2020年12月18日金曜日

日銀12月短観で明確になった…「V字」ではない景気の改善 着実な経済対策が不可欠だ―【私の論評】政府の需給ギャップを埋めようとする動きを応援し、それを怠るような動きをすれば、批判せよ(゚д゚)!

 日銀12月短観で明確になった…「V字」ではない景気の改善 着実な経済対策が不可欠だ 

高橋洋一 日本の解き方

日銀

 日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の業況判断指数(DI)は、前回9月のマイナス27から17ポイント改善し、マイナス10となった。改善幅は2002年6月調査以来18年半ぶりの大きさだった。

 日銀短観は、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引き景況感を示すDIで景気を判断する。

 内訳を見ると、自動車はマイナス61から48ポイント改善しマイナス13。自動車に引きずられる形で鉄鋼もマイナス55から30ポイント改善しマイナス25、非鉄金属もマイナス36から27ポイント改善しマイナス9、生産用機械もマイナス43から22ポイント改善しマイナス21となった。製造業16業種中15業種で改善した。

 造船・重機等はマイナス34から7ポイント悪化しマイナス41で、製造業で唯一の悪化だった。

 飲食や宿泊などを含めた大企業・非製造業のDIは、前回9月調査でマイナス12だったが、7ポイント改善してマイナス5と、これも2期連続の改善だった。

 宿泊・飲食サービスは、新型コロナウイルスの感染拡大で極めて大きな打撃を受けている。今回の調査で前回9月のマイナス87から21ポイント改善したものの、マイナス66にとどまっている。この改善は、政府の需要喚起策「Go To キャンペーン」の効果が主な要因と日銀は見ている。

 遊園地や劇場などの「対個人サービス」もマイナス65から22ポイント改善しマイナス43だった。非製造業12業種中11業種で改善した。

 建設は21から4ポイント悪化の17で、非製造業で唯一悪化した。

 大企業・製造業、大企業・非製造業ではほとんどの業種で改善したが、DIの水準では、大企業・製造業が16業種中14業種でマイナス、大企業・非製造業が12業種中6業種でマイナスにとどまっている。改善は見られるものの、水準としては悪い景況感のまま、いま一歩である。

 こうした傾向は中小企業にもあり、その深刻さは中小企業の方が大きい。中小企業・製造業ではマイナス44から17ポイント改善したがマイナス27、中小企業・非製造業ではマイナス22から10ポイント改善したがマイナス12にとどまっている。

 先行きも明るくない。短観では、現状とともに先行きを尋ねているが、大企業・製造業では現状がマイナス10に対して先行きがマイナス8、大企業・非製造業で現状マイナス5に対して先行きマイナス6と、いずれも悪い景況感のまま、好転しないとみている。

 中小企業・製造業では現状のマイナス27に対して先行きがマイナス26、中小企業・非製造業では現状のマイナス12に対して先行きがマイナス20。非製造業ではさらに悪化を見込んでおり、先行き不安が強い。

 今回の短観では、8日に発表された追加経済対策の結果はあまり反映されていないだろうが、今回の景気回復は「V字」ではないことが確認されたことになる。経済対策が着実に実行され、日本経済の回復基調を確実にしなければいけない。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】政府の需給ギャップを埋めようとする動きを応援し、それを怠るような動きをすれば批判せよ(゚д゚)!

日銀短観については、NHKのWEBニュースで、見やすいグラフを掲示していたので、それを以下に引用します。


日銀短観そのものは、以下のリンクからご覧になってください。

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka2012.pdf

日銀短観が示しているのは、ある意味「超最悪から最悪になっただけ」ということです。

それこそ、一番の元凶たる需要ギャップをしっかり埋めるための「令和の富国強兵」が待ったなしということです。

この短観の結果は予め予想できたことであり、別に驚くには値しません。これに対応するための政策も十分に考えられますし、日本政府にはそれができる能力が十分にあります。

それについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!
追加経済対策が決まった

基本的には、この記事で示したコロナ経済追加経済対策である第三次補正葉酸を確実に実行することです。第二次補正で積み上げた、予備費が7兆円も積み上げたままになっていたのですが、これは最近5兆円まで減ったそうです。第三次補正では、そのようなことがないように、速やかに(真水20兆円)予算を所定の期間に使い切ることです。

そうして、来春には需給ギャッブが十分に埋まっていなければ、さらに真水の20兆円の追加予算を立てて実行することです。

これで、安倍総理がコロナ対策で60兆円をつかい、菅内閣は40兆円を使うことになり、全部で100兆円となります。これで、需給ギャップを十分に埋められるでしょう。それどころが、お釣りがくるかもしれませんが、だからといって予算を削ることは許されません、

なぜなら、今後コロナ以外にも様々な予期しないことが予想されるため、予算をタイトにすることは許されないからです。

実際最近でも、新潟で車1000台以上“立ち往生”という雪害が起こっています。16日から降り続く記録的な大雪の影響で、高速道での事故が相次ぎ、実に1000台以上の車両が立ち往生を強いられました。


このようなことが、もっと大規模に起こることも十分に考えられますし、さらに地震・津波の被害や、台風、大雨などの被害もあり得ます。コロナもいつ終息するかなどもまだはっきりしません。これらにも備えて、何かが起これば速やかに対策を打てるようにしなければ、需給ギャップを埋めることはできません。

需給ギャップを埋めるために、このようなことをすることにさしたる確証も何もないのに、これに反対したり、多すぎると批判する異常な人々が大勢います。これを実行するために、政府が大量の国債を発行し、日銀がこれをすべて買いとるという方式に、これまた何の確証もなく、反対する人もいます。

あるいは、民需が予想されるから、予算は少なくて良いという人もいますが、これも嘘です。これは、常識で考えてもわかるでしょう。需給ギャップが埋まっていなければ、民間企業は投資するどころか、支出を控えるようになるだけです。

さらには、国債を大量に刷れば、国の借金が増え、将来世代へのつけになるという人もいますが、これも真っ赤なうそです。この記事にも、ノーベル賞を受賞した経済学者ポール・サミュエルソン氏が財政赤字が将来世代へのつけになることはないことを理論的に示したことを掲載しました。

これらの何の確証もない財務省を筆頭とする様々な反論論に政治家がまどわされ、政府が対策を怠れば、大変なことになります。潜在GDPと実際のGDPの差であるGDPギャップは、内閣府の推計でも30兆円超もあります。これを放置すると、半年後以降の失業率が上昇します。おそらく失業率2%程度上昇、失業者で見れば120万人程度が増えるでしょう。それに伴う自殺者は6000人程度増えるでしょう。それはコロナによる死者2400人の2倍以上になります。

これに対して他人事でいられるでしょうか。コロナ禍経済対策で、このような被害を被るのは、あなた自身かもしれないし、あなたのお子さんや親や孫、親族かもしれません。会社の同僚や学校の仲間かもしれません。できないというのであれば、致し方ありませんが、日本政府にはこれに対応できる能力が十分にあるのに、そのようなことになるを、到底容認できるわけがありません。

このようなことをなくするために、政府が需給ギャップを埋める政策を実行することを阻もうとする無責任勢力の愚鈍な馬鹿どもの戯言に付き合うべきではないのです。このような戯言には、耳を貸さずとにかく、政府の需給ギャップを埋めようとする動きを応援すべきです。そうして、政府が需給ギャップを埋めることを怠るような動きをすれば、徹底的に批判すべきです。

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