2020年10月19日月曜日

中国、輸出管理法が成立 12月施行 米の禁輸措置に対抗可能 日本企業にも影響―【私の論評】日本企業を含む先進国の企業は、中国で研究開発はできなくなった(゚д゚)!

 中国、輸出管理法が成立 12月施行 米の禁輸措置に対抗可能 日本企業にも影響



 中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は17日、ハイテク製品の輸出管理を強化する輸出管理法案を可決、同法が成立した。12月1日に施行する。国家の安全を損ねると判断した海外企業をリスト化し、輸出を禁止できるようにする。中国国営中央テレビが伝えた。

  米国が通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)など中国企業への禁輸措置を強める中、同様の対抗措置が可能となる。中央テレビなどによると、中国からの輸入品を加工して第三国に輸出する企業も制裁対象になるため、実際に中国が米国企業をリストに載せれば、米中対立が激化するだけでなく、中国からモノを輸入する日本企業にも大きな影響を与えかねない。

  成立した輸出管理法では、管理を強化する技術や品目を定めた上で、中国の輸出企業に対し、最終的な顧客企業や使い道に関する証明書の提出を求める。その上で当局が「国家の安全への影響」などの観点から輸出許可を判断する。また、「国家の安全に危害を及ぼす恐れがある」などと判断した具体的な顧客企業を特定し、リスト化。制裁措置として輸出を禁止・制限する。

  米国は昨年5月以降、安全保障や外交利益に反する事業者を記す「エンティティーリスト」にファーウェイを登録。その後も中国企業を記載し続けている。こうした動きを念頭に、同法では「いかなる国や地域でも、輸出規制を乱用して中国の安全と利益を害する場合、対等の措置をとることができる」と明記した。 

 米国への対抗措置では、中国商務省が今年9月、国家の安全や中国企業の利益を損ねる「信頼できない企業」をリスト化し、輸出入や投資などを禁止・制限する新制度を公表、即日施行している。ただ、今回の輸出管理法では、中国の技術や製品を使用・輸入する最終的な顧客企業だけではなく、中国から輸入した原材料などを加工し、部品などの中間財を外国企業に「再輸出」する企業も含まれる。米国の対中制裁に同調した企業なども制裁の対象になるとの懸念も出ており、日本や世界各国の企業に打撃を与える可能性がある。【小倉祥徳】

【私の論評】日本企業を含む先進国の企業は、中国で研究開発はできなくなった(゚д゚)!

輸出管理法に関しては、今回突然できたものではありません。中国は2017年6月に輸出管理法の草案を公表しました。

日本の産業界は、当時施行されれば貿易・投資環境が著しく阻害されると警戒し、安全保障貿易情報センターや日本貿易会、経団連などが、憂慮する意見書を中国政府に提出しました。具体的には、どんな事態が懸念されたのでしょうか。

輸出管理法は安全保障などの観点で輸出を規制するものです。海外に流出した先端技術や製品の不当な兵器転用は許されないとされました。日本を含む各国にも輸出管理制度があり、法整備自体は当然の責務です。

            日本にも輸出管理制度がある

問題は、他国とは異なる憂慮すべき内容を含み、多数の外国企業に広範な規制をかけようとしている点にありました。

例えば、中国当局が指定する規制品目を一定以上使った製品について、日本などから第三国へと輸出する際に中国政府の許可を求めるという「再輸出規制」が盛り込まれていました。

中国から輸入した部材を日本国内で加工し、アジアや欧米に輸出するケースを考えればわかりやすいです。これを中国の許可制にするというのです。

日本の輸出管理制度に屋上屋を架すようなものです。これを口実に中国当局が日本の生産現場への立ち入りを求めたり、その際に技術が中国に流れたりしないかと、産業界が心配するのも無理はありませんでした。


上のポイントなどをみている限りでは、表面上、日本で言う外為法に似てはいますが、その実国外の組織や個人も法的責任追及の対象との規定、或いは国家等に報復措置をとることも可能な条文も記載してあります。「再輸出規制」「みなし輸出規制」については曖昧なままです。更に問題はその運用、「輸出管理リスト」や「規制リスト(エンティティリスト)」の中身を注視する必要あります。

これについては、以下のサイトが参考になります。


加藤勝信官房長官は19日午前の記者会見で、中国政府が安全保障の観点から輸出管理を厳しくする輸出管理法が12月1日から施行されることに関し「現時点で法律に基づき、どのような運用がなされるかは明らかではない。政府としては、日本企業の経済活動に影響を与える可能性を含め、高い関心を持っている」と述べました。 

