2020年9月14日月曜日

【独話回覧】外貨流出で追い込まれる中国・習政権 コロナ禍でも金融引き締めの“異常事態”に カネ刷らずに景気拡大できるか―【私の論評】中国経済はいずれ毛沢東時代に戻る!外国企業はすべからく、逃避せよ(゚д゚)!

 【独話回覧】外貨流出で追い込まれる中国・習政権 コロナ禍でも金融引き締めの“異常事態”に カネ刷らずに景気拡大できるか

トランプ米大統領(左)と対立する中国の習主席だが、金融面では苦しい立場か

 夕刊フジの別の拙コラム「『お金』は知っている」(10日発行)で、中国の習近平政権が党の機関メディアを使って、トランプ米政権に対して「米国債を売るぞ」という脅しをかけていることを明らかにしたが、実のところ、金融面で追い込まれているのは習政権のほうである。

 グラフは人民元発券銀行である中国人民銀行の人民元資金量の前年同期比増減率と、人民元発行高に対する外貨資産の比率の推移である。


 事実上の「ドル本位制」をとっている人民銀行は、外貨すなわち、国有商業銀行などからのドル買い上げを通じて人民元を発行する。

 人民元は一定比率以上のドルの裏付けがあるという建前にして通貨価値の信用を保つという中国ならではの通貨制度である。買い上げた外貨は外貨準備または人民銀行資産として計上される。

 党幹部を含め、中国の既得権者や富裕層に「愛国者」はおらず、ドル準備がなければ人民元は単なる紙切れとみなしてしまいかねない。人民銀行が人民元の対ドル相場を切り下げようとしたり、人民元安が進行しようものなら、人民元をドルに換えて国外に持ち出してしまう。それが「資本逃避」と呼ばれ、仮想通貨ビットコイン取引や香港経由の裏ルートが使われる。

 習政権は数年前にビットコインを全面禁止したが、香港ルートについては塞ぐことに失敗した揚げ句に香港に「香港国家安全維持法」を強制適用し、監視を強化した。それでも資本逃避は年間2000億ドル(約21兆円)ペースで続いている。

 外準の大幅な減少が続くと、外貨危機になりかねないので、対外債務を増やすことで急場をしのぐという綱渡りにより、3兆ドルの外準水準を死守しているのが現状だ。

 グラフが示すように、2010年当時、130%に達していた外貨資産比率は下がり続け、18年からは7割ラインを維持するのが精いっぱいである。外準が増えない中でこれ以上の外貨資産比率を下げないためには、分母である人民元発行量を抑え込むしかない。

 その結果、人民元発行高の前年比は18年にはマイナスとなった。中央銀行による資金追加発行はどの国でも、経済成長を支えるために欠かせないのだが、中国は金融の量的引き締めに転じた。

 そして、武漢市発で新型コロナウイルス・ショックが勃発した今年でも、景気てこ入れに必要な人民元資金発行を増やさず、逆に金融引き締め策をとる異常ぶりだ。外貨資産7割ラインの保持が最優先するのだ。

 習政権はそれだけ、外貨難に苦しんでいるわけで、冒頭に挙げた米国債売却は、自身のフトコロ具合から来るとみてよさそうだ。保有米国債は外準の運用手段であり、米国債売却は現金化のためなのだ。

 ところが、中国共産党機関英文ネット・メディア「グローバル・タイムズ」はそんな窮状をおくびにも出さず、7月30日付で、以下のように開き直った。

 「中国を含む世界の中央銀行は(コロナ恐慌を受けた)経済刺激のために米国がとっている攻撃的な金融政策には熱心ではない。中国人民銀行はドル資産の裏付けを必要とする金融の量的拡大を選ばない代わりに、中国は慎重かつ柔軟な金融政策を通じて国内市場の拡大を図る」と。

 へーえっ、カネを全く刷らずに国内景気を良くできるとは、新実験だ。

 もっとも、党による強権、全体主義体制という異形の市場経済システムならではの離れ業なのだろう。無理強いされるのは、日本などの外国企業で、いずれも利益を上げても本国送金を止められ、さらに追加投資を強要されるだろう。

 ■田村秀男(たむら・ひでお) 産経新聞社特別記者。1946年高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後の70年日本経済新聞社入社。ワシントン特派員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級研究員、日経香港支局長などを経て2006年産経新聞社に移籍した。近著に『検証 米中貿易戦争』(ML新書)、『消費増税の黒いシナリオ デフレ脱却はなぜ挫折するのか』(幻冬舎ルネッサンス新書)など多数。

【私の論評】中国経済はいずれ毛沢東時代に戻る!外国企業はすべからく、逃避せよ(゚д゚)!

中国がなぜ金融緩和したくてもできなくなるのか、上の記事にはある程度説明されていますが、それは現状がどうなっいるのかを説明しているのであって、金融緩和がなぜできないのかの根本要因については説明していません。

それは、一言でいえば、国際金融のトリレンマによるものです。これは、過去にも何度かこのブログでとりあげています。

先進国ではマクロ経済政策として財政政策と金融政策がありますが、両者の関係を示すものとして、ノーベル経済学賞の受賞者であるロバート・マンデル教授によるマンデル・フレミング理論があります。

経済学の教科書では「固定相場制では金融政策が無効で財政政策が有効」「変動相場制では金融政策が有効で財政政策無効」と単純化されていますが、その真意は、変動相場制では金融政策を十分緩和していないと、財政政策の効果が阻害されるという意味です。つまり、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先する方が、マクロ経済政策は効果的になるというものです。

