2020年12月28日月曜日

中国経済、要警戒水域に、バブル崩壊直前の日本に酷似…失業率「20%」に急増か―【私の論評】日本は日銀の誤謬で緩和しなかったが、中国には緩和したくてもできない理由がある(゚д゚)!

 中国経済、要警戒水域に、バブル崩壊直前の日本に酷似…失業率「20%」に急増か

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員


 英国シンクタンク「経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)」は12月26日、「中国は当初の予想よりも5年早い2028年までに米国を追い抜いて世界最大の経済大国になる」との予測を示した。CBERが予測を変更したのは、中国が世界各国と比べて新型コロナウイルスのパンデミックに巧みに対処したからである。

 中国は世界で最初に新型コロナの打撃を受けたものの、極めて厳格な措置を講じることで感染拡大を抑制し、経済活動の停止につながるロックダウンを繰り返すことはなかった。その結果、今年の経済成長率は主要国のなかで唯一プラス成長となる見通しである。

 これに対して米国は、感染者数や死者数の多さから見て世界最悪の打撃を被っており、いまだに「出口」が見えない状態が続いている。CEBRは「ここ数年、米中が経済力とソフトパワーの面で争いを繰り広げてきたが、パンデミックの発生は、明らかに中国に有利に働いた」と指摘する。

 世界経済に占める中国のシェアは、2000年時点はわずか3.6%だったが、現在は17.8%に拡大しており、2023年までには「高所得国」になる見込みである。中国が「独り勝ち」の状況は、リーマンショック直後の2009年頃に似ている。当時の中国は、大規模な経済対策を打ち出し世界経済を牽引したが、今回も同様の展開になるのだろうか。

民間ハイテク企業への弾圧

 CEBRは「中国は経済の一部を管理しつつも、ハイテクなど成長著しい分野では民間主導で成長している」としているが、昨今この「成功の方程式」が崩れ始めている。

 筆者の念頭にあるのは、中国の電子商取引大手アリババ・グループに対する当局の露骨な締め付けである。アリババの創業者である馬雲(ジャックー・マー)氏は、中小企業の味方としてイノベーションを推進し、国内で高い人気を集めているが、今年10月、フィンテック企業に対する過剰規制に公の場で苦言を呈した。これがもとでアリババ傘下の金融会社アント・グループの新規株式公開(IPO)が当局によって差し止められたといわれている。中国政府は12月24日「アリババ・グループが独占的な行為に関与した疑いがある」として正式に調査を開始するなど、AI(人工知能)やデジタルメディアなどにも事業を広げる馬氏の企業帝国に対する「弾圧」が続いている。

「金の卵」を産んできた民間ハイテク企業に対する政府の突然の方針転換については、さまざまな論評がなされているが、その背景には何があるのだろうか。

 中国政府が発表する統計によれば、「経済はすでに回復軌道に乗っている」とされているが個人消費の回復は出遅れている。北京大学国家発展研究院のトップは12月17日、「中国の失業率は当局が発表した6%ではなく20%であり、失業者は1億4000万人に達している可能性がある」と指摘した。その理由は、新型コロナのパンデミックにより中小企業が大打撃を受けたためだが、この指摘が正しいとすれば、中国は「失業者の急増」という社会の不安定化につながる深刻な問題に直面していることになる。

 中国共産党の最高指導部は12月に入り、国内経済の「需要サイド」を改革するとの新たな方針を打ち出した(12月24日付ブルームバーグ)。これまでの経済政策の柱は、産業の高度化など「供給サイド」の改革が中心だったが、この方針転換は家計消費の伸び悩みを共産党が懸念していることを示唆している。需要サイドの改革についての詳細は明らかになっていないが、エコノミストは「所得の再分配や社会福祉などの政策が打ちだされるのではないか」との見方を示している。

 需要サイドの改革は、「高所得国」へ移行するためにも急速に進む「高齢化」に対処するためには不可欠だが、必要な財源を捻出するためには、既得権益に踏み込まざるを得ず、激しい抵抗に遭うことは容易に想像できる。このため「しがらみの少ない民間企業から手を付けよう」と思っていた矢先に、「出る杭は打たれる」ではないが、アリババ・グループが「生け贄」になってしまったのかもしれない。だが「金の卵」を産むガチョウの首を絞めて殺してしまえば、中国経済全体も危うくなる。

