し支えない。そこで、基礎研究などを投資と考えているというは今の財務省見解といってもいい。

その改訂作業も、著者が一人でやったのではなく、現役官僚が作業したのだろう。五訂版のはしがきでは、「国家運営の基本をなす財政法の基本理念や考え方を理解する一助になれば幸甚である」と書かれているので、大いに参考にしたいものだ。

研究開発は投資なので、それを行った段階で有効需要を増し、直ちにGDP増加になる。そして、それが将来のGDPも増加させる。GDPが増加するとますます投資を誘発するといった具合に、研究開発とGDPは相互に関連している。研究開発とGDPの因果関係は一方ではなく双方向である。

また、リフレ政策の元祖である高橋是清も、かつて

我邦の如き日清日露の事件に因りまして、不生産的な公債を償還いたしますることが必要であります・・・生産的公債でありますれば、その事業経営によりまして自然に元利を償還することとなりますので、此種の公債の増加は国の信用に関係することが極めて少ないと考えます

と述べている。研究開発は外部性のある無形資産への投資といえる。

10兆円の研究ファンド


このように、筆者は、4年前から、国債による研究開発支出を練っていた。多くの政治家に話を聞いてもらい賛同してもらった。特に、下村政調会長には、自民党の各種会合での話の機会を与えてもらった。

そこで、今年になって具体的な動きが出てきた。今年の骨太「経済財政運営と改革の基本方針2020」は、2020年7月17日閣議決定されたが、その中で、

「世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学等の共用施設やデータ連携基盤の整備、若手人材育成等を推進するため、大学改革の加速、既存の取組との整理、民間との連携等についての検討を踏まえ、世界に伍する規模のファンドを大学等の間で連携して創設し、その運用益を活用するなどにより、世界レベルの研究基盤を構築するための仕組みを実現する」

と書かれた。このときは、数字はまだであったが、

今回12月8日に閣議決定された経済対策では、研究ファンドは10兆円とされ、

特に、10 兆円規模の大学ファンドを創設36し、その運用益を活用することにより、世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学の共用施設やデータ連携基盤の整備、博士課程学生などの若手人材育成等を推進することで、我が国のイノベーション・エコシステムを構築する

となった。

出資ではなく「融資」に変わっている


ここまではいいが、問題は次の箇所だ。

本ファンドへの参画に当たっては、自律した経営、責任あるガバナンス、外部資金の獲得増等の大学改革へのコミットやファンドへの資金拠出を求めるとともに、関連する既存事業の見直しを図る。

本ファンドの原資は、当面、財政融資資金を含む国の資金を活用しつつ、参画大学や民間の資金を順次拡大し、将来的には参画大学が自らの資金で基金の運用を行うことを目指す。

財政融資資金については、ファンドの自立を促すための時限的な活用とし、市場への影響を勘案しながら順次償還を行う。安全かつ効率的に運用し、償還確実性を確保するための仕組みを設ける


と書かれ、その注には、

適時開示の趣旨を踏まえ、運用状況を適切な頻度で検証する態勢を整備し、運用状況が一定の間、一定程度を下回る場合には、運用の停止や繰上償還等を含め、運用の見直し等を行う旨を法律に規定するなど、所要の措置を講ずる

とされている。

財務省の財政法コンメンタール「予算と財政法」では、建設国債を原資とする「出資」となっているのに、財務省は実際の経済対策では、建設国債ではなく財投債として「融資」に変えたのだ。財務省内で、俗にいう「財投送り」だ。

財務省の「間抜け」が示されてしまった


研究開発はリスクが伴う。

研究の一般論としていえば、基礎研究が「当たる」確率は、いわゆる「千に三つ」である。「三つ」を当てるためには「千」のトライが必要である。

「三つ」の社会的な便益は極めて大きく、997の失敗のデメリットを補って余りあるので、基礎研究は、きわめて「打率の低い投資」であるが社会的にはやらなければいけないものだ。

こうしたリスクに対して適切なのは「出資」であって、「融資」ではない。財投による「融資」では、「償還確実性」を求められるので、研究開発ファンドに不適切な「注」が書かれている。

この「注」は財務省によるものであるが、はっきりいって財務省の「間抜け」を表している。財政法コンメンタール「予算と財政法」のように、素直に「建設国債」としておけばいいものを、間抜けな変更をした。

財務省はマスコミなどへは一般会計国債(建設・赤字)だけの発行額を言っているので、その数字が膨らむのを懸念したのだろう。しかし、それに合理性はないばかりか、リスクに耐えにくい「融資」にしたことで、研究開発に縛りがかかるおそれがある。研究なんぞしたことのない、東大法学部卒の文系役人の限界でもある。

国債の発行方法も知らないのかと、今の財務省も地に落ちたモノで呆れた。

【私の論評】鈍感財務省こそ日本の危機を生み出し、若者の未来を破壊する最悪の組織(゚д゚)!

