2020年2月13日木曜日

新型肺炎が中国経済を崩壊させる…中小企業の3分の1が1カ月以内に倒産の危機に―【私の論評】新型肺炎が中国経済を滅ぼすのではない、自ら滅びる運命だったのだ(゚д゚)!

新型肺炎が中国経済を崩壊させる…中小企業の3分の1が1カ月以内に倒産の危機に
文=渡邉哲也/経済評論

新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大しており、中国本土の死者数は1000人を超えたことがわかった。また、感染者数は累計4万2638人にまで増えたという。



中国では、春節明けの2月10日から一部の企業が操業を再開しているが、国際的なサプライチェーン停止の影響は各地に波及している。また、操業再開に伴い感染者が拡大するリスクも高まることになり、今後も予断を許さない状況が続くだろう。

今回の新型肺炎は当初の想定よりも感染力が強く、しばらくは自覚症状がない感染者も多い。そのため、潜伏期間中に他者に感染させるリスクもはらんでおり、ひとつの工場が操業を再開したことで工場全体に感染が拡大する事態も考えられる。つまり、工場や学校などが新たに大規模な感染源になる可能性も高いわけだ。

また、サプライチェーンの麻痺は物流の麻痺へと拡大している。たとえば、工場が止まれば工場に入るはずの資材の搬入も止まり、倉庫に荷物があふれていく。結果的に、上流の物流が止まり、モノは身動きが取れなくなってしまう。中国近海には、そのような貨物船が多数停泊中で、輸出のための荷物も動かなくなっている状況だ。一部の税関も機能が停止したままであるため、モノの出入国ができなくなっている。

そして、モノが止まれば金も止まる。中国では感染拡大を防ぐために人が集まったり会食したりすることを制限する動きが出ており、その影響が飲食業やサービス業を直撃しているのだ。すでに、北京市の有名カラオケ店が破産手続きに入ることが報じられているほどである。

清華大学と北京大学が中小企業995社を対象に行った調査によると、手持ちの現金で会社を維持できる時間について「1カ月以内」とした企業が34%で、85%が「3カ月以下」と回答したという。また、新型肺炎の2020年の営業収入に対する影響は「50%以上の低下」が30%、「20~50%の低下」は28%となっている。これらの結果に鑑みるに、今後の企業活動は壊滅的な状況が続き、資金ショートによる倒産や解雇が頻発するものと思われる。

中国の場合、給料日が日本ほどは統一されておらず、企業によってさまざまだ。そのため、今後は各社の給料日ごとに破綻の動きが出てくると思われる。そして、従業員に給料が支払われなくなれば各自のローンなども払えるはずがなく、企業への打撃は個人の住宅ローンなどのデフォルトも誘発させることになる。新型肺炎による経済停滞は、膨れ上がった中国の不動産バブル崩壊を加速させることになるかもしれない。

中国を襲う消費急落と金融不安

中国政府は、非常処置として国有銀行に緊急融資を行い、国有銀行を通じた緊急資金支援を行っているが、その対象は都市部を中心とした銀行のみであり、今後は地方銀行や農業貯蓄銀行などの破綻が相次ぐ可能性もある。この問題がいつ収束するか、影響がいつまで残るかもわからない状況であり、これは単なる延命処置にすぎないのが現実だ。原因こそ違うが、いわばかつての日本と同じように、消費の急激な落ち込みと金融不安が一気にバブルを崩壊させることになるのだろう。

一方で、株式市場は比較的好調に推移している。これは、現時点では新型肺炎は中国の問題であり、アメリカの市場への影響は限定的とみられているからであろう。

中国の人民元は国際化されたものの、いまだ国際決済に使用される割合は低く、米中貿易戦争の影響もあり、中国国内の生産は中国向けが中心というふうに変化している。スマートフォンなど中国への依存度が高い製品も一部あるが、それも関税の問題でサプライチェーンを変更する過程であった。また、アメリカは華為技術(ファーウェイ)をはじめとする中国製通信機器の排除に向けて動いているが、今回の問題は、この動きに対しては追い風となるだろう。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】新型肺炎が中国経済を滅ぼすのではない、自ら滅びる運命だったのだ(゚д゚)!

