2020年11月30日月曜日

豪首相、中国外務省報道官の偽画像投稿巡り謝罪を要求―【私の論評】人民解放軍や民兵は、台湾や尖閣を確保できないが、それと中国の傍若無人な発言・行動に抗議をしないこととは別問題(゚д゚)!

 豪首相、中国外務省報道官の偽画像投稿巡り謝罪を要求


    11月30日、モリソン豪首相(写真)は、同国軍の兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを
    突きつけているように見える偽の合成画像が中国外務省報道官の趙立堅氏によってツイッターに投稿された
    のを受け、「非常に不快」と批判し、削除を要求していると明らかにした。

 モリソン豪首相は、同国軍の兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを突きつけているように見える偽の合成画像が中国外務省報道官の趙立堅氏によってツイッターに投稿されたのを受け、「非常に不快」と批判し、削除を要求していると明らかにした。 

 中国政府に謝罪を求めていると述べ、豪政府としてツイッターに、30日掲載の同ツイートの削除を要請したと説明した。

 「甚だしく非常識で、いかなる理由でも正当化されない」と強調。「中国政府は恥を知るべきだ。世界の目から見れば地位を落とす行為だ」と続けた。

 豪中関係は、豪政府が新型コロナウイルスの起源に関する国際的な調査を求めて以来、悪化している。 豪軍は先に、アフガニスタンに派遣された軍特殊部隊の兵士25人が非武装の捕虜や民間人ら39人を違法に殺害したとの調査結果を発表。先週末には兵士13人に解雇を通知したと明らかにしていた。

 趙氏は投稿で「豪軍兵士によるアフガン民間人と捕虜の殺害にショックを受けた。われわれは強くこのような行為を非難し、責任を負わせるよう求める」としていた。

 同メッセージは27日に投稿されていたが、偽の画像はその時点ではなかった。
【私の論評】人民解放軍や民兵は、台湾や尖閣を確保できないが、それと中国の傍若無人な発言・行動に抗議をしないこととは別問題(゚д゚)!

モリソン豪首相の中国への抗議は、当然といえば、当然です。もし、厳しく抗議をしなければ、中国は中共の命令で、様々な機会にこのようなフェイク画像を合成して、SNSに投稿することでしょう。ちなみに掲載された合成写真を以下に掲載します。(一部加工しています)


日本の菅総理や政権幹部もこうしたモリソン豪首相の態度を見習うべきでしょう。

尖閣問題も、慰安婦問題も、最初に首相や幹部が厳しい抗議をしていれば、今日のようなことになっていなかった可能性が大です。

最近の例では、河野克俊前統合幕僚長は今月16日、東京都内で講演し、旧民主党の野田佳彦政権を念頭に、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の周辺海域に中国海軍の艦艇が接近した場合は「海上自衛隊の護衛艦は『相手を刺激しないように見えないところにいろ』と(官邸に)いわれた」と明かしました。野田政権が平成24年9月に尖閣諸島を国有化した当時、日中の緊張関係が高まっており、中国側に配慮した措置とみられます。

野田佳彦氏

中国軍の艦艇は通常、中国海警局の巡視船が尖閣周辺を航行する際、尖閣から約90キロ北東の北緯27度線の北側海域に展開します。これに対して、海自の護衛艦は不測の事態に備え、27度線の南側で中国軍艦艇を警戒監視しています。


河野氏は「安倍晋三政権では『何をやっているのか。とにかく見えるところまで出せ』といわれ、方針転換しました。今ではマンツーマンでついている」と語りました。自民党の長島昭久衆院議員のパーティーで明かしました。

野田氏は尖閣で中国に配慮したつもりなのでしょうが、それが今日の度重なる領海審判、領空審判につながっているのは間違いないでしょう。

本来実施すべきだったのは、軍事衝突になることもおそれす護衛艦を前に出すことでした。そうすれば、今日のような有様はなかったかもしれません。

このような腰砕け的な、中国につけこまれるようなことをするのは、民主党(現在の立憲民主党、国民民主党)だけかと思えば、自民党も似たり寄ったりでがっくりきました。

皆さんもご存知のように、今月24日の茂木外相と王騎との会談です。これについては、このブログでもとりあげました。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国外相、あきれた暴言連発 共同記者会見で「日本の漁船が尖閣に侵入」 石平氏「ナメられている。王氏に即刻帰国促すべき」―【私の論評】王毅の傍若無人な暴言は、中共の「国内向け政治メッセージ」(゚д゚)!
王毅

