2020年12月8日火曜日

吉村府知事vsヒゲの隊長 “自衛隊便利屋”に反論―【私の論評】「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時というぬるま湯に長年浸かってきた日本人への警告でもある(゚д゚)!

吉村府知事vsヒゲの隊長 “自衛隊便利屋”に反論

府庁で取材に応じる大阪府の吉村洋文知事

大阪府の吉村洋文知事(45)が8日、府庁で取材に応じた。陸上自衛隊出身で、「ヒゲの隊長」で知られる自民党の佐藤正久参院議員(60)が自身のツイッターで「自衛隊は便利屋ではない」との投稿に対し、吉村知事は自身のツイッターで反論したことについて説明した。

新型コロナウイルス感染者の治療に当たる医療従事者を確保するため、吉村知事が7日、自衛隊看護師の派遣を「岸信夫防衛相に要請した」と明かしたことに、佐藤氏は同日午後、「自衛隊は便利屋ではない。それを理解した上で緊急対応の必要性から要請内容を具体化して要請するのが基本。何人でもいいからではなく、この病院に看護師約何人とか、施設消毒等具体的なものが必要。自衛隊OBが府庁にもいるはず」と投稿した。

 この発言に対し、吉村知事は「便利屋と思ったことは一切ありません」と反論。要請までの経緯として「かなり防衛省と水面下で協議調整した上で要請致しました。自衛隊担当の職員も府庁内にいます。便利屋と思ったことは一切ありません。今回の派遣数や内容も確定してます。僕がメディアにむかって言ってないだけです。本日、別件で呉地方総監海将ともお会いしました。自衛隊の皆様に感謝してます」とツイートした。

 この日、吉村知事は「僕が自衛隊を便利屋のように思っているツイートだったので、それは違いますよと申し上げただけです」と反論の理由を説明した。

 「佐藤議員ではなく、僕らは自衛隊にお願いしている側なので、どういう思いで要請しているのか、誤解があってはいけない。きっちり、考え方をお伝えしたほうがいいと思い、ツイートしました」と述べた。

 医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、吉村知事への風当たりも強まっている。「いま、いろんな批判があるが、僕は当然、受けます。ネット上の1つ1つの意見に個別の反応することはないが、(便利屋との)意見についてはきっちり伝えたほうがいいと思った」と強調した。

【私の論評】「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時というぬるま湯に長年浸かってきた日本人への警告でもある(゚д゚)!

吉村知事と、佐藤正久参院議員のツイートがどのようなものであったか以下に掲載します。


確かに、佐藤氏は具体的な要請にすべきと語っていて、吉村知事は佐藤氏が意図した具体的な要請をしたようではあります。そうして、その後のツイッターの内容を見ていると、佐藤氏はそれを理解したようではあります。ただし、「便利屋」という言葉には、それだけではない意味を含ませていると、私には思えてなりません。

佐藤正久参院議員

コロナ以前より、近年、日本列島では台風や地震や大雪などさまざまな災害が起こっています。台風19号は各地で記録的な豪雨を降らせ、多くの人が不自由な避難生活を余儀なくされました。  

災害規模が大きくなればなるほど、「自治体」「警察」「消防」「自衛隊」「ボランティア」等、さまざまな人たちが被災地に召集されます。  

東日本大震災の大規模な自衛隊の災害派遣で、自衛隊への評価はガラリと変わりました。自衛隊は国を守る「防衛」を担う組織です。しかし、平和な時代が長かった日本人は「国を守る」ことの重要さを認識している人は少なく、自衛隊は災害派遣や人命救助をやっていればいいという人さえいます。 

確かに、東日本大震災のような原発事故も含む広大な範囲の災害に対しては自衛隊を投入するしかなかったと思います。しかし、自治体だけでも対処できそうな「口蹄疫」や「鳥インフルエンザ」など家畜の疫病対策にも“便利”に自衛隊が使われています。

最近でも、鳥インフルエンザの感染が確認された香川県三豊市の養鶏場で今月3日、作業にあたっていた自衛隊員がフォークリフトから落下し、足の骨が折れるけがをしました。

香川県三豊市養鶏場で今月3日、作業にあたっていた自衛隊員ら

都道府県には警察や消防があり、地元の業者もたくさんいます。自衛隊を投入する以外にほかに方法がない事例でなくとも、安く迅速に動いてくれる自衛隊を“便利屋”のように使っているのではないか危惧してしまいました。

土砂災害の現場では倒壊した家屋や川から流れ込んだ土砂など「災害ゴミ」が発生します。通常では考えられない量のゴミと土砂ですから、各自治体では特別なごみの収集を行っているはずです。 

