2月中旬の北京の地下鉄 |
※有料メルマガ『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』好評配信中!ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、主にアメリカ株式を中心に投資全般を扱ったブログ「フルインベスト」を運営している。
最初から最後まで真実を隠し、今も規制を敷いている
新型コロナウイルスは中国でどのような状況になっているのか、誰も分からないと言っても過言ではない。
政府発表では2020年1月30日の段階で7,800人だったが、当時から現場は「10万人以上の患者がいる」と切実に訴えており、その乖離は壮絶なものがある(編注:2月24日現在、中国の保険当局によると感染者数は7万7,658人とされています)。
中国人ですらも中国共産党政権の発表など信じていない。中国共産党政権は、常に自分たちの都合に合わせて数字を歪曲し、情報隠蔽してしまう。中国では真実を言ったら公安当局に連行されてしまう。
日本でもアメリカでも政権に反対の人は堂々と反対運動を繰り広げて何事もなく日常生活を送っているのだが、中国では同じことをやったら無事に済まない。政権に不都合な人間は「みんな消される」のである。
新型コロナウイルスが封じ込められなかったのも、中国共産党政権は当初、情報を隠蔽していたからだ。いや、最初から最後まで真実を隠し、今もインターネットにも強い規制を敷いている。
情報を隠蔽する。都合の悪い真実はねじ曲げる。それが中国なのである。
中国の検索エンジンでは「絶対に検索できない言葉」もあって、たとえば「天安門事件」と検索しても何も引っ掛からない。それは中国政府は国民に知って欲しくない言葉だからだ。
そのため、今の若年層は天安門事件というものがあったことすらも知らない人もいる。
「何を知らないのか知らない」という状況になる
大陸に住む中国人は、中国政府が許可した情報だけアクセスできて、中国政府が隠したい情報は何も知らないままにされている。
「何を知らないのか知らない」という状況になるのだ。
都合の悪い情報はどんどん検閲されていく。この中国共産党政権の悪しき体質は新型コロナウイルスの蔓延で世界中が知ることになった。
中国はすべてにおいて、そうなのだ。中国では凄まじい大気汚染や環境破壊で癌で死んでいく人間が毎年数百万人レベルで出現している。しかし被害者は隠蔽されているだけで、今も依然として中国を覆い尽くしている。
中国共産党政権の都合の悪い事実は決して知らされない。消される。何も許されない。
次世代を作り出す技術革新は、その多くは自由な環境の中で生まれる。「あれは駄目、これは駄目、なぜ駄目なのか考えるな、政府に従え」という環境であれば、何も生み出せない。
政府が許可したものだけ、海外からパクリで持ってきてそれを運用するだけなので、すべてがワンテンポ遅れる。
そのパクリも、ハッキングやスパイ行為で情報を盗んで行われるので、情報が盗めなくなったら終わりだ。すべて盗んだものだから、そこから独創的な技術革新が生まれることもない。
そもそも下手に技術革新を進めていくと政府の都合の悪い領域に達する可能性もあるので何もできない。これが今の中国の現状なのである。
こうした情報統制や隠蔽体質は、通常の民主主義社会であれば、やがて薄まっていくのだが、中国は共産党の一党独裁なので逆にどんどん強まっている。
報道の自由などまったくない。北朝鮮と大差がない。
なぜ、中国政府は情報統制に走っているのか?
