トランプ氏、コロナ感染は「逆風」か「追い風」か 最先端「抗体カクテル療法」実施、軽症&早期回復なら大逆転再選も
マスク姿でホワイトハウスを出るトランプ大統領 |
「これから病院に行く。私は元気だと思うが、念のための措置だ」
トランプ氏は2日、ツイッターに動画を投稿、健在ぶりを強調した。
スーツにマスク姿でホワイトハウスの庭に駐機した大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に歩いて乗り込み、ウォルター・リード国立軍事医療センターに入院。予防的措置としており、数日間、同施設内で執務に当たる。
CNNは、トランプ氏に2日朝から発熱の症状があると報じた。同日昼の電話会合に出席せず、マイク・ペンス副大統領(61)が代わりを務めた。
ホワイトハウスはトランプ氏の同日午後の状態について「倦怠感がある」とする専属医の記録を公表。米製薬企業リジェネロンが開発し、臨床試験中の人工的な抗体による薬の投与を受けていると明らかにした。
リジェネロン社は、2つの抗体を組み合わせた「抗体カクテル療法」の臨床試験で、患者のウイルス量が減り、症状が軽減されたとの結果を発表している。
西武学園医学技術専門学校東京校校長で医学博士の中原英臣氏は、「抗体カクテル療法は、2つのモノクローナル抗体を組み合わせて用いる治療法だ。1つの抗体よりも2つを組み合わせた方が治療効果があると見込まれている。米国では最近認められた治療法で、最先端の治療の一つを利用するということだろう」と解説する。
最大の関心事が1カ月後の大統領選への影響だ。トランプ氏の選対本部は2日、11月の大統領選に向け計画している集会やイベントはオンラインで実施するか延期すると発表した。
これに対し、9月29日の第1回候補者討論会でトランプ氏と激論を交わした民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)は2日、検査を受けた結果、陰性だったと明らかにした。
拓殖大海外事情研究所の川上高司教授は、トランプ氏の容体について「重症化や死亡といった万一の事態も想定しうる。その場合、ペンス副大統領が大統領候補になり、副大統領候補を再度選出するため共和党大会が開催されるが、間に合うか分からない」と指摘する。
トランプ陣営にとって危機的な状況に陥ったことは間違いないが、トランプ氏が軽症で早期に回復した場合は、別のシナリオも浮上する。
「トランプ氏が体力的に回復して、健康な姿を見せることができれば、国民や共和党員の支持を集めるだろう。バイデン氏がコロナ対策の追撃をためらうようなことがあれば、トランプ氏が有利になることも考えられる」と川上氏は語る。
バイデン氏は2日、激戦州の一つ、中西部ミシガン州のイベントに参加し、トランプ夫妻の早期回復を祈っていると表明した。バイデン陣営は、トランプ氏を攻撃するネガティブキャンペーンも取りやめた。
米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏は、トランプ氏の入院が、かえって存在感を高めるのではないかと強調する。
「トランプ氏が激戦区を訪れることができないのは確かに痛いが、経済では2日に発表された雇用統計でも、失業率が7・9%と5カ月連続で改善しているという実績もある。民主党やメディアに攻撃され続けてきたトランプ氏だが、今回のコロナ感染によって、『もう4年続けてもらわないと困る』と国民が目を覚ますことになるだろう。メディアの報道もトランプ氏の容体に時間を割いており、バイデン氏が何かを発言したところで国民には響かない」
【私の論評】トランプが2週間の隔離プロセスが終了直後の第二回討論会に出られれば、完璧な「オクトーバーサプライズ」になる(゚д゚)!