自衛隊の本来の任務は「機能回復までの応急的な復旧」で、活動範囲は「幹線道路や公共施設のみ」と定められています。でも、お年寄りが家から運び出せない粗大ごみを、規定通りに出せと言われて途方に暮れています。優しい自衛官がそれを見過ごせるわけがありません。見るに見かねたある自衛官は、そんな困っているお年寄りに代わって、災害ゴミを分別し集積場まで運んでいるそうです。

自治体によっては、分別してないと絶対に受け取らないところもあります。一方、明らかに災害ゴミではない廃棄物を「これ幸い」と捨てに来る輩もいるようです。やっと大量のゴミを分別して片付けたら、見知らぬゴミが軽トラでドサッと置かれることもあるそうで、これには屈強な自衛官でも心が折れてしまうそうです。

自衛隊は、基本的には食料も野営も用具一式、お風呂まで持っている自己完結型の組織です。だから、派遣要請した自衛隊のためには何も用意は必要ないと自治体は考えています。たしかに、時間が経てば自衛隊独自の輸送方法を使って野営のための物品は運ばれてくるのですが、輸送用車両に隊員用の寝袋が積み込めず、最初の数日は下の写真の状態の派遣になる場合もあるそうです。


写真をご覧ください。特定されないように、背景の色彩や自衛官の顔などは目隠しを入れていますが、現実の災害派遣で疲れ切った自衛官が「寒い夜にひと時の休息をとっている」時の画像です。暖房もない冷たい体育館の床に雑魚寝です。  

自衛隊員が震えながら雑魚寝をしている様子を見るに見かねて、毛布や貸布団などを先に用意する担当者もいるようですが、このケースのように全く気にかけることなく放置する場合もあるのです。それどころか、被災者には温かい食べ物を提供して、自らは冷たい缶詰を食べている自衛隊員もいるとの噂もあります。

防衛省および自衛隊関係者に聴いてみたところ、「状況や現場の指揮官の判断によるので一概には言えない」と前置きしつつも、「基本的に被災された方々にお渡ししているものと自衛隊員が食べるものは一緒」との回答。炊き出しを振る舞っている場合は隊員も同じものを食べる場合が多いとのことでした。

とはいえ「被災者の方々が第一なので、配給が行き渡っていない場合はレーションを食べる場合もあります」とも。また「被災者の方々よりも豪華なものを食べるということはありえません」とのことでした。

自衛隊に対する酷い扱いは、たとえば何と公務であっても、高速道路の料金を支払わないと通れないというわけのわからないものもあります。予算が少なくて、トイレットペーパーを節約とか、小銃発射訓練も節約で、日本の陸自隊員は、米国の軍楽隊と同程度の訓練しかできないなどという笑えないような話まであります。

缶詰を食べる自衛隊員

このようなことが、コロナ対策の医療現場でも繰り返されるのではないかと、佐藤氏は危惧しておられるのではないでしょうか。私もそのような危惧を感じます。

大阪や旭川のような要請が、全国至るところで起こるようになってしまった場合、自衛隊の看護師のほとんどがコロナ対策の便利屋になってしまう可能性も危惧しているのではないでしょうか。それどころか、今後似たようなケースが発生した場合、自衛隊の看護師が恒常的に便利屋のように使われるような事態を招きかねないです。

土砂災害に備えた「ダムや堤防」は効果的でした。転ばぬ先の杖です。この事例のように、感染症対策においても、自衛隊をなるべく呼ばなくても良いようにすべきです。自衛隊は便利屋ではないですし、すべての現場ですべての患者さんを救助できるわけでもありません。自衛隊の看護師にも任務や訓練があって、そのために自衛隊に所属しているのです。

コロナから「命を守る」のはまずは「自助」です。私たち一人ひとりが自分でできることはするのです。つまるところ、民度とか国力というのは国民のそういう姿勢から始まる問題ではないかと思うのです。

ただし、自助だけでは防ぎきれないこともあることは事実です。最近は、コロナ感染者が拡大していると連日マスコミが大騒ぎです。医療崩壊寸前だというのです。しかし少なくとも日本の10倍以上もの感染者や死亡者がいる欧米諸国で医療崩壊が起きているという話は聞いたことがありません。我が国とは何かが違っているのでしょうか。我が国の対応は何か間違っていることはないのでしょうか

日本には海外の経験やデータから学ぶ余裕も、考えて準備する時間もありました。しかし、緊急事態宣言後から宣言解除に至るまでの「甘い」「緩い」対策には海外からも驚きの声が多いです。

そこで提案です。自衛隊員は50代前半で定年を迎えます。その後、僅かな若年給付金だけでは定年まで生活ができませんから再就職します。その再就職先に自治体に退職自衛官をあてるということもできるのではないでしょうか。災害対応、感染症対応など様々な対応が考えられます。

