■
岡崎研究所
12月27日、ロシア軍は、超高速で飛ぶことができる極超音速兵器アヴァンガルドを配備した、と発表した。今回配備されたアヴァンガルドは、ICBMに搭載されて打ち上げられ、その後極超音速で滑空するミサイルとされている。その速度はマッハ20くらいにもなるという。極超音速というのは通常マッハ5以上の高速を意味するが、その基準を大きく上回っていることになる。その上、軌道を変えることができるという。
アヴァンガルドのような極超音速兵器を在来のミサイル防衛で迎撃することは極めて困難であろう。12月27日付けのニューヨーク・タイムズ紙の解説記事‘Russia Deploys Hypersonic Weapon, Potentially Renewing Arms Race’は、次のように説明している。「極超音速滑空機として知られるロシアの武器は、弾道ミサイル防衛レーダーを回避して大気中をより低く飛ぶことができる。ICBMに搭載されており、伝統的技術で最初は弾頭を目標に向けて運ぶ。しかし、目標に近づくにつれて、予測不可能な経路で極超音速で飛行するように設計されている。それを検出、追跡、撃墜するのは非常に困難である」。
今回の発表は、ロシア側が存続を切望している軍備管理条約New START(戦略的核ミサイル発射装置を制限し、両方の配備核弾頭を制限)の存廃交渉に関わっているかもしれない。トランプ政権は条約の延長を約束せず、トランプは中国やその他の核兵器国が含まれない限り更新しない、と何度も言っている。中国は、その兵器の数は米ロの5分の1であり、数量制限に関心がないと述べている。そこで、ロシアは新しい極超音速兵器を誇示し、トランプに交渉を始めるように圧力をかけている可能性がある。
いずれにせよ、極超音速ミサイルの開発は中国でも行われているし、今後、米国も力を入れていくことになる。米軍高官は、米国は2022年までに独自の極超音速兵器を配備する計画であると述べている由である。この分野での軍拡競争はまず止まらないと思われる。
こうした極超音速ミサイルが出来てくると、ミサイル防衛は意味がなくなってくるだろう。 日本がイージス・アショアを配備しても、ロシアや中国が極超音速ミサイルを配備して来ると、ミサイル防衛は不可能であろう。北朝鮮が極超音速ミサイルを開発するにはもっと時間がかかるから、北朝鮮のミサイルには、ミサイル防衛はある程度の有効性を示すと思われるが、それでも完全に防衛できることはない。相当な撃ち漏らしが避けられないであろう。
核兵器出現以来、核兵器が使われないようにということで、戦略的安定をいかに確保するかについて多くの議論がなされてきた。結局、相互に脆弱性を持たせ、相互確証破壊(MAD)を確実にして置くことが最も良いということになったが、これはなかなか心理的に受け入れられず、SDI構想やミサイル防衛などが主張されることになった。2002年の米国のABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)からの脱退は、ミサイル防衛への制限を外し、ミサイル防衛を行うという選択であるが、この極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、状況は相互確証破壊に戻ってしまわざるを得ないことになっていると思われる。
日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう。そして、核抑止力の問題を安全保障上の問題として、タブーなしに議論してみる必要がある。
なお、ロシアはプーチンの下、衰退し、今やIMF統計では韓国以下のGDPの規模であり、とても新たな軍拡競争に耐えられる状況にはない。トランプは「軍拡競争をすれば米国が勝つ」と言っているが、その通りであろう。
今回の発表は、ロシア側が存続を切望している軍備管理条約New START(戦略的核ミサイル発射装置を制限し、両方の配備核弾頭を制限)の存廃交渉に関わっているかもしれない。トランプ政権は条約の延長を約束せず、トランプは中国やその他の核兵器国が含まれない限り更新しない、と何度も言っている。中国は、その兵器の数は米ロの5分の1であり、数量制限に関心がないと述べている。そこで、ロシアは新しい極超音速兵器を誇示し、トランプに交渉を始めるように圧力をかけている可能性がある。
いずれにせよ、極超音速ミサイルの開発は中国でも行われているし、今後、米国も力を入れていくことになる。米軍高官は、米国は2022年までに独自の極超音速兵器を配備する計画であると述べている由である。この分野での軍拡競争はまず止まらないと思われる。
