衆院本会議場 |
衆院の解散について明確に記されているのは日本国憲法の第69条だ。「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と定められている。
この憲法を読むと、解散は首相の専権事項というよりも、不信任案が可決し、追い込まれた形でのみ解散ができることになっている。首相自身が時機をうかがって、解散権を行使することにはなっていない。
首相自身が解散権を行使する根拠とされるのが憲法第7条である。第7条では「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」と定められ、この「国事に関する行為」の中に「衆院を解散すること」が掲げられているのだ。解散の際に「7条解散」などと称されるのは、こうした解散権について曖昧な憲法に由来する。日本国憲法の改正が必要なのは、首相の解散権が曖昧な点にも求められるといってよい。
憲法上、さまざまな解釈があるのは事実だが、現実には、時の首相が衆院の解散を決断する。戦後、自らの手で解散の時期を定められず衆院議員の任期満了選挙に追い込まれたのは、三木武夫首相だけである。当時は中選挙区制で派閥の領袖(りょうしゅう)の影響力が現在とは比較にならぬほど大きかった時代だ。三木首相は派閥の領袖たちの同意を得られずに解散することができなかった。
首相たるもの、解散を自らの手で定められぬとあっては恥だとする文化が存在する。現在の衆院議員の任期は来年の10月。必ず、任期の満了前に菅首相は解散を仕掛けるだろう。多くの衆院議員が関心を寄せているのは、いつ解散が行われるかだ。これは菅首相以外の誰にも分からない。
だが、菅首相がこの選挙を乗り切れなければ菅内閣は瓦解(がかい)し、自民党は弱体化するだろう。数合わせに終始する野党は、目の前の内閣を打倒することに関心を寄せるのみで、自らの具体的な政権構想を提示するには至っていない。仮に自民党が大敗し、菅内閣が崩壊すれば、日本政治は混沌(こんとん)状態に陥るだろう。
大阪都構想を問う住民投票、連立内閣を組む公明党の意向、9月の自民党総裁選…。解散を遅らせ、全ての問題を一気に解決したいとの気持ちは理解できる。だが、一度下がり始めた支持率を戻すのは困難なことも事実だ。
菅首相には早期解散を決断していただき、長期政権への地盤を築き上げていただきたい。国難の時代、野合する野党が跋扈(ばっこ)するのは日本の悲劇に他ならない。 =おわり
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。
【私の論評】安倍政権が、金融政策をセオリー通りに実行できるようにし、菅政権が財政政策をセオリー通りにできるようにすれば、日本は盤石で菅政権は安定(゚д゚)!
私自身は、ブログ冒頭の記事のように菅首相が早期解散に踏み切ることには大賛成です。現在菅政権の支持率は70%と高いです。健在解散総選挙をすれば、余程の番狂わせでもない限り、大勝利でしょう。
そうすれば、確かに菅政権は、長期政権への地盤を築き上げることになるでしょう。ただ、それだけでは不十分です。それに加えて、安倍政権にもみられたように、経済や雇用を良くすることです。
これができない限り、菅罫線は安定政権にはなりえません。安倍政権が長期安定政権になりえたのは、財政政策は増税などで結局失敗しましたが、日銀の金融政策を転換し、大規模な金融緩和政策に踏切り、継続したことによる、雇用の劇的な改善です。
これなくして、憲法論議や安保問題のみに取り組んでいたとしたら、第一次安倍内閣のように第二次安倍内閣も短命に終わったことでしょう。
なぜ、そのようなことがいえるかといえば、国民にとっては、憲法や安保も大事なのですが、まずは日々の暮らし向きが安定しなければ、政権を支持することはできないということがあります。
特に、その中でも雇用は重要です。まずは、雇用がある程度安定していなければ憲法論議、安保論議ということにはならないのです。
安倍晋三氏は、総理大臣になる前から、アベノミックスを強く打ち出しました。その内容は、皆さんご存知のように、積極財政、金融緩和政策、成長戦略です。積極財政は二度にわたる増税で結局はうまくいかず、成長戦略もほとんど手つかずでしたが、それでも金融緩和は継続したため、雇用が劇的に改善しました。これこそが、安倍政権の長期化の原動力だったと言って良いです。
金融政策に関しては、日銀がイールドカープコントロールを実行するようになってから、抑制的な緩和に転じましたが、それでも緩和を継続していたので、雇用はかなり改善されました。