19日記者会見する加藤官房長官

その上で「同法に基づく国家の安全利益を理由とする規制対象品目の範囲、域外適用の可能性など、今後の運用を注視していく」とも語りました。

以下に中国の輸出管理法施行にともなう留意点を掲載します。

留意点〉
 
(1)施行日が本年 12 月 1 日となったため、対応を急ぐ必要 

○準備期間を十分確保するよう意見書では要請してきたが、結局、公布から 1 か 月半足らずでの施行となったため、対応準備を急ぐ必要。 
○規制対象となる管理品目や、下記規則がそれまでに公表されるはずだが、直前にな る可能性も。 

(2)輸出・投資環境の激変であり、経済活動の大前提が崩れる可能性 

○これまで規制がなく自由に輸出ができていた多くの製品・技術(ワッセナー品目や 独自品目)が輸出許可対象となる点だけでも激変。 
○これに、再輸出規制、みなし輸出規制が加われば、中国を製造加工拠点、研究拠点 とする貿易・投資の大前提が崩れる可能性。

 (3)輸出管理法は、「信頼できないエンティティ・リスト」「輸出禁止・輸出制限技術リ スト」と一体で捉える必要

 ○既に 8~9 月に施行されている「信頼できないエンティティ・リスト」「輸出禁止・ 輸出制限技術リスト」は、根拠法は異なるものの、輸出管理法と密接に絡んでお り、一体ものとして捉える必要(下位規則でそれらも反映される可能性)。 ※ 両リストについては、以下の CISTEC 解説資料を参照。 
◎中国における「信頼できないエンティティ・リスト」、「輸出禁止・輸出制限技術 リスト」の施行について(2020.9.23) https://www.cistec.or.jp/service/uschina/30-20200923.pdf 

(4)踏み絵・股裂き局面に直面するおそれ 
 
○本来、中国輸出管理法草案は、ワッセナー合意に準拠する国際的義務の履行が主な 趣旨だったはずだが、米中緊張を反映して、国家安全法制、報復手段の整備の色彩が色濃くなった。
 ○米国の Entity List や制裁により取引停止した場合、新たに規定された報復条項や 輸出禁止先リスト掲載、「信頼できないエンティティ・リスト」掲載等によって、 制裁を受ける可能性。 

(5)国家安全、競争優位性の観点から対抗的、制裁的、エコノミック・ステイトクラフ ト的運用がなされる懸念

 ○中国と日本、米国間で安全保障上の利害は必ずしも一致していないため、政治的、 軍事的摩擦、緊張が高まれば、日本向け輸出や最終需要者が問題とされる可能性 
○輸出許可申請時に技術開示要求や、審査期間が見通せなくなる可能性 
○外国企業が中国内で共同開発した技術が輸出できなくなる可能性 

(6)国家安全法制が外商投資促進策をオーバライドしつつあり、対中ビジネスの態様に 応じた課題・リスクの抽出と対応の検討が必要

 ○2014 年以降、国家安全法制が次々と整備され、国家安全法、国家情報法、サイバーセ キュリティ法等、外商投資促進策とは相反する規制が打ち出され影響を及ぼすことと なった。

 ○今年に入って、香港国家安全維持法(中国本土にも適用)、「信頼できないエンティテ ィリスト」制度、国家安全法制的条項や域外適用がある中国輸出管理法など、外国企 業を著しく不安、不安定にさせる動きが目立っている。7 月に公表されたデータセキ ュリティ法草案もまた、域外適用による責任追及が強調されており、対中ビジネスに 大きな影響を与え得る。

 ○今回の中国輸出管理法の当初草案が 2017 年 6 月に公開されて以降、日米欧産業界が連 名で総意として、懸念点に関する照会、規制内容の明確化、異質な制度の削除と国際 的制度運用への準拠等を繰り返し訴えてきたが、ほとんど顧みられることがないまま に成立し、施行されようとしている。提起してきた懸念は、いずれも中国の貿易・投 資環境に著しい影響を及ぼすものであり、外商投資促進の方向性と相容れないものも 少なくない。これらの中国側の反応をみると、国家安全法制整備のドライブが外商投 資促進策をオーバーライドしつつあることを感じざるを得ない。

 ○一連の国際情勢や中国側の姿勢等を踏まえて、各企業がそれぞれの対中ビジネスの態 様に応じて、課題とリスクの抽出と、今後の短期的、中長期的対応を検討することが 必要と思われる。


留意点をさらにざっくりと簡潔にまとめておくと、日本企業は11月中に、中国で開発している技術と技術者を日本に戻す必要があります。 12月1日の輸出管理法の施行により、技術者が日本に帰ってこられなくなる可能性が高いです。 もう、日本をはじめとする先進国の企業は、中国では研究開発はできません。

それにしても、中国はさらに米国が、中国に対してドル元交換禁止や、中国所有の米国債の無効化などの措置をさらに実行しやすくしたようです。恐ろしくないのでしょうか。

再び、毛沢東時代の経済に戻るのは怖くないのでしょうか。そうなれば、さすがに共産党幹部も富裕層も、習近平政権を支持しなくなるでしょう。

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