報道の自由と言えば、日本の報道の自由度も低いが、それもそうだろう。
日本では朝日新聞や毎日新聞などが捏造に歪曲に印象操作を行い、中国・韓国・北朝鮮の反日もまったく報道せず、誰が日本で売国スパイをしているのかすらも報道しないような体質なのだ。これで報道の自由が上がるわけがない。
しかし、中国の情報隠蔽というのは、もはやそんなレベルではなく、言論封殺と言っても良い状況だ。
中国では「国家安全法」で、中国にとって都合の悪い外国人もテロリストと決めつけたり、中国に不利な情報を報じる外国人ジャーナリストを国外追放したりしている。
それに飽き足らず、「反テロ法案」というものもあって、中国政府が「お前はテロリスト」と決めれば、その人物はテロリストになる。
たとえば、中国政府は海外から支援を受けたNGO団体の活動家を中国から追い出しているが、その根拠として「国家安全法」や「反テロ法」を持ち出している。
さらに習近平政権は「海外NGO管理法」を制定させて、中国のすべての人権向上のための活動を事実上、完全閉鎖に追いやった。
なぜ、これほどまで中国政府は情報統制に走っているのか。
言うまでもない。中国政府はもう政権運営に行き詰まっており、アメリカのドナルド・トランプとも対立して政治的にも経済的にもボロボロになっているからだ。
しかし、汚職・環境破壊・格差・経済不振を何としてでも隠し通して、中国共産党の一党独裁を維持し続けたいと思っている。
中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない
中国共産党では中国の未来はない。しかし、中国はこの共産党の一党独裁なので、政権交代ができない。共産党が駄目になったときの受け皿がない。つまり、中国共産党が終わるときが中国の終わるときだ。
中国は格差問題が解消できないどころかますます広範囲に広がっている。こうしたことから、中国の内陸部では頻繁に暴動が起きている。
しかし、中国は弾圧国家であり、こうした暴動も警察や軍隊の激しい暴力で鎮圧させている。この暴動が抑えきれなくなれば、中国は崩壊するが、もし北朝鮮のように弾圧が延々と続くとしたらどうなるのか。
中国は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくということになる。そうであった場合、中国という国は先進国に向かうのではなく、中進国から貧困国へと向かっていく。
14億人の貧困層を抱えるただの図体だけが大きな貧困国になってしまうのだ。
中国はアメリカに強硬な貿易戦争を仕掛けられている。すでに経済成長も失い、打つ手が後手後手になってしまっている。そんな中で新型コロナウイルスが蔓延し、どんどん感染者や死者が増えている。
中国が新たな成長を取り戻すには民主化と情報の自由化が必要になるが、現状は真逆の方向に向かっている。
中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になって崩壊してしまうので、絶対に民主化も自由も認めない。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、徐々に途上国へと戻っていくだけだ。
今のまま推移するのであれば、中国は絶対に次の時代の覇権国家になれない。多くの日本人は漠然と中国が豊かになっていく想像ばかりしているが、実はその逆の動きもあることを知るべきだ。
【私の論評】中進国の罠にはまり込んだ中国は、図体が大きなだけの凡庸な独裁国家になるが依然獰猛(゚д゚)!
中国経済は、新型コロナウィルスが蔓延する前から、成長の限界に直面していました。投資効率の低下、個人消費の伸び悩みに加え、輸出を増加させることも難しい状況でした。
米中貿易戦争の影響に加え、効率性が低下する中で投資が累積され、中国の生産能力は過剰になっていました。このブログでも何度か指摘してきたとおり、中国は貯蓄過剰となり、そのため世界経済全体で需要が低迷するという状況になっていました。
あらゆる商品・製品の需要に陰りが出始めたことに加え、そもそも、中国の最大の輸出相手である、米国経済が成長し続けることも難しい状況です。その上、中国では生産年齢人口が減少しています。労働力の減少は、中国では潜在成長率の下振れ要因ともなります。
常識的に考えると、この状況を打破するためには、中国政府は構造改革を進めなければならないはずです。急務なのが、不良債権の処理です。1990年代初頭の資産バブルが崩壊した後のわが国のケースを見ても、不良債権処理は経済の安定に欠かせません。
中国の4大国有銀行は、2016年1-6月期に合計1303億元(約2兆円)の不良債権を処理したが・・・ |
中国政府もその重要性はわかってはいるようです。同時に、国内の不満を抑えるために目先は投資を増やさざるを得ません。しかし、成長期待(期待収益率)が低下する中で中国政府が公共投資などを増やすことは、不良債権の増大につながるだけです。
中国では、不良債権問題という“灰色のサイ”が、どんどん大きくなっています。灰色のサイとは、発生確率は高いが、対応があまりに難しく見ているしかないリスクのことです。
昨年の、社会融資総量を見ると、シャドーバンキングの代表形態とされる信託貸出(ファンド経由の貸付)、銀行引受手形が急増しました。特に、信託貸出の増加は見逃せないです。
公の統計がないので推論によらざるを得ないですが、中国人民銀行による金融緩和や財政政策を通して供給された資金が行き場を失い、利ザヤを稼ぐためにシャドーバンキングに流れ込んでいた可能性があります。
中国経済の今後の展開を考えると、短期的には、インフラ投資や減税などから景気が幾分か持ち直すことはあるかもしれません。
