2025年8月25日月曜日

石破政権は三度の選挙で国民に拒絶された──それでも総裁選で延命を図る危険とナチス悪魔化の教訓

夜の国会議事堂

まとめ

  • 選挙は民主主義の根幹であり、国民の審判を軽視すれば政治は正統性を失う。歴代総理は選挙敗北を受けて辞任してきたが、石破政権は三度の敗北にも関わらず延命を図り、世論調査でその流れを覆そうとしている。
  • 党内総裁選による権力維持は、国民の意思を無視した危険な手段である。総裁選は政党内の権力闘争に過ぎず、国民の信任を代替できない。過去にも党員投票省略などで正統性が疑問視された例がある。
  • ナチスの台頭は、制度の形を保ちながら自由を奪う危険性を示した。ナチスは選挙で絶対多数を得られなかったにもかかわらず、緊急令や全権委任法、同調化政策で権力を掌握し、独裁体制を築いた。
  • 戦後ドイツは「ナチス悪魔化」で国民の加担責任を曖昧にし、現在も過去を盾に言論を封じている。歴史家の異論は封殺され、AfDへの批判も「ナチスの亡霊」とレッテル貼りされるなど、民主主義の議論が阻害されている。
  • 日本は虚像のドイツ像を模範と誤解し、自虐史観で自らを過剰に断罪してきた。帝国時代の文明的貢献や教育政策を評価せず、自己否定を続けてきた結果、国家の誇りを失い民主主義を弱体化させている。
🔳選挙こそ民主主義の礎

衆院選にて石破茂総裁を中心に当選者にバラを付ける執行部

民主主義の本質は、選挙にある。国民の一票こそが政治の正統性を支え、為政者の去就を決める絶対の審判である。この重みを軽視し、権力に固執すれば、民主主義は形骸化し、国は衰退の道を歩むしかない。歴代総理が選挙敗北を受けて退陣してきたのは、日本がまだその原理を理解していた証であった。麻生太郎元首相が2009年の衆院選惨敗で退いたのも、宇野宗佑元首相が1989年参院選の結果を受けて辞任したのも、すべて国民の審判に従ったからである。

石破政権は、すでに衆院選、都議選、参院選で三度の敗北を喫した。これは一時的な人気の揺らぎではない。熟慮を重ねた国民の拒絶の意思である。それにもかかわらず、メディアは「支持率回復」という見出しを掲げ、政権延命の空気を演出している。だが世論調査は回答率が3割前後に過ぎず、高齢層に偏ったサンプルで結果は容易に歪む。NHKの調査では70歳以上の回答者が全体の4割を超え、30代以下はわずか1割という偏りが指摘されている。こうした数字で、選挙という最高の民意を覆すことは許されない。

さらに重大なのは、この状況下で党内総裁選を開き、石破氏が出馬を画策していることだ。総裁選は政党内部の代表者を決める手続きにすぎず、国民の信任を代替するものではない。過去には党員投票を省略し議員票を優先した総裁選が批判を浴びたこともある。党内の論理だけで権力にしがみつこうとすれば、民主主義の根本理念と正面から衝突する。国民の信任を欠いた指導者が内外で信頼を失い、政治を混乱に陥れることは歴史が証明している。
 
🔳ナチス台頭の教訓と「悪魔化」の欺瞞

ヒトラー

この危険を象徴するのがナチスの台頭だ。1933年3月のドイツ国会選挙でナチス党は43.9%の得票で第一党にはなったが、絶対多数には届かなかった。合法性の仮面をかぶった権力掌握はそこから始まった。同年2月の国会議事堂放火事件を口実に発令された「国会議事堂火災令」で言論・集会・報道などの基本的自由は停止され、共産党員ら反対派は大量逮捕された。続く3月の「全権委任法」は、議員への威圧や共産党議員の排除によって成立し、議会は骨抜きにされた。さらに「グライヒシャルトゥング(同調化)」政策により地方自治、司法、教育、文化、報道までもが徹底的に掌握され、独裁体制が築かれた。形式的な選挙や法の手続きを保ちながら自由を失っていった過程は、制度の脆弱さを如実に物語る。

戦後ドイツは、この歴史と「真剣に向き合った」と世界から称賛されてきた。しかし現実は違う。ドイツは「ナチス」という絶対悪を作り上げ、国民の加担責任を巧妙に隠した。数百万の国民が選挙でナチスを選び、熱狂し、戦争を支えた歴史は曖昧にされたままだ。歴史家エルンスト・ノルテがナチスの暴政をスターリン体制など他の全体主義と比較して理解すべきだと論じた際、彼は「修正主義者」と糾弾され、学界から追放同然の扱いを受けた。現代でもAfD(ドイツのための選択肢)が移民政策やEUの矛盾を指摘すれば「ナチスの再来」と決めつけられる。過去を盾にして国民の異議申し立てを封じるやり方は、自由主義を装った抑圧である。
 
🔳日本の自虐史観と民主主義の危機

日本統治時代、京城(現在のソウル)に置かれた朝鮮総督府の建物

日本もまた、この虚像の影響を強く受けた。ドイツが自国民の責任を覆い隠した一方で、日本は自らを過剰に断罪し、帝国時代の文明的功績や教育政策をほとんど語らなくなった。台湾や朝鮮に帝国大学を設け、現地の若者に高等教育の門戸を開いた事実や、当時の朝鮮地方議会で多数の朝鮮人議員が活動していた歴史、鉄道や上下水道の整備、医療や法制度の導入なども同様である。これらは支配の一側面ではあったが、同時に文明共有の試みであった。しかし戦後日本は「ドイツは謝罪した、日本はしていない」という虚像に縛られ、自らを叩き続けてきた。その自虐史観は国家の誇りを失わせ、国民の精神を弱らせている。

歴史は過去を利用して現在を縛るための道具ではない。真実を直視し、未来を築くための礎であるべきだ。ナチスの暴政は「悪魔の所業」として切り離された結果、ドイツ国民自身の責任は曖昧にされた。そして日本はその手法を模範と誤解し、自らを叩き続けた。こうした歴史観は民主主義を守る力を奪う。
 
現在の日本政治において、選挙の結果を軽視し、世論調査や党内権力闘争で政権を延命する発想は、ヴァイマル崩壊の再演になりかねない。三度の選挙で拒絶された政権は潔く退くべきである。それを報道や世論のムードで覆せば、民主主義は空洞化し、国民の自由は脅かされる。歴史は何度もこの危険を警告してきた。日本は虚像や空気に惑わされず、選挙という最高の民意を尊重し続ける国家でなければならない。

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