2020年9月21日月曜日

ロシアの毒殺未遂に対し求められる西側諸国の団結―【私の論評】かつてないほど脆弱化したプーチン!日本も制裁に参加を!その先に日本が主導権を持った北方領土交渉がみえてくる(゚д゚)!

ロシアの毒殺未遂に対し求められる西側諸国の団結
岡崎研究所

 ロシアの野党指導者アレクセイ・ナヴァルヌイは8月20日、シベリア西部の都市トムスクからモスクワに向かう航空機の機中で突然苦しみだし、航空機はオムスクに緊急着陸した。ナヴァルヌイはオムスク緊急病院No1に意識不明のまま運び込まれた。その後、8月22日、ドイツに移送された。オムスクの病院は容態が不安定であるとして、移送を8月22日まで遅らせたが、これは体内から毒物が検出されなくなるまで、移送を引き延ばしたと疑われている。オムスクの病院は移送の前にナヴァルヌイの体内には毒物の痕跡はないと発表している。


 ところが8月30日、ドイツはナヴァルヌイにはノヴィチョクが使われたことが「疑いの余地なく明らかになった」と発表した。

 ノヴィチョックは軍用に開発された神経剤であり、KGB、今のFSBのような治安機関や軍にしかないはずである。国家機関がナヴァルヌイを毒殺しようとしたことはほぼ確実とみてよい。プーチンの特別命令で行われたのか、あるいはプーチンの意図を忖度した下僚の行為かはわからないが、ロシア政府は調査を拒否し、証拠を疑問視し、ロシアに対する「情報キャンペーン」を非難している。

 9月4日付のフィナンシャル・タイムズ紙社説‘Putin’s poison’は、こういうことが繰り返されないように西側はきちんとした対応をすべしと論じている。具体的には、(1)ロシアと欧州を結ぶノルドストリーム2パイプライン計画の見直し、(2)ロシアの国際的な「クラブ」のメンバーシップの制限、特にG7にロシアを復帰させないこと、(3)「汚い」ロシアのお金の流れと影響力拡大工作を抑えることを挙げ、こうしたことについて西側は協調して取り組むよう主張している。

 当然、同社説の言うようにすべきである。そうでないと、プーチンはこういう事件を繰り返し起こす恐れがある。

 ロシアをG7に復帰させるなど論外であるし、ロシアのエネルギーへのEU依存も見直されるべきであろう。人権侵害に対しビザ発給禁止や資産凍結などを科すマグニツキー法に基づく制裁も考えたらよい。プーチンはどうしようもない「ならず者」であるという認識で対応すべきであろう。トランプが対ロ制裁には消極的で、「証拠を見たい」などと言っているが、奇怪である。

 プーチンとその政権がなぜこれほどまでにナヴァルヌイを敵視し、警戒するするのか。ナヴァルヌイは9月中旬に行われるロシアの地方選挙で野党勢力を応援するために東部に行っていた。プーチンとその政権は改憲後、盤石な政権基盤を持つように見えるが、プーチンの認識ではそうでもないということだろう。恐怖政治を行う独裁者は自らも恐怖の中で生きていると言われるが、プーチンの常軌を逸した行動は、彼の恐怖心の反映かも知れない。ナヴァルヌイはある刑事裁判で有罪判決を受けており、プーチンに対抗して大統領選には出られないが、それでもプーチンは心配しているのであろう。

【私の論評】かつてないほど脆弱化したプーチン!日本も制裁に参加を!その先に日本が主導権を持った北方領土交渉がみえてくる(゚д゚)!

原油安と新型コロナのパンデミック(世界的大流行)悪化でロシア経済は崩壊に向かいつつあります。

プーチン氏に対抗する者はいないですが、かつてなかったほど脆弱(ぜいじゃく)になったと見受けられます。

かつてないほど脆弱化したプーチン
パンデミックの対処に苦しんでいるのは世界のどの政府も同じですが、ロシア政府は三つの戦いに直面しています。

一つは他国同様、急速に広がるウイルスによる直接的な医療や経済面の影響への対処。

二つ目は記録的な原油安。

最後にプーチン氏が2024年以降も大統領にとどまるための憲法改正を諮る全国投票を成功させなければならないです。

この3つを首尾よくこなすことは、実行力のある指導者として自らを描いてきたプーチン氏にとっても荷が重そうに見えます。

ロシア経済はソ連崩壊以来の深刻なリセッション(景気後退)に陥りつつあります。セルゲイ・グリエフ氏らエコノミストの試算によると、ロシアの今年の国内総生産(GDP)は最大9%ないし10%縮小する見通しで、落ち込みは09年の金融危機をはるかに上回ります。

セルゲイ・グリコフ氏
ロシア高等経済学院の調査によると、3月に収入は変わっていないと回答したロシア国民は約60%でしたのですが、4月にはそれが20%程度に低下しました。失業者は急増する見込みです。

パンデミックの管理が計画されることはなく、ロシアの感染者数はいまや111万人で、世界第四位です。不正確な検査からベッドの不足まで、新型コロナはロシアの医療制度の惨状を浮き彫りにしています。

ただ、死者数が比較的少ないようですが、それはロシアではコロナ死者数に含めるのは、コロナのみで死亡した人以外は、コロナ死者数に含めない(コロナ罹患者ががん患者だった場合には、がんで死亡すする)ことや、ソ連が崩壊してロシアに変わったときに、平均寿命がかなり下がり、他国に比較すると老人が少ないことなども影響しているようです。

そのため、死者が少ないとはいっても現実にはかなり被害は大きいものとみるべきです。

20年にわたり最高権力者として君臨するプーチン氏にとっては、最大の政治危機が訪れています。新型コロナと原油安の対策ではトップダウンの強みを示すチャンスでもあったのですが、代わりに明らかにされたのは行政機構の空洞化でした。

