海上自衛隊 訓練に潜水艦の追加派遣 事前公表は異例の対応
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海自の「そうりゅう型」潜水艦 |
海上自衛隊は南シナ海からインド洋にかけての海域で行っている訓練に、潜水艦を追加で参加させると発表しました。中国が海洋進出を強めるこの海域への潜水艦の派遣を事前に公表するのは異例の対応で、専門家は中国海軍の出方を伺うねらいがあると指摘しています。
海上自衛隊は今月7日から1か月余りの日程で、最大の護衛艦「かが」などを南シナ海からインド洋にかけての海域に派遣し、各国の海軍などと共同訓練を行うことにしています。
海上自衛隊は15日、この訓練に潜水艦1隻を追加で参加させると発表しました。
訓練の詳しい内容は明らかにされていませんが、防衛省関係者によりますと、海中に潜って航行する潜水艦を相手に見立てて追尾する、「対潜水艦」の訓練などを南シナ海で行う予定だということです。
潜水艦は相手に居場所を知られず警戒監視を行うのが任務で、中国が海洋進出を強めるこの海域への派遣を、事前に公表するのは異例の対応です。
軍事専門家「中国海軍の出方をうかがうねらい」
海上自衛隊の元海将で潜水艦の艦長も務めた、金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授は、今回、潜水艦の派遣を事前に公表したねらいについて「アメリカや日本と比べると、海中を探索する技術のレベルがまだ低い中国にとって、近くにいても見つけることができない潜水艦は、最もいやな存在だ。訓練への参加を事前に公表することで、中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性があり、海上自衛隊としてはどんな出方をするのかをうかがうねらいがあると思う」と話しています。
そのうえで「南シナ海では軍事拠点化を進める中国に対し、日本やアメリカだけでなく、イギリスやフランスなども軍艦を派遣し、互いにけん制しあうことで、力の均衡が保たれて平和が維持されている。ただ、こうした状態が続けば、南シナ海の平和を保つための海上自衛隊の負担は、今後も増えるのではないか」と指摘しています。
【私の論評】事前公表の本当の目的は、海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するため(゚д゚)!
海上自衛隊の各国の海軍との共同訓練において、潜水艦を追加派遣したことは今回がはじめてということではなく、以前もありました。
海上幕僚監部は今年9月15日、当時実施中の「2020(令和2)年度インド太平洋方面派遣訓練」に、潜水艦1隻を追加派遣すると発表しました。
20年度インド太平洋方面派遣訓練は、第2護衛隊群司令の今野泰樹海将補を指揮官として、護衛艦「かが」、「いかづち」、搭載航空機3機の編成で9月7日から10月17日まで実施することになっていたましたが、参加人員は潜水艦1隻の参加により、当初より約70名増えた約580名となりました。
令和2年度インド太平洋方面派遣訓練に参加した護衛艦「かか」と「いかづち」
海幕広報室は、「かが」と「いかづち」が出発した後に潜水艦の追加派遣を発表したことについては、「部隊運用の都合上」とし、インド太平洋方面派遣訓練への潜水艦の参加は、2年前の「ISEAD2018」において参加実績があると回答していました。
また、潜水艦1隻が加わることで訓練計画に変更が生じるかについては、「寄港予定国についてはスリランカのほかは現在調整中であり、訓練については各種戦術訓練に加えて対潜戦訓練を行う予定」と述べていました。
この時の潜水艦1隻の訓練への追加の公表も異例中の異例でした。海上自衛隊の元海将で潜水艦の艦長も務めた伊藤俊幸教授は、上の記事で、「アメリカや日本と比べると、海中を探索する技術のレベルがまだ低い中国にとって、近くにいても見つけることができない潜水艦は、最もいやな存在だ。訓練への参加を事前に公表することで、中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性があり、海上自衛隊としてはどんな出方をするのかをうかがうねらいがあると思う」と話しています。
このことについては、このブログでは過去に何度か述べています。繰り返しになりますが、日米の対潜哨戒能力はともに世界トップ水準ですが、これに比較すると、中国の対艦哨戒能力がかなり劣っています。元々この能力はロシアから輸入したものですが、そもそもロシアの哨戒能力が現在でも相当劣っているので、中国の能力も劣っているのです。
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中国軍の哨戒能力かかなり劣るY8哨戒機 |
一方、日本の潜水艦は静寂性においては、「無音」と言っても良いくらい水準です。これを中国海軍が探知することはできません。
米国の原潜というか、一般に原子力潜水艦は、長期間に渡って潜航し続けることができるのですが、難点があります。それは騒音です。原子炉で発生させた蒸気を使ってタービンを回し、その力でプロペラ軸を回しますが、この時に使う減速歯車が騒音の原因といわれています。
タービン自体は高速で回転させるほうが効率も良いのですが、そのまま海中でプロペラを回転させるとさらなる騒音を発生させるために、減速歯車を使ってプロペラ軸に伝わる回転数を落とす必要があります。
ほかにも、炉心冷却材を循環させるためのポンプも大きな騒音を発生さるといいます。このポンプは静かな物を採用することによって、かつてに比べ騒音レベルは下がってきているといいますが、頻繁に原子炉の停止・再稼動をさせることが難しい原子力潜水艦においては、基本的にこのポンプの動きを止めることはできません。
ただし、米国の原潜は、中国の原潜よりは、静寂性が優れているので、対潜哨戒能力に劣る中国にはなかなか発見できませんが、全く発見できないということではありません。
