左から細谷雄一氏、ジャック・アタリ氏、エドワード・ルトワック氏 |
令和2(2020)年、新型コロナウイルス禍が混沌(こんとん)に陥れた世界はこの先、どこへ向かうのだろうか。産経新聞はフランスの経済学者で欧州を代表する知識人のジャック・アタリ氏(77)と戦略論研究で世界的権威の米歴史学者、エドワード・ルトワック氏(78)、国際政治学者の細谷雄一氏(49)によるオンライン鼎談(ていだん)を開催し、世界と日本がとるべき針路を語ってもらった。3氏は、民主主義を守るためにも、加速する変革に積極的に対応していく姿勢が必要だと説いた。
<3氏が語った「21世紀のキーワード」を読む>
鼎談は7日に行われ、産経新聞の井口文彦執行役員兼東京編集局長が司会を務めた。アタリ、ルトワック、細谷の3氏は5月に、コロナ禍の影響を識者が語る連載
「コロナ 知は語る」にも登場している。
コロナ禍は現代の社会や経済など各分野で従来の価値観を揺さぶり、そのあり方に変革を迫る。3氏はこれに対し、人々の生活がコロナ禍以前の状態に戻ることはなく、また、戻ろうと考えるべきでもないとの認識で一致した。
アタリ氏はその上で、医療や教育など「命」にかかわる分野を重視した経済・社会構造への転換を求め、「次の脅威に備える」よう訴えた。ルトワック氏は技術革新の加速に対し、「私たちはコントロールする術(すべ)を理解できていない」と警鐘を鳴らし、グーグルなど「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米IT大手4社による市場独占への対処など、政治レベルによる技術革新の管理を求めた。細谷氏は「アフターコロナに早く慣れた人や国が世界をリードする」と述べた。
一方、国際社会ではいち早くウイルスを封じ込めた独裁体制の中国が、民主主義国家に対する「優位性」に自信を深め、米国主導の国際秩序への対抗姿勢と覇権奪取への意欲を鮮明にする。だが、3氏は民主主義の衰退と中国の覇権確立の可能性を明確に否定した。
アタリ氏は独裁体制に付随する隠蔽(いんぺい)体質が感染拡大を招いたのであり、中国は封じ込めの成功例ではないと指摘。「中国は世界のリーダーになろうとするが、成功しない」と述べた。
ルトワック氏は「民主主義国家はいつも弱く見えるが、歴史的に勝利を収めてきた」と語り、その理由について、独裁体制にはない自浄能力で「過ちを正してきたからだ」と強調した。
細谷氏は「21世紀の形」が「2021年からの10年間で決まる」とする一方、「『中国の世紀』になるとは思っていない」と述べ、日米と欧州、インドを中心に民主主義国家が連携を深めれば、「民主主義は世界の中心的な流れであり続ける」と予測した。
<3氏が語った「21世紀のキーワード」を読む>
鼎談は7日に行われ、産経新聞の井口文彦執行役員兼東京編集局長が司会を務めた。アタリ、ルトワック、細谷の3氏は5月に、コロナ禍の影響を識者が語る連載
「コロナ 知は語る」にも登場している。
コロナ禍は現代の社会や経済など各分野で従来の価値観を揺さぶり、そのあり方に変革を迫る。3氏はこれに対し、人々の生活がコロナ禍以前の状態に戻ることはなく、また、戻ろうと考えるべきでもないとの認識で一致した。
アタリ氏はその上で、医療や教育など「命」にかかわる分野を重視した経済・社会構造への転換を求め、「次の脅威に備える」よう訴えた。ルトワック氏は技術革新の加速に対し、「私たちはコントロールする術(すべ)を理解できていない」と警鐘を鳴らし、グーグルなど「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米IT大手4社による市場独占への対処など、政治レベルによる技術革新の管理を求めた。細谷氏は「アフターコロナに早く慣れた人や国が世界をリードする」と述べた。
一方、国際社会ではいち早くウイルスを封じ込めた独裁体制の中国が、民主主義国家に対する「優位性」に自信を深め、米国主導の国際秩序への対抗姿勢と覇権奪取への意欲を鮮明にする。だが、3氏は民主主義の衰退と中国の覇権確立の可能性を明確に否定した。
アタリ氏は独裁体制に付随する隠蔽(いんぺい)体質が感染拡大を招いたのであり、中国は封じ込めの成功例ではないと指摘。「中国は世界のリーダーになろうとするが、成功しない」と述べた。
ルトワック氏は「民主主義国家はいつも弱く見えるが、歴史的に勝利を収めてきた」と語り、その理由について、独裁体制にはない自浄能力で「過ちを正してきたからだ」と強調した。
細谷氏は「21世紀の形」が「2021年からの10年間で決まる」とする一方、「『中国の世紀』になるとは思っていない」と述べ、日米と欧州、インドを中心に民主主義国家が連携を深めれば、「民主主義は世界の中心的な流れであり続ける」と予測した。
【私の論評】人口の多い中国に、先進国が協同して対抗すれば、今世紀が中国の世紀になることはない(゚д゚)!