中国の経済が近いうちに、崩壊するであろうことは、新型肺炎が明るみに出る前から、いわれていました。新型肺炎の前の中国経済を振り返ってみます。

米中貿易戦争に臨む米国は、「経済繁栄よりも国家安全保障を最優先させる」と不退転の決意です。その一端は、2回にわたるマイク・ペンス副大統領の演説で露呈しました。

演説するペンス副大統領

米国の対中冷戦は、貿易戦争の次元を超えて、国防権限法、並びに付随した諸法律、さらには非常事態宣言により、中国の経済、金融、そして軍事力の拡大阻止という「総合戦」に移行しました。

特に枢要部品の輸出禁止は効果的でした。インテルがZTE(中興通訊)への半導体供給をやめた途端、同社は倒産しかけました。米国が中枢部品の供給をやめれば次に何が起きるかは、目に見えています。

米商務省が発表したエンティティ・リスト(EL:米国にとって貿易を行うには好ましくない相手と判断された、米国外の個人・団体などが登録されたリスト)には、以下の中国企業が掲載されました。

ハイクビジョン(杭州海康威視数字技術)は監視カメラ企業。ダーファテクノロジー(浙江大華技術)は同じく監視カメラで世界シェア2位。センスタイム(商湯科技)はAI、特に自動運転の画像と認識技術の企業。メグビー(曠視科技)は顔認識技術。そして、アイフライテック(科大訊飛)はAIと音声認識と自動翻訳の最大手です。これら中国のハイテク企業を封じ込めることは、米中関係が後戻りのできない冷戦に入ったことを意味します。

また、中国の国内経済を見ても、不動産バブルが崩壊しかけていることがわかります。中国でいうところの「鬼城」である、人の住まないマンション群、ゴーストタウン、ゴーストシティは、いずれ「ゴースト・チャイナ」になることでしょう。

鬼城化した中国の高層アパート群、中国には全国各地にこのような施設が散在する

習近平外交の目玉「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)は、鄭和艦隊の二の舞になりそうです。皇帝・習近平を悩ます難題は幾重にも複合してきました。日本から見て最悪の問題と思われる米中貿易戦争は習近平にとってそれほど深刻なことではなく、日夜頭が痛いのは国内の権力闘争、そして「香港問題」そうして「台湾問題」の決着です。

そのため、4中全会(第19期中央委員会第4回全体会議)を2019年10月末まで2年近く開催できなかったのです。

習近平は経済に明るくないため、実質的に最悪かつ解決不能の景気悪化、人民元激安、株価暴落、不動産市場の崩壊という、目の前にある危機への認識が低いようです。たとえば、銀行倒産が中国経済に死活的な凶器となることを習近平は重視していません。

側近や中央銀行(中国人民銀行)は嘘の数字で過大な報告をしているに違いなく、また人民銀行が近く予定している「デジタル人民元」の発行で問題はクリアできると、イエスマンと茶坊主しかいない側近らに吹き込まれているようです。

真実の数字は驚くべきもので、「ジニ係数は0.62、GDP成長率は1.67%、負債総額は6500兆円前後ある」とエコノミストの向松祚が警告したのですが、習近平の耳には届いていないようです。

米国企業の経理を監査する米国の監査法人が中国に進出し、企業税務を担当したのですが、あまりのずさんな報告に悲鳴を上げて、そのまま沈黙しています。情報の透明性などまったくないため、米国は「中国企業のニューヨーク(NY)市場上場を拒絶するべきだ」と言うのです。

昨年10月初旬に発表されたゴールドマンサックスの推計では、香港から「外貨預金」かなり流出して、シンガポールの外貨預金口座に40億ドルが流れ込みました。19年6~8月の速報だけの金額です。

過去1年分を見ると、163億米ドルがシンガポールの非居住者の外貨預金口座となっていました。米中貿易戦争に嫌気した外貨流出で、香港住民だけではなく香港に預金してきた中国共産党幹部らのカネも移動しました。香港の騒擾により将来へ不安を抱き、とりあえず余裕資金を外国に、それも香港と同じ国際金融都市であるシンガポールに移管したり、マレーシアやタイの不動産購入に走っています。

