2020年11月13日金曜日

中国「軍民融合」で新領域の軍事力強化か 防衛省分析―【私の論評】中露は中進国の罠からは抜け出せないが、機微な技術の剽窃は遮断すべき(゚д゚)!

 中国「軍民融合」で新領域の軍事力強化か 防衛省分析

防衛省の防衛研究所は中国の軍事動向に関することしの報告書をまとめ、軍と民間企業の協力を促進する「軍民融合」を通じて重要な技術の国産化を急速に進め、サイバーや宇宙など新たな領域での軍事力の強化を図っていると分析しています。


ことしの報告書では、アメリカ軍に対する軍事的な劣勢を覆す鍵は科学技術を核心とする軍事力の強化だと中国が認識していると分析したうえで、先端技術を利用した中国の軍事動向に焦点を当てています。

この中で、中国は軍と民間企業の協力を促進する「軍民融合」を国家戦略に掲げ、民間の技術力を軍事力に反映させるため、軍需産業に参入しやすくなるよう規制を簡略化したり、中国共産党が統一的に指導する専門の組織を設置したりしていると指摘しています。

そのうえで、次世代情報技術やロボットなど、戦略的に重要と位置づける分野の技術について国産化を急速に進め、サイバーや宇宙といった新たな領域での軍事力の強化を図っていると分析しています。

その一方で欧米では、さまざまな手段を用いて国外から技術や人材を獲得しようとする中国の動きに懸念が広がっているとしています。

また、日本の周辺では小型の無人機を飛行させるなどして、安全保障環境に新たな事態を生じさせていると指摘しています。

【私の論評】中露は中進国の罠からは抜け出せないが、機微な技術の剽窃は遮断すべき(゚д゚)!

何年も前から、中国の軍民融合の脅威が確実に押し寄せていました。「軍民融合」により、中国が先進国の科学技術を剽窃していることは、私自身はすでに誰もが知っている普遍的な事実であると思っていたので、最初目にしたときこのニュースは私には衝撃でした。

中国が技術を日本から剽窃しているということを今更ながら、リポートされるという事実に驚いたのです。ただ実際にこのレポートを実際に読んでみると「軍民融合」の最近の状況をレポートしています。このレポートは以下から入手できます。

http://www.nids.mod.go.jp/publication/chinareport/index.html

中国は「製造強国」を目指して、2015年5月に「中国製造2025」計画を発表しました。そこに明記されているいくつかの戦略の中で、最も警戒すべきは「軍民融合戦略」でした。中国はそれ以前からも技術を剽窃していたのはわかったのですが、この時に中国は自らそうしていることをはっきり認めたのです。すなわち、軍事・民間の融合を促進して、製造業の水準を引き上げる戦略です。そして、そのターゲットとして次世代IT、ロボット、新材料、バイオ医薬など、10の重点分野を掲げています。

露骨に、軍事力強化のために、海外の先端技術を導入した民生技術を活用することをうたっていたのです。

当時から炭素繊維や工作機械、パワー半導体など、民生技術でも機微な技術は広範に軍事分野に活用されており、「軍民両用(デュアル・ユース)」の重要性が世界的に高まっていました。例えば、炭素繊維は、ウラン濃縮用の高性能遠心分離機やミサイルの構造材料に不可欠です。そういう中で、中国の場合、海外の先端技術に狙いを定めていたのですから特に警戒すべきだったのです。

海外の先端技術を狙った中国の手段が、対外投資と貿易でした。ターゲットとなる日本や欧米先進国は、まさに守りを固めるのに躍起になっていました。

当時から、資金力に任せた中国企業による外国企業の買収が急増していました。世界のM&A(合併・買収)における中国の存在感は年々大きくなってきていました。その結果、日本や欧米各国は軍事上の観点で、機微な技術が中国に流出することを懸念しなければいけない事態になっていたのです。

そこで、このような事態を安全保障上の脅威と捉えて、各国は相次いで投資規制を強化する動きになっていました。地理的に離れていることから、これまで中国に対する安全保障上の懸念には無頓着だったドイツなど欧州各国でさえそうでした。英国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)では早々に中国に接近したものの、原発へ中国資本が投資したこともあって、懸念が高まり規制強化に動きました。

2016年5月に中国の美的集団がドイツの産業用ロボット・メーカーであるKUKAを買収して実質子会社化するとの発表は、世界に衝撃を与えました。KUKAは世界4大産業用ロボットメーカーの1社でした。