「中国包囲網」

 リーマンショック後の中国は、世界のヒト・モノ・カネに自由にアクセスできる環境の下で高成長を謳歌できたが、足元のマクロな経済環境は様変わりしつつある。「中国包囲網」ともいえる米国主導のインド太平洋戦略に、英国・フランス・ドイツが相次いで参加の意向を表明している。特筆すべきはこれまで「中国偏重」とされてきたドイツが、「経済発展を遂げても民主化に至らない『異質な国』であり続ける」として中国の認識を改めたことである(12月27日付時事通信)。

 英国のインド太平洋地域への空母派遣について中国は「またアヘン戦争でもするつもりなのか」と激しく反発している(12月23日付中央日報)が、このような強硬姿勢を続けるだけではますます国際社会で孤立を深めるばかりであろう。

 前述のCEBRは「中国経済は2025年までは年間5.7%、2026年から2030年にかけて年間4.5%の成長が見込まれる」と見ているが、格付け大手S&Pは12月2日、「中国が科学技術分野の自立を余儀なくされれば、今後10年間の経済成長は平均で3%に半減する」との分析結果を明らかにしている。高成長が維持できなくなれば、長年懸念されてきた中国経済のバブル崩壊が現実になってしまうかもしれない。相場研究家の市岡繁男氏は「民間部門債務の対GDP比率が200%を超え、高齢化率が約12%となった現在の中国は、30年前のバブル崩壊前夜の日本と酷似している」と警告を発しているように、中国経済の今後には要警戒である。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

【私の論評】日本は日銀の誤謬で緩和しなかったが、中国には緩和したくてもできない理由がある(゚д゚)!

上の記事では、中国経済、要警戒水域に、バブル崩壊直前の日本に酷似としています。確かに、現象面だけみれば、そういうところはあります。しかし、現象面で同じように見えても、根本的に全く異なります。

まずは、日本のバブル崩壊を振り返っておきます。ちなみに、日本では多くの人がバブル崩壊の原因を未だに理解できていません。

バブル期の一般物価を見ると、実は、インフレ率は健全な範囲内に収まっていました。バブル期はものすごいインフレ状態だったと思っている人が多いのですが、それは誤った認識です。

バブル期に異様に高騰していたのは、株価と土地価格だけです。バブル期は、「資産バブル」の状態にあったのであり、一般物価は健全な状態だったのです。

ところが、日銀はバブルの状況分析、原因分析を正しくできず、政策金利(当時は公定歩合)を引き上げて金融引き締めをしてしまいました。資産バブルを生んでいた原因は、金融面ではなく、法の不備をついた「営業特金」や「土地転がし」などによる株や土地などの資産の回転率の高さだったのですが、日銀は原因分析を間違えて、利上げという策をとりました。

回転率の高さによって起こった「資産バブル」に対しては、利上げは効果がありません。

日銀の利上げは資産バブルの対策としては役に立ちませんでした。

一方で、このトンチンカンな利上げによって叩き潰されたのが、健全な一般物価でした。

以降、日本は深刻なデフレが進み、「失われた20年」を経験することになったのです。

そもそも、資産価格と一般物価を分けて考えるべきで、資産価格が一般物価に影響しそうな場合を除いて、一般物価が上昇していなければ、資産価格が上昇していても金融引き締めをするのはセオリーに反していました。ところが、日銀はセオリーに反してバブル退治のために金融引き締めをしてしまいました。

バブルを退治したとされた「平成の鬼平」三重野康日銀総裁だが・・・・・

この件に関しては、日銀だけを責めるわけにはいきません。マスコミは公定歩合を引き上げた当時の三重野康日銀総裁のことを、バブルを退治した「平成の鬼平」と呼んで、さかんに持ち上げました。マスコミも含めて多くの人が、バブルだから物価が上がっている。だから日銀が金融を引き締めたのは正しいことだという思い込みを持っていたのです。