中国の王毅国務委員兼外相が、大暴言を連発しました。24日の日中外相会談後、茂木敏充外相と行った共同記者会見で、沖縄県・尖閣諸島をめぐり、中国の領有権を一方的に主張したのです。両外相は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて制限しているビジネス関係者の往来を11月中に再開することで合意したといいますが、菅義偉政権はこの暴言を放置するのでしょうか。

茂木氏は記者発表で、「尖閣周辺海域に関する日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調しました。

 これに対し、王氏からは、次のような看過できない発言が飛び出した。

「ここで1つの事実を紹介したい。この間、一部の真相が分かっていない日本の漁船が絶えなく釣魚島(=尖閣諸島の中国名)の周辺水域に入っている事態が発生している。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。われわれの立場は明確で、引き続き自国の主権を守っていく。敏感な水域における事態を複雑化させる行動を避けるべきだ」

尖閣諸島は、歴史的にも国際法上も日本固有の領土です。

この傍若無人な王毅の振る舞いの背景には何があるのかをこの記事で分析しましたが、簡単にいうと、これは中国人民解放軍の制服組がときおり実行する、「国内向けブロパガンダ」です。

制服組が時折強硬発言するのは、結局彼らは他国と真正面から戦うと負けることはわかっているのですが、それを表面に出せば、人民や権力闘争の相手方から付け入るすきを与えることになるので、強硬発言をして、彼らの憤怒のマグマを直接浴びることをそらすことが目的です。

現在の中国の戦力は金をかけた分、核兵器なども含めて侮ることはできませんが、核兵器はおいそれと使うことができないし、通常兵器で戦えば、軍事的な弱小国には勝てますが、米露はもとより、海洋戦では日本にも勝てないです。

特に海洋戦においては、日米の潜水艦隊や哨戒力には中国はおよびもつかず、とうていかなわないと自覚しているのです。しかし、それはおくびにも出さず、強硬発言で国内向けプロパガンダを行い、自分たちや習近平政権を守っているというのが実情です。

実際に海洋戦になれば、日米は中国より数段優れた、哨戒能力により空母や艦艇をことごとく撃沈できますが、中国は日本の潜水艦の静寂性や、米国原潜の空母なみの破壊力には勝つことはできません。一方、中国の潜水艦は静寂性からは程遠く、すぐに日米に発見され、日米の潜水艦や日本の対艦ミサイル、米国のステルス機などに撃沈されてしまいます。

他の艦艇や航空機も同じです。台湾や尖閣に人民解放軍や民兵が上陸したとしても、日米の潜水艦隊に包囲されてしまえば、上陸部隊に補給ができず、結局上陸部隊はお手上げになってしまいます。このあたりのことは、なぜか日米のメディアでは報道されません。

潜水艦の行動は、昔から表に出さいないというのが、常識ですが、米軍は今年の5月に太平洋艦隊司令部がインド太平洋地域に新たに潜水艦を7隻派遣していますし、日本では今年の3月に最新鋭艦「たいげい」が進水し、潜水艦22隻体制にすることは周知ですし、これらの事実から日米はすでに海洋戦の戦術・戦略を変えたと認識すべきでしょう。

特に初戦でわざわざ、対艦ミサイル、魚雷などに対して脆弱な空母打撃群や艦艇を派遣して、中国に格好の目標を与えるような馬鹿マネはしないでしょう。初戦は潜水艦隊を派遣して、中国の潜水艦、他の艦艇、ミサイル基地などを破壊した後に必要があれば、空母打撃群派遣するというのが妥当な戦術・戦略です。

尖閣や台湾の守備には、日米とも潜水艦隊だけで十分に対応できるでしょう。何しろ、日米ともこれらの島嶼を確保する必要性などありません。これらを潜水艦艇で包囲し、中国潜水艦、補給船、航空機を近づけないようにすれば良いだけです。これだけなら、犠牲も少なくてすみます。一方、島嶼を確保しなければならない中国にはおびただしい犠牲がでることになります。

このあたりは、このブログでも最近力を入れて何度か解説しているので、興味のある方は是非ご覧になってください。

結局、中国は尖閣諸島や台湾なども、日米の潜水艦隊に阻まれ、これを奪取することは無理なのです。中国海軍のロードマップでは、今年は第二列島線を確保することになっていますが、現実には台湾、尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていません。

しかしこうした現実と、中国の強硬発言にすぐに抗議をしないということは別問題です。やはり、日本も豪州のように、中国が問題発言・行動をした場合には、すぐさま抗議をすべきでしょう。

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