それと海外の軍隊では、予備役の制度があります。無論自衛隊にもあります。予備役 とは、軍隊における役種の一種です。一般社会で生活している軍隊在籍者や、軍隊に就役していた艦艇・航空機のことを指し、有事の際や訓練の時のみ軍隊に戻ります。在郷軍人とも呼ばれます。ほとんどすべての軍隊に存在し、自衛隊の場合は予備自衛官と称されています。これを活用する手もあります。

日本でも、河野太郎前防衛相は今年2月13日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大に対応するため、普段は企業などで働く「予備自衛官」の招集命令を出しました。予備自衛官のうち医師や看護師の資格を持つ約50人を集めるというものでした。中国湖北省武漢市から帰国した邦人やクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客で陽性反応が出た人の健康管理にあたりました。

   クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染対策に携わった
   自衛隊員。一人の感染者もでなかった

招集は同年同月13日の持ち回り閣議で決めました。自衛官OBらで構成する「即応予備自衛官」の招集も承認しました予備自衛官と即応予備自衛官は2019年秋の台風19号に伴う被災地対応でも招集しました。予備自衛官の招集は8年ぶりでした。

予備自衛官と即応予備自衛官はともに非常勤の特別職国家公務員で、災害などの緊急時に招集されます。即応予備自衛官は自衛官OBが原則で、現役自衛官と同様の任務に就きます。予備自衛官は自衛官らの後方支援が任務の中心で、自衛官の経験のない人も登録できます。

これは、自衛隊内部の対応ですが、これを地方自治体のレベルでも行うのです。ただし、予備役制度は現在の危機にはすぐには役立たないかもしれません。では、どうすれば良いのかということになりますが、これは海外の事例も役立つでしょう。

日本の場合は現在「ヒト」が足りないことが問題になっていますが、イタリアでは今年、医師試験を免除して医学生を招集し、約1万人を現場に投入しました。スペインでも、1万4000人の引退した医師や看護師を含む5万2000人の医療従事者を集めました。このようなことは、今の日本では平時を想定した規制に阻まれなかなかできないようです。

しかし日本でも、感染爆発を想定した人材確保を真剣に考えなくてはならないです。不要不急の診療や処置などが減ったことで、時間の余裕ができた医療従事者もいると聞きます。そのような人々が支援に参画できるメカニズムも検討すべきです。

ただ、新型コロナの集中治療、人工呼吸器やECMOの操作などができる医療従事者は限られています。しかも通常、日本では重症者2人を看護師1人で見ていますが、新型コロナの重症者の管理には個人防護具が必要で、さまざまな制約が伴うため、重症者1人に看護師2人が必要になるといいます。感染爆発を想定して、できる限りの人材確保と適正配置を考えるべきです。

医療に関わる「モノ」づくりでも、工夫をすべきです。通常のモノづくりの範疇で物事を考えるのではなく、例えば、3Dプリンターによるモノ作りをすべきです。PCR検査用の綿棒状の検体採取キット、フェイスシールド、マスク、人工呼吸器用の部品など、3Dプリンターで製造可能なものは多く、しかも速いです。ある会社は700以上の医療用部品などをわずか1週間でイタリアの医療施設に提供し、なかには要請を受けてから病院への納入まで8時間で完了したケースもあるといいます。

さらに、医療崩壊を防ぐために「データ」の重要です。特に、自治体ごとの新型コロナの重症者数、使用可能なICU病床数、人工呼吸器・ECMO数などの重要な情報は可視化して公開し、リアルタイムにモニタリングする必要があります。

現状は、コロナ対策のために戦時のような対応をすべきなのです。それは、何も強制的な隔離などを意味するものではありません。ヒトの確保でも、モノの生産においても、現在を平時と考えず、戦時と考えて行動するのです。それは、無論、私達だけではなく、地方自治体も政府も、緊縮財政一点張りの財務省もそのように考えて行動すべきなのです。

それには、コロナ対策に邪魔になるような規制を時限的でも良いから撤廃等をすることです。そうして、何よりも今の日本に欠けているのは、あまりにも長い間国内の平時に慣れてきた私達の多くが、危機に立ち向かうという気概を失ってしまったことではないかと思います。

ここで、敢えて「平和」ではなく、「平時」という言葉を使います。日本は、拉致問題をみてもわかるように、戦後から現在まで「平和」であったわけではありません。あくまで、「平時体制」というか、戦時体制をとらなくても何とかなってきたというだけです。本当は、中国・北朝鮮から軍事的挑発も受けて、とても「平和」といえるような状況ではありません。

「自衛隊は便利屋ではない」発言は、平時に長年浸かってきた日本人への警告だともいえます。

ただし、この危機はさほど続かないという見解もあります。しかし、最悪の事態には備えるべきでしょう。その備えをした実績が、次に似たようなことが起きたときに、役にたつはずです。今回日本人が考えを変えられなければ、次はないでしょう。


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