まとめ
- 2025年8月28日、英国空母HMSプリンス・オブ・ウェールズが初めて東京港を防衛外交の一環として訪問し、日本の国際的地位や日英関係の深化を世界に示した。
- この派遣は欧州からアジアまで展開する「オペレーション・ハイマスト」の一環で、12カ国・約4,000人規模のキャリア・ストライク・グループに所属し、多国間連携と戦力投射を象徴した。
- 日本とイギリスはユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家であり、ロシアや中国といった大陸勢力に対抗してきた歴史を共有し、戦略的理解を深めやすい関係にある。
- 1923年に日英同盟が解消され日本は孤立し、イギリスも極東戦略に空白を生んだとされるが、維持されていれば第二次世界大戦や両国の権益は大きく変わった可能性があると歴史家らは指摘している。
- HMSプリンス・オブ・ウェールズの東京寄港は単なる友好訪問ではなく、日英の歴史的絆と未来志向の協力を象徴し、両国は戦略的関係をさらに強化すべきことを示している。
英海軍の空母HMSプリンス・オブ・ウェールズは2025年8月28日、初めて東京港に寄港した。外国空母が防衛外交の一環として東京港を公式訪問したのは史上初である。戦後直後の占領期には米海軍の空母ヨークタウンやハンコックが東京湾に入港した例があるが、主権国家となった日本の首都港に平時に友好国の空母が寄港するのは極めて画期的だ。
この派遣は「オペレーション・ハイマスト」と名付けられた戦略任務の一部であり、欧州からアジアまでの長期展開を通じて英国のインド太平洋関与を示した。プリンス・オブ・ウェールズは12カ国・約4,000人規模のキャリア・ストライク・グループ(CSG)に所属し、空母を中核とした多国間戦力の象徴となった。CSGは護衛艦、潜水艦、補給艦を組み合わせた洋上戦闘部隊で、国際的な戦力投射と連携強化の象徴でもある。
🔳演習で示された日英連携能力と外交的意義
寄港に先立ちフィリピン海で日米を含む多国間演習が実施され、対潜・防空・補給作戦のほか、英国F-35B戦闘機が日本の護衛艦「かが」に着艦するクロスデッキ訓練も行われた。これは日英間の戦術的連携の高さを世界に示す歴史的成果だ。
艦上では「パシフィック・フューチャー・フォーラム(PFF’25)」や防衛産業関係イベントも開かれ、サイバーや宇宙、先端技術などでの日英協力が加速した。中谷元防衛相は「日英の安全保障協力は前例のない水準に達した」と語り、ジョン・ヒーリー英防衛相も「インド太平洋と欧州大西洋の安全は不可分だ」と強調。プリンス・オブ・ウェールズの東京寄港は、単なる友好訪問を超えた安全保障メッセージとなった。
🔳歴史の教訓が示す「運命の同盟」
日英両国は地政学的にユーラシア大陸の両端を守る海洋国家であり、歴史的にロシアや中国といったランドパワーを牽制する宿命を背負ってきた。19世紀には英国が中央アジアでロシア帝国と対立した「グレート・ゲーム」を展開し、日本も日露戦争や満州国建国を通じてソ連と緊張関係を維持した。こうした歴史を踏まえると、日本の行動は英国にとって理解しやすく、米国などとは異なる視点で共感し合える関係が築かれてきたといえる。
1902年に締結された日英同盟は日本の国際的地位向上に寄与したが、1923年に解消され、英国は極東での戦略的パートナーを失った。歴史家の伊藤之雄氏やイアン・ニッシュ氏は、この決断が日本の孤立と英帝国の極東戦略の崩壊を招いたと指摘している。もし同盟が維持されていれば第二次世界大戦の様相は大きく変わり、日本も外交交渉を通じて破滅的な敗戦を避けられた可能性がある。
共通の脅威にさらされてきた日英両国にとって、関係強化は歴史的必然だ。プリンス・オブ・ウェールズの寄港は、その必然性を示す行動であり、日英が再び世界秩序を支える同盟国となるべきことを力強く物語っている。
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