2020年12月12日土曜日

【大前研一のニュース時評】中国、ワインで豪州に嫌がらせ 不必要な反ダンピング措置、米国には躊躇するくせに…弱い相手にはためらいなし―【私の論評】弱者に嫌がらせをした結果敵に塩を送る中国共産党(゚д゚)!

 【大前研一のニュース時評】中国、ワインで豪州に嫌がらせ 不必要な反ダンピング措置、米国には躊躇するくせに…弱い相手にはためらいなし

やりたい放題の中国。いずれはブーメランとなって返ってくるのだが…

 豪州のワイン生産の最大手「トレジャリー・ワイン・エステーツ」は、中国向けの出荷を欧米など他市場に振り向ける方針を明らかにした。同社は利益の約3割を中国市場で得ているが、中国商務省の「豪産ワインが不当に安く輸入された」とする反ダンピング(不当廉売)措置に対応したもの。

 反ダンピング関税措置は、輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出が輸入国の国内産業に被害を与えている場合、価格を正常な価格に是正する目的で賦課されるもの。輸入業者は豪産ワイン輸入時に保証金を税関に納める必要がある。トレジャリー社のワインには輸入額の169・3%の保証金率が適用される。

 トレジャリー社の高級銘柄「ペンフォールド」は中国ですごい人気で、割当量も世界の25%を占めている。ダンピングする必要はない。これは中国らしい嫌がらせだ。

高級銘柄「ペンフォールド」

 豪州のワインの輸出先は中国が4割近いシェア。豪州政府の統計によると豪州産ワインの対中輸出額は2019年、過去最高の13億豪ドル(約1000億円)を記録し、中国は世界最大の豪州産ワイン市場となっている。

 しかし、豪州と中国の関係は、豪州政府が5Gネットワークからファーウェイ排除を決めた18年以降、悪化した。今年4月には豪州のスコット・モリソン首相が新型コロナのパンデミック(世界的な大流行)の発生源をめぐって、中国に調査を求めたことでさらに悪くなった。

 豪州産大麦の輸入に80%の関税をかけ、豪州産牛肉の輸入にも制限をかけ、主力をブラジルに変更した。木材の一部についても輸入を停止している。そして今回、ワインに対しても嫌がらせを始めたわけだ。

 中国の嫌がらせというのは、いまに始まったことではない。経済的手段を用いた報復事例はいくつもある。

 10年には、沖縄県の尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突し、船長が逮捕された報復としてレアアースの日本への輸出を規制した。12年にはスカボロ礁で領有権争いをしていたフィリピンのバナナの検疫を厳格化させた。その結果、大量のバナナが廃棄され、北京のスーパーから消えてしまった。

 17年に韓国政府の要請で米軍の新型迎撃ミサイルTHAAD(サード)の配備のためにゴルフ場を提供したロッテ・グループの場合は、中国で展開するロッテストア112店舗のほとんどが防火基準違反の疑いがあるとして閉鎖を命じられた。商品ボイコットも発生し、スーパーマーケット事業など中国進出戦略は失敗に終わった。

 台湾に対しては、今年1月の総統選で蔡英文総統陣営をけん制するため、昨年8月から中国大陸からの個人旅行を停止。中国大陸から台湾には一昨年には100万人を超える個人観光客が訪れたが、中国からの旅行客に頼る台湾の観光業に大打撃となった。

 今回はこともあろうに豪州で最も人気があり、私の好きなワインの1つにもなっている銘柄に意地悪をした。中国というのは、米国に対しては躊躇するくせに、相手が弱いとなると、理不尽な制裁、報復はためらわずに行う国だ。もちろん被害者は輸出国だけでなく中国の消費者なのだが、その声が聞こえないところが中国らしいところだ。

 ■ビジネス・ブレークスルー(BBTch)の番組「大前研一ライブ」から抜粋。

【私の論評】弱者に嫌がらせをした結果敵に塩を送る中国共産党(゚д゚)!