東京大学卒業の財務省の官僚が、理解できない重要なポイントは、どんな研究が何の役に立つのかは、最初は誰にもわからないということです。官僚のほとんどは、大卒であり、おそらく研究活動などはほとんど縁がないのでほとんど理解できないのでしょう。特に基礎研究は選択と集中ができない分野ということを理解できないのでしょう。

財務省太田事務次官

私は、学生時代に生物学を専攻しましたが、研究課題が社会の役に立つのは100~200年も先といわれていました。それどころか、まったく役に立たないかもしれないともいわれました。一生捧げて研究をした結果が、教科書の脚注に1行くらいで書かれて終わりかもしれないともいわれました。

とはいいながら、やらなければ千に三つも当たらないですし、社会への貢献もありません。この意味で、基礎研究は未来への投資の典型です。下手な鉄砲ではないですが、数多くやれば、確実に一定の成果はあるものです。

こうした研究開発から成果が出るまでの期間が長く、広範囲に行う必要のある投資は、民間部門に任せるのは無理があり、やはり公的部門が主導すべきです。その場合、投資資金の財源は、税金ではなく、将来に見返りがあることを考えると、国債が適切です。

今の科研費など基礎研究は税金で賄っています。ここからしても、今の文科省や財務省には教育や研究開発を投資と考える発想はありません。


50年超の超長期国債や償還期限のないコンソル国債を発行し、未来への投資を国として行い、十分な研究資金を確保すべきです。

このようなことをしないから、日本はワクチン開発でも出遅れたのです。日本がワクチン開発で出遅れた理由についてこの20年間を振り返れば、新型コロナを含め繰り返し新興・再興感染症が起きているのに警戒感は維持されなかったことです。「日本はなんとかなるだろう」と考えていたからです。しかし、今回の反省があって変わらなかったら、よほど鈍感ということになるかもしれません。

鈍感だったのは誰なのでしょうか。09年に新型インフルエンザが流行した際、麻生太郎政権は海外から大量のワクチン輸入を進めました。後に余ると、同年8月の総選挙で野党に転じていた自民党議員がこれを批判しました。

翌年6月、専門家による新型インフルエンザ対策総括会議は「ワクチン製造業者を支援し(略)生産体制を強化すべき」と結論付けました。インフルエンザワクチンの集団接種がなくなった80年代以降、接種率が低下し、国内の生産力は衰えていたからです。

縮小市場に対し、政府の資金的支援が必要だってにもかかわらず、実際に行われたことは逆でした。日本にも国立研究機関における基礎研究と民間企業の開発研究を資金的に橋渡しする厚生労働省外郭の財団はありました。しかし民主党政権の事業仕分けでやり玉に挙がってしまったのです。米国のような研究開発のサポートの仕組みはその後も不十分です。

日本のワクチン製造は大幅に出遅れたがその背後には財務省が・・・・・

この事業仕分けは、背後で財務省が民主党を操っていたといわれています。再政権交代後自民党政権になってもこの姿勢は変わらず、財務省は緊縮財政の名のもとで、ワクチンのような戦略物資への投資も緊縮してしまったのです。

財務省のこの鈍感さが、今日ワクチンという戦略物資の開発を遅らせてしまっているのです。「研究開発や教育を国債で賄うことは将来につけをまわすこと」という財務省のご説明を盲信した言いぐさをする人がいますが、国債を利用してそれが将来の若い人達の生産性をあげたり、または非生産性要因もあげれば十分すぎるほどおつりのくる「先行投資」です。それがわかってないだけで、国債=将来世代へのつけ、という幼稚な認識の罠にはまるのです。

財務省は過去と同じ感覚で、今でも閣僚や政治家やマスコミ、財界をつかって緊縮政策をいまだに工作していますが、新型コロナ危機で世論の潮目が変わっていることにも鈍感です。

そうして、財務省的な緊縮主義には、清算主義的な思想が伴うことが多いです。清算主義的な思想とは、簡単にいうと今日我慢すれば明日はもっと良くなるという思想です。例えば病気をしていてもそれを我慢して自分ひとりで耐え抜けば、以前の健康だったときよりもさらに健康になるという歪んだ精神主義です。

もちろん病気であれば適切な診断と治療をうけたほうがいいにきまっているのですが、それを拒否したほうが“望ましい”とする思想です。この歪んだ思想はさすがに表に出し過ぎると批判も多いので、財務省的な「将来世代のために緊縮するのです」という理屈で繕うのが定番です。

しかし、財務省の緊縮主義のために、いまの若い人たちの健康が損なわれてしまえば、「将来世代」をまさに見殺しにすることになるのではないでしょうか。

研究開発の拡充、返済不用の奨学金の大幅拡充、小中学校の給食費や学用品の全額補助、学童保育の充実、教員の待遇改善、もちろんエアコン設置などなど、「将来世代のため」を本当に考えるならば、緊縮主義ではなく、積極財政しか解はないです。

日本の寄生虫である財務省の側につくかどうか、そこに私達や未来の世代の将来にかかっています。

国会議員は財務省の言うことを無視した方が良いです。財務省の言うことを真にうけて公言したら自分に災難がふりかかるのは必至です。実際そのような政治家が多いです。コロナ禍により時代が変わりつつあることを感じます。

政策に鈍感な人たちはその都度の政権批判しかせず、なぜ財務省が批判されるか理解しません。財務省の鈍感さを理解しようとしません。財務省こそ日本の危機を生み出し、いまもそれを続けてる最悪の組織といえます。

「われら富士山、他は並びの山」――。東大法学部卒のエリートが集う霞が関で、財務省は大蔵省時代から他省庁を見下ろしながら「最強官庁」を自任してきたのですが、今のままでは、「われら大和堆、他はすべて陸上の山」ということになるのではないでしょうか。

実際そうしたほうが良いです。財務省は、分割すると他の省庁を植民するという性癖があるので、分割した上で、すべて他象徴の下部組織に併合して、財務省のDNAを断つべきです。

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