しかも、この間違った認識はその後もずっと修正されることはなく、日銀は現状維持の金融引き締めを続けて長期のデフレを生んでしまいました。

なぜ日本は「失われた20年」を経験することになったのでしょうか。それを理解するには、バブル期についての誤解を解く必要があります。長期不況のつまずきの始まりは、バブルについての認識の間違いです。間違った経済常識は、悲劇的な結果をもたらすのです。このことは、決して忘れるべきではありません。


日本のバブル崩壊は、上に述べたように、日銀の金融に関する誤謬から生じたものです。現在の中国は金融緩和をしたくてもできない状況にあります。誤謬により金融緩和をしないどころか、金融引締するということと、中国のようにやりたくてもできないということは根本的に違います。ただし、表面上は似たようにもみえます。

しかし、現実を正しく理解しなければ、真の姿は見えてきません。

では、中国では金融緩和したくてもできないという理由は何なのでしょうか。

さて、先進国ではマクロ経済政策として財政政策と金融政策がありますが、両者の関係を示すものとして、ノーベル経済学賞の受賞者であるロバート・マンデル教授によるマンデル・フレミング理論があります。

経済学の教科書では「固定相場制では金融政策が無効で財政政策が有効」「変動相場制では金融政策が有効で財政政策無効」と単純化されていますが、その真意は、変動相場制では金融政策を十分緩和していないと、財政政策の効果が阻害されるという意味です。つまり、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先する方が、マクロ経済政策は効果的になるのです。

これを発展させたものとして、国際金融のトリレンマ(三すくみ)があります。この結論を完結にいうと、(1)自由な資本移動(2)固定相場制(3)独立した金融政策-の全てを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べないというものです。


これらの理論から、先進国は2つのタイプに分かれます。1つは日本や米国のような変動相場制です。自由な資本移動は必須なので、固定相場制をとるか独立した金融政策をとるかの選択になるが、金融政策を選択し、固定相場制を放棄しています。

もう1つはユーロ圏のように域内は固定相場制で、域外に対して変動相場制というタイプです。自由な資本移動は必要だが域内では固定相場制のメリットを生かし、独立した金融政策を放棄しました。域外に対しては変動相場制なので、域内を1つの国と思えば、やはり変動相場制ともいえます。

中国は、このような先進国タイプにはなれません。共産党による一党独裁の社会主義であるので、自由な資本移動は基本的に採用できないので。例えば土地など生産手段は国有が社会主義の建前です。中国の社会主義では、外資が中国国内に完全な民間会社を持つことができません。中国に出資しても、中国政府の息のかかった中国企業との合弁までで、外資が会社の支配権を持つことはないのです。

一方、先進国は、基本的に民主主義国家です。これは、自由な政治体制がなければ自由な経済体制が作れず、その結果としての成長がないからです。

もっとも、ある程度中国への投資は中国政府としても必要なので、政府に管理されているとはいいながら、完全に資本移動を禁止できないです。完全な資本移動禁止なら固定相場制と独立した金融政策を採用できるのですが、そうではないので、固定相場制を優先するために、金融政策を放棄せざるを得ないのです。

要するに、固定相場制を優先しつつ、ある程度の資本移動があると、金融政策によるマネー調整を固定相場の維持に合わせる必要が生じるため、独立した金融政策が行えなくなります。そのため、中国は量的緩和を使えないというわけです。

それでも、経済規模がまだ小さかった中国では、金融緩和を実行できましたが、現状ではとても無理な規模になってしまいました。

量的緩和を使えないということは、かつての日本のように、バブル崩壊まっしぐらで、その後はデフレが続くということになります。そのため英国シンクタンク「経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)」の中国は当初の予想よりも5年早い2028年までに米国を追い抜いて世界最大の経済大国になる」との予測は、あり得ません。

むしろ長期にわたるデフレにより、失業率が上昇し、それでも金融緩和策をつかえず、中国は中所得国の罠から逃れないことになるとみるべきです。日本では、金融緩和=雇用拡大ということもあまり介されていませんが、欧米では常識というか、マクロ経済学上の常識です。

ただし、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめれば、固定相場制から変動相場制に移行できます。しかし、中国共産は、そのようなことは実施できません。それを実施すると、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊することになります。

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