当然、KUKAは欧米各国で軍需向けにもロボットを提供していました。美的集団の傘下に入ってからは、中国での生産能力を4倍に拡大する計画で、中国は一挙にロボット大国になることを目指していました。

そのほかにも、米国の半導体メーカーの買収やドイツの半導体製造装置メーカーの買収など、何とか阻止できた案件もいくつかあったのですが、KUKAのケースで各国の警戒度は一気に高まったのです。その後も、中国による海外企業の買いあさりはとどまることはありませんでした。欧米の工作機械の多数のブランドが中国資本の傘下に次々入ったのです。

日本も機微な技術の流出を阻止しようと、当時、改正外為法が施行されました。それまで無防備だった日本も安全保障上の危機感から、国の安全を損なう恐れが大きい技術分野を規制対象になるように拡大したのです

今後も、中国の攻勢はますます増大すると予想され、先進各国における先端技術を巡るせめぎ合いは一層激しくなるでしょう。

もっと厄介なのは貿易です。先日もこのブログでも掲載したように、中国は輸出管理法を制定したため、先進各国は危機感を抱いています。この法律は12月から施行されます。

輸出管理の歴史を振り返ると、かつての冷戦期に共産圏への技術流出を規制する対共産圏輸出統制委員会(COCOM=ココム)から始まっています。その後、通常兵器関連だけでなく、核、ミサイルなど大量破壊兵器関連の国際的な枠組み(国際輸出管理レジーム)も整備されました。

これらの国際的レジームは、先進国が保有する高度な製品、技術が北朝鮮、イランなどの懸念国に渡ると、国際的な脅威になることから、これを未然に防止しようするものです。当然、メンバーは先進国を中心とした有志連合で、各国で輸出管理を実施してきました。

しかしメンバー国以外であっても、経済発展著しいアジアの国々でも技術進歩の結果、高度な製品を生産できるようになってきました。そうすると、これらの国々も規制に協力しなければ規制の実効性が確保できないことになりました。中国はまさにその代表格です。

中国が世界の安全保障に協力すること自体は歓迎されるべきことかもしれません。輸出管理法という法制度を整備することは大国としての責任とも言えます。

問題はその法制度がどう運用されるかです。運用次第で軍民融合戦略の手段にもなり得るのです。

現に、法案の目的には、「平和と安全」という安全保障の輸出管理本来の目的以外に、「産業の競争力」「技術の発展」といった産業政策的な要素も規定されています。

最も懸念されるのは、中国から輸出しようとすると、中国当局から輸出審査において企業秘密にあたる技術情報の提出を要求されることです。

例えば、日本からキーコンポーネントを中国に輸出して、これを中国で組み込んだ製品を第三国に輸出するケースを考えてみます。

中国での輸出審査の際に製品が機微かどうか判定するのに必要だとして、組み込んだ日本製キーコンポーネントの技術情報を要求されます。その結果、関連する中国企業にその技術情報が流出します。

日本等の先進国は11月中に、中国で開発している技術と技術者を日本に戻す必要があります。 12月1日の輸出管理法の施行により、技術者が日本に帰ってこられなくなる可能性が高いです。 もう、日本をはじめとする先進国の企業は、中国では研究開発はできません。それに、中国で研究開発を実行しても無意味になるかもしれません。

なぜなら、このブログでも最近述べたように、中国はすでに中進国の罠にはまりつつあるからです。中進国の罠とは、開発経済学における考え方です。定義に揺らぎはあるものの、新興国(途上国)の経済成長が進み、1人当たり所得が1万ドル(年収100万円程度)に達したあたりから、成長が鈍化・低迷することをいいます。それが、中国との今後の付き合い方に参考になると思います。当該記事のリンクを以下に掲載します。
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習近平
経済的な自由を確保するためには、「民主化」、「経済と政治の分離」、「法治国家化」が不可欠です。これがなければ、経済的な自由は確保できません。

逆にこれが保証されれば、何が起こるかといえば、経済的な中間層が多数輩出することになります。この中間層が、自由に社会・経済的活動を行い、社会に様々なイノベーションが起こることになります。

イノベーションというと、民間企業が新製品やサービスを生み出すことのみを考えがちですが、無論それだけではありません。様々な分野にイノベーションがあり、技術的イノベーションも含めてすべては社会を変革するものです。社会に変革をもたらさないイノベーションは失敗であり、イノベーションとは呼べません。改良・改善、もしくは単なる発明品や、珍奇な思考の集まりにすぎません。