そうして、何よりもコロナの第二次補正予算のときに、政府と日銀がタッグを組み、政府が国債を発行し、日銀がそれを全額買い取る方式を実行して、補正予算は他国に比較しても遜色がないというか、かなりの対策を打つことができ、大成功でした。これで、当初の日本のコロナ対策は「世界に類例のない規模の経済対策」となり、合格点をつけられる状況になりました。
さらに、日本のマスコミは不安を煽り、日本のコロナ対策が失敗したとの印象操作をしていましたが、日本のコロナの感染者数や死者数は桁違いに少なく、世界の中では成功した部類ですし、しかも人口が1億人を超える国家としては、最も成功しています。
今後も日銀・政府の連合軍は、危機的状況における経済政策にも用いられる枠組みとなる可能性が出てきました。これこそが、安倍政権の貴重なレガシーといえます。
安倍晋三氏が、金融政策をセオリー通りに実行できるようにし、菅氏が次の段階で、財政政策をセオリー通りにできるようにすれば、日本は安泰です。日本経済は最近安定傾向ですが、それにしても未だに韓国よりも経済成長率が低いとか、一人あたりのGDPが韓国並というような、ありえない状況(2019年、韓国は2%成長、日本は1%以下になる見込み)を改善できると思います。
この緊縮財政の転換を実現すれば、菅政権は長期政権になるでしょう。ただし、菅氏の年齢は71歳であり、安倍総理の年齢は65歳ということもあり、安倍政権のような長期政権にはならないでしょうが、それにしても一期で終わりということではなく、それ以上の長期になる可能性が大です。
具体的には、菅政権が長期政権を目指すというのなら、まずやるべきことは消費税減税でしょう。持続化給付金では、最近詐欺が横行していますが、消費税減税では詐欺が横行することもなく、役所もほとんど何もせずに、対策を打つことができます。
菅政権は、いまのところ携帯電話の通信料引き下げなどの規制緩和に関する政策を打ち出してていますが、規制見直しを実現するには、経済全体の安定成長そして雇用の機会を増やして世論の支持を得なければ、大きな抵抗に直面して実現が難しくなります。
菅政権が、規制緩和をスムーズに実現するために、当面は、コロナ禍の後の経済状況をしっかり立て直して、2%インフレを実現させて経済活動正常化を最優先にすべきです。
このため、菅政権が長期政権になるかどうかは、今後繰り出す政策の優先順位、そして繰り出すタイミングや順番が重要でしす。仮に経済安定化政策が不十分にしか行われず失業率が高止まる経済状況が長期化すれば、世論の支持を失い政権基盤が弱まるので、政治的な抵抗によって目指す改革の実現が困難になります。
菅政権が、優先すべき政策の順番を間違えたり、財政政策を柔軟に行使せず経済安定化政策が不十分に留まれば、大手メディアや多くの政治家の背後にいる権益者の抵抗がより強まり、そうした中で改革を断行すると政権基盤が大きく揺らぐでしょう。これが、改革を志す菅政権が抱えるリスクシナリオです。
やはり、菅総理は、安倍政権の政策継続と、財政政策をマクロ経済的にセオリー通りにできるようにすること(これも立派な規制改革)を公約として、選挙に打っでて、大勝利しその後にまずは経済を良くすることに専念すべきです。そのようにして、盤石な基盤を固めた上で、様々な改革に取り組んでいくべきです。
このため、菅政権が長期政権になるかどうかは、今後繰り出す政策の優先順位、そして繰り出すタイミングや順番が重要でしす。仮に経済安定化政策が不十分にしか行われず失業率が高止まる経済状況が長期化すれば、世論の支持を失い政権基盤が弱まるので、政治的な抵抗によって目指す改革の実現が困難になります。
菅政権が、優先すべき政策の順番を間違えたり、財政政策を柔軟に行使せず経済安定化政策が不十分に留まれば、大手メディアや多くの政治家の背後にいる権益者の抵抗がより強まり、そうした中で改革を断行すると政権基盤が大きく揺らぐでしょう。これが、改革を志す菅政権が抱えるリスクシナリオです。
やはり、菅総理は、安倍政権の政策継続と、財政政策をマクロ経済的にセオリー通りにできるようにすること(これも立派な規制改革)を公約として、選挙に打っでて、大勝利しその後にまずは経済を良くすることに専念すべきです。そのようにして、盤石な基盤を固めた上で、様々な改革に取り組んでいくべきです。
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