これを発展させたものとして、国際金融のトリレンマ(三すくみ)があります。この結論をざっくりいうと、(1)自由な資本移動(2)固定相場制(3)独立した金融政策-の全てを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べないというものです。

これらの理論から、先進国は2つのタイプに分かれます。1つは日本や米国のような変動相場制です。自由な資本移動は必須なので、固定相場制をとるか独立した金融政策をとるかの選択になりますが、金融政策を選択し、固定相場制を放棄となっています。



もう1つはユーロ圏のように域内は固定相場制で、域外に対して変動相場制というタイプです。自由な資本移動は必要ですが域内では固定相場制のメリットを生かし、独立した金融政策を放棄します。域外に対しては変動相場制なので、域内を1つの国と思えば、やはり変動相場制ともいえます。

中国は、こうした先進国タイプになれません。共産党による一党独裁の社会主義であるので、自由な資本移動は基本的に採用できません。例えば土地など生産手段は国有が社会主義の建前です。

ただ中国の通貨である人民元は、2005年から「管理変動相場制」を採用しています。毎営業日の10時15分に、中国の中央銀行に当たる人民銀行が当日の基準レートを公表し、その日の人民元の取引は、基準レートから上下2%の範囲内での変動が許容されるという仕組みになっています。とはいいながら、これは固定相場制よりは変動相場制に一歩近づいたというだけで、固定相場制であることには変わりありません。

これにより、中国当局の意向をなわせレートに反映させ、人民元の価値をある程度コントロールすることを可能にしました。

しかし、この管理変動相場制は、米ドルやユーロ、日本円のように自由に取引できない「不便な通貨」であることも意味しています。さらに、人民元の取引には管理相場性以外にも色々と制約が課され、中国経済の成長と規模拡大に比較すると、人民元取引の規模は国際金融市場において乏しいという状況が長らく続いていました。

そこで、中国当局は国有市場の開放を進め、2010年7月に香港において新たな人民元の取引市場を立ち上げ、これまでの市場はオンショア市場(CNY)、新しい市場はオフショア市場(CNH)と呼ばれるようになりました。そのため、人民元は二つのし上が併存する形になっていました。

しかし、ご存知のように香港の一国二制度は、中国によって一方的に破棄され、CNHは崩壊に向かいつつあります。

香港は例外だったのですが、中国の社会主義では、外資が中国国内に完全な民間会社を持つことができません。中国に出資しても、中国政府の息のかかった中国企業との合弁までで、外資が会社の支配権を持つことはできません。

一方、先進国は、これまでのところ、基本的に民主主義国家です。これは、自由な政治体制がなければ自由な経済体制が作れず、その結果としての成長がないからです。

もっとも、ある程度中国への投資は中国政府としても必要なので、政府に管理されているとはいえ、完全に資本移動を禁止できません。完全な資本移動禁止なら固定相場制と独立した金融政策を採用できますが、そうではないので、固定相場制を優先するために、金融政策を放棄せざるをえなくなったのです。

要するに、固定相場制を優先しつつ、ある程度の資本移動があると、金融政策によるマネー調整を固定相場の維持に合わせる必要が生じるため、独立した金融政策が行えなくなるのです。そのため、中国は量的緩和を使えなくなってしまったのです。

そもそも、国内で金融緩和政策すらできない国の、通貨が本格的に国際化できるはずもありません。何か国際金融において、大きな問題が起こったにしても、金融緩和できないのであれば、その問題にまともに対処することすらできません。

中国は、グローバル経済に組み込まれた今や世界第2位の経済大国であり、こうした 国は最終的に日米など主要国と同様の変動相場制に移行することで、国内金融政策の 高い自由度を保持しつつ、自由な資本移動を許容することが避けられないです。

移 行が後手に回れば国際競争力が阻害されたり、国内バブルがさらに膨らむおそれがあります。一方で、 拙速に過ぎれば、大規模資本逃避や急激な人民元安が懸念されます。まさに、現在の中国の状況はこの状況なのです。

何より金融緩和ができないという状況は、最悪です。なぜなら、マクロ経済上の常識である、金融政策=雇用政策という事実から、中国では雇用を創造することができないからです。中国は今後一層難 しい舵取りを迫られることになったのです。

文化大革命期の紅衛兵

現在まで、人為的に経済を統制してきたことが、今回の事態を招いたのです。今後も固定相場制に拘泥すれば、金融緩和ができず、雇用がさらに悪化して、ますます外貨準備高が減少し、行き着く先は満足に貿易もできない状況になるでしょう。特に中国の新しい産業である、5Gなどは、半導体を自由に調達できず頓挫せざるを得なくなります。

このままの状態が続けば、5Gだけではなく、あらゆる産業が機能不全に至ることになります。中国が現在の体制を維持しつつ、中国が打開策を行使するには、外国企業が頼みの綱で、いずれ利益を上げても本国送金を止められ、さらに追加投資を強要されるということになります。

中国の外国企業はすべて中国から逃避すべきでしょう。外国企業がすべて逃避し外貨準備がゼロになった中国は、また一昔前の、毛沢東時代の経済に戻るだけです。

【関連記事】

0 件のコメント:

トランプ前米大統領の暗殺未遂、警備はなぜ防げなかったのか―【私の論評】トランプ暗殺未遂と安倍元首相暗殺:民主主義を揺るがす警備の失態と外国勢力関与の疑惑

トランプ前米大統領の暗殺未遂、警備はなぜ防げなかったのか まとめ トランプ前大統領が支援者集会で銃撃され、警備体制の不備が問題視されている。 シークレットサービスと地元警察の役割分担が明確だったにもかかわらず、銃撃犯の接近を防げなかった。 情報伝達の遅れや屋上警備の脆弱性など、警...