上の大前研一氏の記事にもあるように、中国の嫌がらせは、ブーメランとして中国にかえっていますが、それどころか、結果として敵に塩を送るような結果になっていることもあります。

上の記事にもあるとおり、中国は台湾に対しては、今年1月の総統選で蔡英文総統陣営をけん制するため、昨年8月から中国大陸からの個人旅行を停止しました。中国大陸から台湾には一昨年には100万人を超える個人観光客が訪れたのですが、中国からの旅行客に頼る台湾の観光業に大打撃となりました。

しかし、このことが台湾に大いに幸いしました。最近の研究では、昨年12月あたりの、もっと早い時期からコロナの感染があったのではないかとされています。その時期よりずっと前の8月から台湾には中国から個人客はいませんでした。

さらには、台湾当局は、武漢市が封鎖される前の1月22日に武漢との団体旅行の往来を禁止しました。同24日にはその対象を中国全土に広げ、2月6日には中国全土からの入国を禁止しました。今年の2月の春節の頃には中国のからの渡航者はいない状態となっていました。

台湾には大陸中国の福建省出身者等も多く、特に春節は里帰りで台湾から中国本土に脅すれたり、逆に中国から台湾に大勢の観光客が訪れるのが恒例でした。

今年1月の台湾総統選で蔡英文総統が圧勝しました。国民党の対立候補、韓国瑜氏は観光を含む中国との交流強化を訴えていました。もし、韓氏が当選していれば、春節に中国の観光客が大勢押し寄せ台湾もかなりコロナ感染が拡大していた可能性があります。

台湾のコロナ対策自体は優れたものであり、日本なども見習うべき点もありますが、それにしても、中国が前年の8月から中国客の個人旅行を禁止していなければ、もっとコロナが蔓延しておそれは十分にあります。

台湾でコロナが深刻にならなかったことにより、台湾は中国の「マスク外交」など全く必要がありませんでした。もし深刻になっていたら、中国はその間隙を縫って、「マスク外交」で台湾への浸透を強めたかもしれません。それによって、蔡英文総統の力が弱まり、国民党が息を吹き返す転機となったかもしれません。

コロナ政府対策本部長を務める陳時中氏

幸いそのようなこともなく、現在の台湾は独立を貫き、最近では米国高官が訪れるという状況になっています。台湾としては、おそらく100万人の中国からの観光局を失ったとしても、コロナ禍によって失われる損失よりは、はるかに少ない損失で済んだと思います。

事実台湾で、コロナ禍はほとんど深刻なものにならず、他国のようにロックダウンをしたり、日本のようにGOTOトラベルなどの措置も必要ありません。これでは、中国が嫌がらせをしたつもりでも、結果として台湾に塩を送るような結果になってしまったと思います。

台湾というともう一つ面白いエピソードがあります。上の記事にもあるように、中国は先月27日、豪産ワインに反ダンピング関税を課す方針を発表。これにより豪産ワインは、中国で最大212%の関税対象となっています。

これを受けて豪を支持する米国や台湾などは、豪産ワインの輸入を約束。台湾外交部長(外相)はツイッターに豪との連帯を表明しました。

台湾の立法院(国会)は豪州産赤ワインを200本余り購入しました。游錫堃(ゆうしゃくこん)立法院長(国会議長)が4日、SNS(交流サイト)で明らかにしました。

游氏は、フェイスブックやインスタグラムなどに「オーストラリアが国際社会で人権を擁護したことで中国の経済制裁を受けた」とつづり、「人権を守るオーストラリアを応援しよう」と訴えた。購入したワインは、来賓をもてなすために使われるといいます。

豪州産ワインを手にする游錫堃(ゆうしゃくこん)立法院長

米国家安全保障会議(NSC)も「ホワイトハウスで今週開かれる祝賀会で、豪産ワインが振る舞われる予定だ」と明かし、「中国のワイン愛好家らは気の毒だ、中国政府による豪ワイン醸造業者への高圧的な関税のせいで損をするのだから」とコメントしました。

また19か国の議員らから成る「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」の構成員らも豪への支援を表明し、ニュージーランド産ワインやノルウェー産アクバビット、日本酒から豪産ワインに切り替えるとする人もいました

香港ではツイッターで「#SolidaritywithAustralia(豪との連帯)」がトレンド入り。英国に亡命した民主活動家の羅冠聡(ネイサン・ロー、Nathan Law)氏も「あまり飲まない方だが、私も豪産ワインのボトルを買いに行かないと、という気になっている」と話したそうです。

今後他国への豪州産ワインの輸出が伸び、中国での豪州産ワインはますます少なくなり希少価値があがり、高くなり中国国内の消費者の不利益を招くことになるのではないでしょうか。

中国に尖閣や台湾が中国に奪取されてしまうのではないかという脅威を中国は長年煽ってきました、そのせいでしょうか、日米はこれに備えて戦術・戦略を変え、台湾もこれに追随するようで、中国海軍のロードマップでは今年第2列島線を確保するはずが、台湾、尖閣を含む第一列島線すら確保できていません。

これからも中国が弱い者いじめをすれば、このような結果を招くことになるでしょう。

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