米国主要メディアは火曜日の夜に行われた討論会を「史上最悪の討論会」などとトランプ大統領をこき下ろして報道していますが、日本のメディアもそれを鵜呑みにして一緒にこき下ろして報道していて滑稽です。
米メディアがトランプ氏をこき下ろしている理由は次回の討論会までに討論会のルールを変更しようという魂胆があるからです。そうしないとバイデン氏が残り2回も討論会を生き残れないからです。
討論会でのバイデン |
そのようなことも理解せずに日本のメディアはそのまま米メディアの翻訳して報道していて本当に情けない限りです。何やら司会者が討論者のマイクの電源を切れるような「サイレント・ボタン」を設置するのはどうか?などといった話も出てきています。
そんな機能が司会者側に設置されれば、機関銃のように喋れるトランプ大統領には不利になります。バイデン氏は討論の途中、やはり単語が出にくい場面がありました。やはり認知症の疑いがあるのではないかと私は感じました。
NBCの人気ドラマ「The Blacklist ブラックリスト」(日本ではNetflixでみられます)に出てきたモサドのエージェントでFBIに潜入したサマルという捜査官が任務中の事故で血管性認知症に冒されて失語症や記憶を失い始めるシーンがありましたが、あのようなな感じでした。
サマル・ナヴァービ役のモズハン・マーノ |
ホワイトハウスはフロリダ州での集会など大統領が2日計画していた政治イベントをキャンセルしました。トランプ氏の隔離が続くことから、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ネバダなど重要州への訪問を含む今後数日の予定も中止されるでしょう。
集会に姿を見せ有権者と触れ合うことで、資金を集めるとともに支持者の熱狂をあおるのがトランプ氏のスタイルです。また、選挙戦の最終盤で焦点を新型コロナから移し、最高裁判事指名や景気回復、暴動などに向けたい考えでした。しかし今や、今後数週間の話題はトランプ氏の健康状態に集中するでしょう。
得意の政治集会や、選挙の焦点をずらす作戦が不可能ならば、民主党候補バイデン氏の世論調査でのリードを覆すのは難しくなる公算も大きいです。
ただ、トランプ氏の陽性判定のわずか72時間程度前に討論を行っているバイデン氏も、自主隔離に入るかどうかを決めなければならないでしょう。バイデン氏陣営は今のところトランプ氏の感染についてコメントしていないですが、対立候補の病気を喜んでいるような様子は決して見せずにトランプ氏の新型コロナ対応への批判を続けるという適度な姿勢を保つことが必要になります。
集会に姿を見せ有権者と触れ合うことで、資金を集めるとともに支持者の熱狂をあおるのがトランプ氏のスタイルです。また、選挙戦の最終盤で焦点を新型コロナから移し、最高裁判事指名や景気回復、暴動などに向けたい考えでした。しかし今や、今後数週間の話題はトランプ氏の健康状態に集中するでしょう。
得意の政治集会や、選挙の焦点をずらす作戦が不可能ならば、民主党候補バイデン氏の世論調査でのリードを覆すのは難しくなる公算も大きいです。
ただ、トランプ氏の陽性判定のわずか72時間程度前に討論を行っているバイデン氏も、自主隔離に入るかどうかを決めなければならないでしょう。バイデン氏陣営は今のところトランプ氏の感染についてコメントしていないですが、対立候補の病気を喜んでいるような様子は決して見せずにトランプ氏の新型コロナ対応への批判を続けるという適度な姿勢を保つことが必要になります。
(1)症状の重さ
(2)回復の早さ
症状が重ければ、現職の大統領としての実務が続けられなくなります。ホワイトハウスというかなり厳重に感染対策が行われているはずの場所で、側近に続いて大統領夫妻が感染したとなれば、ホワイトハウスの統治機能そのものに大きな疑問符がつきます。
これまでトランプ氏のコロナ政策を批判してきた野党・民主党は、ここぞとばかりに、『自業自得』だと批判の声を高めることが予想され、トランプ支持者から見てもトランプ氏がこれまで主張してきたことの信ぴょう性が崩れることになります。ただ、その一方で重症化すれば同情の声もあがり、病気の人への批判はやりづらくなるという面もあります。
一方で、症状が治まって比較的回復も早かった場合は、逆にトランプ氏に『有利』に働く可能性もあります。
支持者らはトランプ氏自身が言っていたように「やはりコロナは大したことなく、大統領は強い人だ」と再認識することになりますし、選挙集会なども予定通り行われれば、トランプにとっては、自分はコロナから回復した「強い指導者」であるとアピールする場となるので、追い風になる可能性もあります。
米国で開催されたコロナパーティー |
さらに、トランプ氏の容態が良かろうが、悪かろうが、トランプ支持派にはかなりの危機感が芽生えたと思います。共和党内も、トランプ支持で結束を固めることになるでしょう。米国内の保守派もそうなるでしょう。
そういう意味では、今回の感染判明が一方的にトランプに不利になるわけではありません。今後の最大の注目点はトランプ氏が重症化するか、比較的早く回復するかというところです。
そういう意味では、今回の感染判明が一方的にトランプに不利になるわけではありません。今後の最大の注目点はトランプ氏が重症化するか、比較的早く回復するかというところです。
次に予定されている二回目の大統領候補者の討論会は10月15日ですからちょうどトランプ大統領の2週間の隔離プロセスが終了するときです。なんというタイミングなのでしょう。しかも討論会の舞台をトランプ大統領の第2の庭であるフロリダ州に変更したのは6月ごろでした。
このタイミングで、トランプ氏が、二回目の討論会に出ることができれば、トランプ氏にとっては、かなり有利な展開になります。それにしても、まるで最初から図ったようなタイミングです。それにトランプ氏としても、多少体調が悪くても、他者に感染させる可能性がなければ、無理をしてでも出るでしょう。
米国では選挙の直前に驚くべきことが起きて選挙情勢を大きくひっくり返すことを「オクトーバーサプライズ」と言いますが、まさに文字通り、10月に入ったばかりでの感染確認は、最大のオクトーバーサプライズになったと言えるかもしれません。
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