しかし、長期的に中国経済は一段と厳しい状況を迎えることになるでしょう。リーマンショック後の経済が投資頼みで推移してきただけに、中国経済は成長目標に合わせて投資を積み増さざるを得ないです。その結果、中国の債務問題は深刻化し、灰色のサイは一段と大きくなるでしょう。
中国の「灰色のサイ問題」はかなり深刻だった |
以上が、新型コロナウィルスが蔓延する、前までの中国経済の実体です。
多くのエコノミストが、この状況をみて、世界の工場として成長率を高め、投資によって成長を維持しようとしてきた中国が、“中進国の罠”を回避できるか否かに、関心を高めていました。
中進国の罠とは、開発経済学における考え方です。定義に揺らぎはあるものの、新興国(途上国)の経済成長が進み、1人当たり所得が1万ドル(100万円程度)に達したあたりから、成長が鈍化・低迷することをいいます。
中国経済が中進国の罠を回避するには、個人の消費を増やさなければならないです。中国政府の本音は、リーマンショック後、一定期間の成長を投資によって支え、その間に個人消費の厚みを増すことでした。
しかし、リーマンマンショック後、中国の個人消費の伸び率の趨勢は低下しいています。リーマンショック後、中国GDPに占める個人消費の割合は30%台半ばから後半で推移しています。日本は、60%台です。米国に至っては、70%台です。
中国政府は個人消費を増やすために、自動車購入の補助金や減税の実施をしましたが、結局のところ、その目論見は失敗しました。中国商務省は昨年12月29、30の両日、2019年の商務行政を総括して20年の方針を決定する「工作会議」を北京市で開き、低迷する自動市場へのてこ入れを図っていくことなどを確認しました。
しかし、このような試みはことごとく、うまくいかないようです。これは、中国政府は国営企業の成長力を高めることを目指しているからです。市場原理に基づく効率的な資源配分よりも、中国では共産党政権の権能に基づいた経済運営が進んでいます。
それは、国有企業に富が集中し、民間部門との経済格差の拡大につながる恐れがあります。それは、民間企業のイノベーション力を抑圧・低下させることにもなりかねない。
歴史を振り返ると、権力に基づいた資源配分が持続的な成長を実現することは難しいです。習近平国家主席の権力基盤の強化が重視される中、中国が1人当たりGDPを増やし、多くの国民が豊かさを実感できる環境を目指すことは、かなり難しいです。
歴史を振り返ると、権力に基づいた資源配分が持続的な成長を実現することは難しいです。習近平国家主席の権力基盤の強化が重視される中、中国が1人当たりGDPを増やし、多くの国民が豊かさを実感できる環境を目指すことは、かなり難しいです。
本当は、この問題を解決するには、このブログでは、定番のように述べていますが、やはり民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けられないのです。
これらによって、かつての先進国が歩んできたように、中国も多くの中間層を生み出し、これら中間層が自由に社会経済活動を行えるようにするしか、経済を発展させる道はありません。
そのためには、この記事の冒頭の記事のように、情報の自由化は必須ですが、中国共産党は、情報の自由化を認めたとたんに14億人の批判対象になり、統治の正当性を失い、崩壊してしまうので、絶対に認めません。それならば、中国はこれから情報封鎖と弾圧を繰り返しながら、中進国の罠にはまりこみ、そこから先は、徐々に途上国へと戻っていくだけなのです。
最近の新型コロナウイルスは無論、中国経済に悪影響を及ぼします。しかし、過去の歴史などをみると、戦争や大災害、疫病により経済がかなり低迷した国々においても、その災害や疫病が終息すると、復興など過程において、災害や疫病などが発生する前よりもはるかに大きな消費活動が生まれ、比較的短期間で経済は元通りになるのが通例です。
今回の新型コロナウイルスが終息した直後には、中国でも比較的はやく経済が復興するかもしれませんが、それは新型コロナウィルスの蔓延の前の状態にもどるというだけで、諸問題は何も解決しておらず、そこから先はしばらく横ばいか下がっていくことになります。
新型コロナウィルスが蔓延直前の中国が、これを隠蔽せずに、世界に向かって情報公開し、世界の力も借りて迅速にこれに立ち向かっていたとしたら、中国はかつて米国などが信じていたように、豊かになり発展する可能性もあるという見方になったかもしれませんが、そうではありませんでした。
実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も |
ここ数年で、中国は中進国の罠から抜け出ることはできず、その後は発展もなく、進歩もなく、どんどんじり貧になりながら続いていくことになるでしょう。その果てにあるのは、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家です。
しかし、このアジアの凡庸な独裁国家は、軍事的には北朝鮮よりははるかに強大です。先進国のような過程を経て富を生み出すことのできない中国は、やがて八方塞がりとなり、それを解消するために、かつて中国が、東トルキスタンやチベットへ侵略したように、周辺国への侵略を開始するかもしれません。
あるいは、直接侵略しなくても、「一帯一路」などで、経済的に侵略して、周辺国の富を簒奪しようと試みるかもしれません。
そのようなことは、絶対に許すことはできません。我が国をはじめ、周辺諸国は、これから先中国が経済的に弱っても、安全保障面では油断すべきではありません。
【関連記事】
0 件のコメント:
コメントを投稿