今世紀が中国の世紀とならないことは、はっきりしています。ルトワック氏が語るように「民主主義国家はいつも弱く見えるが、歴史的に勝利を収めてきた」からです。一言でいうと、このようになってしまいますが、この言葉には多くの意味がこめられていると思います。
エドワード・ルトワック氏 |
このブログで今年も、主張してきたように、民主主義国家になるためには、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は避けて通れません。
なぜ、民主主義国家でこのようなことが行われたかといえば、元々は富国強兵のためでしょう。それは、エリザベス朝のイングランドにまで遡ることになると思います。
エリザベス朝のイングランドには、今日の我々の生活の原点があります。今日の我々の生活様式の中のほとんどすべてのものが、すでにありました。現代の鉄道、電信、病院の原型ができたのもこの時代です。その他にもたとえば、コンピュータの原理もすでにこの時代にできあがっていました。
スペインの無敵艦隊を破り、絶頂期のエリザベス1世 |
ただし、そのころはコンピュータを実現するための、素材やインフラが整っておらず、それでコンピュータがこの時代には登場しなかっただけです。しかし、後にこの時代に登場した原理、理論と、最新の素材を用いて現在のコンピュータができあがりました。
なぜこのようなイノベーション(ここでいうイノベーションとは社会を変革することという意味、社会を変革しない技術革新なるものや、その他の革新なるものは珍奇な発明や考えの集まりにすぎません)がこの時代に起こったかといえば、富国強兵策としてイングランドが他国に先駆けて、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現したからです。ここでは、なぜ実現したか、なぜ実現できたのかという話は長くなるので省略します。
その結果何が起こったかといえば、ジェントルマン等の中間層が多数輩出され、これらが自由に社会・経済活動を行い社会のあらゆる層や地域において、様々なイノベーションを起こしました。私はこうしたイノベーションを立体的なイノベーションを呼んでいます。その結果社会が富むようになり、さらにその結果として国が富み、軍事力を強化することができ、強国となりました。
それは、他国に軍事的脅威の念を及ぼし、現在のフランス、ドイツなど他国においても、民主化、政治と経済の分離、法治国家化うながされました。それを実現しなかった国々は、強国となれず脱落していきました。
結局、民主化、政治と経済の分離、法治国家を実現することはかなり困難なことであり、それを実現できた国だけが、いわゆる列強と呼ばれた国々になったのです。今日でも、これはこんな困難なことであり、経済発展する発展途上国のほとんどが、いわゆる中進国の罠(あるい中所得国の罠、経済発展をする発展途上国のほとんどが、一人あたりの年収10万ドル=100万円の壁を超えられないことを示す)に嵌ってしまうのです。
ただし、列島国の全部が白人国家であり、これらの白人国家は自国や他の白人国家の民主化は当然のこととしましたが、それ以外の国々の人々の人権を重んじることなく、植民政策を推進しました。無論、植民した国々に関しては民主化をすすめることはありませんでした。
これは、大きな矛盾であり、結局列強による植民地支配は失敗しました。列強国が想定したように、植民地支配は富をもたらすことはありませでした。それは当然といえば当然です。植民地でも民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現しなければ、結局大きな富を生み出すことはできないからです。
こうした列強の植民化に脅威をいだき、日本は明治維新を成し遂げ、急速に近代化をすすめ、先進国の仲間入りを果たしました。いわゆる列強以外の国の発展登場国から先進国になったのは、今でも日本だけです。そうして、二度の大戦を経て、すべての列強国は植民地を手放し、当外国の独立を認めることになりました。
中国共産党は、民主化、政治と経済、法治国家化を実現せずに、経済発展しようとしています。しかし、これでは、いくら中共が様々な分野に巨額の投資をしたとしても、できることは限られており、せいぜい点と線のイノベーションはできても、先に述べたような先進国における立体的なイノベーションはおこらず、結局社会のあらゆる層や地域で、非効率や不合理なことが残存し、そこがボトルネックとなって、社会全体が富むことはなく、したがって国も富むことはできないです。
実際、中国の個人あたりの収入は100万円に近づいています。このままだと、日本のように、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を実現して、先進国への仲間入りということは不可能です。これからも、国民一人あたりの収入が100万以下という状態が続くとみるべきです。
ただし、中国は人口は14億人ですから、一人あたりのGDPが低くても、他国に比較すれば、かなりの軍事費を投入することができます。だかこそ、中国よりも人口が少ない先進国はこれに連携してあたる必要があるのです。ただし、先進国が中国の軍事的脅威や、間接侵略を防ぐことができれば、中国は自滅します。
自滅した中国では、中国共産党が統治の正当性を失い崩壊して、中国が新しい体制になるかもしれません。あるいは、中国共産党がなんとかして統治の正当性を維持できたとしても、図体が大きいだけの、他国に影響力を及ぼすだけの経済力も軍事力もない、アジアの凡庸な独裁国家の一つになり果てることになります。
上の記事では、細谷氏は「21世紀の形」が「2021年からの10年間で決まる」としていますが、実際にはっきり決まるにはそのくらいの時を経ることが予想されますが、コロナ禍の現在では、何事も変化の速度がはやくなることが予想されるので、来年あたりにはその判断材料が集まりはじめ、数年後にははっきり予想できるようになっていると思います。
今年に引き続き、来年もそうした兆候を探っていきたいと思います。
皆様、昨年はお世話になりました。良い年をお迎えくださいませ。
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