こうした極超音速ミサイルが出来てくると、ミサイル防衛は意味がなくなってくるだろう。 日本がイージス・アショアを配備しても、ロシアや中国が極超音速ミサイルを配備して来ると、ミサイル防衛は不可能であろう。北朝鮮が極超音速ミサイルを開発するにはもっと時間がかかるから、北朝鮮のミサイルには、ミサイル防衛はある程度の有効性を示すと思われるが、それでも完全に防衛できることはない。相当な撃ち漏らしが避けられないであろう。
核兵器出現以来、核兵器が使われないようにということで、戦略的安定をいかに確保するかについて多くの議論がなされてきた。結局、相互に脆弱性を持たせ、相互確証破壊(MAD)を確実にして置くことが最も良いということになったが、これはなかなか心理的に受け入れられず、SDI構想やミサイル防衛などが主張されることになった。2002年の米国のABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)からの脱退は、ミサイル防衛への制限を外し、ミサイル防衛を行うという選択であるが、この極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、状況は相互確証破壊に戻ってしまわざるを得ないことになっていると思われる。
日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう。そして、核抑止力の問題を安全保障上の問題として、タブーなしに議論してみる必要がある。
なお、ロシアはプーチンの下、衰退し、今やIMF統計では韓国以下のGDPの規模であり、とても新たな軍拡競争に耐えられる状況にはない。トランプは「軍拡競争をすれば米国が勝つ」と言っているが、その通りであろう。
【私の論評】日本にとってイージスアショアよりも、核ミサイルに対する「先制攻撃」の方が、はるかに現実的(゚д゚)!
上の記事の結論部分に、
上の記事の結論部分に、
ロシアはプーチンの下、衰退し、今やIMF統計では韓国以下のGDPの規模であり、とても新たな軍拡競争に耐えられる状況にはない。トランプは「軍拡競争をすれば米国が勝つ」と言っているが、その通りであろう。とありますが、これは事実です。もっとわかりやすくいうと、ロシアのGDPは日本の1/3です。それは、東京都や韓国を若干下回る程度です。
このようなロシアが、米国と軍拡競争に入れば、間違いなくロシアは負けるしかありません。ただし、現在中国もそれを開発しているということが不安材料です。
現在の中国は、SARS、豚コレラ、アフリカ豚コレラに続き新型コロナウィナスが発生して、この対策に集中しているところです。さらに、鳥インフルエンザが発生しています。
中国の湖北省で新型のコロナウイルスの感染が拡大する中、隣接する内陸部の湖南省の養鶏場でニワトリが「H5N1型」の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認され、当局は警戒を強めているものとみられます。
これは、中国の農業農村省が1日発表したもので、湖南省邵陽にある養鶏場で、ニワトリが「H5N1型」の鳥インフルエンザウイルスに感染しているのが確認され、4500羽が死んだということです。
感染の確認を受けて、およそ1万7800羽が予防的に殺処分され、感染が広がらないよう処理をしたということです。
鳥インフルエンザはもともとは鳥に感染する病気で、「H5N1型」と呼ばれるウイルスはヒトにも感染して重い症状を引き起こすことが知られています。
上海ではマスクにフード姿でスマホを操作する女性の姿が |
新型コロナウィルスと、鳥インフルエンザに対処するためには、莫大な経費と、手間をさかなくてはできません。しかし、これらに対処したとしても、中国が社会構造改革を行わない限り、これからも様々な疫病に悩まされることになります。
以前このブログで指摘したように、貧困層をなくし、衛生的な環境を整備し、まともな医療体制や、防疫体制を築くためにも、中国はもっと豊かにならなければならないのです。特に、社会的にもっと豊かにならなければならないです。現在の中国は国全体では、人口が多く(つい最近14億人になったばかり)て、経済大国のようにみえますが、現実はそうではないのです。特に社会は遅れたままです。
極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、今後相互確証破壊に戻ることになるは間違いないでしょう。そうなるとイージスアショアなどはあまり意味を持ちません。北朝鮮の核ミサイルも従来よりは、抑止力を減退することになります。
この状況について、上の記事では、「日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう」としていますが、それに対する具体的な示唆は何もありません。