プーチン氏はこれまでも統治の核心部分には入り込みたがらなかったのですが、自らが掌握できそうにない今回の危機から、いつも以上に距離を置いています。大統領報道官はプーチン氏が地下壕(ごう)に隠れているとのうわさを否定しなければならなかったほどです。

独立系調査機関のレバダによると、新型コロナ感染拡大以前からプーチン氏の支持率は14年のクリミア併合前以来の水準に低下していました。ところが、さらに下がったように思われます。

国営の全ロシア世論調査センター(VTsIOM)が先週発表した調査結果では、信頼できる政治家としてプーチン氏を挙げたのはわずか28%にとどまりました。

プーチンがナヴァルヌイ氏を敵視し、警戒するにはプーチンがかつてなかったほど脆弱になったことも絡んでいるでしょう。もしそうでなければ、ナヴァルヌイ氏を警戒したり、ましさや毒殺を試みるなどのことは必要ないはずです。

現在の脆弱なプーチンには、さらに西側諸国が結束して、制裁を強化すれば、かなりこたえるのは間違いないです。

毎年9月に露極東ウラジオストクで開催され、安倍晋三首相も2016年以降参加を続けてきた「東方経済フォーラム」が、今年は新型コロナウイルスの影響で中止されました。外資の導入による極東振興を狙うプーチン露大統領の肝いりで15年から毎年行われてきた同イベントだが、そもそも、巨額の投資に似合う成果が得られていなかったとの批判が露国内で出ていました。

2017年「東方フォーラム」 安倍総理とプーチン大統領

ロシアでビジネスを手掛ける日本企業の間でも「会社の幹部を連れてくるだけのメリットがない」などとして、関与を縮小させる動きが出ているといいます。

「フォーラムで発表されている経済合意の一部は実行されていない上、新型コロナの影響、欧米による経済制裁、また割に合わないとして、投資家が“危険な計画”を避けた事例もあったとされている」

露地方政治・経済成長センターのグラシェンコフ代表は記者の書面インタビューで、フォーラムの現状をそう指摘しました。

東方経済フォーラムは、人口減少と経済の衰退が続くロシア極東の振興策として、プーチン氏が15年5月に大統領令で実施を決めた同国最大級の経済イベントです。プーチン氏は第1回会合で、「ビジネスのために最高の環境を整える」と豪語。

以後、日本や中国、韓国、その他アジアの首脳らが毎年出席し、それに随行して企業関係者による大規模な投資ミッションが現地を訪れるのが通例となっていました。

ただ、域内人口がわずか600万人(そもそもロシアの人口は、1億4千万人であり、日本とあまり変わらない、ちなみに北海道の人口は500万人台)規模とされる極東地域でビジネスを展開することは、エネルギーや水産業など1次産業を除けば、至難の業です。主催者は「270件、3.4兆ルーブル規模の合意がなされた」「国内外から1200人超のメディア関係者が参加した」などと成果を強調しますが、グラシェンコフ氏は「主要な経済合意は全て東方経済フォーラムより前になされているもので、フォーラムはそれを追認する場にすぎない」と断じています。

さらにフォーラム開催に、巨額の予算が費やされている実態などにも批判の声が上がっています。 とはいいながら、これは日本でいうと、都道府県に対する予算同程度のものであり、日本レベルでは元々、たいしたものではないのですが、そもそもロシアのGDPは東京都と同程度であり、ロシアにとってはかなり大きなもののようです。

露極東の通信社、デイタ・ルーは6月、フォーラムが膨大な支出で成り立っている一方で、開催手法は時代遅れで、参加する外国人のレベルも年々低下しているなどと指摘した。報道によれば、昨年のフォーラムでは、使い捨ての展示物に数千万ルーブルが費やされていた実態が明るみに出て、「極東地方の住民に衝撃を与えた」といいます。

露政府の巨額投資(日本では通常レベル)にもかかわらず、極東の経済成長は順調とは言い難いです。フォーラムの開催地であるウラジオストクは堅調とされますが、周辺地域では停滞が目立つといいます。

ハバロフスクでは知事の拘束を発端に、7月11日から長期の反政権デモが発生したのですが、露極東連邦大学のアルチョム・ルキン准教授は「ハバロフスク地方の住民が、経済の停滞にも強い不満を抱いていることは疑いようがない」と指摘します。

極東の現状は、安倍首相と同行する形でフォーラムに参加してきた日本企業にも影響を及ぼしています。

ある関係者は「ホテルや交通手段が脆弱(ぜいじゃく)なウラジオストクでのフォーラムの参加には相当額の費用がかかる。現地の政権幹部との会合アレンジなどに失敗すれば、担当者の評価も下がるため、年々参加規模が縮小する傾向にある」と明かしています。

ロシアとの関係強化に注力した安倍政権が終わるのを受け、日本が今後、どのような形でフォーラムに関与するかも注目されます。

焦点の北方領土問題をめぐっては、日本政府が8項目の対露経済協力などを打ち出すなど二国間関係の改善に尽力したものの、進展しなかったのが実情です。そのため日本政府が今後、フォーラム参加を含めて従来通りに露極東の経済プロジェクトに関与し続けるかには疑問が残ります。

ルキン氏は「日本企業の極東への関心が薄まっている事実は明らかだ」とし、「来年、日本の首相がフォーラムに参加することはないだろう」と予測しています。

菅総理は、これからフォーラムに参加しないほうが良いでしょう。それよりも、日本もEUや米国と歩調をあわせ制裁を強化していくべきでしょう。そうすれば、ロシア経済はますます脆弱化していき、プーチンもますます脆弱化していきます。
その先に、日本が主導権を持った北方領土交渉がみえてきます。

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