日本の論議では、香港がダメになると国際金融都市は深センに移行すると推定する軽率なエコノミストがいます。しかし、情報に透明性のない市場に世界の投資資金は流れることはありません。

中国経済が抱える債務膨張は天文学的数字で、企業破産は18年上半期だけで504万社でした。国有企業は別名「ゾンビ」です。巨大債務のなかでも中国企業がドル建てで外国銀行、投資家から調達した借金の年内償還は350億ドル。20年末までが320億ドル。償還が危ぶまれ、欧米金融機関は貸し出しに極めて慎重な姿勢に転じました。


19年8月段階で、希望した中国国有企業の起債は20%に達しませんでした。すでに2年前からドル建ての中国企業の社債にはNY、ロンドン、そして香港で2%以上の「チャイナ・プレミアム」が付いていることは周知の事実で、不動産関連企業の中には14%の高利でもドルを調達してきたところがあります。

デフォルト(債務不履行)の金額もすごいです。18年だけでも1200億元(170億ドル)。19年は9月までの速報でも900億元(128億ドル)。とりわけ注目されたのは、最大最強の投資集団といわれた「民投」(中国民生投資)が債権者を緊急に集めて1年間の償還延期を承諾してもらったことです。

日の出の勢いだったスマートフォン、自動車の販売にも陰りが見え、5Gの先行商品発売にもブームは起こらず、製造業はすでにベトナム、カンボジアなどに移転しています。産業別ではすでに空洞化が起こっています。

19年5月24日、中国は内蒙古省が拠点で倒産寸前だった「包商銀行」を国家管理にするため89%の株式を取得、国有化しました。金融パニック誘発前の予防措置です。中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)が「公的管理」し、債務は元本の30%削減という措置をとりました。心理恐慌の拡大を懸念した中央銀行は6月2日になって「これは単独の案件であり、金融不安は何もない」と発表しました。

投資家の不安はかえって広がりました。包商銀行の実体は不動産バブル、株投機の裏金処理、インサイダー取引の“ATM”でした。当該銀行を倒産させないで救済したのは、リーマン・ショックの前兆に酷似してきたと金融界が認識することを怖れたからです。

しかし、信用組合レベルの金融機関は倒産が続き、7月には遼寧省の錦州銀行が管理下に置かれました。ほか420の金融機関が不良債権のリスクを抱えていました。こうした矛盾は、全体主義システムの欠陥から来る宿命なのです。

例年、中国は3月の全人代(全国人民代表大会)で、その年のGDP成長率の目標を発表します。行政単位の市、県、村、鎮は、その数字(ちなみに19年は6~6.5%)を守るばかりか、それ以上の数字をはじき出すために無理を重ねます。

でたらめな計画の元に借金を増やし、何がなんでも目標達成がノルマになり、誰も乗らない地下鉄、クルマが通らない橋、人より熊の交通が多いハイウェイや事故が頻発するトンネル、テナントが入らないショッピングモール、そしてムジナとタヌキの住み家となった高層マンションが集合して、ゴーストタウンの乱立となっていたのです。

砂上の楼閣、蜃気楼の繁栄は、やがて泡沫のように消滅するでしょう。残るのは史上空前の借金です。成長率が落ちて、ゴーストタウン化が進み、工場が閉鎖され、潜在的失業は数百万人にのぼります。窮余の一策としての「一帯一路」は、余剰在庫と余剰労働力の処理のためのプロジェクトでした。それも、世界中から「借金の罠」と非難を浴びて世界各地で頓挫しています。

毎年チベットで開催される除霊祭。その願いは近いうちかなうかもしれない・・・・
近未来の姿は「ゴースト・チャイナ」です。これが、昨年の新型肺炎が起こる前の、中国の姿です。

まさに、中国経済は元々、自ら破綻するのは決まっていたのです。新型肺炎騒動は、それを若干はやめるだけのことです。

中国人民銀行(中銀)は今月3日、公開市場操作(オペ)で銀行など金融市場に1兆2000億元(約18兆6000億円)を供給しました。新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が経済に与える影響を緩和する狙いがあるようです。しかし、この程度の規模では焼け石に水でしょう。結局何もしない、できないと言っているに等しいです。

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