対する通常動力潜水艦は、原子力潜水艦が不得意とする静粛性に優れています。なぜならば、ディーゼル機関を止めてバッテリー駆動に切り替えることによって、艦内で発生させる音をほぼ皆無にすることができるからです。そうして、日本の潜水艦は世界でもっとも静寂性に優れています。
この場合、唯一の音の発生源は乗員の発する音なので、例えば海上自衛隊の潜水艦の艦内には多くの場所に絨毯が敷かれ、艦内を歩く隊員の足音すら発生させないような工夫が施されています。
さらに、今年3月に進水した「たいげい」は初のリチウムバッテリーで駆動する潜水艦であり、
その静寂性は無音と言っても良いくらいです。これは、中国が探知するのは不能です。
そうして、米国の原潜にも長所があります。それは、一般に巨大で、ミサイルや魚雷などの装備も豊富で量も多く搭載しており、単純比較はできませんが、その破壊力は空母に匹敵するほどです。
これは、日米にとっては軍事秘密なので、未だ公表はされていないのでしょうが、この日米の潜水艦の利点を活用すると次のようなことが可能になります。
たとえば、南シナ海で、米中が中国海軍の基地を包囲します。米国の原潜は、食料水を除いて、エネルギーは原子力なので、補給の必要はありません。米原潜は要所要所に長時間潜み、近づく中国の補給船や補給の航空機を威嚇するか破壊して、中国軍基地に近づけないようにします。
日本の潜水艦は、中国海軍に発見されないため、中国軍の基地の周りを自由に航行して、情報を収集しそれを米原潜に伝えます。米原潜は近づく中国の潜水艦等を威嚇するか破壊して、任務を継続します。最初に潜んでいた場所が中国軍に知られた場合には、日本の潜水艦の情報にもとづき発見されないような位置に移動して、任務を継続します。
以上のようなことが考えられます。これに対して、中国海軍はなす術がありません。たとえ、超音速対艦ミサイルがあっても、探知できない敵に対してこれを用いることはできません。空母や、艦艇も意味をなさなくなります。中国のすべての艦艇は自らを防御できないばかりか、空母を護衛することもできません。
わかりやすくいうと、日米の潜水艦が南シナ海の中国軍基地を包囲した場合、中国は中国軍基地に対して補給ができず、お手上げになるということです。それでも、中国が無理やり基地に補給を強硬した場合、米国の原潜により、ことごとく破壊されてしまいます。
私は、今回の南シナ海からインド洋にかけての海域に、わざわざ日本が潜水艦を追加派遣することを公表したのには、「中国海軍がこれまでとは異なる動きをして戦術の一部が見える可能性」があるというだけではなく、中国海軍に対して、日本の潜水艦が中国側が探知できず自由に航行できること、米軍の原潜の強大な破壊力を示して、海洋戦術・戦略においては、日米に対して中国には到底勝つことはできないことを誇示するためにも公表したのだと思います。
このブログではすでに何度か掲載していますが、実は米軍も原潜の行動を公表していました。これは異例中の異例です。これも何度かこのブログに掲載しています。
米軍はすでに
5月下旬に潜水艦の行動に関して公表しています。潜水艦の行動は、通常どの国も公表しないのでこれは異例ともいえます。
この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて今年5月下旬にマスコミで報道されました。太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。
太平洋艦隊所属でグアム島基地を拠点とする攻撃型潜水艦(SSN)4隻をはじめ、サンディエゴ基地、ハワイ基地を拠点とする戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)など少なくとも合計7隻の潜水艦が5月下旬の時点で西太平洋に展開して、臨戦態勢の航海や訓練を実施しているといいます。
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米バージニア級原潜 |
その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。
無論、当時空母でコロナが発生したという事情もからんでいるでしょう。空母打撃群が水兵のコロナ罹患で出動できない間隙をぬって中国が不穏な動きを見せないように牽制したものと思います。逆に、米軍は空母打撃群でなくても潜水艦隊があれば、中国の動きを牽制できると考えているともいえます。
このように考えると尖閣防衛はこのブログでもすでに述べているように、意外と簡単です。何隻かの潜水艦で、尖閣諸島を包囲して、補給を絶てば良いだけです。中国側は日本の潜水艦を探知できないので、犠牲も殆ど出ないでしょう。犠牲が出ないということで、米軍も加勢しやすいでしょう。米軍もこの海域に原潜を派遣すれば良いということになります。というより、本当はもう日米とも派遣していると思います。軍事気密なので、公表しないだけでしょう。
台湾も同じことです。米国の原潜で台湾を包囲して、上陸する中国軍を攻撃し、それでも上陸した場合には、補給を絶てば良いのです。そうして、日本の潜水艦は、中国側に探知されないので、台湾の周辺を自由に航行して、米国に情報を提供することで貢献できます。
台湾や尖閣では、中国軍はこれら島嶼に兵を上陸させて、確保しその状況を維持しなければなりませんが、日米はそこまでせずとも、補給を絶つだけで、中国軍を阻止できるので、犠牲はほとんど出ません。中国人民解放軍もしくは民兵は、降伏するか餓死するかのいずれの選択肢しかありません。
私自身は、このブログで何度か同じことを主張してきましたが、今日すでに島嶼を奪われたときに、空母打撃群や艦艇や海兵隊等を派遣するという考えは、時代遅れです。それはいたずらに犠牲者を増やすだけです。そんなことをせずとも、犠牲をほとんど出さず中国軍を排除することは十分可能です。
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