これに対して有効なのは、まずは北朝鮮への対処方法を日本がはっきりさせておくことです。
それには、日本が北朝鮮の核施設、ミサイル発射施設などに対して日本を攻撃する可能性が高まったときには、先制攻撃ができる体制を整えることです。
これは、日本も先制的自衛権を行使することを意味しますが、これは他国からの武力攻撃が発生していない段階ですでに自国に差し迫った危険が存在するとして、そのような危険を予防するために自衛措置を行うことができるとされる国連憲章にもある国家の権利です。
そうして、それを実行するには、日本は航空自衛隊などの戦闘機などの現行兵器に若干の装備品を加えるだけで十分対応可能です。無論、その他のイージス艦、ミサイルその他の兵器でも現行で可能なもの全部と若干の装備品を付加すれば使えるものは全部使うべきです。
これは、絵空事ではなく、実際に1981年にイスラエルが、バビロン作戦という作戦名の先制攻撃でイラクの原発を破壊した事例があります。
中国共産党は、自分たちや一部の富裕層だけが富んでいて、多数の貧困層がいる現状を変えるべきなのです。そうしなければ、いつまでも、世界の伝染病の発生源になりつづけます。無論、富裕層や共産党の幹部でさえ、伝染病に悩まされ続けることになります。これは、小手先ではできません。社会を変えなければできないことです。
中国が社会構造改革に取り組むようになったとしても、それが成功し、まともな社会構造を構築し、疫病が起こらない、もしくは起こっても、初期のうちに対処できるような体制を整えるまではには、膨大な経費と時間がかかることでしょう。
いずれにしても、今後中国は、経済的にかなり落ち込むことが予想されます。そうなると、ロシアと同じように、米国とまともに軍拡競争をして、米国に勝つことなどできないでしょう。
そうはいいながら、中露は、極超音速兵器の開発をやめることはないでしょう。特に、米国も極超音速兵器、ならびにそれに対する防御兵器の開発を継続するなら、なおさらやめないでしょう。そうして、これは確実に中露の経済弱体化につながります。かつてのソ連が崩壊した原因の一つに米国との軍拡競争、特にスターウォーズ構想関連での競争があります。
スターウォーズ構想の概念図 |
極超音速兵器の出現で、ミサイル防衛の有効性が大きく削がれ、今後相互確証破壊に戻ることになるは間違いないでしょう。そうなるとイージスアショアなどはあまり意味を持ちません。北朝鮮の核ミサイルも従来よりは、抑止力を減退することになります。
この状況について、上の記事では、「日本がミサイル防衛に大金を費やすことが適切であるのかどうか、この機会にもう一度、議論してみる必要があろう」としていますが、それに対する具体的な示唆は何もありません。
これに対して有効なのは、まずは北朝鮮への対処方法を日本がはっきりさせておくことです。
それには、日本が北朝鮮の核施設、ミサイル発射施設などに対して日本を攻撃する可能性が高まったときには、先制攻撃ができる体制を整えることです。
これは、日本も先制的自衛権を行使することを意味しますが、これは他国からの武力攻撃が発生していない段階ですでに自国に差し迫った危険が存在するとして、そのような危険を予防するために自衛措置を行うことができるとされる国連憲章にもある国家の権利です。
そうして、それを実行するには、日本は航空自衛隊などの戦闘機などの現行兵器に若干の装備品を加えるだけで十分対応可能です。無論、その他のイージス艦、ミサイルその他の兵器でも現行で可能なもの全部と若干の装備品を付加すれば使えるものは全部使うべきです。
これは、絵空事ではなく、実際に1981年にイスラエルが、バビロン作戦という作戦名の先制攻撃でイラクの原発を破壊した事例があります。
バビロン作戦て破壊されたイラクの原発 |
国内法的にも、軍事的にもそれを可能にして、先制攻撃の対象国がどこか、そうしてその具体的方法などは明らかにせず、それを世界に向けて声明すべきなのです。
それは、特に特ア三国(中国、韓国、北朝鮮)とロシアに衝撃を与えるでしょう。無論、米国をはじめ多くの国々は、そのような声明は主に北朝鮮の核に対する備えであるということで、歓迎されるでしょうが、特ア三国やロシアは自分たちも標的になると考えることになるでしょう。
こちらのほうが、はるかに現実的な対応です。それに、イージスアショアよりはるかに経済的です。日本としては、まずはこれを実行して、将来的に余裕があれば、極超音速ミサイルも開発すれば良いのです。米国と共同開発しても良いと思います。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