2015年7月29日水曜日

元来、リスク背負っている自衛隊 「リスクの有無」議論は失礼 ―【私の論評】もともとリスクのある自衛隊員にも天皇陛下の勲章を(゚д゚)!


軍事ジャーナリスト 桜林美佐さん

「England expects that every man will do his duty(=英国は各員がその義務を尽くすことを期待する)」

トラファルガー海戦における英国ネルソン提督のこの言葉は、決戦に臨む兵士たちを鼓舞しただけでなく、英国民にも「国民としての義務」を意識させることにつながったと前回書いた。

それは、イザとなれば一般市民が竹やりを持って戦うといった次元の話ではない。自分がどのような態度をとれば国のためになるのか、賢明な振る舞いによっても十分に果たせることだろう。

安全保障関連法案をめぐる小競り合いの傍らで、中国は南・東シナ海で何をしていたか考えれば答えは明らかだろう。報道各社も、低次元な論調に律義にくみすることで、自ら質の低さを露呈してほしくないものだ。

ネルソン提督の記念メダルに関する逸話を思い出したのは、安保論議において、本来は同時に検討すべき自衛官たちの処遇についてほとんど取り上げられないからだ。

常に述べているが、彼らは「事に臨んでは危険を顧みず…」と服務の宣誓をしている。リスクがあるかないか、広がるかそうではないかなどという言い方は失礼だ。

熱中症で死亡者が出るような猛暑でも、自衛官は通常の任務に就いている。「外出は控えましょう」といわれる悪天候の中でも出動している。「海外で殉職したら、国内で殉職するより重い」という意見も聞くが、自衛官の命に軽重はないし、任務によって差別すべきではないと私は考えている。

もともと、リスクを背負っている自衛隊なのである。今後は活動件数や人員が増える可能性に伴い、リスクを背負う「数」が増加すると認識すれば、それで誰もが納得できるのではないか。

「リスクの有無」議論は、自衛隊を知る者にとってはバカバカしくて聞き流していた。だが、ネルソン提督の勲章へのこだわりと重ね合わせると、「もしかして、相応の手当などをケチるための方便ではないか」などと、うがった見方が頭をよぎってしまった。

そんなことはないと信じたいが、これまでも日本では、国として現役自衛官に勲章を与えていない。どんな国でもその功績に対し授与するのが常識だが、自衛官には防衛省が独自に作った「防衛功労賞」と、その略章の「記念章」しかない。

普段はそれでもいいが、問題は礼装をしなければならない外国の公式な場でのことである。


【私の論評】もともとリスクのある自衛隊員にも天皇陛下の勲章を(゚д゚)!

上の記事で桜林さんが述べているように、自衛隊員のリスクがどうのこうのという指摘は、何を今更という思いがします。もともと、リスクを背負っていることははっきりしています。

国会て野党が、集団的自衛権を行使すれば、自衛隊員のリスクは高まるのではないかという懸念を表明していましたが、今更何をいうのでしょうか。

元々日本の野党は、従来は自衛隊そのものが違憲だとしていたのではないですか?それどころか、終戦直後においては、日本の首相そのものが、「自衛隊日陰者発言」をしていました。

それについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

首相 防衛大卒業式で訓示「安保法制整備進める」―【私の論評】時代が変わった!防大卒業式第一回目の訓示は吉田首相による「日陰者」発言だった!このような理不尽は二度と繰り返すな(゚д゚)!

昭和32年2月防衛大学校第1回卒業式にて訓示をする当時の吉田首相
 詳細は、この記事をご覧いただくものとて、第一回防衛大学校の卒業式の訓示における、当時の吉田首相の「自衛隊日陰者」発言の部分のみを以下に引用します。
「君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは、外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか、国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。
言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが、国民や日本は幸せなのだ。どうか、耐えてもらいたい。」 
(吉田茂 昭和32年2月、防衛大学第1回卒業式にて)
今では、ほとんど信じられないような発言です。この当時は、まだまだ、米国も、日本を弱体化させたままにしておき、二度と米国に歯向かうことができないようにすべきという考え方が主流だったし、さらには当時の米国は、経済的にも軍事的にも名実とも世界の超大国であり、現在とは、比べ物にならないほど強力でした。

だからこそ、このような発言になったものと思います。しかし、時代の変化とともに、自衛隊に対する考え方も変遷していっています。今では、自衛隊が非合法とか、違憲という語る人はいません。

そうして、今から4年ほど前の東日本大震災のときには、自衛隊の救援活動や、行方不明者捜索活動により、一般国民の評価が非常に高まりました。

2011年4月11日、宮城県気仙沼市で津波の被害者に黙とうをささげるため整列する自衛隊員
被災地の方々の中には、今でもあのときの自衛隊に対する評価が高いです。自衛隊を日陰者とする見方は、このあたりを境として、もはや日本では完璧に払拭されたと思います。

 このように、自衛隊に対する見方や、解釈なども世の中が変わると、変わってくるのが当然のことです。今の日本は、世界の常識からするとまだまだ、異常です。

そもそも、日本国内のどの都市に行っても、軍隊の行動が目に見えません。戦後の日本人は、これを当たり前と思っていますが、そんなことはありません。街中を軍隊が、移動したり、場合によっては、警護のために出動しているなどということもあります。

そんなわけで、世界中の多くの都市で、軍隊の姿をみることはあまり珍しいことではありません。

吉田首相のような発言をする、総理はもう日本には存在しません。これからも、出現することはないでしょう。野党も、マスコミももう自衛隊が日陰者であるかのよう発言はしないことでしょう。

このこと自体が、マスコミや、野党や、憲法学者などが、時の政府が安全保障に関する憲法解釈を変えてはならないという前提が根底から間違っていることを如実に示していると思います。

「違憲」、「戦争反対」、「安倍辞めろ」などと連呼している人々は、この事実をどうとらえるのでしょうか。

歴代の政権が、憲法学者が、内閣法制局が、民主党政権時代も含めて、安全保障に関する憲法解釈を変えてきたことは、事実です。しかし、多くの人々は、なぜか安倍政権だけが、それを変えてはいけないなどという、とんでもない主張をしています。

かつての軍人は国の勲章が授与された

こんな理不尽なことが許されるわけがありません。こんな理不尽いいい加減にやめにして、まともな安全保障を論議すべきですし、それとともに、リスクある仕事に志願して、就いている自衛隊の仕事にもっと光をあてるべきです。

上の桜林さんの主張にピンとこないかたもいらっしゃるかもしれないので、ここで念押しをしておきますが、自衛官には防衛省が独自に作った「防衛功労賞」と、その略章の「記念章」は、あくまで、防衛大臣が授与するものです。国の勲章とは天皇陛下が授与するものです。両者の間にはその重みに、天と地との差があります。名誉ということでは、天皇陛下からいただく勲章のほうが、はるかに重みがあります。

郵便局に長い間勤めて、風雪に耐え長年郵便配達してきた人にも国の勲章が授与されることがあります。しかし、場合によっては生命の危機に晒されながら、任務を全うする自衛官には、どんなに素晴らしい勲功があっても、国の勲章が授与されることはありません。

国として現役自衛官に勲功があっても、勲章を与えていないというような、こんな馬鹿なことをいつまでも続けるべきではありません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われまますか?

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