             イノベーションの主体は企業だけではなく、社会のあらゆる組織によるもの
   ドラッカー氏は企業を例にとっただけのこと

そうしてこの真の意味でのイノベーションが富を生み出し、さらに多数の中間層を輩出し、これらがまた自由に社会経済活動をすることにより、イノベーションを起こすという好循環ができることになります。

この好循環を最初に獲得したのが、西欧であり、その後日本などの国々も獲得し、「中進国の罠」から抜け出たのです。そうしなければ、経済力をつけることとができず、それは国力や軍事力が他国、特に最初にそれを成し遂げた英国に比較して弱くなることを意味しました。

中国は 「民主化」、「経済と政治の分離」、「法治国家化」をすることはないでしょう。なぜなら、それを実施してしまえば、中国共産党が統治の正当性を失い、少なくと共産党の一党独裁はできなくなるからです。

その中国が、社会を変革しようとしなければ、どうなるのかはもうすでに目に見えています。それは、ロシアのようになるということです。

このロシア、第二次世界大戦中直後の東ドイツから大量の技術者などを連れてきて様々な研究開発を行わせ、その後は現在の中国のように世界中から科学技術を剽窃して、一時はGDPは世界第二位になり、軍事技術も、軍事力、宇宙開発でも米国に並んでトップクラスになりました。

ところが、現在の中国のように一握りのノーメンクラトゥーラと呼ばれる富裕層は生まれたものの、多数の中間層が形成されることはなく、したがって社会のあらゆるところでイノベーションが起こるということはなく、やがて経済が停滞し結局ソ連は崩壊しました。

その後のロシアは、GDPは日本国内でいえば、東京都、国でいえば韓国なみです。ただし、現在のロシアは旧ソ連の核兵器の大部分と、軍事技術を継承しているので、侮ることはできませんが、それにしても、現在のロシアのできることは、経済的にも軍事的にも限定さたものになりました。

中国もいずれロシアのようになるでしょう。無論、中国とロシアは様々な点で異なっているので、すべてロシアのようになるとはいえないかもしれませんが、しかしGDPはロシアのように1万ドルを若干超えたくらいで、停滞することになるでしょう。

そうなると、現在のロシアのように軍事的にも経済的にもあまり大きな影響力を行使できなくなるでしょう。できたとしても、周辺の軍事的にも経済的にも弱い国々の一部を併合するくらいでしょう。

中国も現在のロシアのような存在になるでしょう、ただし個人あたりのGDPが1万ドル(年間100万円)といっても、14億人もの人口がいますから、現在のロシアよりは、存在感を示すことができるかもしれません。

  ただし、10年から遅くても20年後には、中国も現在のロシアのように「魅力的市場ではない」と誰の目にも映るようになるでしょう。一帯一路もかつて帝国主義的だった、西欧が似たようなことを実施して、結局失敗しています。多数の植民地を得れば、儲けられると思い込むのは幻想だったことははっきりしました。

中国が一帯一路で貧乏国の港を接収したとしても、その港で儲かることなど考えられません。なぜなら、元々儲からない国の港を接収しても、メンテナンスの費用がかかるだけであり、ほとんど収益などないからです。

もっといえば、中国が南シナ海の環礁をうめたてて軍事基地をつくっても、何の益にもなりません。それを維持するための補給や、海水に侵食され続ける陸地をメンテナンスするのに膨大な費用がかかるだけです。中国にとっては象徴的な意味しかありません。

中国はこのような壮大な無駄を繰り返しつつ、徐々に経済的に衰えていくことになるでしょう。米国による制裁はそれを若干速めるだけです。

ただ、そうはいっても中露はこれからも危険な存在であることには変わりありません。やはり、機微な技術が剽窃されることは遮断すべきです。

ただし、中露が「民主化」、「政治と経済の分離」、「法治国家化」をすれば、「中進国の罠」から這い出て、急速に経済発展することになります。先進国は、過去にはそれを期待したのでしょうが、見事に裏切られ続けました。

習近平やプーチンがリーダーでいる限りでは、そのようなことにはなりそうもありません。見極めはそんなに難しいことではないです。まだまだ中露で本格的にビジネスをしたり、中露向けに技術開発等をするような時期ではありません。

結論を言うと、中国がこれからも経済発展を続け、米国等の先進国を脅かし続けるということはないということです。ただ、それにしても危険なことには変わりなく、機微な技術が剽窃されることは遮断すべきということです。

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